――どうして。どうして、こうなってしまったのだろう。
駆ける。あの子達に見つからないように。
駆ける。あの子達に捕まらないように。
呼吸は荒れに荒れて肺は痛みを訴えている。
身体はだるい、特に下半身に力が入らず膝は笑っている。
それでも駆け続ける。もう、もう嫌だ。
下半身を完全に露出しながら、廊下を走る私は傍目には間抜けか痴女のように映るかもしれない。構うものか。構う余裕もなかった。
「見つけました、しれぇ!」
ああ。
また、逃げ切れなかった。鬼に、化け物に見つかってしまった。
この『遊戯』は何時終わるのだろうか。
繰り返される、おいかけっこ。だれか、たすけて。
◇
私が『提督』となって三日目。
「しれぇー、だっこー」
「はいはい」
先ほどまで部屋の隅で本を読んでいたのに飽きたのか、雪風が私の所までとことこと歩み寄ってだっこを強請る。
こんな毎日が、続いていた。
元々私は陸軍の通信課で日々の業務をこなしていた。そんな中、海軍からの『提督』候補募集の張り紙が掲示板に張り出されたのだ。
艦娘関連については海軍の領分の為、詳しくはないが『提督』というものが特別視される存在であることくらいは知っている。新聞やラジオでは毎日のようにその戦果を喧伝し、『提督』の華やかさを煽てている。
……なのに、陸軍にまで募集を出すとはどういうことだろう。
待遇の欄を見ても破格。募集者はいくらでもいるだろうに。
首を捻りながらも、私はその給金の欄から目を放せないでいた。今の給金とは比べ物にならない額だったのだ。
正直、お金には困っていた。父が病気にかかり、その命を繋ぐのに膨大なお金がかかる。売れる物は売り払い、借金までしても賄い切れない程に。
幸い、応募に要される資格を私は全て満たしていた。あくまで応募であり、実際にその座を射止められるかは分からない。だから当たればいいな、くらいの宝くじを買う感覚。それも無料で買える宝くじなら買って損はない程度の認識だった。
私は、『提督』に選ばれた。
そして着任した場所は海の近く、元は小学校だという建物を利用した鎮守府だ。
初めて目にした時は、正気かよ海軍、と思った。
軍の基地らしい機能は傍目に見ても欠片もない。
しかし、ここで暮らすようになってそれで充分であることを知った。
何しろ、近くの公園で蝉を採ってくるノリで深海棲艦を屠って帰ってくる。傷一つ貰わず、代償すら必要とせず。人類の努力は何だったのかと先人の無念に涙しそうだが、艦娘とはそういうものらしい。
だから、私に仕事なんて存在しようもなく。
たまにこの子達が一人で深海棲艦を潰しに行くくらいで、遊びの相手をする毎日。私も何か、と言ったが何もしないでいいらしい。
この鎮守府にいるのは雪風、時津風、島風の三人。皆子供と言っていい姿だ。行動方針も子供そのもの。
柔らかなマットの敷かれた床上に座る私の膝上、両手両脚で身体に抱きつく雪風の細く、ふわりとした髪を撫でる。保育士さんみたいだ。
「雪風ずるいー。わたしもぉー」
部屋の中でお絵かきに興じていた時津風がその様子を見て寄ってくる。私の足元、太腿にすりすりと頬を擦り付ける。
今日は皆揃っている。島風はその前衛的な衣服のまま、お腹を剥き出しでお昼寝中。毛布、かけてあげないと。
「しれぇー……」
私に抱き付いている雪風が胸に顔をぎゅう、と埋めている。艦娘のことは未だよくわからないが、外見相応おっぱいが恋しいのだろうか。特に構うことなく、背をぽんぽんとあやす。もう片手では時津風の頭を撫でる。大忙しだ。
こんな日々を過ごして、本当にあんな高給が頂けるのだろうか。着任前日、面談した海軍中将は苦虫を口一杯含んだような顔をしていたが。
「しれぇ」
「んぅー? どうしたの?」
「おっぱい吸わせて下さい」
は?
いや流石にそれは。
子供の戯れかも知れないが、そこまではちょっと。
「ダメ。雪風は赤ちゃんじゃないよねー?」
諭すように答える。それが適用されるのかは分からないが、よく面倒を見ていた親戚の子も同じくらいの年頃だ、扱いには慣れている。しかし。
「じゃあ、おいかけっこしましょう、しれぇ」
「おいかけっこ?」
にぱぁ、と太陽な笑顔で提案する雪風。こうした『遊戯』への誘いはこれまでにもあった。
「わたしが追いかけるので、捕まえたら好きにさせてくださいっ」
「えー……?」
困った。どうしたものか、と考えていると遊びに目敏い時津風が割り込んでくる。
「わたしもっ、わたしもやるぅ!」
「……提督、おいかけっこならわたしも!」
お昼寝中だった島風までも何時の間にか目覚めて参加表明。こうなったら引いてくれないのがこの子達の常だった。仕方ない。こっそりと溜息を付きつつ、了承する。
腐っても元陸軍、足には自信があった。いや海兵がどうかは知らないが。
「きまりっ! じゃ、がんばって下さいよ、しれぇ!」
「捕まえたられいぷ!」
「いっぱい捕まえるからいっぱいおまんこしようね、提督!」
は?
地獄が、口を開いた。
◇
「やめ、やめて、しまかぜ、やめ……ッ」
それから。
本能的な危機感に従って駆け出した私は、すぐに島風に捕まった。あの子達が言う言葉は、あまりにも生々しく、冗談だと捨て置くのは私の女性としての本能が許さなかった。
そしてそれは、間違っていなかった。
「提督ッ、提督ッ、ぉ、う……ッ!!」
廊下の冷たい床上、私は島風に正面から押し倒されて犯されている。
ズボンをずり下ろされて愛撫などの性交の作法を知らぬとばかりに、先走りで濡れたおちんちんを突き入れられた。
そう、信じがたいことだが島風にはおちんちんが当然のように生えていた。短いスカートの中からそれが露になったとき目を疑ったが、今私の膣に入れられているのは玩具などではなく確かに熱を持つ肉の塊だ。
「だめっ、島風、こんなこ、とッ、ぁ、痛ッ」
島風の身体を押し退けようとするのだが、小柄な体躯であるのにびくともしない。腰は猛然と振られ続けてピストンは最初からトップスピード。痛みから、目尻に涙が溜まる。
「――あッ、ぁッ、ぁッ……っ」
私の制止は聞く耳を持たれず、どれほど続いただろうか。もがいている内に島風が突然更に強く腰を打ち付けると同時。胎の中に一際熱い熱が広がっていく……嘘。
「しま、かぜ……? え、えっ……射精、してるの……?」
おちんちんが付いていることにも混乱してその上犯されて。それが『機能』していることに絶望する。嘘、やだ、やだッ、早く抜かないと!
「いやぁぁあぁぁああああッ!!」
島風が脱力していた為か、今度は島風を押し退けられる。しかしそんなことを考える余裕もなく、ただただ逃れる為に這って、歩いて、駆け出す。下ろされたズボンをもどかしく上げながら、背後から島風の絶望的な言葉に追いかけられた。
「――じゃあ、六十数えたらまた追いかけるねー! 提督ー!」
「ひっ」
まだ、続けるの?
捕まれば、また?
逃げないと。逃げないと、また犯される。どこかに連絡を取るとか、やめようと説得するとか理性的な判断ができない。ただ当てもなく、島風が数え終わるまでに少しでもその距離を稼ぐ為に走り出す。
『おいかけっこ』は、始まったばかりだった。
◇
「しれー!!」
「きゃッ!?」
廊下を駆けて、階段を下って下の階。その踊り場に到達した瞬間、後ろから無邪気な声と共に飛び掛られる。軽い体重だが勢い良く背にぶつかった為、支えきることもできず転倒してしまった。
「しれー、しれー、捕まえたぁ!」
舌っ足らずの声。時津風だ。
嬉しそうな、子供の声。しかし、今はもう化け物がその皮を被っているようにしか思えなかった。お尻に熱く、硬いモノがもう擦り付けられている。
「っ、おねがい、やめ、やめて時津風……!」
「れいぷっ、れいぷっ!」
捕まってしまった私はもう懇願するしかない。しかし時津風は耳元で、はッ、はッ、はッ、と発情した犬のように荒い吐息を聞かせながら乱暴に私のズボンを下ろす。
子供の、甘ったるいその声で発することのないはずの言葉。やはり、この子達は化け物だ。女の子の形をしながら、おちんちんが付いていて私を犯そうと襲ってくる。人とは違う、化け物。
性器があり射精が出来る。射精が出来るということは。
「だめ、だめッ、赤ちゃん、できちゃ――いぎッ!?!」
「れいぷっ!!」
背後から押さえつけられたまま、またおちんちんが私に挿れられた。
「ちがっ、そ、っち、痛ッ、いだい、抜い、て……ッ」
「きもちいぃぃっ!」
違う。時津風のおちんちんは、私のお尻の穴を貫いている。未経験の痛みに背筋を跳ねさせようとするがそれも上から押さえつけられる。やはり先走りで濡れたおちんちんは根元まで捻じ込まれるが、裂かれるような痛みまでは緩和し切れていない。
「しれーっ、しれーも、きもちいぃ?」
熱いおちんちんで私を犯しながら、そんな質問をする時津風に応える余裕はない。怒りを覚えるが痛みと妙な脱力感で抵抗しようもない。しようとしても、力で叶わない。
「わたし、わたしきもちいぃっ、もう出ちゃ、あ、あッ!」
びゅるッ。
お尻の中に、熱が注ぎ込まれる。排泄する為の器官に排泄をされるという不快感に吐き気が湧き上がってくる。
「あっ、ぁっ……ぁ、ふ……きもち、よかったぁ……っ」
射精し切るまで圧し掛かり続けていた時津風が漸く離れる。天使のような愛らしい声。
しかし、今の私には悪魔の、化け物の声だ。
再び、這いずるようにここから離れようとする。ズボンは、いつの間にか脱げていた。そんなことはどうでもいい、早く、逃げなきゃ。
「じゃあ、ろくじゅー数えるね。また、つかまえるね」
ルールは私の知らないところで決まっていたらしい。
じゃあ、何時終わるの?
そんな疑問を問いかける間も惜しいと、再び逃げ始める。化け物から、逃れる為に。
◇
「見つけました、しれぇ!」
今度は、雪風。
廊下の先、真正面から出くわしてしまった。絶望が逃走するための僅かな気力を食い尽くす。その場に、へたり込んだ。
もう、好きにして。
絶望に身を浸らせ何もかも手放す悦び。もう逃げなくても、いいや。
「あれ、抵抗しないんですか、しれぇ?」
「……もう、いいわ……好きにして」
「はい!」
何でそんなに嬉しそうなんだ。そんなに、嬉しいのか。
雪風は私の上着を肌蹴させ、おっぱいを曝け出させる。最初の望み通り、その先端にすぐに吸い付いた。
夢中になって吸い付きながら私を押し倒す。私のお腹の上に乗る雪風の下半身は、忙しなく前後に揺すられていて、やはり固いモノが突き入れる穴を求めるように擦られている。
「提督、見つけたー!」
「しれー!!」
島風と時津風がやってくる。
既に雪風が私という獲物を貪っているというのに、二人は遠慮なく割り込んできた。
時津風は、今度は間違えず私の膣に。
島風は、私の口に。
それぞれのおちんちんが捻じ込まれる。雪風はおっぱいを何時までも吸い続けている。
――どうして。どうして、こうなってしまったのだろう。
地獄の終わりは、見えない。