※この作品はR-18です。

『えっち』から始まる恋があってもいいじゃない?   作:カゲロー

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今回のお話は、学期末考査期間中の一コマ。
じわじわと人気を上げてきた『彼女』がヒロインとなります。
にしても、気合を入れたせいか、まさかの二万文字オーバーって……。



第20話 とっても危険な雨宿り

体育祭が終われば、夏休みまであと僅か。

されど、学生の胸の鼓動が高まるロングバケーションに至るために乗り越えなければならない試練が待ち受けている。

1学期の山場、期末考査である。

試験開始まで残すところあと1週間。

緩んでいた空気も自然と引き締まり、普段は生徒が寄り付かない図書館が最後の追い込みをかける生徒達で埋め尽くされている時期だ。

そんなおり、図書館の最奥にある書架の林に囲まれた様な場所で、周囲が首を傾げるほど奇妙な組み合わせな2人組の姿があった。

互いに教え合うでもなく、友達同士で和気藹々と勉学に励んでいる訳でもない。

無言。

そう、無言だ。

向かい合わせに座る相手の顔を一瞥だにせず、教科書とノートに目線を固定して黙々とペンを走らせている。

険悪と言い切る程重圧的ではないものの、友好的とも言えない微妙な空気。

周囲の生徒は彼らの様子が気になってしょうがないらしく、教科書や参考書のページをペラペラ捲りながら、時折横目で様子をうかがっている。

ちらりちらりと突き刺さる視線に耐えかねたのか、2人組の片割れが嘆息を零す。

 

「……いい加減付き纏うのをやめるつもりは?」

「ないわね」

 

簡潔にして即答。

妥協など認めないのだと言わんばかりの反応に、片割れ……海斗から疲労感たっぷりのため息が。

向かい合うもう片割れ……早苗は、ジトッとした視線を向けつつ、何か言いたげに鼻を鳴らす。

 

「あんだよ?」

「……別に」

 

プイッとそっぽを向かれ、やれやれと肩を竦めながら試験勉強に戻る海斗。

彼の様子を伺いながら、自分も手元のノートへ視線を戻す早苗。

これが、ここしばらく図書館で繰り広げられている奇妙なやり取りである。

 

(何かあるはずなのよ。私の知らない何か……コイツと葵を結びつける切っ掛けみたいなものが)

 

体育祭の一件で海斗と葵が『かなり親密』な関係にある事に気づいた早苗。

あの時は勢いに任せて(覗かれた件も含めて)有耶無耶にされてしまったが、一晩眠って冷静になったらしく、体育祭休み明けから始まった自主学習期間の連日、こうやって海斗に付き纏う……もとい、ボロを出さないか近距離で観察し続けている。

直接問いただしてくるかと身構えていた犬虎(わんこ)バカップルは肩透かしを食らったような気がした……のも一時だけ。

無言でじいっと見つめられると言うのは、逆になんとも言えない不気味さを感じさせて止まない。

かと言ってやめさせるには事情を話す必要性がある訳で。

事実を知った彼女がどう動くかわからない以上、下手に情報を与えるのは悪手。

 

――とは言え、このままズルズルいくわけにもなあ。

 

海斗としては、早苗も事情を知るこちら側……協力者になって欲しいと言うのが本音だったりする。

衝突したり突っかかられたりしてきた事もあってあまり良い印象を抱いていないとは言え、毛嫌いされる程度のことなど慣れている。

仕事でスカウトされた素人女性を相手する際など、口に出すことも憚られる罵倒を受けたり引っ掛かれたりすることも少なくないのだ。

スカウトマン(実は海斗の父)の口八丁に乗せられ、報酬(バイト代)に魅せられてホイホイ同意書にサインしてしまえば後戻りのできない罠の中へご招待。

どこぞの悪徳商法のように報酬をピン跳ねたりするような真似は絶対にしない事を店の信条に掲げているので訴えられたりする憶えこそないが、やはり初めての時になって怖くなり、錯乱する女性もいた。彼女たちのフォローも海斗の仕事なので、宥めて説得し、時にネガティブオーラを打ち消すような強引で情熱的なコミュニケーション(と、本人は思っている)を繰り広げてきた海斗。彼からしてみれば、早苗の罵倒程度どうという事は無く、むしろ親友を大切に思うからこそ海斗の事を見定めようとする意図を以て接してくる彼女の事を内心で高く評価しているほどだ。

口には絶対に出さないが。

自分に伊織や蝶歌という理解者がいる様に。

葵にもいろいろな意味での相談事を持ちかけられる協力者が必要だ。

そういった点で見れば、慎重で律儀な面を持つ早苗は適任であるとも言える。

まあ、最も……、

 

「な、何よジロジロ視姦してきて……いやらしいっ」

 

堅物&ツンツンな性格をもうちょいマイルドにできなければ難しいと思うが。

 

「知ってるか? 自意識過剰な反応を返す女って、実はむっつりスケベの証拠なんだそうだ」

「はい?」

 

ぽかん、と惚けた顔をしていた早苗の顔が、徐々に、真っ赤に染まっていく。

 

「あ、あああああああ……!」

「図書館ではお静かにな……むっつりお嬢様?」

 

目を細め、実に小馬鹿にするように鼻で笑ってやると、

 

「~~~~~~~~~っ!!」

 

声なき怒声を上げた早苗の咆哮が図書館に響き渡った。

それから程なくして、人気のない図書館奥で痴話喧嘩を繰り広げるカップル(に見えた)に青筋を浮かべた司書がスパッと切れ味良さそうなペーパーナイフ片手にDEAD or DIE(退室か死か)を突きつけるまで騒ぎが続いたという。

 

――当然、いくつかの机の上にシャープペンを突き刺した穴らしきものがボコボコ空いていたり、涙と混ざりあった鮮血の血痕が染みついていたのは言うまでもないが。

 

 

――◇◆◇――

 

 

テスト準備期間中の休日。

予習もひと段落ついたことだし、気分転換のために出かけることにした早苗の姿があった。

 

「あーもー! ホンッとにムカつくわ、あの詐欺眼鏡~っ!」

 

もっとも、イラつくような感情を引きずりながらなので、微塵もリフレッシュできていなかったが。

頭の中を占めるのは陰鬱とした週末を過ごす羽目になったヤツの顔。

早苗のことを歯牙にもかけない無関心な買い物の時。

水着の早苗をじっと見つめてきた修学旅行の時。

腕に抱きついてきた葵と見つめ合い、頬を綻ばせている体育祭の時。

無表情でやる気の欠片も見せず、周囲の状況に流されるまま生きている早苗の一番嫌いな人種だったハズの彼。

なのに……、

 

「葵といる時のあの目……あれはいつもと違ってた」

 

確たる自分を持ち、未来のイメージを脳裏に描いて歩んでいる。

体育祭で直視した海斗の瞳は、強い意志と信念、葵や幼馴染達へ向ける優しさを感じることが出来た。

だからこそ戸惑う。

果たして、どっちが本物の海斗なのか。

それとも、どちらでもない、全く未知の本性を隠し持っているのか。

 

「――知りたい、な」

 

ぽつり、と呟く。本人も気づかない内に零れ出した小さな願い。

本人が自覚すれば、きっと頭を振って否定することだろう。

これは一時の気の迷い。不良が捨て犬に餌をあげる姿を見たときのようなギャップ効果によるものだと。

けれど、どれほど聡明だと言っても早苗は青春真っ盛りの女の子なのだ。

恋に焦がれるロマンスを望む真っ直ぐな乙女心を持っているし、親友があんなに好いている相手が悪い奴じゃない……かも? と本人の評価を上方修正しやすい柔軟さも併せ持っている。

異性とのお付き合い経験がない純真な乙女故に、親友経由は言えど、初めて深く知りたいと言う興味を持った男性にちょっぴり特別な感情を抱いてしまうこともあり得てしまうのだ。

人の評価など容易く変わる。特に、異常な条件下であればある程、その感情は熱く燃え上がってしまう。

俗に言う、吊り橋効果という奴だ。

特別な条件下で結びついた関係は長続きしないとも言われているが……性質の悪い事に、早苗が興味を抱いてしまった海斗(オトコ)はそういう『特別な条件下で生まれた繋がりを良い意味で継続してしまう』性質を持っている。

そう、例えていうならば――

 

えっちして惚れさせる程度の能力(裏一級フラグ体質)

 

(いやらしい意味での)裏の世界でまことしやかに囁かれ恐れられている(ケダモノ)の実力を、早苗はその身を以て知ることとなる。

 

 

――◇◆◇――

 

 

しばらくの後、早苗は大通りから外れた所にある民家のひとつに居た。

シャワーを浴びた後らしく、水気を帯びた黒髪がバスタオルを巻きつけただけの肌に張り付いてボディラインを激しく強調している。

元々視力があまり良くないため、眼鏡を外したせいで瞼がぼんやりと弛んでしまっている。強気な印象を感じさせるツリ眼の鋭さが弱まり、発育の良い肢体と湯上りという扇情的なシチュエーションが凄まじい相乗効果を齎す。数多くの女性の裸体を撮影(・・)してきた女性ですら、思わず見惚れてしまうほどの凄まじい破壊力であった。

 

「おお……! ハッ! いっ、いやー、お嬢さんも災難だったねぇ。まさか降水確率10%なのに通り雨に降られるなんて。あ、ここに着替えおいとくからね。仕事で使う衣装なんだけど、お嬢さんの服が乾くまで我慢してよ」

「はあ……ありがとうございます」

 

ぼんやり霞む視線の先でまくし立てるだけしておいて、何かに気づいたように部屋の外へ駆け出して行ったこの店(自営業の店舗らしい)の女性店員の後姿を見送ってから、髪を乾かしつつ部屋の中を見渡してみる。

部屋の広さはテニス部の部室くらいか。

壁際はよく分からない機材でごった返していて、部屋の中央あたりに早苗が腰掛けているそこそこ値段の張りそうなソファが置かれている。

入り口近くには保健室などでもよく見る移動式のカーテンが置かれていて、ドアの外から覗き込まれても中の様子が見えないようになっている。

後ろ……入り口の対面にはシングルサイズの簡易ベットが置かれていて、枕元には物々しい木製の戸棚らしきもの、壁には大型鏡が据え付けられていた。

右手の奥にバスタブが設置された西洋風のシャワールームへ通じる扉があり、左の壁は段ボールが山積みになっている。

 

「変な部屋ねぇ……。てか、なんでこんなトコにいるんだっけ?」

 

額に指を押し当てながら記憶を手繰り寄せていく。

たしか、適当に町中をぶらぶらしてたら突然雲行きが怪しくなってきたんだった。

最近多いゲリラ豪雨かと慌てて雨宿りできるところを探したけれど、ぼんやりしている内に住宅地エリアに迷いこんでいたらしく手頃な場所が見つからない。

そうこうしている内に雨が降り出し、数分もかけず土砂降りに。

雨のせいで視界が狭まり、右も左もわからない中、全身ずぶ濡れになって彷徨い続けていたところ、ようやく手頃な軒先のある住居を発見。

飛び込む様に身体を滑り込ませ、冷えきった身体に走る悪寒に震えていると、住人と思われる女性が早苗に気づいて招き入れてくれて――今に至る。

 

「うーん、私としたことがなんて無様な。お風呂貸してもらっただけじゃなく、服の洗濯まで……後でお礼言わないと」

 

そう言いつつ、ベッドに膝を乗せて壁に耳を寄せる。

すると、遠くからだが落雷を思わせる轟音と震動が伝わってきた。

どうやら雨は当分止みそうにないらしい。

 

「へくちっ」

 

露出している肩や足から寒気が駆け登ってきた。

バスタオル1枚の恰好で居続けるのはやはりマズイ。

何から何までお世話になるのは心苦しいが、この場は好意に甘えて衣服も借りることにしよう。

雨に撃たれ、水滴の跡がくっきりと残された眼鏡をベッド傍にある棚の上に置き、用意された衣服へ手を伸ばし――

 

「……え? えええっ!? こっ、こんなのを着るの……!?」

 

両手に持って広げた衣装のデザインに愕然とし、

 

「何でこんなのが置いてある訳!? 嫌がらせ!? ……いやいやいや、落ち着け私。あのおばさんは善意で世話を焼いてくれたんだから、このチョイスも何か理由があるはず……」

 

自分に言い聞かせるようにブツブツ呟き、深呼吸を繰り返して心を鎮め、念のため入り口の鍵が閉まっていることを確認してから覚悟を決めて、

 

「女は根性! 頑張れ私!」

 

頬をパチンと叩いて気合いを入れてバスタオルを解き、独創的な衣装(ソレ)を纏うべく手を伸ばした――……。

 

 

――◇◆◇――

 

 

「うぅ~……や、やっぱり恥ずかしい」

 

シャワーとは別の理由で頬を朱色に染めた早苗が、ソファに腰掛けながら項垂れていた。

俯く彼女の動きに呼応して、頭部で自己主張するウサミミの中程あたりから力無く折れ下がる。

へんにょり、と。加虐心を刺激する、途轍もない癒しとエロスが室内を満たしていた。

 

……そう、ここに降誕したのはただの早苗に非ずッ!

 

瑞々しい肢体を際どく隠す漆黒のレオタード。

 

それが食い込むほど肉感たっぷりなむっちりお尻で自己主張する真ん丸尻尾。

 

可愛らしい蝶ネクタイがあしらわれた付け襟が首筋のラインを引き締め、手首を飾るカフスがしなやかな手首の細さを強調する。

 

すらりと伸びる脚線美を彩るのは漆黒の生地の網タイツ。

 

足元に真紅のハイヒールを履いて眼鏡をかければ、アダルティと清純を併せ持つ最強の装備が完成する。

 

そう、本能を揺さぶる魔性の魅力をその身に纏い、天下無敵の『バニー早苗』がここに爆誕した!

 

……最も、当人は恥ずかしくて仕方ない、これを着るくらいならバスタオル姿の方がよかったかもと遅い後悔に苛まれているが。

肩ひもの無いレオタードという着慣れない恰好をしているせいか、心細げに視線を揺らせながらソファの上で縮こまってしまっている早苗。

モジモジしていると、普通でない今の状況に当てられたのか普段の彼女からは考えられない行動を起こした。

ぴょこん、とソファから降り立ってヒールを鳴らせながら高く積み上げられたダンボールへ近づくと、誰もいないのにキョロキョロ辺りを見渡しながら目の前のそれの中を覗き込む。興味が湧いたのだろう。規律を重んじる早苗であるが、年相応の好奇心も併せ持っている。バニーガールという奇特な恰好をしている自分という異常な状況が、理性をいくらか解放的にしているのだ。

 

「なにかしら、コレ……?」

 

箱の中に詰められていたものは布の袋で包まれたよく分からない物だった。

大きさも様々で、手のひらに収まる小さな物……お手玉のような丸いものや、筆箱のように長細いものもある。

袋に使われている布地は切れ端を適当に繋ぎ合わせて用意されたものらしく、継ぎはぎが目立つ。

とりあえず、何かに包んでおこうと言う仕舞った者の考えが透けて見えるようだ。

 

「なによ、だらしないわね……。私ならもっとちゃんとした袋を編めるのに」

 

実は裁縫が趣味で、テニスボールを入れるお手製の布袋を手作りしてしまうほどの力量を持つ早苗は、不揃いな布袋を一つ一つ手に取りながら「私ならこうやって繋ぎ目を分かりにくくするのに」「この大きさなら、こっちの花柄の方が可愛く見えるでしょうが」等、少々辛辣な評価を繰り出しいく。しかし、どこか楽しげに見えるのは純粋に裁縫が好きだからということか。

 

「んー……でも、一番いいのは中身とマッチしたサイズとデザインを持たせることなのよねえ。何が入ってるのかしら?」

 

手のひらサイズの袋をしげしげと眺めていた早苗だったが、やがて好奇心に負けたらしく、布袋の中に手を入れて中身を取り出した。

すると、出てきたのは……

 

「なに、コレ? 箱……あ、もしかしてスイッチ? それに卵、かしら?」

 

早苗の掌に乗せられたのは、PHSくらいの大きさのスイッチらしきものと、そこからコードでつながった卵のような球体だった。

色はピンク色。スイッチには1から5の数字が記されていて、何らかの強弱を調整できる仕様らしいことまでは早苗にも理解できた。

しかし、用途がわからない。

そう言った系の知識にかなり疎い彼女には、手の中で弄ぶそれが何のための道具なのかわからないのだ。

しばらくの間、指でつまんだりして眺めていたが「……よし」と自分に言い聞かせるように呟くと、リモコンのスイッチをONに。

メモリが最大の5に設定されていたこともあり、スイッチを入れた途端、暴れ狂う様に卵状の物体……所謂、ローターが激しく振動した。

 

「きゃっ!?」

 

悲鳴を上げて驚く早苗。

プラスチックの塊が床の上に落ち、駆動音を上げながら床の上をのたうつ。

 

「な、なんなのよこれ……っ、あ!」

 

事ここに至りようやくソレが何なのか理解できたらしい。

早苗の端正な美貌が羞恥心で真っ赤に染まる。

自分が何を弄っていたのか自覚し、頬を抑えながら壁際まで後ずさる。

 

「な、なんでこんなものが……っ、まさか!?」

 

恐る恐る指を伸ばして暴れ続けていたピンクローターのスイッチを切ってペッドの上に置くと、恐怖と好奇が入り混じった表情のまま箱の中にある別の袋を取り出し、中を覗く。

 

「ひ……っ!?」

 

引き攣った悲鳴が喉の奥から吐き出された。

早苗が見たもの、それは男性の性器を模したゴム製の性具、通称バイブレーター。

先程早苗が弄っていたピンクローターも原則に言えば同系統の性具に属する、『大人のおもちゃ』である。

 

「な、なんでこんないかがわしいものが大量にあるのよっ!?」

 

早苗の背筋に恐怖からくる冷たいゾクゾク感が走る。

もしかして自分はとんでもない場所にいるのではないか? 未知への恐怖で足元がおぼつかなくなり、膝がガクガクと笑い始めた。

思わずと言った風に手頃な所にあったベッドに腰掛け――放置していたローターをお尻の下敷きにしてしまう。

 

「ひゃんっ!?」

 

可愛らしい悲鳴を上げて飛び退こうとする早苗……しかし、完全にスイッチをOFFに出来ていなかったらしく、前振りも無く振動が再開した。

激しく暴れるローターは早苗の尻肉に押し上げられる様にヒップラインをなぞりながらシーツの上を滑り、程なくして双丘が生み出す渓谷へとたどり着く。

誰にも見せたことが無い不浄の器官……アヌスのすぐ近くにすっぽり収まってしまったローターは、混乱して右往左往するしか出来ない早苗に無慈悲に、無機質に振動という愛撫を繰り出していった。

 

「――ッ!?」

 

PHSのバイブ機能など話にならない激しすぎる衝撃に襲われ、早苗の背中が弓なりに反りかえる。

呼吸を求めるかのようにパクパク開閉を繰り返す口元は引き攣り、外気に曝されている上乳や二の腕に鳥肌が立つ。

身体の芯がじゅんっ、と燃え滾る様に熱い。今まで感じたことの無い刺激に反応してしまった身体が、本人の意思を無視して反応を見せていく。

耳たぶの産毛が逆立つほど敏感になった耳が、途切れ途切れに溢れ出す自分の恥ずかしい声を拾い上げ、羞恥心を煽る。

股間を抑える指がおずおずと動き、レオタードに包まれた秘部を優しく擦り上げた。ビリビリっと快感を示す電気信号が神経を駆け巡り、早苗の理性を焦がしていく。

太股はすり合わせる様にモジモジと閉じられ、網タイツ独特のムズ痒さが心地良い刺激すら産み出してしまう。

 

「あっ、ふ……はあんっ!?」

 

自分があげてしまった淫靡な声に驚き、慌てて口元を抑える。

外に聞こえていたらどうしようと恐怖が込み上げてきたが、いまだ暴れ続けているローターの刺激によって、一時的に回復した理性が再び快楽の波に押し流されてしまう。

このままではいけない。

ギリギリのところで危険な流れから脱出を果たした早苗は、ローターを避ける様に身体をずらして横座りになると、今度こそローターのスイッチを切る。

無機質な駆動音が消え去り、室内に静寂が戻ってくる。だが、荒げられた早苗の息遣いは収まる兆しを見せず、それどころかむしろより悪化していると言った方がいい状態だった。十数年の人生で初めて経験した熱く燃え上がるほどの官能が、眠っていた情欲を呼び覚ましてしまったのだ。

実は早苗、彼女は元々性欲の自覚症状が薄く、ストレスや悩みなどをスポーツで発散してきたために、自慰行為の経験が皆無という希少な少女なのだ。

保健体育の授業でそう言った知識こそ人並みに習得してこそいる。だが、当人の性欲の自覚症状の薄さ故に、そう言った性関連の悩みなどはずっと無縁だった。身体が疼くような経験も無かったし、異性の肌を見て興奮を覚えるような事も無い。

普段から凛然とした態度を通してきたことも、自分に向けられる異性からの視線を深く意識しないでこられた理由の一つだ。

しかし、普通じゃない衣装に身を包み、淫猥な道具で興奮を感じるという普段の彼女とは明らかにかけ離れている状態。

あまりにも異常なソレに呼応したかのように、理性に抑え込まれてきた性欲が鎌首を擡げてきたのだ。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……んくっ」

 

収まってくれない昂揚で乾ききった唇を舐める。

たったそれだけで、鋭敏すぎるほどに開花した触覚が甘い衝撃を産み出してしまう。

興奮を抑えることが出来ない。何もしていなくても下腹部を中心に身体中へ広がっていく熱は激しさを増していき、熱に侵された様に理性が溶かされていくのがわかる。

すこし身体を捩るだけで革製のレオタードの生地が肌と擦れてしまうから身動きもとれない早苗は、シーツを握り締めてじっと興奮が収まるのを待つことしか出来ないでいた。

しかし、

 

「あ……っ!? え、な、なんで……ンッ!?」

 

ずくん、と。

 

レオタードに包まれた股の間から甘い刺激が迸った。

それは相対的に強さを増していき、えも言えない快感を早苗に感じさせる。

戸惑い、恐怖と共に逃げ出そうとする早苗だが当然の如く逃れることが出来るはずもない。

太股の内側が汗と、そうでない粘着性の液体で濡れていく。生地を押し上げる様にツンッと尖っていく乳首が自己主張を繰り返し、半開きになった唇の隙間から唾液が溢れ出す。

身体が小刻みに痙攣を起こし、溢れ出す発汗の蒸気で曇った眼鏡のレンズが霧がかったように白く染まる。

早苗は明らかに発情していた。

その理由は彼女の纏っている衣装にこそある。

実はこのバニーガールの衣装は、とある目的のために用意された代物だ。

素人が造るコスプレ衣装とはわけが違い、目的のための機能を内包しつつデザイン性も損なわない匠の技を費やされた一品なのだ。

最大の特徴はレオタードにある。実はこれに使用されている生地は裏面がざらざらとした布でできている。

それには肌と擦れ合い、苦痛をギリギリのラインで感じさせずに性感を刺激すると言う意図が仕組まれていた。

さらに体型に密着する様に平均女性よりもやや小ぶりのサイズでデザインされている事も、密着度を増すためにわざとそうしているのだ。

おまけに早苗は下着まで雨に濡れてしまったために、素肌の上に直接レオタードを纏っている。

つまり、秘芽や秘部、さらにはアヌスにいたるまで直接刺激を注ぎ込まれていたと言う事だ。

普段の彼女なら気づいていた筈の疑念に、雨に濡れた直後のシャワーで思考がぼやけ、普通じゃない状況に陥ったことで気づくことができなかったのだ。

身体の奥から込み上げてくる火照りは疼きを呼び、秘部の奥からどろっとした蜜がにじみ出てきている。

誰かに見られてしまうかもしれないと言う緊張が、抑え込まれてきた情欲を刺激し、背徳感にも近い興奮を呼び起こす。

自分の症状が発情だということはなんとなくわかる。

だが、彼女は自らを慰める方法……自慰行動のやり方を知らない。

知識はある。だが、知っているのとやれるのかは別問題だ。

そもそも、理性の大半が溶かされている今の彼女に、記憶を手繰り寄せながら自分を慰める様な真似が出来るはずもない。

このままでは狂ってしまう。

興奮と情欲の隙間に残されたわずかながらの理性で恐怖を抱く。

早苗の体質と衣装があまりにも相性が良すぎたために起こった悲劇。

もしこのまま誰も自分に気づかないままだったら?

もし見知らぬ異性に今の自分を見られてしまったら?

未知なる衝動が生み出す不安がかつてない恐怖を齎し、至高の袋小路に陥ったお姫様を絶望が支配する。

 

「たす、けて……! 誰かぁ……」

 

涙があふれ、弱音が零れる。

ベッドに倒れ込み、恐怖を誤魔化す様にシーツを噛む。

ベッドと擦れて眼鏡が外れ、視界がぼんやりとしたものに切り替わる。

普段の強気さを感じさせる目尻が下がり、怯えた少女のソレとなる。

弱弱しい少女そのものとなった早苗の手が救いを求める様に虚空に伸ばされた――直後。

 

――コンコンッ。

 

唐突に鳴り響いたノックと共に、どこか見覚えのある気がする男性が入室し、

 

「失礼しま――って、オイ!? どうしたんだいったい!?」

 

扉を開くなりただ事ではない早苗の様子に気づき、慌てて駆け寄ってくる『高宮 海斗』の姿を認めながら、早苗は意識を手放した。

 

 

――◇◆◇――

 

 

「ちょっ、ホントどうした? 大丈夫か?」

 

せっかく葵とのんびり過ごしていたというのに突然の仕事の依頼を受けてしまったため、前日から実家に戻っていた海斗。

いつの間にか携帯に登録されていたマッドへ連絡し、事情が事情なので外泊OKと許可を取り付けたために惰眠を貪っていたのが今から1時間ほど前。

寝ぼけ眼でリビングに降りると、いい笑顔を浮かべた父親にエンカウントしてしまい、せっかく戻ってきてるんだからもう一本撮影しようと押し切られ、あれよあれよという間に撮影の準備に借り出されてしまった。

そして現在、今回のお相手である女優さんが待っていると聞いた待機部屋を訪れた海斗の目に飛び込んできたのは明らかに普通じゃない状態のバニーガールの姿。慌てて駆け寄ると、彼女は安心したかのような表情を浮かべて気絶してしまった。

抱きとめ、額に手を当てて熱が無いか計る。やや高いが病気と言う訳ではなさそうだ。

困惑を隠せず、しかし仕事相手(と海斗は思い込んでいる)の女性を気遣う優しい手つきでベッドに横たわらせる。

荒い呼吸を繰り返す女性の様子を伺いながら、こんな状態では仕事をするのは不可能と判断し、入り口横の内線で父親に連絡した。

 

「親父、女優さんが体調を崩してるみたいなんだが、何か知ってるか? 持病持ちとか」

『なに? そんな話は履歴書にも書いてないが……ちなみに彼女は?』

「とりあえず落ち着くまでベッドに寝かしてる。目が覚めたら事情を聴くつもりだから、ちょっと撮影は延期にしてくれるか?」

『むう……まあ、いいか。元々来週に予定していたものだし、今日のところは延期という事にしよう。海斗、お前はそのまま彼女に付き添ってやれ。隣の控室(・・・・)には母さんの客人がいるらしいから騒ぎを起こすなよ』

「わーってるよ」

 

受話器を戻しながら振り返り、少しは呼吸が落ち着いたらしい彼女の元へ戻る。

母の客人とやらがちょっと引っ掛かるが、まあ自分には関係ないかと意識の外へ追いやった。

乱雑する小道具の中からパイプ椅子を引き寄せながら、改めて女性に視線を落とす。

既視感というか見覚えがある様な気がするが、どうにも思い出せない。

腕を組み、頭を捻りながら唸っていたせいか、女性の眉がぴくりと動く。

 

「ん……」

「お、気づいた……ましたか?」

「え? あの……っ!?」

 

ぼんやり焦点が合っていなかった女性……早苗はしばらくぼ~っと海斗を見つめ、続いて自分がどんな格好でいるのかを確認し、

 

「~~っ!?」

 

ぼふんっ! と効果音が聞こえてきそうな勢いで全身を真っ赤に染めて、

 

「う、うなーーっ!?」

「うげあ!?」

 

珍妙な奇声をあげると同時に海斗の心中(人体急所の一つ。殴られるととても痛い)へコークスクリューパンチを叩き込んだ。

激痛が走る顔面を抑えながら蹲ってしまう海斗から逃げる様にベッドの上を後ずさった早苗は、自分を抱きしめながら涙目で不審人物を睨み付ける。

 

「だ、誰よアンタっ! わたっ、私が気絶してるのをいいことに何しようとしたの!?」

「あだだ……って、コラ。誰が不審人物か」

 

親切心から介護しようとしたというのにこの言いがかり。

思わず半眼で睨み返してしまう。

その剣幕に気圧されたのか、早苗がうっ、と小さく唸る。

言われてみれば、記憶の最後に助けを求めた誰かに手を伸ばしたような気がする。

 

「……ごめんなさい」

「いや、誤解が解けたんならそれでいいんだが。てか、本当に体調が悪いんじゃないか? さっきから汗すごいぞ」

「そう言われても……自分じゃよく分からないし。なんだか身体が熱くて、頭もぼーっとするのよ……」

 

気だるそうな早苗の様子から病気とは違う原因の気がする。額に手の甲を当てて熱っぽい表情を浮かべる早苗。

その姿に、かつての葵が重なり、まさかと血の気が引いていく。よくよく見てみれば、彼女が纏っているバニーガールの恰好は撮影用に用意された女性を興奮させる特別仕様の衣装ではなかったか?

 

「な、なあ、もしかしてだけどそのバニーに着替えて結構時間経ってる? てか、もしかしなくても素肌に直接着てるのか!?」

「? えっと、30分くらいかしら……。下着も、うん……雨に濡れちゃったから……」

「うげ……そら欲情して当然だろ」

 

海斗は思わず頭を抱えた。

下着を穿いたうえで着るはずの衣装を素肌に直接纏えば、官能が刺激されて欲情してしまうのは当たり前だ。

そうでなくても、控室であるこの部屋の中には気分を高揚させる香水や媚薬の匂いが染みついているのだから、知らず知らずのうちにそれら等を吸い込み、情欲を増幅されてしまうというのに。

欲望に身体を支配され、けれどもそれを解放する手段がわからずに内側へ溜めこまれてしまった昂りは、もはや運動で発散できるレベルを超えていた。

ただ座っているだけだと言うのに、早苗の呼吸は荒く、激しいものへと変わっていく。二の腕を掴む両手が肌を擦る様に上下に動き、たったそれだけの刺激でゾクッと強い快感が身体を駆けあがる。

すぐ手が届く場所にいる力強い牡の存在が、彼女の中にある牝の本能を煽り、急かす。

もはや何も考えられない。只々、心を焼き尽くさんばかりに滾る熱を鎮めたくて、解放されたくて、半ば思考を放棄した早苗の腕が「とりあえずシャワーでも浴びさせて目を覚まさせればいいか?」 などと考え込んでいた海斗の肩へ伸ばされる。

 

「へ? ――ぬおぁ?!」

 

素っ頓狂な声を上げた海斗の襟首を掴んで、強引に抱き寄せる。

油断していた海斗は引っ張られるままベッドに倒れ込み、仰向けに寝そべった早苗を押し倒す体勢になってしまう。

眼前に早苗の顔がある。ベッドにつく両手をほんの少し曲げただけで、唇が重なり合ってしまうほどの距離。

視線を少しずらせば、珠のような汗の雫が浮かぶ乳房とレオタードで締め付けられて強調されている谷間がハッキリと見えてしまう。

もう一度彼女の顔に視線を戻すと、蠱惑的な色香を漂わせるオンナの香りが鼻孔を擽ってきた。このまま据え膳を喰ってしまえと囁く煩悩を封殺し、表面上は冷静さを纏ったままに問いただす。

 

「おい? 何のつもりだこれは」

「わからない……わからないわよ。こんなの初めてなんだからっ」

 

癇癪を起したように肩を震わせる早苗。目に浮かぶ涙を拭う事もせず、混乱と動揺でぐちゃぐちゃになった心に浮かび上がってきた言葉を呟いていく。

 

「身体おかしくて……お腹の奥が熱くって……もう、わけわかんないのよっ。ねえ、なんなの、コレ!? アンタ、何か知ってるんでしょう!? 教えてよっ」

「わ、わかったから落ち着け! お前が着ているその恰好な、女性の性感帯を刺激する布地が使われているんだよ。ようするに欲情してるんだ」

「よ、欲情? え、あ、そんな……わ、私どうしたらいいのっ!? お願い、助けてっ」

 

嗚咽を呑み込む替わりに未知への恐怖が湧きあがってきたのだろう。よく分からないが、とても恐ろしい状態に自分があることは理解できたのか、懇願するように海斗へ縋りつく。

 

「ちょ、落ち着け! てか、なんだその反応……異性を知らないどころか自慰もしたことが無い生娘みたいな」

「失礼よっ。私はそんなふしだらな事しないんだからっ」

「え? ちょ、え? てことは撮影に呼ばれた女優さんじゃない……? じゃあ、誰なんだ?」

「そんな事どうでもいいからっ! 早く何とかしてよおっ!」

「痛ッ!? わ、わかった、わかったから……」

 

引っかかれた頬をさすりながら、海斗はしばし瞠目する。

性的興奮が本人の意思を無視して引き上げられているのなら、絶頂に至れば苦しみから解放されるはずだ。

しかし、先ほどの彼女の言葉を信じるのならば、己が組み伏せている発情したうさぎさんは男を知らない清い身体。

なんでこんな泥沼にはまっているのか見当もつかないが、だからといって何も知らない少女の純潔を強引に奪うことは好ましくない。

ならば――。

 

「今から治療してやる。もしかしたら辛いかもしれないけど、最後まで逃げずに耐えられるか?」

 

真剣な眼差し。これから何が起こるのか、何をされるのか全く分からないけれど、信用はできると直感した早苗は無言でうなずく。

 

――後になってぶん殴られるくらいはありそうだな。

 

少女の意志を確認し、海斗も覚悟を決める。

上肢を起こして膝立ちになると、レオタードのカップへ手を伸ばし、尖った乳首に擦れないよう引っ張りながらずり下げた。

顕わになる真っ白な膨らみ。頂点にあるピンク色の乳首は興奮の度合いを示すように固く尖り、自己主張を続けていた。

呼吸のたびに胸が上下して、その度に柔らかいつきたてのお餅のような双丘が踊り、ぷるんっ、と魅惑的な幻聴が聞こえてきそうだ。

 

「ああっ……み、見ないでよぉ、ばかぁ」

「だが断る」

 

咄嗟に両手で胸を隠そうとするのを、手首を掴むことで阻み、そのままベッドに押し当てた。

その反動で早苗の背中が反り、必然的に海斗に向けて胸を押し出すような状態になってしまった。

鼻先に差し出された乳房の香りを味わう様に、わざとらしく『くんくん』と音を立てて匂いを嗅ぐ。

 

「いっ、いやあっ!?」

 

獣じみた仕草で体臭を嗅がれてると言う行為に羞恥心を煽られ、悲鳴じみた叫びが上がる。

だが、早苗の非難を一切無視した海斗は、小刻みに震える乳首に舌を這わせ、舐め上げた。

プリンのようになめらかな肌。昂奮でにじみ出たミルクのような味がする汗の味が口の中に広がっていく。

ビクビクと官能に震える早苗に怒声をあげる余裕も与えないように、続けざまに軟らかな乳房へ顔を埋めて、乳首にしゃぶりつく。

ちゅっちゅと赤子が母乳をせがむ様に甘噛みして乳首を固定し、舌先で乳腺を刺激する様に突っつく。

舌の動きに連動するように、早苗の喉からひくっとくぐもった音が鳴る。

 

ひもひいいは(きもちいいか)?」

「むっ、胸を食べながら喋らな……んああああ!」

「ンッ……お嬢様には刺激が強すぎたかな?」

「うっ、ううっ! ゆ、許さないんだから……こんなヒドイことしてっ」

「まだまだ始まったばっかりだぞ。気持ち良くさせるから気をしっかり持てよ」

「え? ちょ、ちょっとまって――っ、むぐう!?」

 

手首の拘束を解き、中指と薬指を早苗の口の中へ差し入れながら、逆の手で乳房を揉み、反対側の乳首に吸いつく。

強弱をつけながら揉みしだくように指を動かし、ボリューム感たっぷりな柔肉を堪能する。

並行して吸いついた唇を窄めながら舌の上で転がすと、堪えようのない艶声が溢れ出す。

燻っていた官能の炎が再燃し、解放されている両手は力無くシーツを握り締めることしか出来ない。

 

「ああっ、あ、う、んんっ……! むぐ、れろ……ぷちゅ……」

 

悲鳴を上げようとしても、口の中に差し込まれた海斗の指が口内で暴れまわるので叶わない。

ザラザラとした上顎の内側を擽られ、柔らかな頬をつつかれ、感覚器官であるツブツブで埋め尽くされた舌を挟み込む様に刺激を送り込んでくる。

ガクガクと全身が痙攣を起こし、不遜な侵入者に噛みつくことも出来ない。

されるがままに身体を征服されていくような錯覚に、早苗の僅かに残された理性が逃げろと叫ぶ。

けれど、力が入らない。

逃げることも抗う事も出来ず、ただされるがままに身を委ねてしまう。

 

――私、どうして……こんなことっ。

 

「っぷは! や、やめなさいよぉ……乳首、壊れちゃうでしょお」

 

疑念に解は導き出されず、口から出るのは期待を込めた言葉だけ。

もっとして欲しい。痛い位激しく吸って欲しい。

そんな欲情の欠片が含まれた問いかけに、海斗は至って真面目な顔で応える。

 

「このくらいで根を上げてどうする。将来、赤ん坊が生まれた時の予行練習とでも思えよ」

「え……ええっ!? こ、子どもって……そんなの、まだ早いわよっ」

「備えあれば憂いなしとも言うだろ? 心の準備は早い方がいいぞ……多分」

 

言うだけ言って胸への愛撫に戻った海斗を恨みがましく睨みつける早苗だったが、先ほどよりも強く乳首を吸われてしまい、淫らな悲鳴を我慢できなくなってしまった。

 

「そ、そんなこと言ったって……! あ、ああんっ!? やぁ、そ、そんな舐めたらっ!?」

「ちゅむ、ちゅっ……どうだ?」

「ど、どうもこうもっ!? ぁ、んあっ、ふうっ……ふわあああっ!? やっ、らめぇええ!」

 

敏感な反応に気を良くしたのか、海斗の攻めがより一層激しさを増していく。

自由になった手を早苗の背中とベッドの隙間へ差し込み、背骨をなぞる様に撫で上げる。

彼女が着ているレオタードは背中部分が大きく露出したデザインなため。素肌を直接愛撫できるのだ。

ゾワゾワッと背中を駆け昇る快感に口を結んで耐えようとするが、彼女の努力をあざ笑うかのように意地悪な指が背中のラインを通ってヒップの谷間の奥底へと滑り込んでいった。むっちり尻肉に食い込んでいるレオタードの端から股の下を通す様に指を差し込み、ぷっくりと膨れた恥丘に指を添える。

瞬間、下腹の奥がきゅんと疼き、秘唇の外……ラビアからにじみ出る様に興奮の蜜液が溢れ出してくる。

身悶えするたびにニチュニチュと淫靡な音が秘部から聞こえ、早苗はもう耳たぶまで真っ赤だ。

レオタードとラビア、海斗の指が擦れ合って、身体を震わせるだけでも甘い官能を感じてしまう。

子宮の奥の疼きが激しさを増していく。込み上げてくる快感は初体験に対する嫌悪や苦痛を誤魔化すように荒れ狂い、その激しさに呼応したかのように新たな蜜液が溢れ出てくる。腰が痺れ、胸の感覚がなくなってきた。

レオタードの中で淫靡に蠢く指が生み出す快感に、早苗の身体は爪先と首だけで身体を支えるブリッジのように反りかえってしまう。

無理な体勢からくる痛みすら快楽に変換されているようだ。

息苦しさすら、痺れる様な快感に取って代わられ、電のような衝撃となって全身余すところなく走り抜けていく。

 

「だ、だめっ……ひいっ! や、やめ、やめて……ゆるして……おねがい、もぉ……だめなのおっ!」

 

呂律が回らなくなり、高まり続けた官能が限界に達する。視界が真っ白に染まり、花火のように激しくも荒々しい火花が飛び散る。

全身の筋肉が激しい痙攣を引き起こし、瞳から色彩が失われていく。

その時、ラビアを弄っていた指を引き抜いた海斗が左右の乳首を指で挟み込みながら摘み上げ――まとめて吸い上げた。

 

「~~~~~~ッ!!」

 

それがトドメになった。

身体の芯を焼き焦がしながら脳天まで駆け上がった火花が内側で弾け飛び、早苗の意識を此処ではないどこかへと誘っていく。

同時に、膣道の奥底から子宮頸管粘液が溢れ出し、レオタードの生地に黒い染みを産み出していく。

意識は完全に途切れた。

浮かしていた腰が落ち、完全に脱力した下肢から絶頂に至った証である濃厚な蜜液の香りが漂ってきた。

膝立ちのまま早苗を見下ろす海斗は、ぐったりと力無く四肢を投げ出し、焦点の合わない瞳で天井を見上げながら荒い呼吸を繰り返す彼女の胸を解放すると、ベッドにうつ伏せになるように転がし、せり出すように盛り上がった尻肉に向き直った。

形よく引き締まった健康的な太ももは汗に濡れて艶めかしく見える。

レオタードを端に寄せて、ヒップのワレメを外気に晒す。

途端、むわっと香る蜜液の香り。

腰を掴んで抱き寄せると、放心状態にある早苗は頬をベッドに押し付けた四つん這いの体勢になった。

内太股を流れ落ちる蜜液を人さし指と中指で掬い取り、シワヒダを集めて閉じているアヌスに優しく触れる。

 

「いきなり挿入()れるのはきついからな……まずは、指一本っと」

 

ゆっくりとマッサージするようにシワヒダを解し、蜜液を擦りこみながら人さし指でアヌスをつつく。

排泄のための器官だから外部からの侵入者を拒絶するように指を押し返してくる。

意識を失っている早苗も本能で嫌悪を感じているのか、身悶えながらお尻を振って逃げようとしたので動けなくしてやることにした。

 

「……れろっ」

 

舌を差し伸ばして……一舐め。

 

「ひゃうんっ!? え、な、なに……え、えっ!?」

 

ある意味で絶対領域と呼べる孔……アヌスを舐め上げられる感覚に、早苗の意識が一瞬で覚醒する。

混乱するまま自分の格好と海斗がナニをしているのか理解し、かつてない羞恥心で真っ赤になった顔をブンブンと激しく振った。

あまりにも恥ずかしすぎる仕打ちに理解が追いつかないのだろう。海斗を蹴り飛ばすことも、這いずって逃げ出すことも出来ず、舌先でアヌスをつつかれる感覚に翻弄されることしか出来ないでいる。

 

「ひゃぅ、や、やめ、……ひゃぁんっ! あ、あひ、きた、汚いからぁ!」

 

ちゅっちゅっとキスまで落とされてしまい、嫌悪と恥ずかしさに混じってほんのわずかな快感を感じてしまった自分を否定するかのように、両手で顔を覆ってイヤイヤと首を振る。

あまりの恥ずかしさでどうにかなってしまいそうだ。けれど、早苗本人の意思を置き去りにして、絶え間なく送り込まれる刺激は快楽へとすり替えられ、望まぬ高みへと引き上げられてしまう。

そして――、

つぷっ、と音を立てて人さし指がアヌスへ挿入されて直腸粘膜を擦られた瞬間、排泄以外の用途を知らない早苗に理解不能な感情が湧き上がり、

 

「やっ、やだ……やだぁぁあああああっ!」

 

最後に残された理性という壁が、いとも容易く陥落してしまった。

大きな声をあげて半裸の身体を震わせる。身悶えるうちに食い込んだのか、ローレグのような状態になったレオタードの股間から膨れ上がったラビアが覗き、音を立てるような勢いで蜜液が流れ出してくる。

息も絶え絶えな早苗が、肩越しに振り返って怯えた顔を向けてくる。

 

「流石にやめた方がいいか?」

「――……め」

「ん、なんだって?」

「やめちゃ……ダメ」

「へ? あ、そう?」

 

意外そうな表情の海斗。だが、彼よりも驚いていたのは早苗本人だった。

 

――な、なんで私、あんなことをっ!?

 

やめるかと聞かれた時、今すぐやめてと告げるつもりだった。

お腹の奥……多分、子宮の辺りの熱は冷める兆しをみせないけれど、少なくともお尻を弄られるなんてふしだらな真似は絶対に嫌だ。

だと言うのに、口から出たのは正反対の言葉。

死にたくなるくらい恥ずかしいのに、もっと続けて欲しいと囁く自分がいる。

拒絶したいのか受け入れたいのか。

離れて欲しいのか、抱いて欲しいのか。

自分で自分の心がわからなくて、思考が停滞する。

その様子に、しばらくの間逡巡していた海斗だが、意を決したように二本の指をアヌスに宛がい、傷つけないようにゆっくりと差し込んだ。

第二関節まで挿入した指を折り曲げ、直腸の内壁を擦る様に愛撫していく。

 

「あっ、あ、くぅ……っあぐっ!」

 

突然、アヌスが指を引き千切るような勢いで締め付けてきた。

ねじ切られてしまうのではと錯覚を覚えるくらい激しい抵抗に面食らう海斗だったが、シーツを引っかく様にもがく早苗に気づき、腰を掴んでいた手で彼女の手の甲に重ね合わせるように触れる。

指を絡みつかせ、首筋に寄せた唇で優しいキス。

ちゅっちゅっと啄む様にキスの雨を降らせば、くすぐったそうに身を捩る早苗の表情が幾分か柔らかくなった。

同時にアヌスの締め付けも弱まり、指を引き抜くことができた。お尻の谷間を覗き込めば、ぽっかりと空洞のように開かれたままになったアヌスの姿が。

光って見えるのは分泌された粘液だろうか。早苗本人の蜜液と海斗の唾液も混ざり合って、何とも淫靡な輝きに見える。

ヒクヒクと戦慄くソレが己を誘っているように見えて、海斗の胸に秘奥を支配してみたいと言う欲望が湧き上がってきた。

ズボンを下げて限界まで起立した肉棒を取り出すと、先走りで濡れた亀頭を押し当てる。

 

「あ……」

 

早苗の顔が達観じみた諦めの表情へ変わる。

だが、海斗は見抜いていた。

一見すると抵抗を諦めて放心しているように見える早苗の瞳の奥に、これから行う行為への期待が灯っていることを。

故に、期待に応えるために腰を持ち直してゆっくりと、傷つけないように己が分身を押しこんでいった。

 

「うっ、うぅぅ~っ!? や、やっぱりダメっ、ムリぃ……! お、お腹、くるし……ッ!!」

 

亀頭のエラが挿入し、アヌスのシワを押し開きながら沈み込んでいく。

アヌスでの結合は、ある意味で破瓜の苦しみのソレを上回ると言って過言ではない。

膣肉のように引っ掛かりがなく、どちらかといえばなめらかな創りになっている直腸だが、肛門括約筋と呼ばれる筋肉が異物を押し返そうと肉茎を責めたててくるのだ。強固な抵抗を強引に押し退けて侵入を進めると、括約筋を内側へ巻き込みながらどこまでも沈み込んでいく。

やがて、肉茎は根元までアヌスに呑み込まれ、互いの腰が密着した。

アヌスバージンを失った肢体が、腰の動きに連動して弓なりに反る。

排泄の器官を侵された気持ち悪さが頭の中を支配し、身体の内側にダイレクトで感じる海斗の熱と存在を愛おしく想う感情が胸を満たす。

苦しみと同時に女の喜びを感じてしまう性を自覚し、早苗の中で何かが変わっていく。

変化を恐れ、ぶるぶるっと恐怖に身体を震わせた瞬間、直腸に埋め込まれた亀頭が尾骨の内側を抉った。

 

「がひゅっ!?」

 

悲鳴を上げて仰け反る早苗に驚き、咄嗟に腰を抑えていた腕で彼女のお腹を抱きしめてしまう。

海斗の体勢が変わり、肉茎が再び直腸内を抉る様に刺激した。

 

「ぁ……ぁぁああああーーっ! く、苦しいのに……な、なのにぃ……!」

 

身悶える早苗の様子を確かめながら、苦痛を与えない程度に緩やかな律動を開始する。

引き抜く様に後退させると排泄感に近い快感を、逆に押し込んだ時は圧迫感のような苦痛と被虐的な刺激を覚えるようだ。

嫌がっているのは事実だが、それが恐るべき速さで快楽に書き換えられている。

膣とはまた違う独特の感触に酔いしれながら、汗で全身を濡らした海斗が本格的な律動運動に移行する。

直腸粘液を抉る様な動きは苦痛の度合いが高い。

ならば、純粋な前後運動で快感を叩き込む。

 

「く、苦ひぃ……や、やら……もう、やらのぉ……あぁっ、で、出ちゃう……やっ、もぉらめぇ♡」

 

艶やかな色香混じりの甘い声が出てきた。

どうやら早苗は特に、肉茎を引き抜かれるときに感じる生理現象にも似た感覚がお気に召したようだ。

粗相してしまいそうな恐怖と不安、それを凌駕する解放感と快楽に病み付きになってしまった早苗は、拒絶の言葉を口に出しつつも表情が微塵も一致していなかった。

 

「ひゃあっ!? お、おへそ弄ったら……んはああっ!? む、胸、までぇ!?」

 

腰の動きに強弱をつけて刺激を送り込みながら指を滑らせ、レオタード越しに腹部を撫でる。

へそをつつき、質量感たっぷりに自己主張する乳房を荒々しく揉み込んで。乳首を捻る。

 

「あ、や、いやぁあっ! か、感じ過ぎちゃう! キモチよくなりすぎてこわれちゃうぅぅっ!」

 

小さな悲鳴は艶声へと変わり、形のよい臀部を自ら突き出すように腰を振る。

ぱつんぱつんと尻肉が腰とぶつかる音が室内に響き、興奮が否応なしに高まっていく。

不浄の穴を侵されているという嫌悪感はすでに無い。

息苦しいまでの圧迫感と排泄にも似た解放感で交互に襲われ、早苗の理性を快楽で染め上げていく。

 

「ひんっ! あ、そこ、――ぃ、いいっ! ああぁーーんぁああっ!?」

 

男根を引き抜かれるとカリ首が直腸粘膜を削り取る様な衝撃を味わえる。

逆に差し込まれると子宮という行き止まりの無い直腸の中をどこまでも沈み込んでいく存在感を感じることができる。

シーツに顔を埋め、獣の交尾のような恥ずかしい格好だと言う事も忘れてよがり狂う。

だらしなく半開きになっている口から溢れる唾液がシーツの上に淫靡な水溜り産み出し続ける。

蕩けきった表情を浮かべて男に組み伏せられる様は、まさしく娼婦と呼ばれる者のソレ。

 

「ゆる……ひて、ぇ……も……らめ、なの……ぉ」

 

涙と涎に塗れた美貌を淫猥に染めながらの哀願など何の意味もなさない。現に、早苗の腰の動きは止まるどころかより激しく、より淫靡な動きへと変わっているのだから。

 

「おいおい、こっちもグショグショだな……そんなに後ろの穴が気持ちいのかな?」

 

意地悪く尋ねる海斗に、呻き声で途切れ途切れになりながら、早苗が反論する。

 

「ひが、ぅ……のぉ……わらし、ぃ……変態じゃ、ないぃぃ……はひぃ!? やっ、らめぇ! ぐりぐり動かしちゃ、やぁあああっ!」

 

直腸粘膜を削り取る様に、腰の動きを円運動へ変化してきた。お尻の内側がめちゃくちゃにされているのがわかる。

呼吸もままならない程に息苦しいというのに、亀頭のエラが直腸を抉るたびに強制的に酸素を吐き出してしまう。

酸欠で赤黒く染まっていく早苗の貌は、しかし恐怖の色は見受けられない。

その理由だと言わんばかりに、早苗の顎を掴んで強引に振りむかせた海斗の唇が彼女の唇を重なり、新鮮な酸素を送り込まれる。

 

「んぶっ、あ、あむっ……んちゅっ、っぱ……んあぅ」

 

おずおずと差し出されたピンクの舌をしゃぶり、舐め上げ、啜る。

くちゅくちゅと唾液の混ざり合おう音を零しながら、貪り食う様に互いの唇を奪い合う。

その様はもはや理性ある人の行為ではなく、本能の赴くままに互いを貪り合う獣の交わりであった。

もう戻れない事を早苗は自覚する。

けれど、恐怖ではない別の感情が込み上げてきた。それが正しい感情なのかはわからない。けれど、こんな普通じゃない関係から始まる運命も悪くないような気がする。

心臓が破裂しそうだ。胸の奥が限界以上に熱くなっている

重ね合された手のぬくもりを放さない様に力の限り握り締めながら、新しい自分が産声を上げるのを心で感じる。

 

その直後、

 

「くっ……出すぞ」

 

燃え盛るマグマの如き熱い精液が早苗のナカに流れ込み、

 

「っぁ――ふぁぁああああぁぁぁぁああああんっ!」

 

直腸壁が激しい痙攣を起こし、絶頂を迎えた早苗の叫びが室内に木霊した。

 

「あ、ひぅ……かふぅ……」

「おっと」

 

意識を失ったらしく、早苗の身体が崩れ落ちた。

胴回りに腕を差し込んで、ブレーカーが落ちたように全身を弛緩させる早苗を抱きとめ、ゆっくりと肉茎を引き抜いていく。

直腸は膣と違って精液を吸収などしない。それ故に、うつ伏せに倒れ込んだ早苗のアヌスからドロリとした精液が溢れ出してきている。

 

「やれやれ、自業自得と言えども、後始末はしとかないとな――っうお!?」

 

思案に暮れそうになった海斗に出来た僅かな隙。

何時の間に意識を取り戻したのか、唐突に目を見開いた早苗が海斗の腕を振り払い、さほど広くないベッドの中で器用に身体を入れ替えた。

今度は自分が押し倒される形になった海斗の胴に馬乗りになると、早苗は彼の首に躊躇なく指を宛がって探る様な視線を向けてくる。

 

「……」

「えーっと……お姉、サン? 回復速いですね……ぐえ」

 

きゅっ、と喉を締められた。呼吸が止まる程ではないが、爪が食い込んで地味に痛い。

 

「私の名前を呼んでみなさい」

 

低い声の要求に全面降伏を締めす両手を上げ(降参ポーズ)をしつつ、馬乗りになった早苗の様子を伺いながら言葉を選ぶ。

 

「えーっと、そう言われましても俺と貴方は今日が初対め……ん?」

 

海斗の弁明を聞きながらベッドの端に飛ばされていた『ある物』を拾い、壊れていない事を確認してから本来の用途にしたがって装着する。

それは理知的な印象を見る者に与える縁なし眼鏡。

興奮が収まったのだろう、普段の彼女に近い凛然とした雰囲気を取り戻している。

 

「……はい? え、いやいやいや……そんなまさか」

「事実は小説より奇なりって言葉、実に的を射ているって思わない? ねぇ、高宮クン?」

「は、はは……ナンデワガヤニイルンデスカ、ハネムラサン」

 

性行為直後の気だるさが残っている頬に張り付いていた、汗の水気を帯びて艶やかな光沢を放つ一房の横髪をかき上げ、獲物を捕らえた肉食獣の如き眼光を放つ早苗がとてもイイ笑顔を浮かべた。

大人びた美貌と(オンナ)特有の色香が混ざり合った姿は、物語に出てくる高級娼婦を連想させる……あくまでも雰囲気だけだが。

 

「おば様に雨宿りしていったらどうかって進められちゃってねぇ……まさかアンタの家とは思いもよらなかったけど」

「……まさか、部屋間違えてた?」

「間違い? ふん、その辺りも追及したい所なんだけど……まずは」

 

ぐぐっと顔を寄せて、不機嫌そうに柳眉を寄せた早苗が要求する。

 

「これからは名前で呼びなさい」

「何故に?」

「わ、私のお、おし……お尻の初めてを奪っておいて今更他人顔するつもり!? そんあの許すわけないでしょーが!」

 

うがーっとご立腹な怒れるうさぎさんに逆らう事は出来ず、大ポカをやらかした間抜けな虎さんは恭順の意を示す以外の選択肢を持ち合わせていなかった。

故に、

 

「……わかった『早苗』。で? 要求は? 殺さない程度に拷問したいってのなら、まあ……程度に寄るが受け入れるぞ」

「見損なわないで」

 

ピシャリ、と海斗の弁明をぶった切る。

てっきり身体を穢されたことに憤慨している物だとばかり思っていた海斗は首を傾げる。

彼女の気性からして、泣き寝入ることはないと思ったからの発言だったのだが、どうやら男に馬乗りになったはしたないお嬢様には気に入らなかったらしい。

 

「今回の諸々の原因は私にあるわ。要は自業自得ね。……そりゃあ、アンタにも原因の一端はあるけど、好奇心に駆られた私が浅はかだったのは理解できてるもの。――アンタが学園であんな風な理由もなんとなく分かったし」

「聡明だな。じゃあ、今日の事は悪い夢、胡蝶の幻みないなもんだったってことでひとつ――」

「それは無理。私が危ない目にあったとことと、アンタに処女を奪われたことは別問題よ」

「え、いやちょっと待て! あの時はアレが最善の一手だったし、お前も同意してただろが!」

「さあ、どうだったかしら? 薬のせいで記憶が曖昧なのよねぇ~」

 

明らかに嘘をついているのは真っ黒なサディスト笑顔の早苗を見れば一目瞭然だ。

けれど、理由はどうあってもひとたび関係を繋いだ女性を蔑ろにすることは海斗に出来ず。

彼の根幹を何となく察している早苗もコレを有耶無耶にされることはないと踏んでいる。

事実、「で、何が望みだ?」 と海斗から妥協案を引き出そうとする質問が投げられたことに、早苗は緩みそうになる頬に力を込めて取り繕いつつ、

 

「そうねぇ……。とりあえず、海斗(アンタ)と葵の関係あたりから説明してもらいましょうか? 急に仲が進展したのは相当な理由があるんでしょう?」

 

海斗に馬乗りの体勢のまま、満面の笑みを浮かべて尋問を開始した。

 

 

――◇◆◇――

 

 

「ふーん、やっぱりここがアンタたちの『愛の巣』だったってワケ……。意外と片付いてるのね」

「掃除は葵がやってくれてるからな。細かいところにも気がつくし、助かってる。――早苗(・・)、アイスコーヒーと麦茶のどっちだ?」

「アイスコーヒーの一択で」

 

「はいよ~」と間延びする返答しつつキッチンでコーヒーメーカーの用意を始めた海斗の背中を眺めていると、隣に座っている『親友』から物申したそうな視線が。誰? など言わずもがな、ご機嫌斜めな葵お姫様その人である。

 

「……ねえ、早苗。どうしてココにいるの?」

「あら、愚問ね。『親友』の家に遊びに来るのがそんなに不自然かしら?」

 

あくまでも冷静に、優雅に切り返す早苗をジト目で見据えつつ、キッチンに引っ込んだ海斗と彼女の間を交互に視線を動かし、

 

「……聞いたの?」

 

何が、とは言わない。

けれど、理解の色を瞳に映して頷く早苗の様子から、海斗経由で彼女が事情を知ったことを悟る。

 

――ついでに、余計なフラグまでこさえたらしい海斗へ憤怒の眼光を叩き込んでおく。

 

ブルリ、と肩を震わせ、キョロキョロとあたりを見渡す海斗は放っておいて、最重要の確認事項を問い質しておかなければならない。

 

「ねえ、早苗。海斗くんと何があったの?」

「ん~? 別に葵が勘繰る様な不埒なことなんてなかったわよ? 気にしすぎ気にしすぎ。――まあ、アイツも複雑な事情を抱えてめんどくさい男だけど悪人じゃないってことはわかったし、まあ、あるい程度認めてあげてもいいかな~ってね。葵のフォローもお願いされちゃったし……てか、アンタ本当にしっかりしなさいよ? いろいろと大ポカしてるみたいじゃないの」

「ううっ、それを言われたら強く言えない私がいるのです」

「ま、そんなに落ち込まないの。これからは私もフォローしてあげるからさっ。例の法案? が可決するなり公表されるなりしたら面倒事も無くなるわよ、きっと」

 

しょぼんと項垂れる葵の頭を“ぽぷぽふ”して困ったように笑う早苗。きゅっと目を瞑ってされるがままな葵もまんざらでなさそうなあたり、事情を知る友人がいてくれることに心強さと安心感を感じているらしい。

 

まあ、もっとも……、

 

「――そうなったら、いざってときに責任取らせやすいしね」

 

ぽそりと呟かれた危険な台詞に飛び上がる勢いで葵が顔を上げると、チラチラ海斗の様子を伺いながら一房の髪を指に絡ませて恥ずかしそうに弄っている完璧に『女の子』な反応を見せる親友のお姿が。

 

「さ、さささ早苗さん!? 本当に二心ないんだよね!? 横恋慕したりしないんだよねっ!?」

「うえ!? な、何をおっしゃられますかお姫様。この私がNTLとかありえないし! こんなのは、その……あれよ! 本当に愛する彼氏が出来るまでの仮初な恋心みたいなものよ! いつか本命と付き合うことになった時のための練習的な! それに大切な親友を預けるに足る男なのか見定めるって意味もあるしね!」

 

葵は気づく。

早苗の頬がピクピクしていたことを。

それこそ、彼女が話を誤魔化してるときに見られる癖であることを。

て言うか、その言い回しじゃほとんど認めてるようなもんじゃ……とはツッコまない。

藪を突いて余計な恋敵を作る訳にはいかないのだ。

ただでさえ、いつの間にか海斗とメールアドレスを交換しあってた雌猫(さらさ)が虎視眈々と爪を研いでいやがるというのに……っ!

 

「ふ、ふ~ん? ソウナンダ……じゃあ、運命の赤い糸が繋がった人と巡り合えば、もう海斗くんに用はないってコトだよね!?」

「まあ、そうなるわね! ――でも、出会えなかった時は……責任……認知……同衾?」

「ちょっとぉ!? ものすごく不安になる単語口走らないでほしいかもっ!? ていうか本気!? 本気で狙ってるの!?」

「……そう言えば葵? 最近ニュースで重婚を認める活動が活発になってるって耳にした記憶があってね」

「どうしてそーゆーこと言うかなぁ! しかも狙いすましたようなタイミングでっ!?」

 

はにかむ様に頬を朱色に染める親友の本気度を感じとり、葵に戦慄が奔る。

信じていた友のまさかの裏切りに、英雄譚の主人公の如き激情が渦巻く胸を押さえながら、叫ぶ。

 

「もぉおおおーーっ! 海斗くんは私のっ! 泥棒猫はご退場下さぁああああいっ!」

「えぇ~……しょうがないわねぇ。じゃあ、愛人とか妾で我慢してあげるわよ。まったくもう、ワガママさんなんだから」

「そーゆー問題じゃないのぉおおーーっ! なんで私が聞き分けのない子みたいな扱いされてる訳!? もうもうもうっ! 海斗くんのお馬鹿ぁああああーーーーっ!!」

 

「え、俺のせいかコレ!?」 とのたまう海斗の主張は、「当たり前でしょっ!?」 という葵の叫び声にかき消された。

 

――後日、紙袋を被った科学者らしい不審人物(気に入ったらしい)の一団に囲まれ、サムズアップと共に「愛人Get乙♪」の祝福を送られて荒ぶる猛虎が降臨する羽目になるのはまた別の話。

 

○結論

(わん)ちゃんと虎さんのラブラブ空間に、ツンツンうさぎさんがログインしたようです。




というわけで、サブヒロNo.2の早苗ちゃんのターンでした。
親友の葵ちゃんを押しのけての、初アナルセックス♪
そんでもって、意外と狂暴な野生(ツン)さみしんぼな一面(デレ)を併せ持つ『うさぎさん』が早苗ちゃんのイメージアニマルでした!
……ふふふ、これで3Pフラグも成立ですな!

――ちなみに、早苗ちゃんはまだ処女です。清い身体なんです! ← ここ重要ポイントですよ!


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