※この作品はR-18です。

『えっち』から始まる恋があってもいいじゃない?   作:カゲロー

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お待たせしました、こっちも久しぶりの更新です。
このままでは海斗くんぼっち疑惑が上がりそうだったので、幼馴染な新キャラに登場してもらいました。

ついでに一言……エロ可愛い女の子ってメガ可愛いですよねっ! (力説)


第14話 祭りの準備

学生生活の一大イベントと言えば運動と文化の祭典、体育祭と文化祭が思い浮かぶ。

海斗達が通う学園も多分に漏れず、開催時期が近づくにつれて生徒たちのテンションもいやおうなしに高まっていく。

 

この学園の体育祭は、大きな行事を同じ時期に開催するのは生徒の勉学への意識を緩めると言うことで初夏……つまり一学期に開催されるのが通例になっている。衣替えも近いこの時期になると、学園の空気が高揚したものへと変化していくのを皆が肌で感じるようになり、必然的に彼らの話題が体育祭のチーム分けに関するものが多くなっていく。

と言うのも、ここの体育祭には面白い趣向が凝らされるのがお約束になっているからだ。

少子化の煽りを受けて毎年新入生の確保に頭を悩ませていた理事会が、客引きならぬ生徒引きを狙ってユニークなルールを定めたのが切っ掛けだと言われている。

 

ひとつは修学旅行でもあったクラスの垣根を超えて生徒達を混合させるチーム編成。

クラスごと……例えばクラス番号で一括りにするのえはなく、各担任によるくじ引きで生徒一人一人の所属するチームを決定する。

これは、全生徒を3つのチームにランダムに分配し、優勝を目指して協力し合わせると言う狙いがある。

もちろん、生徒にとって大切な事をくじ引きで決めるのはどうなんだ? という反対意見も出るには出た。

だが、過去にたまたま同じチームに振り分けられた野球部のメンバーがこれをきっかけに絆を結び、校内最高のバッテリーを形成することになったり、仲の悪いことで有名だった映画研究会とゲーム愛好会の部長達が同じ目標――体育祭の優勝賞品――を目指して協力したことで恋愛感情が生まれ、晴れてカップル成立となったなどの面白イベントが発生したため、反対意見はさほど時間をかけずに鎮火していくことになった。

そんな訳で生徒達は、今年は何が起こるんだろうとワクワクしながらチーム決定を心待ちにしていたりする。

 

もうひとつが生徒の家族でなくても来場、観戦できる一般客を狙ったもので、一言で言えば『コスプレ運動会』というヤツである。

しかも男子限定。

男子生徒達は、学園祭当日はその年ごとのテーマに沿った衣装を生徒達自身が縫い上げ、着衣する。

これのミソは用意された衣装を誰が着ることになるのか当日の朝になるまでわからないと言うところだ。

朝、登校した彼らは各自の机の上に置かれている衣装を着ることになる。

拒否は出来ず、どんなに恥ずかしい格好であっても必ず着て出場しなければならない。

中には仮装パレードかよっ!? とつっこまざるを得ない奇抜なものも含まれているため、運が悪ければ公開羞恥プレイを堪能する羽目になる男子生徒達は違う意味でもドッキドキだ。

ちなみに女子生徒は普段通りの体操着。

贔屓だという声もあるにはあるが、権力の前ではあまりにも無力なのだ。

学校と言う領域において、理事長&校長の決定は絶対なのである。

……例え彼らが女子生徒の体操着姿にハァハァしてしまう変態さんだったとしても、どうしようもないのだ。

無情なる世の理である。

 

とまあ、そんな訳で。どういう衣装を作るかと話題にあげる女子生徒や、どんな競技に参加しようかと意見を交わす男子生徒で、休憩時間中の廊下は大きな賑わいをみせていた。

そんな和気藹々とした空間の一角に、窓縁に頬杖を突きながらぼんやりと外を眺める海斗の姿があった。

こめかみに寄った皺を揉みほぐしながら、何事か考え込む様な仕草を見せている。

 

「……なあ、伊織」

「ん? どうしたんだ海斗」

 

ぽつりと呟いた海斗に答えつつ、彼の隣で窓辺に背中を預けるように佇む生徒が親しみを込めて顔を向けた。

一般生徒とは意匠の異なる白を基準とした男子用学生服に身を包み、『風紀』の二文字が記された腕章を装着している。

 

この生徒の名は『虎々乃衛(ここのえ) 伊織(いおり)』。

 

涼しげな瞳と凛とした眼差しが生み出す高貴さ溢れる雰囲気を纏った学園の王子様だ。

首の後ろで一纏めにした艶やかな黒髪と純白の男子学生服が織りなすコントラストは、恋する乙女達に立ちくらみ(おやくそく)を起こさせるほどの衝撃(インパクト)を生み出している。

遠巻きに見つめ、黄色い歓声を向けてくる女子生徒達へ微笑みながら手を振る姿は、実に絵になる光景だ。

学園きっての王子様と問題児の組み合わせに何とも言えない表情を浮かべる周囲のことなど眼中にないのか、海斗は普段通り(・・・・)の口調で幼馴染へ問いかける。

 

「ちょっと相談に乗って欲しいことがあるんだ」

「ふむ? 珍しいな、君がそんな顔をするなんて。……もしや、件の計画とやらに関する事なのかい?」

 

最後は周囲へ聞こえない様に顔を寄せながら小声で囁く。

傍目にはキス寸前にも見える光景に、伊織のファン達から筆舌しがたい絶叫が上がった。

割合的には、「きゃぁあああ~~っ♪」と「ぎゃぁあああああっ!!」 が半々くらいで。

 

「いや、そっちとは関係ない……と、思う。ってか、あんまり軽々しく口にすんなよ。王子様のお言葉には、他の連中が聞き耳立てまくってんだから」

「ふふっ、ゴメンゴメン。相談役として頼られたことが嬉しくてさ」

 

はにかみながら頬笑む伊織。うっかり口を滑らせてしまいそうな『親友』に、海斗はやれやれと言わんばかりに肩をすくめるのみ。

その様子は、海斗の素の表情そのものだった。

恰好こそお約束な地味モードであったが、口調は日常の彼のもの。

もしこの場に葵がいればすぐ気づくくらいリラックスした様子の海斗の姿はめずらしい。

理由はもちろん、じゃれ合うように頬を摘ままれながらも楽しそうな伊織にある。

海斗にとって伊織という幼馴染は誰よりも信頼できる親友だ。

幼い頃から隣人として共に育ってきた2人の間には何者でも踏み入ることが叶わない絆が存在する。

海斗の家の事情を知る数少ない人物であり、学園で何かと孤立しがちな彼にとって数少ない友好関係を結んだ人物。

それ故に、子作り計画の概要――政府の命令で学園の女子と同棲している――を大まかではあるが知らされている。

多感な年ごろ故に、精神的なフォローをという狙いがあった事も、事情を話す許可が下りた理由の一つだ。

ちなみに葵の方はまだ誰にも打ち明けていない。

早苗に告げたら絶対暴走しそうだし、桃花はなにか感づいている節があるし、桐生は……いろんな意味で論外なので、どうするか悩んでいる最中だ。

 

「それで? 何を悩んでいたんだ?」

「あー、うん。実は、な……」

 

僅かな巡考の後、うまく言葉にできたらしい海斗が顔を上げて、こう切り出した。

 

 

 

 

 

 

「幼馴染を始めて夜のオカズにしたことを誇らしげに語られながら宣戦布告を受けたんだがどうすればいいかわかる?」

 

「わかってたまるか」

 

これは酷い。酷すぎる。

久しぶりに話す機会に巡り合えた親友から、なにが悲しくて意味不明なセクハラ発言を受けねばならないのか。

思わず冷たい一言で切って捨ててしまったのも仕方ない事だ。

ついでに言えば、身体の方も真っ二つにせんと木刀を袈裟切りに振ってしまったのも仕方が無い事なのだ。

 

「したり顔で自己完結しとらんで、さっさとコレを下げんかい」

「おや、失敬」

 

脳天に打ち下ろされる寸前に白羽取りを決めた海斗に半眼で睨まれ、何事も無かったたかのように木刀を引く伊織。

校舎内でこんなものを振り回していながら誰からも指摘を受けないのは、伊織が学園の秩序を護る風紀委員であるからだ

憎まれ役を買う以上、最低限の自衛手段は持ち合わせないといけないという風紀委員の風習に則り、伊織を含む風紀委員は全員何かしらの自衛武器を携えることを許可されている。母方の祖父が剣道道場を運営しており、幼いころから手ほどきを受けていた伊織は、大会に出場すれば優勝候補間違いなしと称されるほどの実力者だ。とある家庭の事情で大きな大会への参加は辞退しているものの、常時装備する武具に木刀を選択するあたり、剣術へ向ける思いは決して軽いものではない事がわかる。

それはともかく。

木刀を特注のホルダー付きベルトに納めつつ詳しい事情の説明を目で促してくる幼馴染に頷きを返し、言葉足らずだった先の発言の捕捉を始める海斗。

曰く、「いつも通りにあの場所で昼飯を喰い終わって教室に向かっていた途中、中庭で色男と遭遇した」とのこと。

色男とは誰だろう? と首を傾げるも一瞬、海斗のさほど広くない交友関係の中でその愛称と合致する人物の記憶を引き出し、桐生のことだと納得する。

 

「で、だ。妙にカッコつけたポーズを決めながら、こんな風にほざいたんだ」

 

『葵をオカズに出来た俺に、もはや隙はない! ここからは俺のターンだァ! いいかね高宮クゥン! あいつは絶対にィ……渡さんッ!』

 

なれない宣戦布告? で、とりあえずそれっぽい台詞を並べてみた……みたいな印象しか受けない宣言を放った桐生。

効果音は多分『ドッギャァアアアアアン!!』。

完全なお馬鹿さんへ変わり果てた知人の姿に呆然とする海斗に何を思ったのか、勝ち誇ったようなドヤ顔になった桐生は両手を腰に当てて足を交叉させながら歩いて立ち去って行った。

腕を組み、くいっくいっ、と腰を振りながら歩く姿に吹き出してしまいそうになった海斗は悪くない筈だ。

 

「いや……その、なんていうか……一周回ってお馬鹿さんになってないか? 彼、成績はそんなに悪くなかったハズなんだけど……」

「ん~、なんというか前と雰囲気が変わってる気がするんだよな。もしかしたらそのせいだったのかもな」

「そうなのか?」

 

伊織は葵達と同じクラス、風紀を乱す問題児としてマークされている訳でもない桐生の事は又聞き程度でしか知らないようだ。

 

「いや、あくまで勘だけどな? あいつ――女を知ったんじゃね?」

 

廊下が凍りついた。空気も、生徒すらも瞬間冷凍されたかのように。

 

「ほら、よく言うだろ? 初めて女を知ったロストチェリーボーイは包皮をキャストオフしちまうって」

「言わないぞ!? それを言うなら一皮剥けた、だ! わざと間違っただろう、君!」

「オブラートに包んだつもりだったんだが……」

「どこが! え、どこが!? ほとんど直球、ドストレートだったよっ! まったくもう! どうして君はそうなんだっ!」

「……地、出てるぞ」

「っ!? は、はわわ……コホン! と、とにかくっ、不謹慎な発言は慎む様にっ」

 

頬を朱色に上気させ、人差し指を立てて海斗の胸をトントンつつく。

中性的な魅力をこれでもかと併せ持つ容姿から乙女なリアクションを繰り出されたため、それを目の当たりにした女子達の乙女回路が一瞬で過剰運動(オーバーロード)してしまったようだ。ひそひそと何事か囁き合っている。

 

「か、皮!? それに剥けたってナニが!?」

「ま、まさか……お互いの『バッキューン♡』を剝かせあったりしてるのかしら!? しているのかしらぁっ!? ――くはあっ!」

 

大事な事なので2回言った乙女は、速攻で鼻血の海(自家生産)へと沈み込む事になったのは言うまでもない。

 

「いやぁああああああっ!? 私達の伊織様が野獣の毒牙にぃいいいいっ!」

「早まっては駄目です伊織様ぁ! 固く反り返った荒ぶる紳士(ジェントルメン)で腰砕けにされちゃいますぅうううっ!」

「いえ、ちょっと待って! むしろここは伊織様が攻めのスタイルをとられるのはどうかしらっ!?」

「清廉潔白な伊織様が言葉巧みにケダモノを嬲り、弄び――」

「蝶が蛹から羽化するかのように一枚一枚理性と言う名のヴェールを剥ぎ取られて――」

「最後には逆上したケダモノにお返しとばかりに押し倒されて――」

 

ゴクリ……。唾を呑む音がやけに大きく響く。

頬に手を当てながら瞳を期待の極彩色(7色に輝く工場排水的なシロモノ)で染め上げる。

全方位から突き刺さる物々しい圧力に気圧されたかのように、怯えの色が顔に浮かんだ伊織が後ずさろうとして、後ろにいた海斗にぶつかった。

ちょうど海斗の腕の中に背中から飛び込む様な形で。

 

「はわっ!?」

「ちょ、大丈夫か?」

「ぁ……うん。ありがと……ぅ」

 

反射的に伊織の腰に腕を回して倒れないように支える海斗に、身長的な関係で見上げる形になった伊織が上目使いで――若干はいかむような微笑みを浮かべながら――お礼を言う。

そんな同性の幼馴染としては些かどうなの? 的なやり取りをナチュラルで行われた2人を前に、心の一部――俗に、道徳観とも呼ばれるあたり――が賞味期限切れ状態な淑女の皆様方のソウルハートがスパーキングッ!

この瞬間、彼女らの脳内メモリーに“海斗×伊織”のカップリングが『イチオシ!』 の看板と共に永久保存されることとなった。

咆哮じみた歓声をあげる女子生徒達。どう収拾をつけるべきか、未だに海斗の腕の中にすっぽりと納まっている伊織が本気で頭を抱え始めた瞬間、

 

「お静まりなさい!」

 

凛然とした威圧感を宿した少女の声が廊下に響き、皆の視線が一点に集まる。

黄金色に輝く髪をたなびかせながら、現れた女子生徒の姿を確認し、彼女の歩みを阻んではならないとばかりに自ら脇に寄り、道を開ける。

コツコツコツ……と、まるでヒールで歩いているかのような足音を響かせながら現れた少女は、縦ロールにした煌びやかな長髪と原形をとどめない位改造が施された真っ赤なロングスカートタイプの制服を誇るかのように胸を張り、腰に手をあてた。

その姿はまるで映画祭に招待された大物女優の如き風格を纏う。

彼女こそ、学園の有名人ランキングトップ5に数えられる大物。

某有名下着販売ショップの跡取り娘にして、一部の少女達から絶対的な支持を集める一大財閥の主。名を――

 

「腐乱先輩?」

「そう、ワタクシは腐乱(ふらん) 蝶歌(ちょうか)っ! 『熟した乙女の会』の代表にして、はるか天上にて燦然と光輝く太陽の如き美貌と気高き志を胸に抱く乙女達の先陣に立つカリスマ性を併せ持って生まれてしまった英傑っ! そう……まさに天から選ばれた世界最高の美少女なのですわぁっ! 皆さんは、親しみを込めて『腐蝶様』と呼んで戴いてよろしくてよぉ! よろしくてよぉおっ!」

 

『うぉおおおお~~っ!』 と言う雄叫びと賛同の拍手喝采で廊下が支配される。

と言うかうるさい。

 

「まためんどくさいバカが来た……」

 

げんなりと肩を落とす海斗のおでこをよしよしと撫でる伊織。

いろんな意味で苦労人な幼馴染の慰め方を熟知している伊織だからこそ、海斗もされるがままおとなしくなっている。

 

『――ッ!?』

 

その光景を目の当たりにして、蝶歌を筆頭に一部女子の眼光が光り輝く。

効果音にしたら『ギュッピ――ン!』 的な感じで。

 

「薔薇よ! 皆さん、薔薇をお持ちになって!」

「バックに舞い散らせるのですわね!? 了解しましたっ!」

「腐蝶様! カメラのセッテイングが完了いたしましたわ!」

「高画像デジタルハイビジョン対応型です!」

「流石ですわね皆さん! それでは、温か~い眼差しで見守って差し上げようではありませんか! 具体的には保健室の奥から2番目のベッドにINするまでっ!」

「お、奥から2番目ですかっ!? そっ……そこは、伝説のにゃんにゃんゾーン! カーテンと言う衣で囲まれた純白のシーツの上で情熱的なボーイズがBack HoleをSplash! すれば永遠に愛し合えるという伝説の聖域!」

「聖域を制した殿方の名は我ら『熟した乙女の会』の部室にある石碑に名を刻まれると言いいます……!」

「そう……伝説に肩を並べた彼らこそ、真の英雄! まさしく――『穴兄弟(ホーリングブラザーズ)』ッ!」

『ホーリング! ホーリング!』

「ホーリン……って、あら?」

 

掛け声と共に拳を突き上げて沸き立つ淑女? の輪の中心にいた腐蝶が気づいた時には、海斗と伊織の姿は跡形も無く消え去っていた。

 

「あらあら、ワタクシの目を盗んで逃げ遂せるとは、流石はワタクシの認めた殿方。ふふっ、ですが甘い、ストロベリーすぎますわ。――皆さん! ただちに保健室へ向かいますわよ! きっと今頃、駆けこんだベッドの上で『くんずほぐれず出たり入ったりな淫靡的行為』に励まれているに違いありません! ドアの隙間からこっそりカメラを差し込み、温かく見守ってさしげるのです!」

 

蝶歌の先導の元、お前らどこの特殊部隊だ? とばかりに理路整然とした隊列を組んで、保険室のある1階へと突貫していく『熟した乙女の会』メンバー。

廊下でたむろっていた大多数の女子生徒の姿が消え去ったあたり、この学園はいろんな意味で駄目になっていると言わざるをえない。

 

「……どうして保健室の一択なのか問い詰めたい」

「まあまあ、蝶歌のアレは何時もの事じゃないか」

 

蝶歌達が立ち去り、静かになった廊下で1枚だけ開かれている窓。

その外側に設置された落下防止用の足場に隠れている海斗がつかれたように呟く。隣に腰を下ろす伊織は困ったような苦笑を浮かべつつもまんざらでもなさそうに見えるのは果たして気のせいなのだろうか。

 

「もう、さっさと体育祭でもやって、溜めこんだエネルギーを発散してくれねぇかな……」

 

男と男のカップリング……所謂、BLをこよなく愛するあまり、勉学が疎かになって同学年になってしまったもう一人の幼馴染(・・・・・・・・)の行動に頭を抱える。

昔からなにかと海斗と伊織をくっ付けようと画策してきた彼女の起こした騒動に巻き込まれた身として、切に願う。

深々と溜息を吐く親友の頭をなでなでしつつ、伊織は今年の体育祭も荒れそうだな~と確信じみた予感を抱くのだった。

 

 

――◇◆◇――

 

 

同時刻、保健室前にて。

 

「あら、誰かと思えば竜ヶ崎さんではありませんか。ごきげんようですわ」

「――ぅげ!? ふ、腐乱部長……」

「ノゥ! 以前にも申し上げたではありませんか! 水泳部部長も務めるこのワタクシのことは、親愛と尊敬を込めて『ご主人様(ふちょうさま)』と呼ぶようにとっ!」

「嫌ですよ!? でいうか不吉な単語口走りませんでしたかっ!?」

「野暮なつっこみはノンノンですわ。まったく、しょうがない子ですわねぇ……これはまた、至高の映画鑑賞にご招待して差し上げなければ」

「絶対に行きませんからね、あんなもの!? 顔を桐生とかの顔写真でコラったボディビルダーみたいな俳優が出てるBL映画なんてっ」

「今回は海斗さんと伊織さんをコラってみましたが?」

「何やってんですか!? 勝手に私の(・・)を汚さないでくださいよっ!?」

「……ほほぅ? 『私の』、ねぇ……? これは詳しく事情を聞かざるをえませんわね――って速!? 逃げ足速ッ!?」

 

突然、

 

「ち、ちちち違うんです――っ!?」 

「こらあっ、お待ちなさい! ついでに、スカートをめくり上げて下着から片足を抜き、四つん這いになりながらお尻をわたくしへ向けるのです!」 

「なにする気ですかあっ!?」 

「ナニしてあげるに決まっているでしょう!?」 

「ピンクっぽい棒状の物体をわし掴みにしながらキレてんじゃないですよぉおおおっ!! いっ、イヤァアアアアアア!? 海斗くん助けてぇえええええっ!!」 

 

と絶叫しながら逃げ回る学園アイドルとマスターオブBLの追いかけっこが繰り広げられ、あっけにとられる生徒達。一部、腐蝶の発言に妄想心を駆り立てられてしまったために股間の紳士を両手で押さえながらしゃがみ込んでいく男子生徒に、ドブネズミを見るかのような冷たい視線を向ける女子生徒達。そして、冷ややかな視線に、「じ、自分も……蔑んで♪」 とハァハァしながら物陰で覗き見る教師(しかも複数)。

教師、生徒問わずに変人が集まると某掲示板で有名な学校の何とも騒がしい日常が、体育祭前日が訪れるまで続くことになったのは言うまでもない。

 

 

――◇◆◇――

 

 

その日の晩。

リビングのTVから聞こえるニュースキャスターの声をBGMに、キッチンで夜食を用意する海斗の姿があった。嫌な思い出を払拭しようと鬼気迫る表情で包丁を振るう姿は、ちょっぴり切ない。

林檎にオレンジ、キウイや苺などを手際よくカット。

昨夜に用意して冷蔵庫の中で寝かせていたタルト生地で土台を作り、オーブンでこんがりと。

タルトが焼き上がるまでの間に、葵の好みであるアーモンド風味のカスタードクリームを作り、焼けた生地の中へたっぷりと注ぎこむ。

その上から甘さ控えめな生クリームを敷き詰め、いったん冷蔵庫の中へ。

生地が冷めた所でフルーツを盛りつけ、艶だしと風味を守るナパージュで表面を覆えば――

 

「甘さ控えめ、夜食でもいける特製フルーツタルトのご完成~♪」

 

キッチンナイフで切り分け、一切れずつ小皿に盛りつけてお盆に乗せる。

ホットココア入りの専用マグカップ(それぞれ、デフォルメされた仔犬と仔虎がプリントされている)も一緒に乗せて、葵が籠っている部屋へと向かう。

学園祭で使われる男子用の仮装衣装の裁縫中なのだ。

全校の女子生徒に宿題として課せられたノルマ、1人1着をクリアするため、葵も連日夕食後に作業部屋で黙々と裁縫に勤しんでいた。

夕食の時に、今晩中には完成できると上機嫌だったので、ねぎらいも兼ねた夜食の差し入れを用意した訳だ。

部屋の前に到着すると、片手でお盆を抱えながらノックする。

もしかしたら自分の作った衣装を本番で海斗が着るかもしれないと言う理由で、入室禁止を言い渡されてしまっている。

一度、悪戯半分で中の様子を伺おうとした事もあるが、僅かに開いたドアの隙間を覗き込んだ瞬間、狙いすましたかのように投擲されたカッターナイフで頬を切られてからは、出来るだけ近寄らない様にせざるを得なかった。

だが、部屋に籠る前に「海斗くんっ! お仕事完了のご褒美に、何かおいしいの所望するよっ!」 と上機嫌で要求してきたのだから、流石に前回の二の舞はないと思いたい。

大丈夫だよな? また刃物を投げつけられたりしないよな? と内心ビクビクしながら返事を待っていた海斗に肩透かしを食らわせるかのように、部屋の中から「うぁ~~い。入ってい~よ~」と間抜けな返事が返ってきた。

ん? と首を傾げながらドアを開いてみると、布切れや装飾品候補として用意していたらしい小物がそこかしこに散らばっている部屋の様子が視界に飛び込んできた。

声の主は仮眠用のシングルベッドの上で仰向けに寝そべり、作業着代わりのシャツとスパッツというあられもない格好でごろごろしていた。

顔に疲れの色が見えるものの、何かやりとげた風に見えるあたり、満足できる一品を仕上げることが出来たようだ。

 

「よ、ご苦労さん。御所望のスイーツを持ってきたんだが……食べるか? それとも風呂入って寝るか?」

「た~べ~る~」

「寝転がったまま何言ってんだか。ほれ、後で片付け手伝ってやるから、せめて身体を起こせ。横になったまま食べると太りやすいって言うぞ」

「うぅ~……、お腹へったよぉ~。でも、疲れて起き上がる気力も無いのです」

 

うつ伏せになったまま上目使いで海斗を見つめる葵。

表情から、葵がどうして欲しいのか読み取った海斗が溜息をひとつ。

足場も無いほどに散らかった床の上を慎重にベッドへ近づくと端に腰を下ろしながらお盆をテーブルに置く。

さらに寝そべったままの葵の身体の下に腕を差し込むと、軽々と抱き上げて己の膝の上に乗せた。

この間のプールで遊んだウォータースライダーの時と同じような体勢だ。違うのは、2人が向かい合うような体勢であることか。

海斗の腰の上に正面から跨った葵の膝がベッドを軋ませる。腕は海斗の頭の後ろに回されて、彼の顔を胸元に引き寄せようとしているかのよう。

困ったような表情を浮かべる彼の首筋に唇を這わせ、子猫が甘えるようにキスマークを印していく。くすぐったさに目を細めつつ、葵の背中に回された腕に力を込める海斗。連日の作業で疲労が溜まっているのは事実なようで、頭の後ろに回された腕に力が籠っていなかった事に気づいたからだ。

葵の背中を支える片手で優しく撫でつつ、もう片方の手でフォークを掴んで一口サイズに切り分けたタルトを突き刺す。

瞬間、ふわっ、と部屋の中に舞った芳ばしくもフルーティな香りに、葵の鼻がヒクヒクする。

 

「よ……っと。ほれお姫様、あーん」

「あーん……んぅーっ! 美味しいよぉ」

 

差しだされたタルトに、ぱくんっ、と効果音が聞こえてきそうな勢いで飛びついた葵。瞬間、ぱぁああっ♪ と花が咲き誇るような笑顔を浮かべ、今度は自分から口を開いて促してきた。無防備な表情を至近距離で見せられて、一瞬だけ海斗の鼓動が跳ね上がってしまった。思わず視線を逸らしてしまいながら、呼吸を深くして落ち着こうとしている海斗の苦労など微塵も気づいていない当の本人が、今度は声に出して、

 

「あーん、だよ」

「おいおい、ここはお返しに食べさせてくれるシチュじゃないか?」

「よそはよそ、ウチはウチなんだよっ」

「はいはい。そんじゃ、もう一回……あーん」

「あー……んぅうーーっ! やっぱり海斗くんのデザートは格別だよ~♪」

「お褒め頂き光栄の至り……ってか?」

「ぶっ! 似合わないよぉ~」

「ほっとけぃ」

 

タルトを葵の口へ運びながら、時折意地悪するように腰に回した指で背筋を擽ってやる。

その途端、葵は「ふにょわっ!?」 と素っ頓狂な悲鳴を零しながら、口の中のタルトを零さない様に堪えつつ、悶えるのだ。

そしてそれを呑み込んだ後は、頬を膨らませながら海斗に文句を言うのがお約束(ついでに引っかいたり、噛みついたりする)。

最後に、海斗がおざなりに謝ると、瞬く間に仲直り。そういう自分たちに笑い合いながら、なんということも無い話題でゆったりと談笑する。

こういう自分達だけの時間を何よりも楽しんでいる己が変だとは、2人とも思わない。

理由なんてどうでもいい。今、こうして一緒にいることが何よりも『当たり前』なのだから。

彼らの様子を長距離望遠鏡で覗き見ていたマッド&黒服~ズまでもが、思わず笑い合ってしまう位に微笑ましい雰囲気がそこに在った。

とは言え、ほとんど向かい合って抱き合うような体勢で俗に言う『食べさせ合いっこ』などをしてしまえば、当然、それなりの反応を起こしてしまうのが人間と言う生き物だ。

エプロンをつけたままの海斗の胸に押し付けられ、ぐにゃりと形を変えている乳房の先端が少しずつ硬さを増し、スパッツの一番奥の部分に水気を帯びた真っ直ぐなスジが浮かび上がる。

ズボンを押し上げる肉茎がビクン、と脈動し、先の方が太ももの内側に擦りつけられるたび、双方へ痺れる様な甘い快感が送り込まれていく。

タルトを運ぶフォークの動きがだんだんと遅くなり、ピンク色に上気して潤いを帯びた唇から、蕩ける様に熱い吐息が溢れ出す。

葵は海斗にしがみつく腕に力を籠め、股間の一番敏感な部分を擦りつける様に腰を前後に揺すってしまう。

クネクネと魅惑のダンスを踊る葵の虜となってしまったのか、思わず快感の声を出してしまいそうになった海斗が慌てて口元を抑える。

経験豊富な身として、このくらいの誘惑で陥落してしまっては面目が立たないのだ。けれど、ちょうどタルトを運んでいた最中だったために、フォークに刺さっていたそれが葵の胸元に零れてしまう。

 

「ひゃん!? も、もぉ……」

 

驚き、冷たさを感じる胸元に目を落とす葵。

幸い、彼女にフォークが刺さる様な事態は避けられたらしかった。

けれど、零れたタルトのフルーツが彼女の胸元へ落としてしまったらしく、襟首から覗く豊かな乳房の丘を滑り落ちて行こうとしていた。

慌てた葵が二の腕で乳房を挟み込むことで、フルーツの落下は止めることが出来たが、海斗の視線はフルーツが納まった胸の谷間に捕らわれてしまう。

左右から押し上げられた乳肉がたわんで盛り上がり、海斗の方へ突きだされるような状態に陥ってしまったのだ。

まるで、「私を……食べて?」 と誘惑されているかのような錯覚を覚え、海斗の鼓動が大きく跳ね上がる。もっとも、当の本人は自分の恰好がどう見えるかなど微塵も気づいていない様で、零れなかったことに安堵の息を吐きつつ、乳房の下に手を回してさらに上へと押し上げ、谷間に収まったベリーやカットキウイを器用に舌ですくい上げ、食べてしまった。ごくん、と唾を呑み込んでしまった海斗の反応を誰が攻められようか。

ジェル状のナパージュが付着した自分の乳房をチロチロと舐める葵は、色っぽいとか魅力的とか言う次元に収まらない。

未だ発展途中に在って尚、成熟した女の魅力を有する彼女に欠けていた、異性を惑わせる色香……フェロモンとでも呼ぶべき物が備わり始めている最近の彼女だが、海斗に対してのみ警戒が緩いらしく、こういった無自覚の艶姿を曝け出してくる。しかも、他人の目がある所では相手の反応に気づけない鈍さを持っているくせに、海斗と2人きりの時だけは『そういう感情』に鋭敏になるから困り者だ。

実際、今の彼女も、まさにそうなのだから。頭の上に普段乗っかっているピロードの利いた“わんこ耳”の代わりに、小悪魔的なトンガリ触覚を生やした葵が、海斗の耳元で甘く囁いた。

 

「海斗くん? 何なら……食べてみる?」

 

それは理性を蕩けさせるほどの破壊力と魅力に溢れた甘美な罠。

言いながら、二の腕でなく両手で乳房を持ち上げつつ、胸の谷間に出来たナパージュの池に浮かぶ苺を強調する。

思わず柔らかなふくらみに顔を埋め、葵の香りと甘さを秘めたソレにむしゃぶりつきたい衝動に駆られ、本人の意志に関係なく肩が跳ね上がってしまう。

下肢の一点に血流が集まり、脈動しかけるのを抑えられない。

いつになく積極的な葵は、瞳に挑戦的な意志を乗せて甘えてきた。それでも、表情の節々から羞恥心が見え隠れするあたり、何かの雑誌に掲載でもされていた『彼氏を悦ばせるテクニック』を実践しているといったところか。

海斗は反らしていた視線を彼女の胸元に戻し、双丘を滑り落ちたナパージュの描く河路と谷間でせき止められている苺を見下ろすと、

 

「ん。それじゃあ……いただきます」

 

誘惑に乗せられるのも悪くない。

胸中で自分へのいい訳を零しながら、持ち上げられた乳房へ唇を落とし、苺を咥えた。

甘酸っぱい苺を咀嚼しながら、舌を覗かせて残ったナパージュも舐めとっていく。

 

「ひゃんっ!? も、もぅ……くすぐったいよぉ。――んぁ……っ♪」

「ン……れろっ、ン……まだ、残ってるだろ……?」

 

もう胸に落ちたフルーツは残っていない。それでも海斗は舌の動きを止めない。

ほんのり汗をかいていた彼女の香りが鼻孔をくすぐり、チロチロと動く舌が甘露の如き刺激で包まれる。

彼女の腰を抱いていた腕を背中に回し、乳房をむしゃぶりつく様に舐め続ける。一舐め毎に理性が溶かされるのを頭の端で理解しつつ、それでも止めることが出来ない。

 

「あっ、ああ、……っふぁ! あ、ン……ッ! か、かい、と……く――ら、らめ、ぇ……」

 

彼の頭を抱きしめながら、葵が息も絶え絶えに懇願する。

彼に求められるのは嫌じゃない――て言うか嬉しい――が、そう言う行為はまだまだ恥ずかしいお年頃。

ちゃんと心の準備をさせてくれないと……恥ずかしいのだ。なんというか……いろいろな意味で。

 

――もちろんその中には、海斗を誘惑するなんて大胆な事を仕出かした自分自身へ弁解する時間も含まれているが。

 

興奮で赤く染まったお互いの顔を見つめ合いながら、乳房から海斗の口が離れる。けれど、身体を離すような真似はせず、腕を相手の背中に回したままで。

視界に愛しい相手のみを入れながら、どうにか呼吸を整えられた葵が口を開く。

 

「ねぇ、海斗くん」

「んー? どした?」

 

疑問形でこそあったものの、次の言葉は大体予測できていた。故に、葵を抱きしめる腕に込めた力を緩めないまま、視線で先を促す。

 

「えっち……しよ?」

 

はにかみながら告げられたのは、彼女らしい可愛いおねだり。真っ直ぐ、照れくさそうに微笑む葵に我慢できず、これが返事だと言わんばかりに唇を奪う。

一見すると乱暴なようでいて、そのくせ、愛しみに満ちた優しくも甘いキス。お互いを見つめ合いながら唇を重ね、舌を絡み合わせ、唾液を混ぜ合わせる。

零れ落ちる吐息は蒸気を生み出し、甘美な電流の如き官能が、2人の脳に快感を送り込んでいく。

唇を重ねながら、葵は海斗の手を引っ張って乳房へと誘う。

薄手の生地越しに巨乳と言って差し支えない乳肉の柔らかさと弾力を感じ、唇を離した海斗が、ほぅ……と感嘆の声を上げてしまう。

何度触れたのかもわからない。だが、プリプリとした極上の感触は一生飽きがこないと断言できる。

やわやわと乳肉を揉みながら、腰を支える手も動かしてスパッツに包まれた乳肉を掴む。

すべすべとした触感は何とも新鮮で、ついつい指に込める力が強くなってしまう。

 

「ん……っ! ちょ、ちょっとだけ痛いかも」

「う、悪い。……これくらいはどうだ?」

「はっ、あ、ふぅ……ん……」

 

コクリ、と了承の意を込めた頷きを返した葵が、海斗の頬に両手を添えて唇を重ねる。

果汁のリップで覆われた葵の唇はさっきよりも甘酸っぱい味がした。

キスを重ね、乳房を愛撫し、尻肉を揉む。

唇を重ねる間隔がどんどん開き、葵の呼吸と喘ぎ声を零すスパンが早まっていく。

手のひら全体で乳房を押し潰す様に愛撫し、首筋を舐めながら指の動きがどんどん速まってしまう。

 

「そ、そんな風に……はぅん! あ、さわっちゃ……ぁ」

「……駄目か?」

「だ、ダメ……ぇ。き、気持ちよく……なっちゃうから……ぁ」

 

自分だけ達してしまうのがお気に召さないようだ。

一緒に気持ち良く……それが葵の望み。

 

「――プッ」

「むぅうっ! い、今、笑ったよね!? 笑ったでしょお!?」

「くっ、くく……お、お前、どんだけ俺を夢中にさせるつもりだよ。――わかった、わかった。じゃあ一緒に……な?」

「……ふん、だ。――ぁ」

 

むくれる葵を抱き上げてベッドに横たわせると、背後から横抱きにするように海斗もベッドに倒れ込む。

ちょうど葵の身体を背後から抱きすくめる様な形だ。

脇腹からへそに掛けて優しく撫でつつ、肌の上に指を滑らせてスパッツの中へと差し入れる。

すると、指先に水気としっとりと濡れた陰毛の感触に辿り着き、僅かに驚いた。

 

「ちょ、お前、下着穿いてないのか?」

「す、スパッツは下着のラインが出ちゃうから穿かないのが普通なんだよっ」

 

普段から『ぱんつはいてない』みたいな言われ方をして、思わずつっこんでしまう葵。だが、憤る反論はすぐに切なげな吐息へと変貌してしまった。

肌に密着したスパッツの中で濡れすぼった秘唇は、海斗の指を待ちかねていたとばかりに受け入れる。

くちゅり……、と淫靡な水音と共にさし込まれた指先が秘肉を弄り、解していく。

膣ヒダがグネグネと蠢き、受け入れた指を離すものかと締め上げてくる。

指を出し入れしつつ、膣の中をかき回す様に動かして快感を送り込んでやると、葵の背中がびくっ、と震えた。

背中を反らしそうになるものの、後ろから海斗に抱きしめられているからそれも出来ない。

人さし指を噛んで淫蕩な声を聞かれない様に堪えようとするものの、海斗の攻めは収まる兆しを見せなかった。

指の差し入れは激しさを増すどころか、もう片方の手も秘所へ伸ばされ、陰毛に隠れた肉芽を刺激してきた。

 

「~~~~ッ!?」

 

咄嗟に両手で口元を抑えつつ懸命に耐える葵の反応に興奮を覚えたのだろう。海斗の愛撫はより激しく、より大胆なソレへと昇華されていく。

太ももの奥の部分を中心に、愛液の染みが広がっていくスパッツをずりおろし、片膝を持ち上げる。

開かれていく太ももの間に粘り気を持った愛液が橋を作り、室内灯の光に照らされて、何とも淫靡で美しい光景を描き出す。

 

「あ……、あっ……」

「葵……すごく、可愛いぞ。それにすごく……えっちだ」

「やっ、やあ! おっ、おバカぁ! へんな事言わないでよぉ!」

 

あまりの恥ずかしさでいやいやと首を振る彼女の頬にキスを落としつつ、海斗はいきり立った分身の先端をとめどなく愛液を溢れ出す秘唇へ押し当て……一気に膣内へ差し入れた。

 

「あ……っ! く、ふぁ……あぁぁあああ~~っ!」

 

膣を満たしていく圧迫感に、葵は浮かべていた羞恥の表情をひっこめ、かわりに淫蕩な色を浮かべあがらせた。

我慢していた淫靡な喘ぎ声を漏らしてしまったことも気にせず、湧き上がる官能の荒波に身を委ねてしまう。

 

「はぁ……あっ、ああっ……あ、は、挿入(はい)って、くる……ぅ。いちばん、深いトコにぃ……!」

 

途切れ途切れの声は蕩ける様な快楽を感じている証。海斗は彼女を突き上げるかの様に腰を動かして、戦慄くほどに心地良い締め付けの膣肉を堪能する。

 

「ひあんっ! くは……んああっ!」

「っく……!」

 

海斗がつき上げる度に葵の腰が動いて、妖しくも淫靡な……まさに、蠱惑的な刺激と快感を味あわせてくれる。同時に、葵の敏感なトコロを的確に刺激してくる猛々しい肉茎で突かれる度に、言葉に出来ないほどの官能と衝撃が彼女の身体を駆け巡っていく。

後ろから抱きしめる体勢のために彼女の顔を見ることは出来ないが、涙と喘ぎ声を零しながら悶えている彼女の艶姿は想像に難しくなく、海斗の分身が興奮と期待で限界以上に反りかえった。

葵の膣から蜜液でふやけてしまった指を引き抜くと、先走りが溢れ出し始めた亀頭を秘唇に擦りつけつつ、彼女の耳元へ口を寄せて囁く。

 

「葵……挿入(いれ)るぞ?」

「……ん」

 

こくん、と恥ずかしげに頷く彼女の耳たぶを甘噛みしつつ、片膝を抱き上げたまま、最奥まで肉茎を押し入れた。

 

「っ、あ、……ああうっ!」

 

甘い声をあげながら腰をくねらせる葵。

膣内を圧迫する存在感を持った海斗の分身を幾度となく受け入れた彼女のソレは、勝手がわかっているとばかりに膣ヒダを蠢かせ、子宮口まで一気にいざなっていく。

入れ替わりに溢れ出した蜜液がベッドに流れ落ちていき、小さくないシミを作っていく。

鼻孔を擽るのは甘いミルクと爽やかな柑橘類の香りが混ざったような、心地良い匂い。耳たぶから頬へと舌を這わせる海斗の唇に、頭部を振り返らせた葵の唇が重なりあう。火照っていくお互いの身体、シンクロする鼓動と息遣い。快感と興奮で呼吸は荒いものへと変わり、海斗に絡みつく葵の腕に力が籠る。

腰の動きは激しさを増し、2人の視界に飛び散る蜜液と先走りの混ざり合った物が映り込む。

ブチュッ、ブチュッ、と響く淫靡な水音に海斗は興奮を覚え、それに比例するかのように腰のストロークが大きく激しい物になっていく。

奥の奥、子宮口を幾度もノックされる快楽に喘ぎ声を抑えられない葵は大きな声を響かせながら腰を、全身を激しくくねらせる。

 

「んぁあああっ! はっ、ひゃ、ひゃぅうんっ! ら、らめ……はっ、げ、し……! こ、こんなのぉ……だ、だめぇ……!」

 

ガクガクと痙攣を起こしたかのように身体を震わせた葵が、何かを求めるように両手をバタつかせた。

片手はシーツを千切れんばかりに握り締め、もう片方の手が乳房を鷲掴みにしていた海斗の手に重ねて指先を喰い込ませてきた。

理性が飛びかけているのでリミッターが解除されたのだろう、普段の彼女では想像も出来ない鋭い痛みを齎す。

思わず手を離しかけた海斗だったが、何かを訴える彼女の表情から何が言いたいのかを即座に察する。

 

「手、握ろうか?」

「……うん」

 

手のひらを重ね、指を絡ませるように手を繋く。それだけで、お互いの心が繋がり合えたように感じることが出来た。

迷子が母親と再会できて安堵するかのような表情を見せた彼女に、海斗は『自分はここにいる』のだという想いを乗せて、律動を再開した。

 

「あふぅっ!?」

 

挿入のたびに亀頭のエラがザラザラした膣ヒダを引っかき、膣肉をかき回す。興奮の昂りに呼応して強まる締め付けに目を細め、痺れる様な快感を味わいながらも腰の動きを抑えることは出来ない。射精を促す膣ヒダの煽動は肉茎を葵の一番大切なトコロへと誘い、逃すまいと締め上げてくる。

精子を渇望するかのようなその動きは海斗の射精を促し、子種をぶちまけろと囁くかのよう。

突き入れられた亀頭部分が子宮口に達し、ノックするたびに、下腹部を押し上げられるかのような刺激が奔る。

重ねた手のひらは汗でぐっしょりと濡れ、気を弛めると滑って放してしまいそうになる。ガクガクと身体が震え、際限なく叩き込まれる快感に耐え続けていた葵だったが、ついに限界が訪れてしまう。頭の奥でバチバチと電気が奔る。視界が点滅し、空に身を投じたかのような浮遊感が全身を蔽う。

一瞬の静寂。だが、葵は理解していた。この次に、なにが襲い来るのかを。

 

「ぁ、ああ……! ――っあぅああああああああっ!!」

 

最初に感じたのは甘痛い疼き。ジンジンとした小さな波だったそれが、瞬きも出来ぬ間に怒濤の衝撃となって官能の波を引き寄せてきた。

子宮が精液を求めて疼き、葵を貫いた海斗のソレを逃すまいと、バキュームのように吸い上げる。膣肉のみならず全身が痙攣を起こし、これから味わえる快感の予感に歓喜する。そして――その時は訪れた。

 

「クッ!?」

 

先に限界を迎えたのは海斗だった。

亀頭に浴びせられたのはドロリとした熱い液体……精子を受け入れやすくするために分泌される子宮頸管粘液。

射精をギリギリのところで堪えていた海斗にとって、敏感な先端への不意打ちはトドメとなる一撃だった。

己が分身を捉えたまま離さない葵の膣肉に促されるまま、限界まで圧縮された精液を打ち放つ。燃えるように熱い飛沫が子宮口を撃ち抜き、大きなうねりへと至った快感が葵の背筋を駆けあがる。目の裏で点滅していた火花がはじけ飛ぶかのような衝撃が彼女を襲い、僅かに残された理性を虚空の彼方へと消し去っていった。

 

「――――ッ!?」

 

背中を反らし、海斗にしがみつきながら声なき艶声を叫ぶ。ここしばらくご無沙汰だったせいか、やけに量の多い射精はまだまだ終わる兆しを見せず、甘い快感と共に撃ち出される精子が子宮に染み込んでいくたびに、蕩けそうな熱と快感が葵を責めたてる。

 

「……っぁ……あつ、い……熱い、よぉ……」

 

射精は終わったと言うのに、情欲に燃える子宮が精液の来訪を喚起するかのように蠢き、膣肉が一滴も逃すまいと肉茎を揉み込むように締め付けてくる。

ぼんやりと焦点の合わない視線を彷徨わせつつ下腹部を優しく撫でる葵を抱きしめながら、荒い呼吸を繰り返す海斗の手が彼女のソレと重なり合う。

少しでも気を弛めるとこのまま意識が飛んでしまいそうだ。完全に脱力しきった葵は、小さな寝息を立て始めている。

どうやら連日の作業と激しいえっちの反動で夢の中へ旅立ってしまったようだ。

 

「葵。……葵? 寝ちゃったか?」

 

自分もこのまま眠りたいなという願望を頭を振って振り払いながら、ようやく締め付けが弱まった膣内から肉棒を引き抜き、身体を起こした。

その際、ゴポッ、という生々しい音と共に、葵の股間から白い液体が溢れ出してきたのを見なかった事にしつつ、部屋の中を見渡す。

裁縫道具やら布の切れ端やらで散らかったままの床、食べかけのフルーツタルト、脱ぎ捨てられた――ついでに汗とか愛液でぬれぬれな――衣服。

おまけに、はだけたTシャツ1枚という官能的なお姿の眠り姫。

 

「さて……どうすっかな~……」

 

頭を掻きながら、葵を起こさない様に小声でぼやく。

明日は平日で授業も普段通りある。

しかも、体育祭の準備期間に突入中と言うこともあって、いつも以上に混雑する食堂を避けるために昼の弁当も用意しないといけない。だが困った。

こんなに激しい疲労を感じるほどやらかしてしまった以上、明日の朝、普通に起きられる可能性は極めて低い(事実、葵を抱いた翌日は大抵寝坊してしまっている)。けど、部屋の片付け……せめてタルトの後片付けくらいは済ませておかないと不味い。スィーツだけに。

 

「ったく、幸せそうに寝やがって……困ったお姫様だな。――ま、あんだけ頑張ったみたいだし、俺も頑張りますかね、っと」

 

へにゃっ、とだらしない笑顔を浮かべながら楽しい夢を見ているらしい葵の頬にキスを落としながら、気怠い身体に鞭を打って後片付けに勤しむ海斗くんなのであった。

 

 

 

 

・おまけ

 

翌朝。爽やかな日差しと小鳥達の囀り。おまけに慣れ親しんだ目覚まし時計のモーニングコールをガン無視して惰眠を貪る虎さんと、彼の腕の中に捕らわれたわん娘の姿があったそうな。

 

「ん~……くぁぷ」

「ふひゃぁん!? やっ、だ、ダメってば……こらぁ! おっぱいに噛みついちゃダメなんだよぉ!」

「むぐむぐ……だが断る。これは俺の……だ……くぴ~」

「ひぁんっ! ら、らか、らぁ……! っあ、ちょ、い、い~かげんに、起きなさ~~っ!?」

 

結局その日は2人仲良く重役登校という悪目立ちをするためになったのは言うまでもない。

ついでにこの日、葵は妙に胸を庇うような仕草をしていたのを桃花に気づかれてしまい、「大丈夫、わかってるよ~」と、生暖か~い視線を頂いたり、頬のガーゼの下にクッキリ見事な歯形をこさえていた海斗を伊織が愛しむ様に労わってくれたおかげで、薄い本のネタ提供のお手伝いをしてしまったそうな。

 

どっとはらい(お後がよろしいようで)

 




今回登場した幼馴染~ズは体育祭で活躍してもらう予定。
レギュラーになれるかどうかはまだ不明ということで。

本当は体育祭の前半辺りまでの予定だったんですが……えっちシーンを入れたのでお預けに。
でも、虎犬バカップルのいちゃいちゃを書けて満足です。
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