『えっち』から始まる恋があってもいいじゃない? 作:カゲロー
文字数が膨れてしまうのはもはやお約束。予定の倍近くになるってどういうことなの……。
それから桐生くん……ごめんね? 妙な属性を付与しちゃって。
※最初にNTR風表現が含まれていますので、そういうのが嫌いな方はご注意or流し読みをお願いいたします。本編にはさほど影響はないようにしたつもりなので。
~~
その日、
顧問が職員会議に出席しているから居残り練習を禁止されたため、何時もより早く終わったから、久しぶりに葵と一緒に帰ろうと思い立ったからだ。
帰り支度を済ませた水泳部の部員らしき女生徒達とすれ違いざま、含むものがある風のにやけ顔を向けられたけれど、あえて気づかないふりをする。
と言うか、数かに濡れてる髪をわざとらしくかき上げたり、ショルダーバックのファスナーから着衣済み水着を見せつけたりとか、明らかにからかってるだろあの子たちっ!
俺と葵が幼馴染なのをわかっててやってるんだから、ホント、女の子って言う生き物はわからない。
「まったく最近の女の子は恥じらいってものが足りないんだよな……」
まるで娘を持った父親みたいな台詞を呟きながら、水泳部の部室の扉に辿り着いた。
普段は男子禁制のこの場所だが、夕方の大体今ぐらいの時間帯は解除されている。
まあ、理由は簡単で、水泳部の部活終了時間がきっちりと決められているからだ。
何でも、代表に選ばれたは良いが大会前なのにタイムが伸びない生徒が顧問に内緒で居残り練習を行ったことがあったのだそうだ。
あまつさえ、焦りを振り払うことが出来ずに無理に泳ぎ続けたために足を攣ってしまい、危うく溺れてしまいかねない事態にまでなったと先輩から聞いたことがある。
もちろん、きちんと部員メンバーのメンタルを把握できていなかった顧問にも責任はあるが、帰宅時間を超過してまで居残った生徒の側にも問題がある。
これ以降、二度と同じような不祥事が起こらないように、水泳部には他の部活に比べて早めに帰宅すべしという規則が定められることになった。
そのお蔭で誰に咎められるでもなく女子の聖域とも言えるこんなところまで来られたわけなんですが、流石にこの扉を開く勇気は持ってない。
というか、それが出来るのは変態と言う名の紳士か、ド変態と言う名の痴漢だけだ。
とは言え、実は過去に水泳部室内へ足を踏み入れた経験があったりする。
まあそれは、今日みたいに葵を迎えに来たとき、ドアの向こうから絹を裂くような悲鳴が聞こえてきたから何事かっと驚き、慌てて飛び込んでしまったのだ。
とりあえず大事になる様な事件な訳はなく、悲鳴の真相は恐怖の根源たる魔王『黒きG』の出現に女の子たちが驚いたというのが真相なのだけれど。
幸か不幸か、水泳部の部室は入り口すぐのところに覗き防止の突っ立てがあり、禁断の花園であるシャワースペースは死角になるような配置になっていたから、本物の覗き扱いされることだけは防げたのは行幸だったが。できれば、もう二度とあんな目に遭いたくない。
けれど――、
(なんで……何でこんな不安な気持ちになるんだ?)
日が落ちかけているせいかやけにあたりが暗くなってきた風に感じる。まるで墨汁をブチ撒けたキャンパスの中にポツンと佇む小人になってしまったかのようだ。
おかしい。いや、明らかに異常だ。
灯っている筈の外灯の明かりすら一切見えない闇にあたりを包み込まれ、自分自身と目の前にある扉だけがハッキリと浮かぶ上がっている。
ゴクリ、と喉が鳴る。気づかない内に口の中がカラカラに乾ききっていた。
カサカサになった唇を舐めつつ、意を決して足を踏み出す。幸い地面はしっかりと存在しているらしく、慎重に、ゆっくりとした歩調でドアノブに手をかける。
鍵は、開いていた。
でも開ききらない。、まるで裏側から誰かに引っ張られているかのように、ほんの数センチくらいしか開くことが出来なかった。
「なんだよ、これ――っ!?」
焦燥に駆られるように古めかしいドアノブを両手を握り、強引に開こうとした瞬間、ありえないはずの声が耳に届いて、思わずその場で立ちつくしてしまう。
部屋の中から聞こえてきたあの声。聞き間違うはずも無い。ずっと一緒に過ごしてきた幼馴染の声だ。
でも、明らかに様子が変だ。普通じゃないのが手に取るように分かる。
なのに、俺の脚は、うでは、身体は、空間に縫い止められてしまったかのように動いてくれなくなった。
出来ることは、光が零れ出す僅かな隙間から部屋の中の様子に目を凝らすことだけ。
何故か突っ立てが取り払われ、シャワースペースの様子が一目出来るようになっていた。
「葵っ!? どうしたんだ!? なにがあったんだよっ」
また声が聞えた。さっきよりもはっきりとした、まるですぐ目の前に彼女がいるかのようにハッキリと。
葵の様子は明らかに普通じゃなかった。幼馴染の自分が一度も聞いた覚えがない声だったのだから。
行かないと! 確かめないと!
頭ではそうわかっているのに、足は地面とひとつになったかのように動いてくれない。焦燥だけが込み上げてくる。
事実を確かめ、おもいっきり否定したい! だって、白い湯気という名のヴェールに包まれたシャワースペースに浮かび上がる人影……生まれたままの姿であるらしき葵が、
「んっ、は、ァ――ん、んふぅっ!」
快楽に蕩けきった“女”のような艶声を上げていたのだから。
「うわぁあああっ!?」
絶叫と共に跳ね起き、被っていた布団を振り払う。
バクバクと暴れる心臓を抑えるように胸に手を当てながら、辺りを見渡す。
見慣れたベッド、枕元にある目覚まし時計、壁にかけたカレンダー……そのどれもが慣れ親しんだ自分の部屋だとようやく気づく。
額どころか全身をぐっしょりと濡らす汗に冷えたのか、ゾクゾクとした寒気が背筋を駆け昇る。
「ゆ、め……そっか、夢か……。あ、あはは、そうだよな。夢に決まってるよなあ」
自分に言い聞かせるように言葉に出すが、脳裏にはあの光景が鮮明に焼き付いてしまっている。
ぼんやりと、大まかな輪郭でしかわからなかったけれど間違いない、あそこに居たのは確かに葵だった。
しかも……『ひとりじゃない』。あそこで葵は誰かと抱き合っていた。
あんな声を……家族にも秘密にして隠して持っているアダルトDVDの女優が出すような声を零していたけれど、間違いないだろう。
カーテンを開き、窓の向こうに見える隣の一軒家の2階にある部屋……葵の自室を見る。
薄暗い時間帯だからもあって薄暗く、人の気配が全く感じられない。
それもその筈。
らしいというのは、おばさんも葵も、実際にどこに住んでいるのかを詳しく教えてくれなかったからだ。
どれだけ強く問いただしても『言えない事情があるから』 の一点張り。
羽村さんも聞きたそうな素振りを見せていたけど、いつになく強情な葵に拒絶されて強く踏み込めなかった。まるで、大切な宝物を護り抜こうとする番犬のようだった。
しかも、『まあまあ、誰にだって内緒にしときたい秘密のひとつやふたつあって当然だよ~』と沢尻さんも葵の援護についてしまったので流石の羽村さんも強く言えなくなってしまった。
結局、どこに住んでいるのかは有耶無耶にされてしまったけれど、学校では普段通りだし付き合いも悪くなったわけじゃないから、こっちが折れる形でなあなあになっていたんだけど……。
「もうひとりの方……あれって、まさか……」
裸の葵と抱き合い、交わっている風に見えたもう片方の人影。
声が聞えた訳でもないし、証拠があるワケでもない。
でも……
「高宮、だったのか……?」
自分でも不思議なくらい理に叶っているような気がして、思わず愕然とした。
それから朝日が昇るまで、自分が口に出した言葉にショックを受けたまま固まり続けることになった。
硬直が解けたのは携帯にテニス部部長からのメールが届いた時。
今日予定していたテニス部恒例の親睦会をシーマリンパーク=銀星で行うと言う旨の文面をぼんやりと眺めながら、俺は自分で思い浮かべた妄想を振り払うように家を飛び出した。
~~
「――で、好き勝手自由にプールで遊んでいたらたまたま幼馴染ちゃんと出会って、思わず悪夢がフラッシュバック、アレは自分の煩悩が招いた妄想だと割り切りたくて、思わず詰め寄る様な真似をしちゃった、と。OK?」
「お、おーけー……です」
女の子に詰め寄る様な真似をしてしまった桐生は、連行された医務室の床に正座しながらベッドに腰掛ける理恵にむけて項垂れていた。
改めて言葉にされると、何ともへこむ。
そもそも、自分勝手な夢の内容に動揺して公共施設で騒ぐなど、自爆以外の何物でもない。
「う~ん、なるほどねえ。……よし、わかったわ。ここはお姉さんがひと肌脱いであげましょっか!」
「はい?」
ポン、と手を叩きつつ、輝くような笑顔を浮かべる理恵。桐生に見せつけるかのようにわざとらしく足を組み直し、むっちりとした太ももの奥にのぞく際どい水着のラインを強調してきた。股間に食い込んだ水着を間近で直視することになった桐生の心臓が一際激しく暴れ狂う。年上の、それも現役グラビアアイドルのバイトをしているだけあって身体のラインや肉付きが実に男好きする蠱惑的な美を醸し出す理恵の水着姿は、色々な意味で未成熟な少年である桐生には劇薬にしかならないようだ。
思わず顔を背けそうになってしまったが、そうはさせまいと伸ばされたおみ足が桐生の頭部を踏みつけ、拘束する。
美女から足蹴にされるというある種のご褒美を味わう機会に巡り合えた桐生は、ドキドキと速太鼓のように暴れる心臓を鎮めることも出来ないでいた。
熱い血液が身体中を駆け巡り、頭の中が霞がかったように真っ白になって行く。眼前に曝された極上の“牝”をもっと近くで感じたいと本能が叫んでいるかのようだ。
「おやおやぁ? ガッチガチにテント張っちゃってるわよ、ボ・ウ・ヤ・♪」
「っ!?」
指摘され、慌てて視線を下腹部へ落とす。
そこには、水着を押し上げるように盛り上がった膨らみ、理恵の色香に反応して大きくなってしまった肉棒が自己主張を繰り返していた。
慌てた桐生が両手でソレを隠そうとするよりも早く、頭を押さえつけていた理恵の足が素早く動き、水着の上から紳士の膨らみを踏みつけた。
「はうっ!?」
「あら、いい声ね。ふふっ、その顔……結構可愛い表情も出来るのね」
桐生の表情の変化を堪能しつつ親指でぐりぐりとくすぐるような刺激を送りながら弄っていたが、ふと、響が乗ったとばかりの巧みな足捌きで水着をずらしてきた。
途端、窮屈そうに押し込められていた肉棒がぶるんっ、と飛び出し、天高々と反り返った姿を晒した。
小さな嗤い声を零しながら肉食獣が獲物に狙いを定めるかのようなリアクション――唾液で濡れた舌で唇を舐め上げる仕草――を見せた理恵は、足捌きをより大胆なものにしていく。
竿の部分を片足の裏で擦り上げ、反対の足で根元と精液袋を踏みつける。足蹴にするのではない。痛みを感じさせない絶妙の力加減で刺激を断続的に送り込み、快楽の波を与え続けているのだ。
半開きになった口から愛撫を受ける女の子のような声が零れ出してしまうが自分ではどうにもできない。堪えきれない快感に責めたてられていく桐生を妖絶な表情で見下ろす理恵は、ベッドに腰掛けたまま自分の胸へと腕を伸ばしていく。張りのある乳房を水着の上からグニグニと揉みしだく理恵もまた、興奮を感じていたのは間違いない。
女王様のように
勃起する肉棒はさらに固く、雄々しく反り返っていき、先端からは興奮の証でもある先走り汁が溢れ出していた。
「あはぁ……♪ もぉ、こんなにおっきくしちゃってぇ。いやん、幼馴染一筋な少年の熱い視線……お姉さん、興奮しちゃうよぉ」
瞳を情欲で染め、息を荒くしながらも足の動きを止める素振りは見せない。それどころか、より大胆に、より強く肉茎を擦り上げてきた。
「うっ、うあぁあああっ!」
「わお♪ ボウヤのオチンチンってば本当に暴れん坊さんねぇ。まだ大きくなるなんて……ねぇ? もしかして君、女の子を何人も虜にする色男クンかと思えば、実はこーゆーことが大好きなエロ助クンだったのかな?」
「ちっ、ちが……俺は、そんな節操なしじゃ……あっ、う、うううっ!?」
両足の指で肉茎を挟み込み、そのまま上下にしごかれた。動きがどんどん早くなり、ほらほら達してしまえと射精を促してくる。
「うふふっ♪ ヤダ、もうこれ……癖になっちゃいそうよ」
先走りと汗でぐちょぐちょに濡れてしまった足で、僅かに皮を被った肉棒を好き勝手に弄ばれ、しごかれる。
性行為を神聖視している節があった桐生にとって、このような異常な状況下での行為は予想だに出来なかったものであると同時に、いけない事をしているという背徳感と興奮、さらには堪えようのない快感を覚えていた。
「はぁ……はぁ・・・・・うっ、くぅぅうっ! お、おね、さ……んぅっ!」
「女の子みたいな声出しちゃってもう……しょうがない子ね。そんなざまで、幼馴染ちゃんをモノにできるのかしら?」
冷や水をかけられたかのような衝撃が桐生を襲った。
込み上げてきていた射精感が消沈するほどの重さが、理恵の言葉に含まれていたからだ。
血管が浮かび上がり、未だ膨らみを増していく肉棒を足蹴にしながら、桐生の顔を覗き込むように身体を乗り出した理恵が囁く。
「ボウヤも気づいてるんじゃないの? 幼馴染ちゃんの心がキミじゃない、他の誰かさんに向けられてるってコトに」
「な、何を言ってるのかわからないですよ……」
必死になって否定しようとする桐生の弱々しい抵抗など意に返さず、理恵は言葉を続ける。
「幼馴染って関係はどこまで言っても『一番近い他人』止まりなのよ? 油断してたら、多感なお年頃の女の子はすぐに他の相手に恋を抱いちゃうんだから。それは君の場合も同じことよ。ていうか、自分でもそう疑ってるからさっきみたいな真似しちゃったんじゃないの?」
反論は出来なかった。夢の内容だけじゃない。実際に見てしまっていたから。
旅行の時にときどき見かけた、誰かの姿を追うような視線を向ける彼女の姿を。
その先に、一体誰がいたのかも。
「
比喩でもなんでもない、それが確定している未来なのだと言わんばかりの口調で理恵が断じる。
先日初めて見た海斗の焦り顔。彼の事で葵をからかった時に見せてくれた、いかにも恋してますと言った風な表情。
もはや、あの2人がやんごとない関係に……それも、仕事云々に一切関係ない、限りなく真剣なお付き合いをしている関係にあるのは疑う余地はないだろう。
重要なのは、海斗が葵と『ごくごく普通の恋愛を育みつつある』という一点のみ。
――いまさらそんなの認める訳ないでしょ。海斗クン、君は私の初めての相手で
絶対に逃がさない。キミは一生私と同じ世界で生きてくれないと許さない。
胸中で渦巻く暗い独占欲を抱えた理恵の双眸が妖しく輝く。
彼女にとって、同じ世界にいたはずの海斗を表の世界へ引っ張り出そうとする葵の存在は目障り以外の何物でもない。
狙うは2人が離れるような状況を造り出す事。そのために必要なのは、使い勝手の良い手駒。
――悪いわねボウヤ。キミには私のオモチャになって貰うよ。あ、でも、お邪魔虫な幼馴染ちゃんをご褒美にあげるから無問題だよね♪
理恵が目的のためには手段を選ばない苛烈さを秘めていることに海斗は気付いている。だからこそ、彼に何かを仕掛けようとも回避されてしまうのがオチだ。
だからこそ、標的は葵に絞り込むのが正解。
すれてない清純な女の子が相手なら、別の異性に口説かせるなり誘惑させるなりして自分から海斗と離れるように仕向ければいい。
恋心を抱きながら、最後の一線を超える勇気を持てないヘタレ気質な桐生は、理恵にとって、まさにうってつけの逸材だった訳だ。
「そんな不安そうな顔しなくても大丈夫よ。特別にお姉さんがキミの恋の指南役を任されてあげるからっ」
「え……? あ、あの、どうしてそんな」
「え? う~んっとね……初恋を成就させようと頑張ってる少年を応援したくなったからかな」
本心を耳障りに良い言葉で覆い隠し、剥き出しにされた肉棒を踏みつけられていると言う異常な状況が生み出す普通じゃない雰囲気を利用して、強引な暴論を擦りこんでいく。
「いいかしら、ボウヤ。愛しの幼馴染ちゃんのハートを射止めたいんなら、まずは自分の魅力を高めないといけないわ。今のボウヤは普段から彼女が知ってるボウヤそのものでしかないの。恋愛の極意は相手から関心を向けさせることが何よりも重要、つまり男としての魅力を身に付ければ、幼馴染ちゃんの視線もこっちに向けられるってわけなのよ!」
「お、男の魅力ですか? それって筋肉美とかそういうので?」
「ノン、ノン、ノン! 極めてノォン! よ。女の子が心動かされるのは、ごくごく自然に身体からにじみ出る大人の色気……つまり、Cherry Boyを卒業しちゃったGuyのみがもつ色香のことよ! そう……君に足りないのは、キープしてるCherryを捨てる覚悟なのよ!」
「なっ、なんだってえ――っ!?」
その時、桐生に電流奔る。
ついでに、ぐりりっと指をねじ込まれた肉棒にも新しい世界の扉を開きかけてしまうような衝撃が走った。
話の間も何気に弄られていたせいで、もはや限界に達していた。
ビクビクと肉棒そのものが小刻みに震え、腰が浮いてしまうほどの射精感が噴火の如き勢いで込み上げてきた。
尿道は完全に開ききり、もはやいつ爆発してもおかしくはない状態だ。
理性と本能がごちゃ混ぜになって半ば思考停止状態に陥った桐生の耳元に口を近づけ、頭に直接擦りこむ様に語る。
「これから私がボウヤの手ほどきをしてあげる……。大丈夫、ボウヤが一人前の“大人”になれた暁には、幼馴染ちゃんの身体はボウヤのモノになっているはずよ♪ お姉さんがそのお手伝いしてあげる」
「うっ、ぁ……! あ、葵が……っ!?」
悪魔のささやきに屈したかのように、桐生は脳裏に自分のモノになった葵の姿を思い浮かべてしまう。
生徒達の間で取引されている彼女の隠し撮り写真。この間、偶然手に入れることが出来た部活中のものらしきそれには、水着の食い込みを直している時の姿が映し出されていた。お尻の方へ寄ってしまった水着を直すため、肌と水着の隙間へ指を差し込み、引っ張っている瞬間を捉えた画像。
葵の事を幼馴染でなくちゃんとした女の子として見るきっかけになったあの仕草を含めた葵の全てを自分のものにできる……。
不安と期待がどうしようもなく大きくなり、理恵の言葉に裏がある事を疑うことも出来ないまま、彼女の提案に乗ることを了承してしまう。
返答に満足げな笑顔を浮かべると、まずは前払いだと言わんばかりに足の指に力を籠め、肉棒へ最後のダメ押しとなる擦り付けを行った。
「あっ、あ……っくはぁああっ!」
瞬間、絶叫じみた声を上げる桐生の生成した欲望の結晶が、理恵の足の中で爆発した。
ビチャビチャと淫靡な音と共に床へ広がる白濁液。荒い呼吸を整える桐生を満足げに見下ろしながら、理恵は悪巧みの始まりを告げる黒い笑顔――海斗が称するところの腹黒女狐の表情――を浮かべていた。
……数日後、理恵の携帯に桐生からの着信が届く。
通話ボタンを押して通話口を耳に押し当てると、プールで出会った時とはまるで別人のような自信に満ち溢れた声が聞こえてきた。
(こっ、これはまさか……! イッちゃった!? 文字通り一皮ムケちゃったのかしらっ!?)
内心ワクワクしながら表面的には平静を保ちつつ、何があったのか聞いてみる。
「は。はぁ~い。久しぶりね、ボウヤ。今日はどうしたの?」
『理恵お姉さん……実は大きな成果があったのでそのご報告をさせてもらおうと思ったんです』
――Yes!
辺りに憚らずガッツポーズを決める理恵の脇を変なものを見たと言った顔の大学生が通りすぎていく。ちなみに彼女の現在位置は、学び舎である大学の講堂内である。
妙な噂をされそうなあたりの空気に気づかぬまま、理恵は話の先を促してくる。
「ふ、ふ~ん、大きな成果ねえ。いったい何があったのかしら?」
(ヤッたの? ベットインしちゃったの!? それとももしかして……鬼畜系なOut Field Play!? やだ、意外と肉食系だったのかしらっ♪)
『昨夜の事なんですが、遂に人生初めての冒険に挑んだんです。それはまるで蒼天の霹靂のようでした。今までの自分の価値観が根っこから書き換えられてしまったような……何とも言い難い爽快な気分です』
「うんうん。それで? 実際のところ、ナニやったの!?」
『はい……! 実は、実は俺……昨夜、自分のベッドの中で――』
(連れ込み!? まさかのお持ち帰りしちゃったの!? Good Job!!)
理恵の中ではすでに拍手喝采の乱痴気騒ぎ。
弟子の成長を喜ぶ師匠のになったかのような満足感で胸の中が満たされるかのようだ。
ああ、我が眼は人の才能を見抜く千里眼であったというのか――!!
『人生初めての、
受話器を当てた右から左へ、桐生の言葉が通りすぎていく。
理恵には見えないが、電話の向こうの桐生はじつに爽やかな笑顔を浮かべつつ親指を立てていたりする。
まさに、『俺はやったぜ! やってやったぜ!』 と言わんばかりの満面の笑みで。
……残念、千里眼は賞味期限切れで腐ってしまっていたようだ。
理恵は桐生のことを飢えた肉食獣のようだと考えていた。
幼馴染と言う極上の
故に、ほんのちょっと背中を押してやれば獲物《ワン子》を奪い去ってそのまま逃げ切ってくれるのではと期待していたと言うのに……!
――ま、まさか、ボウヤが雑食で満足してしまう低コストボーイだったなんてっ!?
極上の
本人的には、罪悪感とかいろいろな
「……ボウヤ」
にっこり極上の笑顔を浮かべつつ、理恵の腕が持ち上げられていく。
身体の前方に突きだされた手は拳を作り、親指だけびしっ、と立てられる。
――が、ぐるんっ! と即座に上下がひっくり返ると胸の前へ移動し……横方向へ一閃。
「このヘタレ」
それはそれは見惚れてしまうかのように魅力的な女王様な笑顔であったという。
ヘタレチーター君がトラさんからワン娘を奪い返す日は……遠い。
~~
・プールで情事をかましたあの後
「うぅ~っ。腰が痛いんだよぉ……。もうっ、海斗くんがあんなに激しくするからっ」
「俺のせいじゃないだろが!? 大体、目を覚ますなりもっとやってとか言いながら甘えてくるから――」
「わぁーっ!? わあぁーっ!? ななななにを大声で言っちゃってるのかな、海斗くんのえっちぃ!」
「理不尽にも程があるっ!? ていうか、今さらだけどよかったのか? 確かそろそろ危険日が近いとか言ってなかったか?」
政府からの補助があるのは間違いないだろうが、やはり学生結婚というのは色々と勇気がいる……決断的な意味で。
真面目な顔で未来予想図を脳内に描きつつ唸る海斗を安心させるように、背伸びして彼の頭を撫でる。
「心配しなくても大丈夫だよ、ちゃんと危険日は外してるし。……あ、でもでも、やっぱり約束の証みたいなものは欲しいかも。なんていうか、形を残すっ! ……みたいな?」
「証ねぇ……例えばどんなのがいいんだ?」
「えっと……そうだねぇ……ぁ」
不意に目に留まったのは年若いカップルらしい2人連れ。
仲睦まじそうに繋がれた手に、きらりと光り輝くシルバーリングが着けられていた。
思わずぽつりと、
「シルバーリング……とか」
それが何を意味するのか聞くほどマヌケではない。
中指に装着されたシルバーリング、それは将来を約束し合った恋人の証。
生徒の間でも、それは恋人持ちのステータスとして周囲から一目置かれる特別なアイテムなのだ。
照明の光を反射するソレを視線で追う葵の肩越しにそれを一瞥した海斗はぽつりと小声で、
「ん……それは、まあ……また今度に、な」
「えっ? ……ぇ、うぇええっ!? ちょ、ちょっと海斗くんっ、今のもう一回! もう一回言って欲しいかもっ。よく聞こえなかったからっ」
「さーて、そろそろ、もうひと泳ぎしましょうかねぇ!」
「あーっ! ごまかしたねっ!? それで逃げられると思ってるのかなっ!?」
「大事な事だから、軽々しく言えないんだよ! 察しろ!」
「それでもきーきーたーいーっ! 海斗くんのけちーっ!」
腕にしがみつきながら強請る葵から真っ赤になるほどの熱を持った顔を見られない様に反らしつつ。
思わず零れてしまった無意識下での本心を誤魔化す様に、勢いよくプールに飛び込む海斗であった。
――◇◆◇――
「青春よね~。ホンッと、どこぞのバカドラゴンもあれくらいの可愛げがあったらよかったのに」
「……言い方がオバサン臭いぞ――げふっ!?」
ずどむっ! と実に良い音を響かせながら、某パティシエの肘が眼帯の脇腹に突き刺さる。
金髪と茶髪藍眼の女性はいつも通りな2人に苦笑を浮かべ、義理の姉と手を繋いだなずなは急に身悶えた父親を不思議そうに見上げる。
「ぞげふ~? パパァ、お腹抑えてどうしたの~?」
「大丈夫よ~。ちょっと、バカを拗らせただけだから♪」
母はそう言うが、額をぶつけ合いながら睨み合う両親の仲違いを前にして平然としていられるような子ではない。
あわあわと不安そうな
「へーきだよ、なっちゃん! 今は喧嘩してるけど、私達が寝た後、お布団の中でしっかり仲直りしてくれるんだからっ♪」
意味を理解しているのかもわからない少女の口から、途轍もないセクハラ発言が飛び出した! パパ&ママ~ズが一斉に噴き出してしまったのもしょうがないだろう。
「おいコラ、何を口走っとるかボケ娘!? いや、そんなことより誰に吹きこまれた!?」
「……ホント、悪影響ばっか受けてるわね。私が再教育しようかしら?」
「口より先にナイフと砲撃が出る女が何言ってんですか?」
「娘の両肩を揺さぶりながら真顔で毒吐くなんて……流石だねっ♪」
「ふっ……どやぁ」
「あはは~、見たかいなっちゃん。我が家はいつもにこにこ、這いよる混沌呑み干す仲良し家族なのですっ」
「なのですか~♪」
娘達の教育方針ついて、言葉と拳とナイフと、紫とか赤とか紅とかに光り輝く球体を飛び交わせながらヒートアップしていく両親ズ。
紛争国の戦場を彷彿させる殺伐とした空間の中で呑気にティータイム(砂糖たっぷりのアップルティー)を堪能できるハイスペックシスターズが育ってしまったのは、明らかに普通じゃない親達の責任だろう。醜い責任のなすりつけ合いをしている暇があれば、わが身を振り返るべきだと言わざるを得ない。
ちなみに、異常すぎる騒動が繰り広げられながら監視員に追い出されずにいられたのは、ママ~ズの胸元で輝く宝石達が結界を張っていたからだと言うことをここに記しておく。
後日、宝石達が記録した映像を見た父親の同僚達によるお説教を受ける4人組がいたとかいなかったとか。
真実は(文字通り)《神》のみぞ知るというヤツである。
……おや!? 桐生くんのようすが……!
ドンドンドンドン……テレレレーン♪ ← あのテーマ
おめでとう! 桐生くんは”ヘタレチーター”へ進化した!
……ホントゴメンね桐生くん。ヤンデレパートナーとのやり取りを愉快なのにしたいと考えてたら、なんかこんなんなっちゃいました。
でもあんまりヘタレてはいられないよ~。ワン娘とトラさんにエンゲージ的なフラグがビンビンとっ!
これもすべては、なずなっちのママさんによるお節介のせいなのだ(違)