※この作品はR-18です。

『えっち』から始まる恋があってもいいじゃない?   作:カゲロー

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お待たせしました、今回は初夜(笑)の翌日のお話です。


第4話 近づいていく距離

「ん~~っ! ご飯の時間だ~~!」

「アンタねぇ……」

 

教室に授業の終わりを告げるチャイムが響き終わるよりも早く、恥ずかしげなく叫び声を上げる友人にもう一人の友人があきれ果てたように溜め息を零した。

いろいろあって朝食も抜いてきてしまった葵も内心では激しく同意したいところだが、さすがに乙女としてのプライドを投げ出してまで自己主張するつもりも無い。というか出来ない。

いつもお昼を一緒にする友人たちと机を動かしながら笑いあう。

机を突き合わしていつものメンバーとお互いのお弁当のおかずを交換し合いながら、取りとめのない話をする。

そんな当たり前の風景が、なんだかとっても安らぐように思えるのは、昨日の出来事がいまだに葵の中で消化しきれていないからだろう。

 

「――葵? どうかした?」

「えっ!? な、なにが?」

「なにが? じゃないわよ。貴方、今朝から様子がおかしいわよ? 何か悩み事でもあるんだったら相談に乗るわよ?」

「だ、大丈夫だよ! 気にしないでいいから」

「そう……? でも、私はいつでも相談に乗るからね? 話したくなったらいつでも言ってくれていいから」

「う、うん、ありがとう早苗」

 

純粋に心配してくれている友人に内心で謝りながら、表面上はいつも通りに振る舞って見せる。

嘘をつくのは心苦しいけれど、内容が内容だし、迂闊に口外できるような問題でもないからと自分に言い聞かせながら、気分を変える意味もかねて、いつものようにお弁当を取り出そうとカバンを漁る。

だが。

 

「……あれ?」おかしい。いつもの感触が感じられない。

「……え、ちょ、嘘でしょ?」

 

鞄の中を覗き込むが、やはり弁当箱らしいものは影も形も見当たらない。

 

「どしたの、葵っち~? ひょっとしてお弁当忘れたの~?」

「う、うん、そうみたい……」

「あら、葵がそんなヘマをするなんて珍しいわね? 毎朝、おば様から直接渡されてたんじゃなかったかしら?」

「あ……!」

 

そう、いつもなら家を出る前に母から手渡されていたから忘れる事なんてなかった。

でも昨日から家に帰ってないのだから、当然弁当も渡されていなかったわけで……

 

「……しかたないよね。購買でパンでも買ってくるよ。皆は先に食べてて」

「え、今から購買に? ……間に合うかしら?」

「そうだよね~~、ウチの購買って何時もお昼時間始まった直後に生徒が押し寄せるから数分で品切れになっちゃうんだよ~~」

「食堂があまり大きくない上に、昼休みの間ずっと居座る連中も多いからねぇ……、私たちみたいにお弁当を持参してない連中のお昼は、毎日戦争らしいわよ?」

「ちょ、脅かさないでよ、もう! と、とにかく、行ってみるから」

 

頑張って~~、とまるっきり他人ごとな声援を受けながら、教室を後にする。とにかく、今は一刻も把握お昼ご飯を調達しなければならない。

なぜなら、

 

――うう、ヤバいなぁ……お腹減ったよう……。

 

同年代よりもちょっぴりだけ食欲旺盛な葵のお腹の虫は、いつ自己主張を始めるかわかったものではない。もしも昼休みに何も口に出来なかったら、間違いなく次の授業中に盛大なお歌を唄ってくれることだろう。

それだけなんとしても避けなければならない。

少しだけ足早に歩を進めて食堂に向かう。惣菜パンなどを扱っている購買は食堂の入り口にあり、葵たちの教室からはそこそこ距離が離れている。

品切れの可能性が脳裏を過ぎるが、生徒たちが思い思いにたむろしている廊下を駆け抜けるというのは、非常に悪目立ちするだろう。しかも、葵は学内有数の有名人。

某有名デザイナーが手掛けたというセーラー服は膝上まで詰められたスカートのせいで、少しでも油断すれば下着が見えてしまう。デザインは可愛いのだが、こういう実用性には乏しいと言わざるをえない。

つまり、制服姿の葵が駆け出しでもすれば、まず間違いなくスカートが翻って、下着が見られてしまうだろう。

そのため、せいぜい早歩き程度しか葵に取れる道は無いということだ。

見知らぬ男子生徒たちがおもむろに振り返り、遠巻きに指を刺されながら好奇じみた視線を向けられていることにあえて気づかないふりをしながら、食堂へと急ぐ。

5分ほどをかけてようやくたどり着いた時には、昼食を求める人垣は霧散した後だったらしく、どことなく散乱としていた。

もっとも、奥にある食堂を覗けば、全部のテーブルが食事中の生徒で埋め尽くされており、とてもではないが利用できるような状態ではない。かといって購買の棚を見渡すものの、見事なまでにすっからかんだった。惣菜パンや弁当、おにぎりはもちろん、駄菓子や携帯食、挙句の果てにはドリンク類まで完全に売り切れていた。

 

――困ったなぁ、お昼どうしよう。

 

校則で休み時間に学校の敷地内から外に出ることは禁止されている以上、外のコンビニへ行くわけにもいかない。

 

――しょうがない、水でも飲んで誤魔化そう。

 

見るからに肩を落とし、とぼとぼと元来た道を戻り始めた葵の頭の上に何かが置かれる。

 

「……まさにこの世の終わりを見た、って感じだな、おい」

「……え? かぃ――っと、た、高宮くん?」

 

顔をあげると、右手に持った包みらしいものを葵の頭の上に乗せながら、呆れたような目を向ける海斗の姿があった。

 

恋愛感情を抱けない相手と仕組まれた初夜を過ごしたあげく、(他者の介入があったにしても)純潔を奪われたのだ。

顔を見るなり頬を青ざめられるのも、学校にいる間くらいは平静でいろとなどという方が酷かもしれない。

もっとも、恐怖よりも気まずさを感じているのか、色々と理由をつけて朝から避けていた人物にいきなり遭遇して心の準備が出来ていなかった葵はわたわたと動揺するが、海斗は一切気にしない風に彼女の頭の上に乗せていた包みから手を離す。

支えがなくなれば、重力の法則にしたがって落下するのは当然の理で、落ちそうになるソレを葵が反射的に受け止めたのも、ある意味で当然の結果だった。

 

「これ……? ひょっとして、お弁当かな?」

「そ、今朝何も喰わずに行っちまっただろ? だからもしかしてと作っといた。ただ、まぁ……流石に教室まで届けに行くのは無理だからどうしようかって悩んでたとこを、今にも飢え死にしそうな顔したお前を見つけたってワケさ」

「う……えと、その……あ、ありがとう……」

「どういたしまして。んじゃ、俺はこれで――」

「あ、ま、まって!」

 

ヒラヒラと手を振りながらこの場を後にしようとする海斗を、彼の上着の裾を掴みながら静止を呼び掛ける。

 

「えと、お昼、一緒にいいかな?」

「へ? 別にかまわんが……いいのか? 仲のいいクラスメートを待たせたりしてるんじゃないのか?」

「それはそうなんだけど……このまま戻ったら、このお弁当はどうしたんだ~? って、訊かれると思うし……、そうなったら上手い言い訳とか思いつかないし……、今から戻ってもゆっくり食べられそうな時間もなさそうだし……、だから、その……ダメ、かな?」

 

グラビアアイドルも真っ青なスタイルを誇る彼女が不安げに瞳を揺らしながら、上目使いでお願いして来られて、くらりとこない男はそうそういない筈だ。

現に海斗も、思わず口元を押さえながらそっぽを向いてしまうほどの破壊力が秘められていた。

 

「……好きにすればいい」

 

それだけ言うと、踵を返した海斗は自分の弁当を片手にさっさと歩き出してしまう。葵はその背中を見失わないように小走りで追いかけていく。その素っ気ない反応にちょっとだけ文句を言いたくなった葵だったが、ヘタに騒ぎを起こして人に目を集めるような真似はやめとこうと思い留まり、追いついた海斗の数歩後ろを黙ったままついていく。

 

――って、あれ? 私、普通に歩いてるのに追いついちゃった?

 

そおっ、と海斗の足元を見てみれば、なんだかゆっくりとした歩調で歩いているように思える。

 

――ひょっとして、私の歩く速さに合わせてくれてたりするのかな……?

 

さりげない上に不器用な優しさを見せる海斗の横顔を見上げてみる。

よく見ないと分からなかったけれど、何となく頬が赤くなってる気がする。

なんというか、カッコつけようとしている男の子って感じがしておかしく思える。

不意に、『女の子にいい恰好をしようとするのが男って生き物なのよ!』って豪語していた友人の台詞を思い出した。

 

――あの時は、そういうものなんだ~って軽く流してたんだけど……海斗くんもそうなのかな?

 

「……あんだよ?」

「ふぇっ!? な、なにか?」

「『なにか?』 じゃなくてだな……なんというか、生暖か~い視線をくれていやがりませんでしたかねぇ? 竜ヶ崎さんや?」

「き、気のせいだと思う……よ?」

「激しく視線を彷徨わせながらンなコト言われても、信用できんがな?」

「ひゅ~、ひゅ~……そ、それより、どこに行くつもりなの? あんまり遠いとお昼終わっちゃうよ?」

「誤魔化したな……つか口笛できてねーし。いや、まあいいけど。つか、もう着いてるぞ」「え? ここって……」

 

2人が到着したのは校舎の裏にある焼却炉から植木を挟んだ反対側にあるもう、一つの裏手と呼べる場所だった。

校舎の角に当たる場所で、風通しもそう悪くは無い……が、いかんせん日当たりが良いとは言えない様で、正午だと言うのにどこか薄暗く感じてしまう。

 

「人気のない穴場って所だな。ウチの学校にはこういう場所に屯する連中がいないから、静かに食事するにはもってこいの場所なんだ」

「へぇ~、こんな所があったんだぁ」

 

珍しそうにあたりを見渡す葵の耳に、校庭でサッカーに興じる生徒たちの声が遠巻きに聞こえる。確かに、ここなら周りに気を遣う必要も無いのだろう。

 

「ンなコトしてたら昼飯食う時間が無くなるぞ?」

 

呆れを含んだツッコミに、彼についてきた理由を思い出した葵の体温がかあぁ~っと上昇する。咳払いをついて誤魔化しながら、意外と汚れていないコンクリートの段差にハンカチを敷いて、その上に腰掛ける。

受け取った弁当箱の梱包を解き、ドキドキしながら蓋を開けた葵から感嘆の声が上がる。

 

「う、わぁ~~! すごい……キレイ……ねえ! これ、海斗くんが全部作ったの!?」

 

日中は名前で呼ばないと自分から言い出した決まりをあっさりと忘却の彼方へと押しやった葵に呆れたようでいて微笑ましそうでもある微妙な表情を浮かべた海斗は頷きを返すことで答える。

 

「そこまで騒ぐような事か?」

 

言いながら同じ盛り付けをしている自分用の弁当へと視線を落とす。

鳥そぼろを乗せたご飯、卵焼きと炙った塩ジャケ。昨夜のカレーで余った野菜を使った煮物にほうれん草のお浸し、カットしたプチトマト。

海斗としては別段気合を入れたわけでもない、ごくごく普通の手軽な弁当の筈だったつもりだったのだが、何故か葵から羨望じみた視線をむけられている気がする。

 

「そういえば、料理出来ないんだったか?」

「はぅあ!? べ、別に全然ダメって訳じゃないんだよ!? ただちょっと、そう、ほんのちょっとだけ得意じゃないってだけなんだからね!?」

 

深く突っ込んではいけないところなのだろう。海斗はものすごい勢いで捲し立ててくる葵から静かに視線を逸らすと、午後の授業を耐え凌ぐための栄養補給を実行することにした。

静かに箸を動かす海斗に物申したそうな目を向けていた葵だったが、タイミングが良いと言うべきか、再びお腹の虫からエサの供給を望む懇願が上がる。

今度は『きゅぅ~~っ』だった。吹き出しそうになるのを懸命に堪える海斗の横で、真っ赤な顔を隠す様に弁当箱を持ち上げると、勢いよく中身を咀嚼していった。

耳まで真っ赤にさせながら小さな声で「うぅ……美味しいよぅ……」と呟く葵を優しげな瞳で眺めながら、海斗は卵焼きを口に放り込むのだった。

奇妙な運命共同体となってしまった二人が初夜を過ごした翌日の昼は、こうして穏やかな空気と共に過ぎていった。

 

 

――◇◆◇――

 

 

「た、ただいま~……」

 

いささか緊張した顔の葵が、声を掛けながら新しい住処のドアを開く。

返事が無いことに首を傾げるも、男物の靴が玄関に脱ぎ捨てられているのを見るに、海斗も帰宅済みなのは間違いないだろう。

一日の授業を恙なく終了した葵は、友人たちとの約束であった放課後のスイーツ食べ歩きに出向いていた。

不安を押し殺すように噂になっていたクレープを堪能した葵は、いつも通りの交差点で友人たちと別れた後、周りの目を気にしながら学校へと舞い戻り、こうして新しい住処に帰宅したのだ。

理由が理由なので誰かに相談できるはずも無く、そもそも媚薬がきっかけになったとはいえ、ほぼ初対面の男子と初体験をかましてしまったなんて話、一体誰に相談できると言うのか。

しかも、ほとんどが自業自得でしかなく、おまけに、料理とか諸々を海斗にまかせっきりにしている始末。

自己嫌悪で憂鬱になりかけた思考を何とか振り払いながら、『AOI』と銘打たれた室内スリッパ(間違いなく例の黒服たちの仕業であろう)に履き替えながらリビングの扉を開く。

瞬間、葵の鼻孔をかぐわしい香りが擽ってきた。食欲をそそる、何とも言い難い香りだ。

 

「ん? ああ、帰っていたのか」

 

キッチンから顔を覗かせながら、海斗が出迎える。派手さの無い私服の上にエプロンを装着した姿は、まさしく主夫と呼ぶに相応しい。

 

「う、うん。あの、手伝おうか?」

「いんや、大丈夫だ。もうほとんど終わってるから。竜ヶ崎――じゃなくて、葵も着替えてこいよ。その間に準備も終わるから」

 

そう言い残してキッチンに引っ込んでいく海斗の背中を見つめながら、

 

「――うん。やっぱり料理できるようになろう! 女の子のプライド的なもののために!」

 

覚悟を決めた表情で拳を握りしめる葵の姿がそこにあったという。

 

 

本日のメニューはエビやアサリがたっぷりのシーフードパスタにオニオンスープ。ワカメとレタスのサラダに、デザートとして柚子のアイスシャーベットだ。

昨日の失敗を鑑みて、使用した素材は海斗による綿密なチェックの下、安全性が確認されている物ばかりだ。

店へ買い出しに行ければいいのだが、海斗も葵も生活費としての現金を一切渡されてはいないのだ。

警備員を名乗る黒服たちに訊いたところ、食材などの消耗品の補充はすべて黒服たちの仕事であり、二人の日常生活に必要な金額――要するにお小遣い――は月末に支払われるとのこと。

両者ともに親と連絡がつかない以上、月末の支給とやらまでの間自由に使えるのは各々の財布に残されている分のみ。

学生である彼らの財布にそこまでの戦力(諭吉さん)が在住しているはずも無く、食材に限っては使う前に妙な薬が忍ばされていないかチェックしてから使うということになった。

無論、飲料水の類も検分済みである。こうした厳しいチェックを乗り越えた材料から作られた手料理は、再び葵の乙女心に亀裂を走らせながらも恙なく二人の胃袋へと収まっていった。

 

「ご馳走様でした……ぅぅ」

「お粗末様……だから、何故に落ち込む?」

「女の子の秘密だよ!」

「あっそ」

 

半分呆れ顔な海斗は空になった皿を抱えて流しへと運ぶ。

手伝おうと腰を上げかけた葵に背中を向けながら、海斗はバスルームの方を指差す。

 

「いや、洗い物は俺がやっとくから、葵はその間に風呂済ませてくれないか? 正直言うと、その……何かやってないと意識しちまうっていうか」

 

老成している節があるとはいえ、海斗もまた年頃の男子だ。同棲相手の女の子の入浴シーンに興味が湧かないでもない。

だから洗い物を済ませている間に、入浴を済ませて欲しい。海斗の言いたいことに気が付いた葵は「あ……、うん」と小さく返事を返して着替えを取りに向かった。

 

「……風呂、かぁ……っは!? 俺は何を考えてる!?」

 

脳内にリフレインされた昨夜の情事が、葵の瑞々しく穢れの無い裸体を思い出してしまい、慌てて頭を振る。

下手に意識してしまうと、なし崩し的に蘇ってくる数々の生々しい感触。

 

白いシーツに広がる艶やかな髪。力を込めたら容易く折れてしまいそうなくらいほっそりとした手足。

マシュマロみたいに柔らかく、甘い乳房(ちぶさ)。足の付け根にあるやや控えめな陰毛と、その奥に秘められていた真珠のような陰核と秘唇――……

 

「――ってぇ、だから思い出すなって!? ドンだけ飢えてんだよ、俺!?」

 

まるで生まれて初めて女を知った直後の頃に舞い戻ってしまったようだ。あの時も、昨日までの風景が全くの別物になっているように見えたのを覚えている。

もう何年も前の話だと言うのに……いったいどうしてしまったと言うのか?

 

――まさかとは思うが俺……本気で葵に惚れちまったなんてことはない……よな?

 

いや、そんなまさかと自分自身に失笑しつつ首を振ったまさにその時、

 

――ガタンッ!

 

バスルームの中から誰かが倒れるような音が聞こえた。

ハッ、と我に返った海斗は洗剤を含ませたスポンジで擦っていた皿を流し台に置き、エプロンを外さぬまま慌ててバスルームの扉の前まで駆けつける。

 

「おい、葵! どうした!? 何かあったのか!?」

 

――まさか!?

 

悪い予感が海斗の脳裏を巡る。海斗は確かに食材のチェックは完璧に済ませて、安全であることを確認した。

だが、その他の生活必需品――石鹸やシャンプーなど――までは気が回っていなかった事を思い出したからだ。

踏み込むべきか否かと迷う海斗の目の前でバスルームの扉が開き、中から透明なゼリーのようなものに覆われた腕が伸ばされたかと思うと、海斗の腕をがっし、と掴んでそのまま引きずり込んだ。

予想外の展開にバスルームへと引きずり込まれて床に倒れ込んだ海斗の上に、全身がゼリー塗れとなった葵が跨るように馬乗りになってきた。

目の焦点は合っておらず、紅く火照った肌と荒い音息が何とも生々しい。

慌てて視線を逸らそうとする海斗の頭を太ももで挟み込んできた葵は、そのまま濡れそぼった秘部を海斗の口元へと押し付けてくる。

堪えられないとばかりに自分の手で胸を揉みしだく葵は、海斗の顔に押し付けたまま腰をグラインドさせる。

ボディソープの草花を思わせる香りを打ち消すほどの濃厚な牝の香りが肺一杯に広がり、海斗の理性をこれでもかと言わんばかりの勢いで攻め立ててくる。

流れに身を委ねてしまいたく衝動を何とか堪えながら、海斗は葵の腰を抱えて自分の上から退かせると、すぐに上半身を起こす。

口周りに付いたゼリーのようなものを指先に掬って、検分する。彼の予想が正しければ、このゼリーの正体は――

 

「ボディソープ風のローション……お約束な媚薬入り……あいつら、手ぇ込みすぎだろ!」

 

用意周到な黒服たちへ憤慨していた海斗の背中に、とてつもなく柔らかな膨らみが押し当てられる感触が広がった。

思わず叫び声を上げそうになった口元を押さえつつ振り向くと、背中から海斗の両肩を掴んだ葵が、ローションに濡れた乳房を押し付けていたのだ。

媚薬の効きが良いらしい彼女の顔は情欲に染まり切っていた。おそらくは、ちょっと変わったボディソープだと思い込んでいたのだろう。だあ、この手のタイプはむき出しの肌から浸透して性的興奮を高めるというタイプだ。しかも全身ローション塗れと言うことは、泡が立たないことに疑問を抱くよりもボディソープ(ローション)の量を増やせばいいと考えてしまったのだろう。結果、過剰なまでに塗りたくられたローションに含まれる媚薬成分で出来上がってしまった、と。

 

「昨日といい今日といい、お前はソッチ系のイベントに事足りねーのな、オイ!?」

「んっ……ふっ、あぅ、あぁあああっ……」

 

もうすでに出来上がってしまっている葵に何を言っても無駄だろう。それに、葵にカラダごと押し付けるように抱き着かれてお蔭で服はビショビショで気持ち悪い。

光悦とした顔を向けてくる葵を見ていると、海斗のカラダも無意識に反応してしまう。

ズボンを押し上げる分身が脈打っているのが分かる。

熱に感染してしまったのか、海斗の本能が理性を押しやっていく。

一端葵を引き剥がして服を脱ぎ捨てると、海斗は葵を抱き抱えながらバスルームの浴室へと足を踏み入れた。

 

 

「んぁっ……んんっ、んふっ、あぅ……ぬるぬる……してるぅ……」

 

壁に手を当てて前屈みにさせた葵を後ろから抱きしめると、ローションに塗れて独特のさわり心地の乳房を掴み、掌を滑らせるように動かしながら揉みしだく。

同時に首筋に舌を這わせ、耳たぶを軽く噛んだりして刺激を送ることを忘れない。

 

「んふっ……やぁっ……あんっ! か、海斗、くんって……やっぱり、えっち……だよぉ……ふあうっ!?」

 

ローションで滑り、指を食い込ませるほどに力を込めてもするりと逃げてしまう。そんな微妙な刺激に声を漏らしていた葵の乳首を不意打ち気味にきゅっと摘み上げる。

すると葵は、カラダを捩りながら情欲に染まりきった声を漏らす。

 

「はぁ……あ、ああっ、あふっ……んうっ……あ、ああ、あ……っ」

 

重量感たっぷりな乳房が指の間をすり抜ける様に逃げ続ける。その度に硬さを増した乳首が海斗の指と擦れ合い、甘美な刺激となって駆け巡っていく。

前屈みになった葵の尻肉に海斗の男性器が擦れて、何とも心地よい感覚が背筋を駆け昇っていく。

 

「こっちはどうだ……?」

 

葵の乳房を堪能していた片手が、彼女の股間部分へと伸ばされ、掌全体で撫でまわされる。

指先を曲げて秘唇へと差し込めば、ソコは既にお湯やローション以外の液体でトロトロになっていた。

 

「ほら、エッチな汁でぐちょぐちょだぞ?」

「やっ、やんっ!? か、海斗くんのイジワル……はっ、ああっ、あ、あぁああんっ!」

 

ぬるぬるに濡れた指先を葵にも見える様に掲げてやれば、恥ずかしそうに首を振る。

その反応がどうしようもなく可愛くて、ついつい意地悪をしたくなってしまう。

今度は指を2本一緒に秘唇に挿入し、肉壁をほぐす様に擦ってやる。

 

「ふはっ、あ、あ、やっ、あ、ああうっ!? そ、ソコっ、そんな、いじっ……ちゃ、ダメェ……!?」

 

くちゅっくちゅくちゅっ……、と粘度の高い淫猥な音が鳴り響き、浴室内に木霊する。

それを耳にするたびに、葵の子宮がキュンキュンと疼き、膣ヒダが煽動する様に蠢く。

 

「あ、あっ、あっ、だ、ダメ、も……イッ――ッ!!」

 

葵が一瞬カラダを強張らせて背を反らし、激しく痙攣を起こしたかと思うと、海斗の指が沈み込んだ彼女の秘所から透明の液体が潮の様にあふれ出た。

小さな快楽の波が断続的にカラダ中を駆け巡っているのだろう。細い肩がピクンピクンと痙攣し、秘唇から溢れ出した蜜液が太ももを伝って零れ落ちていく。

海斗は絶頂の余韻に浸る葵の腰を掴み、限界まで反り返った男性器を濡れすぼった秘唇に擦りつける。

 

「あふっ、んっ……はぁ、はぁ、んっ……あ……海斗くんの……熱い、よ……」

 

ローションと蜜液、それにミルクの様に甘い葵の香りが海斗の鼻孔を擽り、喉が干からびるほどの渇きを覚える。

この渇きを癒す手段はたった一つしかない事を、海斗は本能で理解する。

 

挿入(いれ)るぞ、葵」

「うん……、来て……海斗」

 

葵に自分の方へ振り向かせて唇を奪う。

互いの舌を絡み合わせて彼女の甘さを存分に堪能すると、海斗は彼女の秘唇に擦り付けていた亀頭をぐっ、と押し込み、膣内の最奥まで一気に貫いた。

 

「んふぁっ! あっ、あ、ああああーっ!?」

 

膣内の肉ヒダがぐねぐねと煽動し、海斗の男性器の全てを呑み込んでいく。葵は無意識の内に自ら腰を突き出し、もっと深く入れてと腰を震わせていた。

やがて先端が彼女の子宮を捕える。コリコリッとした何と言えぬ感触に、海斗の中で射精感が凄まじい勢いで高まっていく。

 

「んふっ、あぁあんっ、ひぃあぁああ……」

「葵……痛くないか?」

「んっ……、う、うん……へーき、だよ……」

 

己を満たされるという、堪えきれない悦びに満たされた葵の表情から、彼女の言葉に偽りはないのだろうと推測する。

昨夜に純潔を失ったばかりだと言うのに、彼女の膣は痛みを感じるどころか、まるで海斗のソレにジャストフィットするかのようにぴったりと吸い付いて放さない。

海斗の分身を膣ヒダが時に優しく包み込み、時に射精を促すように吸いついてくる、そんな動きを繰り返しながら、海斗に絶え間ない快楽を与え続けている。

とうとう堪えきれずに海斗の腰が動き始めた。亀頭を子宮に押し付けたままグラインドする様に腰を動かして膣内をかき混ぜていく。

亀頭と子宮口が擦り合わされて、そこが弱い葵の肩がビクンビクン、と跳ねる。

子宮口の独特の感触を満喫しつつ、葵の腰を掴んでいた手を回し、突きこむたびに大きく揺れる乳房をわし掴みにする。ローションに濡れたままの乳房の先端で自己主張をしている突起を掌で擦り付ける様に揉み込んでやれば、葵の声がますます大きくなっていく。密閉されたバスルームに、葵の甘い声がより一層大きく木霊する。

視界、聴覚、触覚からくる快楽を存分に味わいながら、海斗は腰の動きをより速く、激しい物へとシフトしていく。

 

「あっ、ああっ、あうっ、はっ、はひぃっ……あぅ、か、海斗、ぉ……!」

「葵……っ、気持ち、良いか……?」

「うん、うん! きもちぃ……いいのぉ……! 海斗のぉ……おくにぃ……こつん、こつんてぇ……言ってるよぉ!」

 

互いに一番大切なトコロが繋がり合っていると言う事実、それはより興奮を高めるスパイスになる。

とめどなく溢れ出し続ける葵の蜜液と、とうとう堪えきれなくなってきた海斗の先走りが混じり合い、タイルの上に零れ落ちては排水溝へと流れていく。

だらしなく開きっぱなしになっている葵の口元から洩れ続ける嬌声は収まる兆しを見せず、彼女の昂ぶりに呼応するかのように膣ヒダの動きもより激しい物へと変わっていく。

カラダの火照りもどんどん強まり、入浴後の様なピンク色に染まりきっている。

 

「あんっ、んふぁっ、あっ、あっ、ああっ、あぁあんっ!」

 

頭を振り回し、長い髪が浴室に舞う。

汗とローションに濡れたうなじにまとわりつき、何とも扇情的な美しさを醸し出す。

 

「あふぁ、あ、あぁ、あ、あ、あ……!」

 

背を仰け反らせた葵がガクガクッ、と一際大きな痙攣を起こす。

同時に膣の最奥から燃えるように熱い特濃の蜜液が溢れ出し、肉ヒダ全体がまるで一つの生き物の様に海斗の男性器をしごき上げる。絶頂が近いのだろう。

お尻をくねらせ、奥の奥まで届けてほしいと腰を突き出してくる。

 

「あふっ、あ……だ、ダメ、もう……あ、足に力はいんなっ……ふぁっ、あぁぁあああんっ!」

 

先端が何度も子宮口をノックするたびに、葵のカラダが快感に打ち震える。

 

「っ、と……葵、ちゃんと立ってないと危ないだろ……っ!」

「ひはぁああっ!? やっ、やぁあっ! むりっ、これ、むりだよぉ……っ!」

 

全身を震わせながら悶え続ける葵のカラダから徐々に力が抜けていく。

壁に押し当てた指先が徐々にずれ落ちる。

 

「はっ、ひぃっ、ふぁう、あっ、あぁ、んあっ……!」

 

遂には完全に力が入らなくなったのか、浴室の床に四つん這いになってしまった彼女の胸を愛撫していた手をもう一度腰へと戻し、より激しく腰を振り続ける。膣はおろか全身にまで広がった痙攣は激しさを増し、絶妙の刺激となって海斗の分身へと襲い掛かっていく。身悶えしながら嬌声を上げ続ける葵の腰が逃げそうになるのを引き寄せながら、膣奥の最奥までを一気に突き立てる。

 

「あうっ、くぅ、あ、んぁあああっ!?」

 

海斗は腰の動きをさらに速め、葵が一番感じる最奥に潜んだ子宮口を何度も小突き上げていく。

葵の尻肉と海斗の腰が激しくぶつかって、ぱつんぱつん、と音が鳴る。子種を求める子宮の脈動はもう限界を超えており、いつ爆発を起こしても不思議ではない状態だ。

 

「ああっ! うっ、うあっ! はっ、あああああ……! だ、ダメ……もう……きちゃう、きちゃうからあっ!」

「ああ……! 俺も、……っく、限界、だっ……!」

「き、きてっ、海斗ぉ! わっ、私のっ、ナカっ……!」

 

海斗は葵のカラダごと自分の方へ力強く引き寄せると同時に、自身を限界まで前へと突き出した。

 

「あ、あぁ、ぁああぁああっ! くふっ、ふぁああああああーーっ!!」

 

キュキュキュッ! と締まる肉ヒダに促されるまま、海斗は最奥まで深く挿入して大量の精液を葵の膣内に、子宮へと注ぎ込んでいった。

 

「ひはぁ……かぁはぁあああ~~っ……あ、あたたかぁい……♪」

 

どくっどくっと男性器が脈打つのに合わせて、葵の膣内が収縮を繰り返す。

溢れるほどに注ぎ込まれた精液を、ひとかけらもの逃さないとでも言うかのように。

 

「くっ……うぉおおお……!」

 

尿道に残された精液すらも吸い上げられるような感覚に、声を漏らす。

ぐったりと脱力してしまった葵が倒れないように彼女のお腹に腕を差し入れて倒れないように支える。

 

「はぁ……はぁ……あは♪ すっごぉい……お腹、温かくて、重い……よぉ……んんっ……」

 

余韻に浸る葵のお腹に手を這わせれば、確かに下腹部が膨らんでいるように感じられる。

 

「なんだか不思議な感じがするな……」

「はぁ……はぁ……ふふっ、お父さんですよ~、って感じかな?」

「……いや、洒落にならんだろ、それ。つーか、連中の思惑通りに事が進んでいるような予感がひしひしと……」

 

葵は、自分のお腹を撫でる海斗の手の上に、自分の手を重ねると、そこを撫でる様にゆっくりと動かす。

ローションに濡れているお蔭で滑りが良いせいか、くすぐったくてしょうがない。

 

「ン……、えい♪」

「っ、と!」

 

媚薬の効果が切れたらしい葵は上半身を起こすと、そのまま海斗に身を預ける様にもたれかかる。

ちょうど胡坐を掻いた海斗の腕の中に納まるような体勢だ。荒い呼吸を整えることもせず、肩越しに回された海斗の腕に指を這わせていた葵は不意にカラダを捻ると、今度は自分から唇を重ねた。

 

 

 

 

葵の痙攣が収まってシャワーから流れるお湯でカラダを流すと、2人は寝室に移動してベッドに寝転がった。

寝間着に着替えるのも億劫なので、2人とも裸のままだ。季節は春先とは言え、温暖化の影響か、はたまたこの建物の防寒対策が万全なのか、幸いにして寒さを感じる事はない。1枚のタオルケットで一緒に包まり、当たり前の様に床を共にする。不思議と嫌悪感は湧き上がってこなかった。

イロイロと溜めこんだストレスが発散できているからか、それとも本当に2人の相性が良いから嫌悪感が湧いてこないのか。

 

「妙な感じだよな……」

「ふぇ? 何が?」

「何がって、この状況に決まってるだろ? 昨日までは完璧に他人だった俺たちが、たった2日でこんなんなってんだぞ?」

「う~ん、言われてみれば確かに……そうかも」

「年ごろの娘としてそれでいいのか? 女の子って言うのは、その……こういう事に夢を持っているものなんだろう? 白馬の王子様~とか、運命の相手~とか」

「え、いや、それは、まあ……ない訳じゃないのは事実だったりするのですが……。でも、私は海斗くんの事、嫌じゃないっていうか……、そもそも無理やり乱暴されたって訳でもないでしょ? それに、他の人みたいに大袈裟な幻想って言うのかな? 自分の理想を押し付けてくる……みたいなことしないもんね。 だからかな……海斗くんはキライって風には思えないの」

 

学園のアイドルとしての偶像、そこから来る手前勝手な理想を押し付けてくる生徒達。

距離が近すぎる故に、葵の本当の心が分からない友達や幼馴染達。

さまざまな要因が重なり合った末に生み出された『竜ヶ崎 葵』という軛を微塵も気にしない高宮 海斗は彼女にとって非常に稀有な存在となりつつあるようだ。

 

「ま、昨日のも今日のも、お前の自爆が原因だったけどな」

「――っ!」

「あいだだだだ!? ちょ、太ももは! 太ももの内側は駄目だって!? 謝る! 謝るから抓るのやめい!」

 

洒落にならない激痛に思わず涙目になってしまった海斗を、頬を膨らませた葵が睨む。

 

「私がおバカさんみたいな言い方しないでほしいんですけどっ?」

「テテテ……。いや、実際そのまんま――OK。降参だ。もう言わない。だから俺の太ももに伸ばしたその手を放すんだ」

「……ふん、だ」

 

拗ねたように鼻を鳴らした葵は、そのままそっぽを向いてしまう。

学園における彼女の評価との違いに苦笑を浮かべる海斗の胸の内には、自分だけがありのままの彼女を知っているのだと言う優越感にも似た想いが宿っていることに、まだ本人は気付いていない。

 

「悪かったって。謝るから許してくれ」

「……ケーキ」

「うん?」

「だからっ、ケーキ! 明日のデザートにケーキを作ってくれたら許してあげるっ! 苺たっぷりのタルトを希望しますっ!」

「まだ春先だぞ?」

「……それ、どういう意味?」

「冬眠に備えて脂肪を増やすには少々フライングすぎ――」

 

――パァアアンッ!!

 

乙女心を微塵も察せない愚か者の鼻っ面に、容赦の『よ』の字もない『おしおきビンタ』が炸裂する!

 

こうかはばつぐんだ!

 

「り、了解です、お嬢様」

「よろしい。それじゃあ、許してあげる」

 

ギリギリで鼻血の噴出を食い止めた海斗の全面降伏によって、死刑執行は取り下げられることとなった。

拗ねる様に頬を膨らませながら温もり恋しさに身を寄せてきた葵を抱きしめつつ、海斗は指を手櫛に見立てて、彼女の長い髪を優しく梳いてやる。

こそばゆさに肩を震わせるものの、嫌がる素振りは見せない。

仔犬の様に目を細めて、もっともっとおねだりしてくる葵は、何とも言えぬ愛らしさを醸し出していた。

 

――こんな姿を知ってるのも俺だけ……なんだよな……?

 

そんなことを思うたびに、胸の奥で大きさを増していく得体の知れない感情。

疑問に思うも、不思議と不快ではないそれが何なのか見当もつかない海斗は、何とももどかしい気分を抱きながら、心地良い温もりに包まれて眠りに落ちていった。

 

「おやすみなさい、海斗くん……」

 

先に眠ってしまった海斗の頬に唇を合せながら、葵も微睡の海に身を鎮めるのだった。

 

 

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