※この作品はR-18です。

『えっち』から始まる恋があってもいいじゃない?   作:カゲロー

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これが、今年最後の投稿になります。
本日のヒロインは、サブヒロNo.1のお嬢様。
ツンツン枠は早苗嬢がいるので、甘えんぼ系仔猫風味で仕上げてみました。

それでは皆様、よいお年を~。


第22話 裸エプロンな後輩はお好きですか?

『聖マリアジェンヌ学園』

 

良家のお嬢様にしか足を踏み入れることが出来ない聖域と呼ばれるそこは、高貴な血統に連なる少女たちを正しい淑女に育て上げる学び舎だ。

そこに在籍している天凰寺 沙良紗は、己の所属する教室の窓枠に両腕をつき、その上に顎を乗せてだれきった表情を浮かべていた。

ツインテールに纏め上げられた薄桜色の髪もいつもより『へんなり』していて、艶やかさが幾分か欠けている。

 

「はぁ……」

 

溜息が零れる。

同世代のクラスメートに比べて、ちょっぴり小柄な体型であると言えど、彼女もまたこの学園に入学する資格をうまれながらに持つご令嬢。

たとえ、両親の事情で普通ではない状況に落とされようとも、彼女が持つ美しさと気高さまで損なわれた訳ではない。

事実、沙良紗が溜息を零した瞬間、教室で談笑していたクラスメートたちが一斉に振り向き、頬を紅潮させているのがその証拠であると言えよう。

 

――ね、ねえ、天凰寺さんの事、どう思われます?

――やっぱり、なんだか雰囲気をが変わられた様に思いますわ。

――やはり、そう(・・)なのでしょか? そう(・・)なのでしょうかっ!?

――ええっ!? わ、わたくしに聞かれても困ってしまいますわっ。ああ、でも、やっぱりお話を聞いてみたいようなっ!?

――ですが、デリケートな問題ですし……その、あけすけにお伺いするのは勇気がいりますわ……。

 

ひそひそひそひそひそ……。

 

(あーもー、うっとーしーわねー)

 

思わず、頭を抱えたくなる沙良紗。

クラスメートたちも諸々の事情を知らされているのでこういう反応はある程度予測していたといえ、動物園の珍獣みたいに遠巻きに眺められながらあれやこれや噂話されるのはなかなか堪える。

かといって、自分から口火を切るのもなんか違う気もする。

もういっそ、思い切って質問攻めにしてくれた方が気は楽なのかもしれない。

 

「天凰寺くん、ちょっといいか?」

「ン……あによ」

「聞きたいことがあるんだ」

 

声をかけてきたのは、陽光を反射して煌びやかに輝く銀髪を靡かせた友人のひとり。

学園理事の愛娘であり、クラス委員も務める才女だ。

沙良紗にとってもかけがいの無い友人ののひとりであり、それ故に、今の彼女が浮かべているように何かを問いただし気な表情を向けられたことをショックに感じる。

いつかこの時が来るのは予想していた。

けれど、やっぱり身体が震えるのを押さえられない。

友人として接してきた相手から蔑みの視線を向けられる……そんな未来を脳裏に描き、言いようのない恐怖が沙良紗を襲う。

……だが。

 

「最近のキミが妙に大人っぽいのは……やっぱり、アレをシタから……なのか?」

「へ? そっち?」

 

そう、沙良紗は勘違いしていたのだ、

そもそも、クラスメートが彼女に問いたかったのは、マスコット的可愛らしさで知られていた彼女が、ある時を境に、愁いを帯びたオトナの色気を振り撒く様になったことが気になって仕方が無かったからだ。

聖マリアジェンヌ学園の生徒には、どんな時も雑事に惑わされず、己の目で物事を真摯に見定めるよう教育が施されている。

由緒正しい良家のご令嬢なので、卒業後に控えているであろう政治的理由からくる婚約後に役立つ花嫁修業的な授業も、もちろんある。

だが、学園が真に推奨しているのは、企業の重役候補として社会に飛び出した際、偏見や狭い認識という誤ったエリート意識を持たない、良家の子女として相応しい教育を施すこと。

故に、高級層と呼ばれる人種が起こした被害を受けてしまった沙良紗を蔑んだり、偏見を持ったりなどせず、以前のまま友人として接している。

クラスメートたちからの友愛は心より来るものだと再認識できた沙良紗は、思わず込み上げてきた熱い感情を誤魔化すように腕で目元を押さえ、目尻から溢れてくる涙を拭う。

クラスメートたちは、その様子を優しげな微笑みを浮かべながら無言で見守る。

仲間を、友を思いやること。

それこそが、聖マリアジェンヌ学園の生徒の胸に宿る、絶対不可侵の信念なのだから。

しばらくして、まだ若干眼元が赤いもののどうにか平静を取り戻した沙良紗。

彼女の様子を見て、満足げに頷いた銀髪の友人は、どこか沙良紗に似たチェシャ猫のように悪戯っ子な笑みになって尋問を再開する。

 

「で、どうなんだ? キミが変わったのは、やっぱりその……え、えっ……えっ……! ~~~~ッ!? さ、流石に恥ずかしいな」

「あ、アンタたちねえ……!? そんなに興味あるワケ!?」

「「「「「はい!」」」」」

「いい返事よねぇ、もお!?」

 

頭を掻きつつ真っ赤な顔であたりを見渡せば、いつの間にか詰め寄ってきている興味津々なご様子のお嬢様方のお顔も真っ赤っか。

純情で初心なお嬢様方の大半は、かなり偏っている上にソフトな知識しかお持ちでないようだ。

全生徒が寮住まいである聖マリアジェンヌ学園の敷地内には、休日に使用可能な娯楽系の施設も一通りそろっている。

だから、わざわざ敷地から出てまで外で遊ぼうとする者の数は少なくなり、どうしても世間知らずな箱入り娘に育ってしまう。

実家の仕事関係についての知識は十分なくせに、俗物的な一般常識……特に、『そういう系』の知識はほとんど入ってこない。

なにせ、インターネットが繋がっているくせに、ぐーぐる先生でアダルト系の検索する勇気も無い純情キャラばっかりなのだ。

教師陣も、あえて必要以上に性知識を教えることを避けている節があり……そんなこんなで、見事なまでに性知識限定で超絶初心な純情箱入りお嬢様集団が形成されてしまったわけだ。

そんな真っ白軍団の中に、突然黒に染まった劇薬が投げ込まれたら、いったいどうなってしまうだろうか?

その答えこそが、この状況。

昼休みだと言うのに、沙良紗の教室は頬を真っ赤にしたクラスメートの熱気で支配され、廊下からも窓やドアから覗き込むようにこちらを伺う生徒たちの視線が多いこと多いこと。

学年の違いなど欠片も感じさせず、一糸乱れぬ統率がとられた彼女たちのお目当ては、黒く染まってしまった憐れな生贄……沙良紗のアレ体験談に他ならない。

 

「あーうー……~~ッ!! わかったわよ、話せばいいんでしょっ!? こうなりゃ、ヤケよ! 答えてあげるから、聞いてみなさいっ」

 

教師まで包囲網に参加するこの空気に耐えられず、遂に沙良紗が降伏する。

湧き上がるお嬢様方。

年頃のお嬢さんにとって、色恋やエロ系の話題が最高のご褒美なのは世間共通の真理であったらしい。

 

「で、では、改めて……こほん。えと、君はもう……ご、ご経験済みなのかな?」

「ドストレートで来たか~……あー、まあ、その、ねぇ? ……うん」

 

きゃぁぁぁあああっ♪ とお嬢様方が湧き上がった。

 

「て、天凰寺さん!? 初めての時は、やっぱり痛かったりしたのですかっ!?」

「先生!? なんで貴方まで混ざってんですか!?」

「いえ、女子校の女教師を務めていると出会いがなかなかないもので……」

「生々しいお話はノーサンキューですよ!? ――それと。まあ、確かに最初は痛かったです」

 

教師まで参加したことで箍が外れたのか、「血が出るって本当ですかっ!?」 「やっぱり初めはキスからですか!?」 「レモンの味がしましたの!?」 と矢継ぎ早に質問が飛ぶ。

「うん。私の場合はほんのちょっぴりだったケド」「キス……だったかなあ? なんか頭を撫でて貰ってたような気がする。私を落ち着かせようとしてくれてたのね、きっと」「味なんて別にしなかったわよ? あ、でも男の人の唇だ~みたいな不思議な感じがしたわね」と、それらひとつひとつに律儀に答えていく沙良紗。彼女が答える度に、生徒なお嬢様方と教師なお姉さま方から歓声が湧き上がる。

やがて質問は沙良紗のお相手についてのものへ変わっていく。

 

「ちなみに、お相手はどんな殿方だったんだ?」

「え? 先輩のこと? うーん、どんな人かって言われても答えにくいっていうか」

 

これは事実。

沙良紗の知る海斗は仕事様に意識を切り替えた状態なため、普段の海斗をあまり知らない。

何せ、プライベートで最後に会えたのは、先日のレジャー施設での一件のみ。

あれ以降、時折メールのやり取りを交わしているとは言え、海斗の総てを知っている訳ではないのだ。

一足先にオトナの階段を昇ってしまった少女の言葉を聞き逃してたまるものかと清聴するお嬢様方に囲まれながら、教室の天井を仰ぎ見ながら難しそうな顔で唸る沙良紗に助け舟を出したのは、またもや銀髪の友人だった。

 

「それじゃあ、写真とかはどうだ? 確か以前、外のプール施設に遊びに行った日の夜、妙にご機嫌だったじゃないか。プールでデートとかしてたんじゃないのか?」

 

流石はルームメイト、よく見ている。

彼女の鋭い指摘に「あっ! そう言えば」と呟きながらスカートのポケットにしまい込んでいた携帯を取りだし、起動させる。

タッチパネル式のモニターに光が灯るなり画像データを表示させるべく、操作する。

しばらく、指でタップする音が教室に響き、観客となったお嬢様方の期待と興奮をいやおうなしに呷っていく。

 

「んー、っと。ああ、あったあった。ホラ、この人よ」

「ほう? どれどれ……おお!」

 

画面が見えるよう差し出された携帯画像を覗き込んだ少女が、おもわず驚きの声を上げてしまった。

好奇の色で瞳を染めて映し出された画像を注視する彼女の背中から覗き込んできたお嬢様方も、次に次に黄色い歓声を上げていく。

沙良紗が見せたのは、あのプールの退館時、謎の美女に連れ去られた沙良紗を気遣い、彼女が出てくるのを待っていた海斗と記念に撮った一枚。

施設の正面門をバックに、私服に着替えた海斗と腕を組んだ沙良紗の姿が映し出されていた。

プールを上がった直後ということもあって、海斗の恰好は幾分ラフな出で立ち。

野暮ったい伊達眼鏡を外し、前髪もかき上げられた完全私用モードの海斗は、彼の持ち味でもある野性味を感じさせる雰囲気を纏っている。

それでいて、左腕に抱き着いている沙良紗を見つめるまなざしは柔らかく、愛しいものを見る様な優しい光を灯す。

おまけに、服装こそごくごく有り触れたシャツとズボンという組み合わせであるものの、生地が薄いのか、鍛え上げられた胸板や腕の盛り上がりが生々しく見え隠れしてしまっている。

それはまさに乙女のハートを撃ち砕く凶器。

穢れを知らない純粋培養な乙女たちにとって、高宮 海斗という存在はあらゆる意味で目の毒になってしまったようだ。

事実、銀の乙女を筆頭に、垣根を超えた団結を見せるお嬢様方がキャーキャー叫びながら代わる代わる写真を覗き込み、ぽわっと頬を朱に染めながら親しい友人たちと意見の交換を交わしている。

生々しい知識を得る勇気を持てないからこそ、彼女たちの性知識の大半はとても優秀な乙女の妄想力によって成り立っている。

彼女たちは、今まさに優秀すぎる思考力をフル稼働させた脳内イメージによって高宮 海斗という存在を偶像化し、彼が沙良紗をどうやってオトナにしたのか? と生々しい妄想を脳裏に描いているのだ。

現に、想像力の豊かな淑女の何人かは、妄想の中の沙良紗を自分に据え置いてしまい、『自分が海斗に迫られ、ベッドに押し倒されて荒々しくも逞しい腕で抱きしめられて……オトナの階段を――!』 と生々しい妄想イメージを描いてしまったらしく、勢いよく鼻血スプラッシュを撒き散らしてぶっ倒れてしまっている。

その中に、当然のように含まれている教師陣が担架に乗せられて保健室に運ばれていくのを尻目に、好奇心でギラギラ輝く眼差しを浮かべたお嬢様はさらなる情報開示を沙良紗に求める。

 

「な、なるほどなぁ……。つまり、この殿方がキミの恋人なんだな?」

「え? ――ああ、勘違いしてんのね。……違うわよ。私とセンパイはあくまでお仕事上のお相手ってだけなの」

「仕事ッ!? な、なんというかオトナな香りが漂うキケンな響きだな……。あれ? でも、キミ……彼の事、好きなんだろ? 男性恐怖症のキミが異性の写真を大事に持っているということはつまりそう言う事なんだと思ってたんだけど?」 

「うっ!? ちょ、ドストレートで来たわね……」

「今更、誤魔化しは無しだぞ。で、どうなんだ?」

「うぅ~~……そ、そう、だけど――でも、ダメなのよ。私はセンパイの一番になれないから……」

 

沙良紗は聡明だ。

故に、気づいている。

海斗の特別が……彼の中で一番大切なモノは、自分じゃないということを。

今の社会は、一夫一妻制。

そうでなくても、実家の都合でごたごたを背負い込んでいる自分の総てを押し付けるのは、やっちゃいけない事なんだと自分の中で決めてしまっている。

敵わない想いだと心のどこかで自覚しているからこそ、素直に甘えることができるし、彼の無自覚な優しさに縋りついてしまいそうになる。

けど……それでも。

迷惑をかけることだけはしたくない。

寂しげに微笑みながら言い切った沙良紗の言葉に、静寂が舞い降りる。

先程まで騒いでいたお嬢様方は戸惑いを顕わにしながら口を噤み、身近な者と顔を見合わせながら小声で何ごとか言葉を交わしている。

そして――、

 

「?? すまない、キミの言ってる事がよく分からないんだ」

「はい?」

 

恥を忍んで失恋の覚悟を語ったというのに、まさかの返し。

口をぽかんと開けて声の主たる銀髪の友人を見上げると、腕を組んで思い悩む様に頭を垂れていた彼女は、しばらく「うむむ……」と呻いた後、勢いよく顔を上げた。

 

「そもそも、どうして一番にこだわる必要がある? あ、もしかして知らないのか? しばらく前、国会で可決された重婚了承の法案のこと」

「はい!? え、なにそれ!? 知らないんですけど!?」

「あー、やっぱりか……。なんでもね、昨今問題視されている出産率向上のための解決案の一つとして、政府が認証した検査をクリアした男女であれば、複数婚を許可するというものだ。ニュースで聞いた限りでは、とある男性が遺伝子的に複数の女性との間に子どもを作りやすいケースが発見・証明されたらしいんだ。だから、当事者が希望する場合に限り、少しでも出産率を向上させるために複数婚を許可する……だったはず」

「えっと……? それってつまり……どゆこと?」

「つまりな。キミと写真の殿方の相性がいいと政府の検査で証明できたら、一番になれなくても彼と一緒にいられると言うことさ。どうだ? 最初からあきらめたりせず、確かめてみては」

「そう……なんだ……。ははっ、そっかあ……。もしかしたらセンパイと一緒にいられるかもしれないんだ……私」

 

困惑と喜びがごちゃ混ぜになった泣き笑いを浮かべる沙良紗を抱きしめ、優しく背中を擦る。

友人たる少女は、白馬の王子様の存在を信じている。

悲劇に見舞われ、家族とも早々会えなくなってしまった親友に笑顔を取り戻してくれた海斗こそ、沙良紗にとっての王子様だ。

だからこそ、幸せになってもらいたい。

童話のように悲劇で終わりなんて認めない。

親友を想ってくれているであろう彼への感謝と親友を幸せにしてほしいと言う想いを胸に抱いて、銀の少女は優しげに微笑む。

 

(沙良紗の心を奪ってしまったお兄さん、責任逃れは許さないからな)

 

でも、きっと大丈夫だ。

例の検査がどういうものなのかは全く分からない。

それでも少女は、寄り添って歩く海斗と沙良紗の未来を幻視して、それは真実になるという確信じみた予感を抱いていた。

 

 

「そもそも、家庭の事情を理由に気後れしてはダメだろう? 奪ってやろうと言う気概で押さなければ。忘れたのか? 聖マリアジェンヌ学園五箇条のひとつを!」

「……ふっ、忘れる訳ないじゃない。五箇条その1! 〈恋とは簒奪すべし戦いである〉!」

「その通り! 一番になれないのが何だ、その程度の逆境、“保健(殿方のハートを端掴み♪)体育(ドキドキ性技体験コーナー)!”で学んだ技術で乗り越えてみせろ!」

「っ!? ――ええ、そうね、その通りよ。ありがとう親友。私、そんな簡単な事を忘れてしまっていたわ……。そうよね、雌犬なんかに気遅れしてやる義理も義務もないわよねっ! 要するに、センパイを私にメロメロにしてやれば済む話なんだからっ!」

 

猛々しく叫びながら拳を振り上げ、喉を震わせて宣言する。

恋という戦争を勝ち抜き、勝利の栄冠(かいと)を我が手中に収めてみせると!

新たな目標に胸に抱き、輝きを取り戻した沙良紗。

へんにゃり垂れていた桜色のツインテールも、こころなしパリッ! と艶とハリを取り戻したかのように見える。

復活を果たした美少女を讃える様に「おめでとう」「応援していますわ」「頑張ってくださいっ」と口々に沙良紗を鼓舞する言葉を口にしながら、満願の想いを乗せて拍手を送るお嬢様~ズ。

煌めく笑顔を取り戻した親友の復活劇間近で目撃した少女は、目尻に浮かんだ涙をそっと拭いつつ、これからの戦略を練るため、手を叩いて周囲を落ち着かせた。

 

「さてさて、それでは具体的にどのようなアプローチが有効的か議論を開始しようと思う。なにか、具体案のある子はいるかい?」

 

クラスを見渡しながら問いかけた銀の少女に応え、幾人ものお嬢様方の白魚のように透き通った細腕が雄々しく振り上げられる。

 

「はいっ! 私は手作り料理で胃袋をキャッチ作戦が良いと思います! 殿方の理想は、『玄関を開けた瞬間、鼻孔を擽ってくる空腹を刺激してやまない手作り料理の芳醇な香りと、「お帰りなさい、アナタ♡」とはにかむ新妻の笑顔でお出迎え』であると統計学で導き出されていますっ」

 

勇気を出して通販購入した愛読書たる少女漫画の一ページを開きながら、声高々に主張する。

彼女の友人であるお嬢様方は、配達業者という未知なる人物に乙女の秘密(通販商品)を抱き抱え、笑顔の仮面の下では乙女にハアハア欲情しているかもしれない(←超失礼)男に言葉攻め――という名の荷物に誤りが無いかの確認――という試練を乗り越えた勇者の功績を讃え、羨望の眼差しを向けていた。

 

「お待ちなさい! 確かに新妻アタックは素晴らしい破壊力を約束された勝利の鍵でありましょう! ですが――所詮は参考書に記された過去の産物! 未来を生きる私たちには、ここからさらに新しいトッピングを重ねなければ勝ち残れませんわよっ!」

 

ふんわりとカールした髪を掻き上げ、見る者を圧倒するすばらしい『お胸さま』を“たゆたゆ~ん”と揺らせたお嬢様が反論する。

こんなものでは、まだまだ足りないのだと!

 

「あ、あのお方はっ!?」

星凪(せいな)お姉さまですわ! 少女漫画(ソウル・バイブル)をご購入されるのみならず、通販でなく直接書店に足を運び、降り注ぐ好奇の視線という試練を乗り越えて直接ご購入されたという伝説を作られた英雄ッ!」

「ああ……麗しのお姿を、お眼にかかれる日が来るなんて感激のあまり濡れてしまいそうですわ――ンンッ♡」

 

スカートの上から下腹部を押さえ、身体を小刻みに震わせるお嬢様その一。

恍惚で蕩けた頬は朱色に染まり、はあはあと荒い呼吸を繰り返すその顔は、一般人の抱いているお嬢様像を爆砕して余りある破壊力を秘めていた。

 

「あらあら、はしたないですわよ。さあ、このナプキンをお使いになって」

「あっ、ありがとうございます。では、お言葉に甘えて……」

 

お嬢様その二から白い布を受けとったお嬢様その一は、内股気味にそそくさと離脱。

淑女としてあるまじき行為だと叱咤する輩は存在しない。

何故なら、彼女と同じように興奮顕わに盛り上がっているお嬢様しかここにいないからだ。

『赤信号、みんなで渡れば怖くない』の理論である。

……愛武学園の生徒といい、この国の未来が途轍もなく心配になる光景だ。

しかし悲しいかな。あちらでの海斗のようにキレのあるツッコミ力を宿す常識人(救世主)は、こちらには在籍していなかったようだ。

英雄のご登場にさらに盛り上がる一同のボルテージは限界突破(リミットブレイク)

午後の授業開始を告げるチャイムなど知ったこっちゃねえと言わんばかりに興奮の坩堝が拡大の一途をたどる。

 

「先輩、ならば貴女の考えを聞かせてもらおうか。お帰りさないと手料理のコンボ……これに何を加えようと言うのだ?」

「ふっ、それはもちろん……『裸エプロン』ですわっ」

「な……!?」

『なんですってえーーっ!?』

 

『裸エプロン』

生まれたままの素肌の上にエプロンという調理作業専用の衣装のみを纏った究極的乙女フォーム!

生地の面積によっては乳房の先っちょしか隠せないため、すべすべの脇腹や恥骨を晒してしまうという恥ずかしさと、見えそうで見えない背徳感を両立させた至高の装備!

背中に回された紐で結ばれただけのソレは、ほんのわずかに身じろぎするだけで乳房のみならず、女の子の大切な所まで見られてしまう。

胸に押し当てられたエプロンの生地とはちきれんばかりの巨乳が描き出す“はみ乳”。

腰ひものリボン結びできゅっと引き締まった白桃のような“お尻”。

前掛けのようなエプロン生地が風に煽られることでチラチラと覗く“若草の茂り”。

恥ずかし気でありながらも、愛しい殿方に喜んでほしいと言う健気で健康的な美の極致を作りだす最強装備……それこそが『裸エプロン』!

聖マリアジェンヌ学園 乙女力ランキングトップ10に入席する銀の少女ですら、あまりに恥ずかしすぎて、誰もいない自室の中でブラとショーツの上からエプロンを纏うのが精一杯だと言うのに。

この先輩は、それをヤレというのか! 

 

――っ!? ま、まさか……彼女はもうすでにっ!?

 

「もしや先輩! 貴女はもう『裸エプロン』を経験済みだと言うのですかっ!?」

「え!? え、ええと……その……」

 

じぃ~っと擬音がついていそうな熱い視線。

あさっての方向を見つめながら冷や汗を流す耳年増なお嬢様。

いまさら、それっぽい知識を開帳してみましたっ♪ なんて言いにくい空気に、内なる悪魔と天使の激闘(全5章構成。涙あり、感動あり、ロマンスありのスペクタル超大作)を経て――、

 

「ま、まあ、この私からしてみれば造作もありませんことよ!」

 

見栄を優先させることにした。

純粋に憧れの眼差しを向けてくれる後輩たちの純真な心を裏切ってしまい、内心で滝のような涙を流す見栄っ張りお嬢様。

勝算の声を浴びながら頬を引きつらせていくお嬢様の横顔から真実を察した沙良紗。

けれど、指摘はしない。

一応、自分のためを思っての助言だったと受け止め、見栄っ張りお嬢様の提案を吟味していく。

 

(裸エプロン……そう言えば、カントクに参考資料だって見せてもらった先輩の出演作にはそーゆーシチュエーション? は無かったよね? てことは、寧ろ新鮮? ひょっとして、私が初めての裸プロ娘!?)

 

「――よし、イケるわ! 後は、これから先にも効果が残る様な一手が欲しいところだけど……」

「ふっふっふ……悩んでいるようだな、親友。だが、安心したまえ! この私が素敵に素晴らしいナイスアイディーアを授けてあげようじゃないか!」

「……試す価値あんの?」

「任せなさい。私の情報収集力――という名の妄想力(ボソッ)――を行使すれば、殿方を骨抜きにする策略の一つや二つ、児戯にも等しい!」

『おおっ! さすがです、お姉さま』

「……まあ、いーケド。とりあえず、教えてよ」

「任せろ。いいか、つまりだな――」

 

ルームメイトの世間知らずを知っているため、半信半疑な沙良紗であったが。とりあえず聞いておこうかと清聴の構え。

止める者のいなくなったことで開演した事実2割、妄想8割で構成されて間違いまくった恋愛常識の熱弁を振るわれた沙良紗が、後日、海斗相手にとんでもないことをしでかすことになるのだが……この時点ではまだ誰もそれを知らないのだった。

 

 

ちなみに、全校生徒を巻き込むこの騒動によって午後の授業は一時休講。

騒ぎに参加していた教師陣が、学園長直々にお叱りの言葉を受けることになった。

 

「まったく! そんな面白い事が起こったなら、どうしてわたくしを呼んでくれなかったのですか!?」 ――と。

 

聖マリアジェンヌ学園 学園長 エウレシア・マリア・カストゥールド(58歳 独身 処女)

 

男女合体に興味津々なまま大人になった、スーパー(元)お嬢様がトップに君臨するお嬢様学校の日常は、こうして過ぎていく。

 

 

――◇◆◇――

 

数日後、撮影の仕事が入った沙良紗は高宮本家の撮影所にいた。

撮影室の隅でパイプ椅子にちょこんと腰掛け、慌ただしくセッティングを行っているスタッフをぼんやり眺めていると、ポンと肩を叩かれた。

にゃ? と子猫のように首を傾げながら振り向いてみると、スポーツドリンクを持った海斗が沙良紗のすぐ隣で佇んでいた。

沙良紗がぼんやりしている間に到着したようで、僅かに汗ばんだ額を手の甲で拭っている。

 

「飲むか?」

「うん」

 

差し出された未開封のスポーツドリンクを両手で受けとり、まずはひんやり冷たいソレを頬に当てて清涼を楽しむ。

口を『ω』にしてすりすり頬ずりする仕草は、まさに子猫。

微笑ましさを感じる空気に当てられた海斗の腕が吸い寄せられるように子猫ちゃんの頭に引き寄せられ――ぽむりん♪ と優しくタッチ。

かいぐりかいぐりと撫でられれば、うにゃう~♪ と可愛らしい喜声が出てしまう。

 

『(和む……)』

 

ほんわか和みムードを振り撒くメインキャストの様子を微笑ましそうに流し見つつ与えられた仕事を済ましていくスタッフたち。

プロの矜持か、子猫ちゃんが喉元ゴロゴロされる頃には本日の撮影の準備が整った。

セットや小道具に不備が無いか、最終チェックを済ませた海斗の父(カントク)が台本の表紙をパンパン叩きながら一同の視線を集める。

 

「はいはい、ちゅうも~く! 今日のテーマは《ファミレスでご奉仕》で~す。海斗にお嬢ちゃん、台詞は覚えているな?」

「ああ」

「はい」

「よろしい。では早速始めようか。衣装は控え室に用意してあるから着替えてきてくれ。――ああ、そうそう、お嬢ちゃん」

「はい? なんですか、カントクさん?」

 

急かされるまま更衣室に向かおうとした際、何故か沙良紗だけ引き留める監督。

訝しみながら振り返る海斗を、追い払うようにシッシッと手を振ってから、沙良紗にしか聞こえない音量で告げる。

 

「(お嬢ちゃんの控え室の机にサプリメントみたいな箱が置いてあるから、その中の一錠を呑んどいて欲しいんだ)」

「(え? あの、なんなんですか……?)」

 

男性恐怖症からくる震えに耐えながら――それでも、徐々に腰を引いて離れようとしているが――問い返す沙良紗に、監督は一言、

 

「(撮影でデキちゃったらアレだろう? 体調に影響しない妊娠抑制薬を飲んでおいてほしいんだ)」

 

どうやら、彼なりの気配りだったようだ。

家庭の事情やらいろいろなゴタゴタがある中で、将来の選択肢を狭める可能性がある危険な芽は先んじて潰しておこうと考えたらしい。

もっとも、内心では海斗が沙良紗を孕ませても養ってやれるだけの甲斐性はあるだろう、何せこの儂の息子だからなっ! とか考えていそうだが。

言われた言葉の意味を噛み締める様にしばし逡巡した後、仰々しく頷いた沙良紗。

彼女の反応を見て満足げに破顔した監督は、話は終わりだと告げて着替えを促す。

頷きを返し、小走りで着替えに向かう沙良紗。

その横顔は、何かを決断したモノだったことに気づく者は、誰一人として存在しなかった。

 

――◇◆◇――

「も、申し訳ありませんお客様……。なんと、なんとお詫びすればよいか……」

「申し訳ありません、ねぇ……マニュアル通りのお詫びの言葉だな。上っ面だけの謝罪なんて結構なんだけど?」

「申し訳ありません! 申し訳ありません、お客様! どうか! どうかお許しをっ」

 

ファミレスのフロアから壁を挟んだ隣部屋に、怯えと悲壮を混ぜ合わせた少女の声が悲しく響く。

近隣で可愛いと評判のウエイトレス服を纏った少女が、顔を青ざめさせて何度も頭を垂れている。

少女の対面には、パイプ椅子に腰掛けて腕を組み、憤慨冷めやらぬといった表情の青年。

今にも泣き出してしまいそうな少女を冷めた眼差しで睥睨しながら、謝罪の度に高い位置で結んでいる薄桜色の髪がふわりと舞う様に胸が躍る自分がいることに青年は戸惑っていた。

なぜ、彼が給仕であるウエイトレスの少女に謝罪されているのか?

それは遡る事十数分前、注文したドリンクを運んできた少女が足を滑らせ、あろうことか客である青年のズボンに中身を掛けてしまったのだ。

ズボンの生地にべっとりと染み込んだ柑橘類の匂い。

変色し、クリーニングに出しても元には戻らないとひと目で解る惨状を起こしてしまった少女が愕然とし、慌てて駆けつけてきた責任者に謝罪を受けながらスタッフの控え室であるここに案内され、下手人である少女本人から謝罪を受けているのだ。

ズボンは洗濯させてもらいますと責任者に渡したので、青年の下半身は大きめのバスタオルを巻いている恰好になっている。

おまけに下着まで匂いが染みついてしまったので、ズボンだけでなく、下着や靴下まで洗わなければならない。

どうして食事に来てまで、こんな恥辱を味わわなければならないのかと怒りを顕わにする青年に何とか許しを請おうと、少女は繰り返し繰り返し謝罪を行い続ける。

 

「……本当に悪いと思ってるのか?」

「は、はい! もちろんです!」

 

しばらくの間、無言を貫いていた彼がようやく言葉を発してくれたことが嬉しかったのか、勢いよく顔を上げた少女の視線が自分を見下ろす青年に向く。

 

「そうか。じゃあ――とびっきりに甘いスイーツを頂こうか?」

 

…………

……

 

「あむっ……はぁっ……はぁ……はあうっ!」

 

ピチャピチャピチャ……、と淫靡な喘ぎ声を零し、誠心誠意の給仕を行う少女。

パイプ椅子に腰かけた青年の股の間に身体を滑り込ませ、うっすらと痣のようになっている火傷の箇所……肉茎に甘いクリーム(だえき)を塗りたくる。

小柄な体躯とはアンバランスなほど豊かに実った双乳でそそり返るソレを挟み込み、心地良い圧迫感を伴って前後に揺れる。

パイズリ……という奴だ。

客である青年の注文……乙女の果実という極上のスイーツをご馳走するべく、給仕(ウェイトレス)たる少女のご奉仕が行われているのだ。

しかも、ただのパイズリなどではない。

青年は腰に巻いていたタオルを解き、下半身を顕わにさせていた。

照明の明かりに照らされて、雄々しく自己主張する肉の剛棒が滾るほどの熱を帯びて少女の前に曝されている。

一方、片手には収まらないソレに奉仕を行う少女は、ウエイトレスの制服のみならず、下着まで脱いだほぼ全裸の状態。

いや、たった一つだけ彼女が身に着けている物がある。

それこそが――腰掛けのように纏ったエプロン。

胸当ての無い腰から下の前部分だけを覆う“前掛け”と呼ばれるタイプの純白のエプロンだ。

端にフリルがあしらわれた可愛らしさを前面に押し出したデザインで、素肌にソレだけ着けている――限定的な裸エプロン姿――という状態なのに、少女は給仕なのだという印象を感じさせる。

 

「ああ……流石はウエイトレスさんイチオシのスイーツだな。最高に甘い舌遣いだ」

「んっ、んんっ……ちゅぶっ……っぷあ……! あ、ありがとうございまひゅ……」

「くっ!? さ、先を加えたまま喋らないでくれないか? 歯が当たって痛い……」

「あう……も、もうしわけありません――センパイ《・・・・》」

「あ、こら」

 

コツンッ、とセットの外側で撮影を続けているカメラに見えないよう気を遣いながら、少女――沙良紗のおでこをコツる。

『お客様の青年に粗相をしてしまい、謝罪のためのイチオシスイーツをご馳走しているウエイトレス』……というイメージビデオ撮影を行っている沙良紗は、お客様役の海斗にパイズリを継続しながら、亀頭の先端から溢れ出してきた透明のシロップをピンク色の舌でチロッと舐め上げ、理性を蕩けさせるように甘い色香を滲ませながら笑う。

 

「えへへ……ごめんね、センパイ」

「まったくお前は……こーゆーのは、役に成り切れないと後が辛いぞ?」

「えー? そんなことならないわよ。だって私がご奉仕(こんなこと)する殿方は海斗さん(センパイ)だけなんだからっ」

 

集音マイクに拾われない程度に控えた音量で会話を交わす間も、撮影とご奉仕は続いていく。

舌先で尿道口をつつき、三角形の舌の先端に先走りをくっ付けて顔を引く。

すると、海斗の肉茎と沙良紗の舌の間に粘質な糸の橋が引かれ、少女の元から唾液の雫が橋を伝うように流れていく。

だが、粘性の強い唾液の重さに耐えきれず、半ばあたりでぷちりと千切れ、淫蕩な雫となって床へと落ちていった。

ピチョンピチョン、と聞こえてくる水音が、何故か耳の奥に残る。

鼓膜に焼き付いた残音は欲望を燃え上がらせる情熱の笛と化し、二人の体温をいやおうなしに高めていく。

火照った頬の熱に侵された雄と雌は、互いを求める飢餓にも似た激情が鎌首を擡げてきているのを感じとり、より動きを大胆なソレへと変えていく。

沙良紗は双丘で挟み込んだ肉棒を擦る動きに変化をつけ出した。

等間隔で上下に揺らすだけでなく、左右の乳房を踊らせるように戦慄かせ、刺激に緩急をつけたのだ。

さらに、胸の動きに合わせて顔を出した亀頭を咥えこみ、ねっとりとした唾液で満たされた口内で扱く様に舐めていく。

くぐもった沙良紗の声を聴くたび、海斗の背筋をゾクゾク感が駆け昇る。

どんどん高まっていく射精へのカウントダウンを歓喜するかのように、下腹部が小刻みに痙攣してしまう。

 

「おいおい……嘘だろ」

 

海斗は思わずと言った風に声を漏らしてしまう。

女性経験が少なくない己が、こうも容易く射精に導かれている。

この症状に似通った経験を、彼は過去にも味わったことがある。

沙良紗のパイズリは確かに情熱的で気持ち良い。

だが、この業界で仕事をこなす女俳優たちの技量に比べれば、まだまだ拙いレベルのシロモノだ。

海斗はこれまでの仕事の中で、性技に富んた経験豊富な女性と幾度となく肌を合わせてきたことで快感の高まりをある程度自分でコントロールできるようになった。

 

しかし、今はどうだ?

沙良紗の想いを前面に押し出しただけの愛撫(パイズリ)をほんの少し受けただけだと言うのに、海斗の肉茎は今すぐ爆発させろと言わんばかりに震え、滾っている。

性技のレベルとか、独特の雰囲気(シチュエーション)とかいう問題ではない。

ただ純粋に、お互いの『身体』と『心』の相性が良すぎるのだ。

 

だから、撮影スタッフ(赤の他人)に観察されている状況なのに、嫌悪感や怯えが無い。――目の前の『相手』しか見えていないから。

だから、身体の関係から始まった交友が、いとも容易く思慕へと変わった。――この人なら全部曝け出してもいいと思えてしまうから。

 

「ちゅるちゅるっ……ちゅっ、ぷぁ……んんっ、れろぉ……ど、どお? センパイ……気持ちイイ……?」

 

沙良紗はどこか挑戦的な……けれど、隠しきれない情欲の色で瞳を染めながら問いかける。

ここで上っ面だけの称賛を送るのは簡単だ。

だが、彼女が求めているのは使いまわされた言い回しなどではなく、『沙良紗(・・・)の奉仕を海斗(・・)がどう感じているか』という一点のみ。

不特定多数の『お客』へ官能映像を提供するAVの出演者としては落第点な質問。

プロであるからこそ、当然海斗もソレを理解している。

しかし、海斗は敢えて仕事としての関係(プロ)ではなく高宮 海斗(ほんしん)の想いを返すことにした。

何故かはわからない。

ただ、そうしなければいけないと思ったから。

 

「ああ、最高だよ。……沙良紗(・・・)のパイズリはとても気持ちいい。でも、どこで練習したんだ? イメージトレーニングだけじゃあ、ここまでうまくいかんだろ」

「ふふ~ん♪ ま~ねっ。ちゃんと“よこーえんしゅー”経験済みなんだからっ」

「そか。やっぱりバナナを仮装物にしたのか? もしくはきゅうりとか……」

「そ、バナナ。でも、ちゃんとそれっぽく加工したのよ? 学園の保健室置いてあった、人体模型の『胴元(どうもと)君』のお股から失敬して金型取らせてもらってね」

「うん? おかしいな……何やら我が母校に漂う香ばしいバカ臭が臭うような気が……。いやいやいや、まさかそんな……。な、なあ、沙良紗。人体模型って胴体部分の臓器構造を観察するためのモノだよな? 生殖器とか省略されてるはずだよな?」

「え、胴体? 内臓? ……何言ってんのセンパイ。人体模型って言えば、学園に一人もいない『男の子』の特徴を学ぶための機材でしょ? 臓器構造なんて教科書の図解を見ればすぐ理解できるわよ。――でも、オチンチンは言葉や写真だけじゃわからないでしょ?」

 

そこで、最先端の技術を無駄につぎ込んで完成させたスペシャル人体模型『胴元(どうもと)君』。

胴体部分は開けず、量産品のように臓器構造学習には微塵も役に立たない!

しかし、彼の本領は性学習でこそ発揮される。

何を隠そう『胴元(どうもと)君』のお股には、全国匿名アンケートで収集したデータを元に造り上げられた至高の(チン)具『刺し穿つ浪漫の漢棒(ぺニ・スゥ~ン)』が備わっているのだ!

 

通常時は『はんなり』と柳葉のように垂れ下がり、伸縮性のあるゴム製の皮まで被っている(チン)具であるが、掴む様に握って『コスコス』扱くと内部に搭載された特殊金属が熱変形を起こし、硬い芯を持つかのように反りかえって雄々しく直立するという神秘!

これこそが聖マリアジェンヌ学園が誇る至高の性勉強機材。

勃起から皮被り、果ては内蔵された白濁液の射出に至るまでありとあらゆるシチュエーションを観察できる、一学園に一体おすすめな優れモノなのである。

 

沙良紗の場合、手で擦る……のは何か嫌だったので銀髪の親友(ルームメイト)に代手コキさせて反応した『刺し穿つ浪漫の漢棒(ぺニ・スゥ~ン)』の型を取り、そこから完成した金型にバナナの身を押し込んでそれっぽく形を生成、練習道具にして自主勉強してきた……という経緯らしい。

その辺りの説明を器用に小声で済ませた沙良紗の説明に耳を傾けていた海斗は、仰々しく頷いて――、

 

「――よし。この話はここまでにしよう。今は仕事中なんだことから、真面目にやらないとナ♪」

「う、うん……?」

 

爽やかに微笑みながら、沙良紗の頭を撫でた。

どうやら、お嬢様学校の知られざる問題(ツッコミどころ)聞かなかった(スルーする)事にしたようだ。

 

「沙良紗、もうちょっとこう……胸を強く挟み込んでみてくれ」

「は~い。ん、しょっと……」

 

話を急に切り替えられたことに首をかしげたものの、自分が求められていることが嬉しかったのだろう。

胸の谷間がうっすらと汗をかいたことでしっとり濡れているため、肉棒を擦る動きがどんどん滑らかになっていく。

乳房を下から持ち上げる彼女の五指は柔らかくも弾力のある乳肉にずっぽりと埋まり、肉茎をしごく度に淫靡な踊りを見せている。

それでいて、ゴム鞠のように少しでも力を緩めたら指を押し返してしまう弾力を持つ沙良紗の乳房は、まさにピチピチとしか表現のしようがない。

 

「あは♪ 凄ぉい……おっぱいにサンドイッチされたオチンチンがビクビクって震えてる。気持ちイイんでしょ?」

 

挑発的に首をかしげて見せる沙良紗の仕草は何処か小悪魔じみていて、魔性の美貌に魅入られたかのように視線を捉えて離さない。

火照っていく体温がプリプリしている乳肉を通じて肉茎に伝わり、下半身を溶かすかのような快感と満足感が海斗の脳髄に叩き込まれていく。

しかも、会話の合間に、どんどん溢れ出してくる先走りで濡れた亀頭を、子猫のように舌先をチロチロ動かして舐めしゃぶってくる。

被虐心をそそる生意気そうな表情。そのくせ、拙い技術で懸命に奉仕する姿は愛しい恋人のようであり、主人に尽くす新妻のようでもある。

そのギャップがたまらない。

穢れを知らない高貴なお嬢様であった少女を己の望む姿に染め上げているという征服感が胸に込み上げてくる。

思わず、純粋な情事にのめり込んでしまいそうになった自分を律するように、海斗は目元を押さえながら天を仰ぐ様に仰け反り、くぐもった苦笑を零す。

一瞬だけ、脳裏に浮かんだありえない幻想……想い人(あおい)仕事仲間(さらさ)を両腕で抱き締め、肌と想いを重ね合わせている自分のイメージを振り払うように頭を振り、限界近くまで昂った射精欲求の赴くままに沙良紗の後頭を押さえて、強引に喉奥まで差し込んだ。

 

「おぐっ!? んっ、う、ううっ……ふむっ!?」

「出すぞ……っ」

「んぐっ、うむ……! ぐっぷ……ぅあ! むぐっ! ひょ、ひょうだいぃ……へんはい(センパイ)の……へーえきぃ!」

 

肉茎の先端で味わった喉奥のコリュコリュッとしか独特の感触に射精感は容易く限界まで達し、少女の口内にねじ込んだまま熱く滾る精液を迸らせた。

 

「ぶふううっ!? ご、ごひゅっ!? ん、んぐっ、んんんっ! ……んくっ……んくっ……っぷはぁ」

 

ねじ込まれた状態で無理やり撃ち放たれた雄の精が少女の喉を焼き焦がしながら咀嚼されていく。

ほっそりと白い喉を鳴らし、口の中で小刻みに痙攣する肉棒を舐めしゃぶりながら、次々と吐き出されていくソレを飲み込む。

逆流し、肉棒と唇の隙間から溢れ出した白濁の精が沙良紗の顎を伝って零れ落ち、太ももを擦り合わせている彼女の股間へと落下する。

太股が生み出した谷間に白い泉……いや、真っ白な沼が誕生し、エプロンに大きな染みを作りだす。

 

「っっ……ぷはぁああっ! はっ、はぁ……はぁ……はあぅ……あ、あは♪ お腹ぁ……あったかぁい」

 

それでも、口内に残った最後の一滴まで律儀に飲み込んだ沙良紗は咳き込みながら肉棒を引き抜き、真っ白いルージュの引かれた唇を笑みに返る。

完全に紅潮して弛んだ頬を繕うこともせず、唇に残った精液を一舐めしてから呼吸を整えると、いつものように挑発的な笑みを作り――けれど、瞳は何かを懇願する揺らめきで濡らしながら立ち上がる。

 

「センパイ……」

 

もはや“お客様”という配役のことが完全にトンでしまったようだ。

乱れた呼吸を整える余裕も無いとばかりに精液のデコレーションが施されたエプロンの裾を両手で掴み、裏の面を見せつける様にひっくり返しながら持ち上げていく。

つうっ、と輝く無色の糸がエプロンの内側と沙良紗の秘部の間に掛けられていた。

エプロンの股間に当たっていた部分には、先ほど零れた白濁液によるものだけではない、しっとり濡れたシミが残されている。

恥ずかしげに顔を背けながらエプロンをたくし上げる手を下ろさない沙良紗があまりに可愛くて、片手を彼女の頬に添えながら逆の手で頭を撫でてやる。

 

「俺のを舐めてる内に、感じちゃったんだな?」

「……うん」

「そうか……。じゃあ、おいで」

 

両手を広げた海斗の胸に、沙良紗が少しだけ躊躇してから飛び込む。

互いの胸元を重ね合わせる様に抱き締め合い、小柄な沙良紗が彼の膝にちょこんと腰掛ける。

対面座位……お互いの表情の変化を間近で鑑賞することができる体位のひとつ。

射精直後だと言うのに変わらぬ硬度を誇る海斗の男根を跨いた沙良紗の腰に手を添えながら、位置を合わせて秘唇のスリットを探る。

敏感な亀頭が擽る様に大陰唇を刺激し、沙良紗の背中がぴくんぴくんと跳ねる。

沙良紗の秘唇は蜜液で濡れすぼり、今か今かと待ちかねる様に海斗を誘い、自ら引き込むかのように容易く肉茎を呑みこんでいった。

 

「あっ、あ……あぁぁあああああーーっ!」

 

彼女の腰を掴んでいた手を両膝に移し、M字開脚させるように左右へ押し開いてやる。

すると、自然に前方へせり出された彼女の腰が海斗の腰とくっ付き、彼の分身を根元まで呑み込んでみせた。

膣壁に生えているヒダがうねうねと煽動し、肉棒を歓迎する。

蜜液という潤滑油の助けもあって引っ掛かりを覚えることも無く、ひと息で最奥まで達することが出来た。

下がりかけていた子宮を押し上げられる感覚に沙良紗の瞼の裏で火花が飛び散り、悲鳴じみた艶声が上がる。

背中を仰け反らせ、咄嗟に掴んだ海斗の肩を指が食い込むほど力強く掴む。

上体が仰け反った瞬間、彼女の動きに呼応して豊満な乳房がダイナミックに揺れ踊る。

普段の彼女なら、胸の動きに肌を引き裂かれるような痛みを感じるはずだ。

しかし、官能という熱で侵された沙良紗の脳髄は痛みすら快感へと変換しているかのように快楽物質を吐き出し続け、痛みを全く感じない。

自分で力加減が出来る自慰行為ですら、力を籠めたら痛みを感じるくらい敏感な沙良紗の巨乳。

けれど、相手が海斗である場合だけは苦痛を感じること無く、寧ろもっとして欲しいと言う渇望すら湧いてくる。

実際、目の前で魅惑のダンスを踊っていた乳房に我慢できなかった海斗が敏感な乳首に吸いつき、甘噛みと共に舌先で舐めしゃぶり始めたと言うのに、心地いい甘痛さしか感じていないのだから。

 

「ん、んんっ! んあ……ひンっ!? あ、も、もぉ……センパイってば、赤ちゃんみたいだよ……あんっ♪」

「ん~? よく聞こえんなぁ……? ああ、もしかして気持ち良くないか? ならば、ここはひとつ本気を出さざるを無いな」

「え? ……ええっ!? ちょ、ま、まって……本気って……ウソでしょ!?」

「残念、俺の本気はここからだ」

「や、ま、まっ――~~ッ!?」

 

悲鳴も出せなかった。

先程までの愛撫が児戯に思えるほどに強く、激しく、情熱的な舌遣い。

乳首の淵を舐めていたかと思えば、乳腺を刺激するように突き、母乳を促すように吸い付いてくる。

浮き上がる様なフワフワ感で乳房が包み込まれた次の瞬間には、歯のコリコリとした感触で乳首を責めたててきた。

痛みを感じるギリギリのラインを見定められた甘噛みは静電気が奔ったかのような刺激を生み出し、さっき感じた心地良さの余韻を何倍にも増幅してくる。

しかも、頭部を小刻みに動かすことで唇や鼻、頬や髪によって生み出された官能的刺激を乳肉に送り込んでくるものだから、乳首の快感にばかりを気をとられていたら思わぬ奇襲を受けてしまう。

両膝を海斗が掴んでいるため身動きが取れない沙良紗に逃れる場所は無く、アンバランスなまでに大きな乳房のため両腕を限界まで突き出しても海斗の唇の射程内。

もはや、沙良紗に出来ることは、ただただ海斗から送り込まれる快楽に翻弄されて喘ぐことのみ。

 

「ああっ、あ、あひっ! あ、あぁ……! あ、ああーーっ!」

「ふふふ……コッチも忘れてないぞ? ――そら」

「はうっ!?」

 

粘っこい蜜液で潤った沙良紗の膣内をみっちりと満たした肉棒が動きだし、戦慄くヒダヒダを擦る。

小柄な沙良紗らしく若干キツいものがあるが、苦痛などは感じない。

それどころか、平均よりも大きめな海斗のソレを根元まで呑み込んで見せているではないか。

実は撮影が今回で二回目な沙良紗。

海斗の考えとしては、性行為経験がほとんどない女性特有の硬さや圧迫感を拭いきれないと思っていた。

だが、予想に反して沙良紗の膣は海斗のソレを受け入れるために進化したかのように絶妙のフィット感を醸し出し、彼の気持ち良い箇所を絶妙に刺激してくる。

亀頭に吸いつく子宮口のボールのような出っ張り、みっちりとした膣肉とはうって変わってこりっとした独特の感触がたまらなく気持ちいい。

膝を抱えた腕の位置を少しずらしてやれば、沙良紗の気持ちいいところをエラが引っかいたのだろう。

悲鳴とも艶声とも取れる叫びが上がる。

ひくひくっと喉を鳴らし、悶えるように首を振る沙良紗の瞳に浮かぶ涙。

頬を伝っていくソレが、口端から流れ落ちた唾液の雫と顎の下で重なり合い、魅惑的な曲線を描く乳肉へ落ちていく。

玉肌と称される乳肉に弾かれるように滑ってく雫が胸に吸いついていた海斗の頬に達し、見上げた彼の視線が沙良紗の瞳に映る懇願を読み取った。

 

「最高に甘い唇……頂けるかな?」

「あふっ、あ、ああ、あっ……う、うん……私の唇ぅ……味わってぇ……」

 

膝を抱えていた腕を放し、小刻みに震える彼女の後頭に添えて引き寄せる。

もう片方の手を沙良紗の背中に回して抱き寄せ、火照った吐息を零す唇を奪う。

重なり合った唇は複雑な味がしたような気がしたが、嫌悪感は無い。

むしろ、唇を通して互いの熱が相乗効果を起こしたかのように滾り、感覚が鋭敏化していくのを感じる。

 

「んむっ、ふむ、んんっ、くちゅ……んんんっ!!」

 

甘く切ない悲鳴をくぐもった呻き声に換えながら、沙良紗の腰が前後に揺れる。

解放されたしなやかな脚は海斗の腰に回され、腰の動きを催促してくる。

扇情的なおねだりに促され、挿入の動きを再開させる海斗。

沙良紗を持ち上げるかの様に力強く突き入れ、子宮を押し上げる。

引き抜く際に、沙良紗が一番感じるGスポットを抉るように引っかくのも忘れない。

腰がぶつかり合う音が鳴り響く度に、子宮から甘苦しい疼きが迸る。

先走りに反応したのか、射精が待ちきれないとばかりに子宮が戦慄き、子宮頸管粘液が溢れ出す。

雄の精を渇望する子宮の想いを組んだかのように、膣ヒダが痙攣を起こしたかのように激しく蠢き、肉茎を締め付けてきた。

最奥まで突いた肉の棒を逃してたまるかと、バキュームのように吸い付き、扱き上げてくる。

言葉にならぬ喘ぎ声は悲鳴から絶叫の域へと達し、抱きついた海斗の胸板に押し潰されて淫靡に歪んだ乳房の先端が、大きく膨張した。

 

「かっは……あ、あ、あ、あ、ひぁ、あ――」

 

ガクガクッと背筋が震える。

快感が脳天を貫いて、遥か彼方へ突き抜けていく。

この感覚は覚えている。

絶頂……『イク』ときが迫っている予兆だ。

引き抜かれる肉棒を逃すまいと締め上げてくる膣ヒダひとつひとつに至るまでが小刻みに痙攣を起こし、震えている。

限界に達した膣肉を搔き分けるように雄々しい剛直がトドメの一突き。

下がってきていた子宮を突き破る勢いで差し込まれた肉棒がボール状の子宮口を押し開き、誰一人として到達したことが無い聖域を侵略するかのごとき勢いで、子宮口を抉る。

 

「はっ、ひぃぃいいいいーーっ!? だ、だめっ!? それ、だめぇぇえええっ!?」

 

陶酔に歪む沙良紗の表情が泣き出しそうに歪む。

けれど、彼女の秘膣はぐちゅぐちゅと蜜液を溢れさせながら肉棒を扱き上げ、射精を促し続けている。

ぐねぐねと淫靡に歪む乳房の、淫蕩に染まった眼差しの、唾液を拭う事も出来ない唇から放たれる憐憫混じりの艶声の――なんと可愛らしいことか。

 

「沙良紗」

 

意識が飛びそうになっている沙良紗の耳元に口を寄せて、強く、強く抱きしめながら――

 

絶頂()け」

 

子宮の入り口に刺さったまま肉棒を捻り……沙良紗の一番気持ちいい場所を擦った。

 

「ああうっ!? い、イク……私もお……イっちゃうよおっ!」

 

瞬間、沙良紗の脳裏に真っ白い稲妻が迸るイメージが浮かび……続けて襲い掛かってきた官能の嵐に理性が飲み込まれていった。

子宮というキャンバスを染め上げていく白濁液。

限界まで堪えられた射精は収まる兆しを見せず、噴き出さんばかりの勢いで精液を吐き出し続ける。

子宮頸管粘液が子宮の中へ逆流して、雌を孕ませんばかりの滾りを宿す精子を運んでいく。

膣ヒダが凄まじい痙攣を起こして肉茎を拘束、精子の一欠けらも逃すまいと吸い上げていく。

 

「ああっ、あっあっあ――ふぁぁああああああああんっ!」

 

沙良紗は海斗の腕の中で硬直し、下腹部から広がっていく熱の心地良さに目を細める。

彼の腰に絡みついていた足は攣ったかのように小刻みに痙攣し、乳首や陰茎(クリトリス)は痛々しいほどに勃起してしまっていた。

抱き締め合う腕は射精が終わっても力を緩めることなく、火照った肌の重なり合う心地良さに身を委ねる。

 

「はい、カーット! お疲れ様―!」 と監督である海斗の父の声を夢見がちに聞きながら、沙良紗の瞼は静かに落ちていった。

 

 

――◇◆◇――

 

 

撮影が終わった後、沙良紗は海斗の手によって控え室に運ばれていた。

少し冷たいシャワーを浴びたというのに収まらない身体の芯を火照らせる熱に頬を緩める。

 

「はふぅ……。おなか……あついぃ……♪」

 

下腹部からじんわり広がる雄の熱を愛おしげに受け止めながら、控え室のベッドで仰向けに寝転がった沙良紗はふと視線を枕元に向けた。

控え室でもあるここのベッドのシーツを捲り、中に隠していた『あるもの』を引き抜いて目の前に掲げた。

 

「えへへ……ゴメンね、センパイ」

 

まったく悪気のない笑顔を浮かべながら、手に持ったソレを机に向けて放り投げる。

綺麗な放物線を描いて机に落下したソレの表面に記載されていたのは……『妊娠抑制剤』という文字。

新品同様の状態を維持しているそれは蓋を開けられた形跡が全く見受けられず……沙良紗が使用していないことの証左でもある。

 

「殿方を逃がさない鎖を用意するなら、出来ちゃった婚が一番かあ……うん。折角のアドバイスだし、有効活用させて貰おっか♪」

 

小悪魔のような笑い声を押し殺しながら、満足げに微笑む沙良紗。

 

どうやら温室育ちの子猫ちゃんは、野生の虎さんを捉えるべく、鎖の構築を始められたようです。

 

果たして首輪を掛けられることになるのは、どちらなのか。

今はまだ、誰にもわからない。

 




まっとうなお嬢様~ズじゃあ面白くないからと魔改造した結果がこのザマです(失笑)。
妄想力だけを言えば、しっとマスクマンズを超える逸材たち。
海斗君を投入したら、たいそう愉快なことになってくれそうな予感。
ある意味今回の元凶な銀髪ルームメイトさんや見栄っ張りお嬢様が一発キャラになるかは、まだ未定ということで。

ではでは~。
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