『えっち』から始まる恋があってもいいじゃない? 作:カゲロー
久しぶりの『えっち』シーン。
コンだけいちゃラブっといて、(一般的な意味合いの)『恋人』じゃないってのはどうなんでしょうな(爆)
夕方、ホテルのロビーに水着姿のままの海斗達の班の姿があった。
海岸に更衣室はあったのだが、どうにも混雑し過ぎていたのでシャワーがある自室にこのまま戻ろうという話になったのだ。
こういう状況を想定しているのか、ホテルのすぐ傍に簡易シャワー室が備え付けられており、海斗達は砂と塩を軽く洗い流した後、自室に向かっていた。
葵は、少し自分たちの体が濡れていたことを注意されないかと不安そうにしていたが、ホテルの従業員によくあることだから気にしなくていいと苦笑されたお蔭で、不安は解消されたようだ。
部屋へ向かうエレベーターに乗り込むと、女性陣は海が綺麗だったとか、始めて訪れた沖縄の海についての感想を交わしていた。
いまだ興奮が冷めやらないらしく、楽しそうにはしゃいでいる女の子3人を、一歩離れて眺めているのは海斗と桐生の男性コンビだった。
流石の幼馴染でも姦しすぎるあの空間に飛び込む勇気は無いのかと、何か言いたいけれど言い出せないと言った様子の桐生を、他人事のように眺めていた海斗だったが、不意に桐生の視線が自分へと向けられている事に気付いた。
横目で見やれば、女性陣を見つめていた時とはすこし違う、どこか緊張したかのような表情を浮かべている。
何だ? と問うより早く、桐生の方から切り出した。
「……少し、話したいことがあるんだけど」
「着替えてからでいいか? どのみち、俺らの部屋は同じなんだから」
桐生も異論はないらしく、形相な顔つきのまま頷いた。
「ああ、それで構わない」
そこからはお互いに言葉を交わすことも無く、女性陣と分かれて宛がわれた部屋へと向かう。
部屋に到着し、交代でシャワーと着替えを済ませると、ラフな格好の海斗と桐生が自分用のベッドの淵に腰掛ける。
自然と向かい合うような体勢となった2人、その表情は全くの正反対だった。
余裕、というか疑問を多分に含んだ表情を浮かべるのは海斗。元々、この状況を望んだのは相手側という事もあって、至って自然体で要件を切り出されるのを待ち構えている。
一方の桐生。彼の方は、まるで戦いに赴く戦士の如き表情だった。おふざけの類は微塵も感じられず、かなり真剣な話なのだと感じさせる。
「で? 話ってなんだ?」
言いにくそうに口籠っていたので、海斗の方から切り出すことにした。
こういったタイプは、きっかけさえくれてやればダムが決壊したような勢いで話を進めるからだ。
「……その、さ。ちょっと聞きたいことがあるんだ。えっと……葵の事で」
「竜ヶ崎? あいつがどうかしたか?」
「ああ。何と言うか、その……最近急に、高宮と葵が親密になったような気がして、さ。何かあったのかな、って思って……」
「ふーん? そりゃまあ、4日も同じ班で行動するんだから、ちょっとは会話する機会も増えたかもしれんな」
「……それなら、別に葵じゃなくても良いだろ? 羽村さんとか沢尻さんだって――」
「お前、本気で言ってるのか? 羽村は俺を敵視しているし、沢尻はガキっぽくて何を考えてるのか分からん。ていうか、沢尻ならともかく、羽村から俺に話をしてくるはずないだろ? そうなりゃ、消去法で竜ヶ崎と話す機会が増えるのはある意味当然のことだと思うんだが?」
班行動を基本とするのだから、同性同士のみではなく、異性とも会話しなければならない状況は多々ある(連絡事項とか班行動の予定を立てる時とか)。
人柄も良く、以前から班のメンバーと交流があった桐生ならともかく、海斗の場合はこの班でまともに会話できるのが葵しかいないのも事実なのだ。
桐生自身、海斗に対する噂云々もあって積極的に話しかけようとは思っていなかったので、必然的に葵が連絡役を兼ねて話しかける機会が増えていったのだ。
「大体、竜ヶ崎と話す機会が増えた程度で、どうしてそこまで思い詰めているんだ? 幼馴染って話は聞いているけど、アイツと話をするのにお前の許可がいる訳じゃないだろ? 恋人と言う訳でもないんだし」
「そ、それは……」
海斗の意見は正論だ。いかに幼馴染とは言え、所詮は中の良い友達同士でしかなく、彼女の交遊関係にまで口出しする権利など、桐生にはない。
だが、それでも、
(あの時の葵の顔……あれは……)
桐生が嫉妬混じりの視線を海斗に向けてしまうのは、理由があった。
今日の昼、早苗達と昼食の買い出しを終えて戻った時に見てしまったのだ。
何時もの黒縁眼鏡を掛けた海斗と、彼が用意していたらしいパーカーを羽織った葵が仲良さ気に会話していいたところを。
いつもと違う葵の様子に気付いたときはかなり離れていたので何を話しているのか聞き取れなかったし、桐生に先立って駆け寄っていった早苗が怒鳴りながら2人の間に割り込んでしまったために会話は中断されてしまった。
結局、なにを話していたのかさっぱり分からなかったのだが、桐生の脳裏にはあの時、葵が浮かべていた笑顔がハッキリと焼き付いていた。
幼馴染の自分ですらほとんど見たことが無い、物凄く自然な微笑み。
あの時の様子を思い返してみると、どうあっても『仲睦まじい恋人同士』にしか見えなくて。
想いを寄せている幼馴染であり、大切な女の子でもある少女が、悪評が立つような男に奪われてしまうと言う危機感と恐怖、そして燃え盛る様な嫉妬が湧き上がってきてしまったのだ。
結局、ぐちゃぐちゃになった頭の中を整理することも出来ず、つい衝動に押されるまま問い詰める様な真似に及んでしまったのだった。
黙り込んでしまった桐生の葛藤を、海斗は何となく察していた。
そもそも、葵と桐生が幼馴染であり、同じクラスだった1年の頃は、よくクラスメートから夫婦だの、ラブラブだの冷やかしを受けていたことを知っている。
ありがちな冷やかしを受けて、しかし満更でもない表情を浮かべていた桐生を時々見かけていたからだ。
まあ結局のところ、誰とも付き合っていないフリーの女生徒のみが出場できる学園祭のコンテストに葵が参加した――正確には、彼女に賭けようとしていた部活の仲間達に頼まれて仕方なく参加したようだが――ことで、2人が彼氏彼女の関係ではないと校内に広がったのだが。
2年に進級してクラスメートとなってからは、毎日の様に「竜ヶ崎さんと付き合っていないのか?」「これ、彼女へのラブレターなんだけど、渡してくれないか?」「お前達って、幼馴染でしかないんだよな?」 といった会話を繰り返し聞かされていたからだ。
関わり合いのなかった筈の海斗が、興味も抱いていなかった葵と桐生の情報を細かく把握していたのはこのためだった。
(ま、事実なんだけどな。葵に手を出してるのは)
きっかけはどうあれ、現在の海斗と葵はそう言う肉体的な意味合いを指す関係になっているのは揺るぎ様の無い事実。
幼馴染と言っても、交際どころか告白云々すら尻込みしていた野郎に今更とやかく言われる筋合いはないというもの。
それは、捉えようによっては嫉妬と呼べる感情だったのかもしれない。
かなり葵に惹かれている自分がいることに小さく驚きながら、海斗は当たり障りのない言葉で有耶無耶にすることにした。正直、この空気が旅行中ずっと続くのだけは勘弁願いたい。
「ま、旅行って気分を解放的にさせるってよく言うからな。今のお前は、幼馴染の今まで見えていなかった一面を見て戸惑ってるだけじゃないのか? そう気に病む事も無いと思うぞ?」
「そう、かな……」
結局、初めての沖縄旅行でテンションが高くなったんだろうという結論へ言葉巧みに誘導し、そのまま有耶無耶にさせることに成功した。
「まったく、何でおれがこんな気苦労を……いや、自分のためではあるんだが、何と言うか腑に落ちないというか」
弁明、というか洗脳? を終えた海斗は、食欲が無い&遊び疲れたから寝ると言い出した桐生を部屋に残して、ホテル1階にあるレストランへと足を運んでいた。
彼らの朝夕の食事は、大広間ほどの広さがあるそこでとることになっていたからだ。
先程の問答の件をブツブツ呟きながらエレベーターのドアの前に到着するのを見計らったかのようなタイミングで、チーン、というあの音と共にドアが開いた。
「あ、高宮君」
「ん? 竜ヶ崎だけか?」
中に乗り込んでいたのは、着替えを済ませた葵だった。
シャワーも済ませたらしく、ほのかに上気した頬と、しっとりとしている髪が、見た目以上の色気を醸し出している。
現在の彼女は、キャミソールとミニスカート。
やや冒険したのか、赤を基準とした明るい色で統一されている。
露出が激しすぎるのでは? という感想を抱いてしまうのは、彼女を目にするのは自分だけでいいという独占欲からくるものか。
「どう、カナ……?」
はにかむ様に上目使いで見上げてきた葵に、
「あー、なんだ。似合ってると思うぞ? ちょっと肌を出し過ぎな気がしないでもないが」
そう返すのが精一杯だった。
「ぷっ……あははっ! 早苗と同じこと言ってるよ~」
「――はぁ?」
エレベーターに乗り込みながら、やたらと敵愾心を向けてくる相手と同じ反応をしてしまった事に憤り、不機嫌そうにそっぽを向いた。
密閉されたエレベーター内に、少女の含み笑い声が響く。
「ところで、高宮君一人なの? 桐生は一緒じゃないんだ?」
お前もひとりだろうというつっこみを堪えつつ、例の話云々を省いて、単純に食欲が無いからもう眠ったことを説明する。
すると、葵の方も同じらしく、遊び疲れた早苗と桃花も、シャワーを浴びるなりベッドに倒れ込んだのだという。
葵は疲れていないのかと聞くと、水泳部に所属していた彼女はまだまだ余裕とのこと。
力こぶを作って見せる彼女に、思わず苦笑が浮かんでしまう。
「じゃあ、一緒に食べるか?」
「うん♪」
海斗達が通されたのは朝食をとったレストランの隣にある大広間だった。
どうやら、今晩はここを貸し切っているらしい。私服に着替え、肌が焼けている生徒達で広間は相当な賑わいをみせている。
皺ひとつないホワイトクロスで覆われたテーブルの上に並べられた、料理の数々。
煌びやかな器に盛り付けされた、食欲をそそる料理がひしめいているそれは、ビュッフェ形式と呼ばれるスタイルだ。
出入り口には個人用の食器が置かれていて、まさに立食パーティ会場の様を呈していた。
高級レストランのメニューに名を連ねる様な豪華なものに目移りしてしまい、どっから手を伸ばすべきか非常に悩む。
「うわ~♪ うわ~♪ どれもすっごく美味しそうだよ~。ねえ、高宮君! どれから食べ――あれ?」
振り返れば、彼がいない。
慌てて周囲を見渡せば、さっさと自分用の皿と箸を手に、料理の山へと突貫をしかけていた。
葵のことなど、アウトオブ眼中なご様子。
何と言うか、ここまで鮮やかなに放置されてしまうと、女の子として負けたような気がしてくるから不思議だ。
(何ソレ!? 私より料理の方が良いってこと!?)
実際は、一緒にいるとボロを出してしまいかねない葵から離れた方が落ち着いて料理を楽しめるという思惑があったのだが(実際、さっきも他の生徒がいる中で名前を呼んでいた)、そんなことは葵にとって知ったことではなく。
「高み……じゃなくて、海斗くん!」
「ごふっ!? ――げほ、げほっ……な、何だ?」
喉に詰まりかけた料理を水で流し込みながら、真っ赤な顔をした葵が接近してくる様を見て、猛烈に嫌な予感が湧き立ってくる。
皿とフォークを手にして海斗がいるテーブルへと近づくと、そのまま海斗が箸を伸ばしていたサーモンのマリネへとフォークを伸ばす。
さらにマリネの隣にあった海藻サラダやローストビーフなどの料理も手際よく皿に取り分けていく。
流石は女の子というべきか、皿の上の料理は見た目も美しく整えられており、食べたいものにだけ箸を伸ばす海斗のそれとは大違いだった。
自然と、ごくりと喉が鳴ってしまう。
それに気づいたのだろう。
キラン、と目を輝かせ――
「はい、あーん」
サーモンの切り身を突き刺したフォークを突き出してきた。
「ちょっ、おま!?」
「ほ、ほら、あ~ん、だってば。こっ、これくらい同級生相手なら、やって当然でしょ」
「いやいやいや、その理論はおかしい」
周囲から突き刺さる困惑と嫉妬の視線の数々。
幸か不幸か、2人がいるテーブルには他の生徒がいないものの、それでも広間にいる少なくない生徒たちが遠巻きに凝視している。
学園随一の美少女の恋人ちっくなアクションに、静かなざわめきが広がっていく。
中にはあからさまに指を差しながら、何事か話し合っている者までいる。
耳を澄ましてみれば――
「ね、ねえ、あれ誰?」
「女の子の方は竜ヶ崎さん、よね……?」
「じゃあ、相手の男は一体誰だ? あんな奴、クラスに居たか?」
「許せねぇ……! 学年のアイドルに、なんつー羨ましい事を!」
「美人は皆のものだってことを知らないのか!?」
「モゲればいいのにモゲればいいのにモゲればいいのに……!」
予想通りの怨嗟の声が――……
(おや?)
聞き間違いかと思い、もう一度耳を澄ます。
聞こえてくるのは葵に対する驚きと海斗に対する嫉妬の声。
だが、『あいつ』とか『あの男』という 言葉のみで、誰一人として海斗の名を名指しで口にしている者はいなかった。
「……ひょっとして、俺だと気づかれてないのか?」
「海斗くん、やっぱり気づいてなかったんだ」
「何を「め・が・ね」――あ」
言われて目元に手を当ててみると、確かに普段付けている伊達眼鏡が見当たらなかった。
記憶を辿ってみると、シャワーを浴びるために外したまま、洗面所に置きっぱなしにしていたかもしれない。
加えて言うなら、髪型も異なっている。
学校では前髪で目元が隠れる様な暗い感じにしているが、今の海斗は普段自宅でしているように前髪を髪留めで整えている。
そのお蔭もあって、両目がハッキリと見える今の海斗は普段のやぼったい伊達眼鏡装着時の彼を知る生徒達からしてみると、覚えがない別人にしか見えないのだ。
同世代よりも成熟した精神構造をしていることも、海斗が年上に見えていることに対する理由の一つでもある。
「でも、普通に名前を呼ばれてるんだが」
「海斗くんってば、腫物みたいに扱われてるでしょ? だから『噂のアイツ』みたいな感じで覚えられてるんだよ。危ないのは、せいぜい苗字くらいかな? だから名前を呼ぶくらいじゃあ、今の海斗くんが噂の悪っる~い人だとは思いもよらない筈だよ」
実際この場にいる者たちは、見慣れない生徒が学園のアイドルから、あ~んをされている羨ましい光景としか認識できていないようだった。
「で、でも、もたもたしてたら気づかれちゃうかもしれないし! だからさっさと食べるっ!」
「モガ!? ちょ、やめろバカ、フォークの先が口ン中に刺さって痛いんだよ! わかった、食べる食べる!」
好意を無下にすることもできず、フォークを振り回されたことでタレが飛び散ったサーモンマリネをパクッと口に含む。
口の中に広がるバジルソールの香りと酸味を舌の上で堪能しつつ、殺意まじりの黄色い視線をいなしていた。
素の海斗が意外と手が出やすい事を知っているのでちょっとだけ不安だったが、流石にビーチでの一件の様な腕力による鎮圧に乗り出すつもりは無いらしい。
「ほ、ほら、まだまだあるからっ!」
とりあえず、恥ずかしそうにしながらもどこか楽しげなお嬢様が満足するまではこの状況を我慢しないといけないなと、海斗は諦める様に口の中の料理を咀嚼するのだった。
――◇◆◇――
うっとおしいほどの視線の中で適度に腹を膨らませた海斗は、飢えたハイエナの如きギラギラとした眼光の生徒の相手を
あれだけやっていればそりゃあ目立つ。
そのくせ、最後まで海斗の正体に気づいた生徒がいなかったのはどういう事なのか。
「眼鏡をかけていないだけで正体がばれないって……い、いや、これも普段から目立たないように心掛ける努力が実ったと考えればっ!」
事実、葵にご奉仕されてコロコロと表情を変えていた海斗と学校での無表情ver.とのギャップがあまりに大きすぎて、彼が同一人物だと気づかれなかったのが真相だ。
ついでに観察役の
学園のアイドルと不発弾的な危険物問題児のカップリングよりも、沖縄の地で出会った生徒ではない『誰か』が彼女を口説き落としたのではと想像する方がより現実的だからだ。
結果として、葵のお相手の正体をはっきりさせようとゾンビのごとくホテル内を徘徊している生徒達の意識は完全に
そして現在、いろいろな要素が絡み合ったおかげで身の危険を感じずに済んだ
もちろん、眼鏡&前髪を下ろした地味モードで。
閑話休題
このホテルには、部屋に備え付けられているシャワーとは別にホテル利用客なら誰でも使用できる大浴場がある。
食事を終えて戻ってみると、予想通り桐生は熟睡していた。
旅行というものに興奮しすぎて、泥のように眠っているので、海斗はこれ幸いとばかりに大浴場の方を使う事にした。
ホテルの中でも基本的に班メンバーと行動を共にしないといけないと決められているため、桐生と友情を育む……的なイベントを起こすつもりが無い以上、肩を並べながら大浴場を堪能しようなどという気も起こらない。
なので、広い風呂を楽しむのは無理だと諦めていたのだが、こういった理由ならば見逃されるだろう。
着替えと洗面道具片手に、上の階層にある大浴場へと向かう。普通は1階にあるのだろうが、このホテルの名物のひとつにもなっている大浴場は、最上階のフロアの半分以上を利用して造られている。なんでも、空に近い場所でゆっくりと湯船に浸かれるようにと言うオーナーの意図があるらしい。
周辺に同等の高さを持つ建物が存在しないお蔭で覗き云々を警戒する必要も無く、防水ガラスで覆われた天井に広がる星々の煌めきは筆舌にし難い光景なのだと、パンフレットに掲載されていた。
最上階に到着したエレベーターから降りたところで、あちらも大浴場を利用していたのだろう、引率として同伴している教師とすれ違った。
念のために班のメンバーが眠ってしまった云々の事情を説明すれば、そういうことならと許可を貰う事ができた。
「これで、心置きなく広い風呂を堪能できるな」
消灯時間までには戻る様にとだけ釘を刺されたが、まだ4時間近くの猶予があるので、心置きなく堪能できるだろう。
しかも、都合が良いことに脱衣所には海斗以外の利用客は一人もいないらしく、実にがらんとした静かな物だった。
服を脱いで鍵付きのロッカーに仕舞う。
腰にタオルを巻いて、銭湯の様なスライド式のドアを開けると、溢れる湯気が視界を埋め尽くした。
温泉特有の硫黄の様な匂いはしないのでそう言った類の物ではない事は間違いないのだろうが、そんな些細な違いを理解できるほどの温泉通ではないのでサラッとスルー。
「へぇ……。結構様になってるんだな」
湯気が退いて大浴場の造りが顕わになっていく。
黄昏と称するに相応しい静かな色合いの海原で煌めくのは緩やかな光を放つ天空の星々。
もうしばらくすれば、星の輝きに埋め尽くされる夜空をお目にかかれることだろう。
湯を囲うのは檜によって作られた大きな湯船。
数十人は同時に入ることが出来るのではと思えるそれを満たすのは、透き通るようなお湯だ。
入浴剤の類は一切含まれていないのか、まるで手ごろな水を沸騰させただけの様にも見える。
だが、これほど立派な浴場を造り上げる人物が、そんな適当な仕事はしないだろう。
きっとこのお湯にも、なにか隠された効能が秘められているに違いない。
備え付けられた檜の桶で湯を掬い、掛け湯をする。
流れるお湯が新しい湯気を生み出し、海斗の身体を心地良い温もりで包み込む。
食事前にシャワーを浴びていたこともあって身体まで洗う必要はないだろう。
マナー違反かも知れないが他の客が来るかもしれない事も顧慮して、腰のタオルは巻いたままにする。
そして、ゆっくりと湯船の中へ全身を沈み込ませて肩まで浸かると、淵に背を預けて手足を伸ばす。
じんわりとしたお湯の暖かさが、身体の芯まで染み込んでくるような気がした。
ふわふわとした心地良い感覚に身を委ね、ぼんやりとガラス張りの天井を見上げてみる。
黄昏は闇色へとうつろいゆき、静かな静寂が世界を包み込むような錯覚を覚える。
センチメンタルなんてらしくないと自分に苦笑していると、からからから……、というドアが開く音と共に、誰かが入ってくる気配を感じた。
目を閉じて風呂を堪能している海斗には気づいていないらしく、鼻唄を口遊みながら湯船へと近づいてくる。
うっすらと目を開いて相手を見てみると、かなり線が細い人物のようだった。
湯気が立ち籠っているためにはっきりと姿を捉えることは出来ないが、背丈も小柄で肩幅も狭く見える。
同年代か年下あたりかと推測し、なら声を掛ける必要も無いかと再び目蓋を下ろした。
だが。
「わぁ……! すっごく綺麗……!」
「……ん?」
湯気のヴェールの向こう側から聞き逃せない声が聴こえてきた。
具体的には、聞き覚えのありすぎる、ついさっきまで言葉を交わしていた同世代の女の子的な声が。
「おい」
「ひゃわあっ!? だ、だだ誰っ!? て言うか男の人っ!? ウソ、なんでぇっ!?」
「ちょっと落ち着け。てか、やっぱり葵か」
「ふえ? か、海斗くん?」
徐々に薄れていく湯気のヴェールが消え去った事で、お互いの顔がハッキリと分かるようになった。
湯気の先にいたのは、やはり葵だった。
身体にタオルを巻き、髪もタオルで纏めているだけの無防備な姿。
肌がほのかにピンク色なのは、掛け湯をしたからだろう。
「な、なんで海斗くんがここにいるのっ!?」
「そりゃこっちのセリフだ、アホ。風呂入りたいからって男湯に入ってくる奴がいるか」
「嘘! 私、ちゃんと女湯って案内板がある方から入ってきたもん! 更衣室も女性用のだったし!」
「俺だって男湯の案内に従ったぞ。つーか、これってつまりそういう事なんじゃないか?」
「……混浴だったってコト?」
「それ以外考えられるか? しかも、悪意しか感じない注意書きまであることだしな」
海斗が指で示した先、浴場の壁に取り付けられた注意書きに『19:00以降、大浴場は混浴になります』と無駄に達筆な文字が書き込まれていた。
海斗がいったん部屋に戻った時間が大体16:50位だったので、今はちょうど混浴タイムの真っただ中なのだろう。
パンフレットや表の看板などに注意書きとして記されていなかったあたり、悪ふざけの匂いがプンプン漂う。
このことを教師が注意しなかったのは、大浴場の中に入らないと分からない注意書きに気づかなかったからか、それともせっかくの旅行なんだから少しくらいハメを外しても構わないと言う心遣い故か。
「私たち以外のお客さんがいないのって、このイタズラのせいじゃないのかな?」
「まあ、沖縄にきたら泳ぐか、観光するかのどっちかだろうしな。天然ものの温泉って訳でもない、ホテルの大浴場を堪能する奴なんざ少数派だろ。幸いって言うべきか、このホテルはウチの生徒でほぼ貸し切り状態。しかも、どいつもこいつも昼間はしゃぎ過ぎたせいでフラフラしてたしな。俺達以外に、大浴場を使おうなんて奴は居ないんじゃないか?」
実際、葵にあーんをされた海斗を問い詰めてこなかったのも、それだけの余力が残されていなかったからだろう。
眠そうに目尻を擦っていた者や欠伸をかみ殺している者も、少なくは無かった。
今日は、夜更かしも出来ずに速攻で夢の中へとダイブしていることだろう。
「そっか……じゃあ、ゆっくりできるね」
クラスメート達が来る恐れが低い事が分かり、ほっと息を吐く。
肌を見られたことのある海斗ならまだしも、見知らぬ異性の視線に晒されることは嫌なようだ。
身体に巻いたタオルが緩まない様にしっかり手で押さえながら、背中を向けつつ湯船に浸かる。
暖かいお湯に波紋が生まれ、心地良いじんわりとした温かさに思わず声が零れてしまう。
「ふぅ~~……」
「はぁ~~……」
あやかった訳ではないが、つられるように海斗の口からも声が零れてしまった。
やや親父臭いリアクションを取ってしまったことを誤魔化す様に、湯を勢いよく顔へ掛ける。
その傍らで、お湯を蹴るように近づいてきた葵の肩が、海斗のそれにコツンと当たった。
海斗の肩にごくごく自然な感じに頭を乗せてきた葵の纏めている髪を伝った水滴が流れ落ち、碧色に染まった水面に波紋を生む。
「どうした?」
「ん~? 別に~? ただ、何となく……うん、なんとな~く、こうしたいだけ~」
「そか」
不愉快な訳が無く、むしろ女の子の香りと柔らかさを感じられて、役得なのかもしれない。
触れ合った肌を通して感じられるお互いの鼓動。
2人しかいない空間だからこそ、ほんの僅かな身じろぎすら手に取る様に分かる。
でも、そんな2人だけの時間が、何故かとても心地良く感じられた。
ふっ、と閉じていた目蓋を開いた葵がガラス張りの天井越しに広がる夜空を仰ぎ見て、感嘆の息を溢す。
「わぁ……! すっごい星空だよ」
「ふと思ったんだけど、なんで態々面倒な造りにしてまで露天風呂モドキを造ったんだろうな? 別に、普通の露天風呂で良いんじゃね? 天気が荒れていても夜空を堪能できるとかどうとか言ってるけれども、雨雲なんざ眺めてても別に楽しくないだろ?」
「もう! 海斗くんってば、ムードってのを分かってないんだから! こういうのは雰囲気が大事なの!」
「そーゆーモンか?」
「そーゆーモンなのです」
ちょっとだけ得意気な顔を見せながらも、葵は海斗の方へとすり寄ってくる。
葵の軟らかな頬肉が男性特有の角ばった肩に擦れると、水気を含んだ前髪がひと房、零れ落ちる
まるで、子猫がマーキングするかのような動きに、海斗の胸の鼓動がゆっくりと速さを増していく。
「んー……、なんか硬くてごつごつしてる気がする」
「男なんてこんなもんだ。てか葵の肌って柔らかいのな。確か……もち肌っていう奴か?」
「む。そこはすべすべって言って欲しいかな」
「嫌か?」
「なんか響きが。もちっ、てしてるみたいに聞こえちゃうし」
女心は複雑だねぇ……と呆れていると膝の上に柔らかいものが触れる感触が。
「……おい」
「んぅ?」
「何故俺の上に乗っているのか」
海斗の頭に腕を回し、伸ばした脚部に馬乗りになった葵へジト目を向けてやる。
起き上がろうにも、後ろに回された両腕にがっちりと固められてしまっているので力尽くと言う訳にもいかない。
しな垂れかかかる様に抱き着いてきているので、タオルで隠しきれない胸の谷間とか、いろんなものが見えてしまう。
胸板越しに感じるのは、豊満な双乳が宿す柔らかさとタオルの肌触りが生み出したすべすべとした心地良さ。
タオルからはみ出している肉付きの良い股間でゆらめく陰毛が臍の少し下あたりを擽ってくる。
下腹部に血が集まっていくのを感じながら、自然と海斗の腕は彼女の腰へと回される。
対面で抱き合うような体勢になった2人の唇が、まるでそうあることが自然なのだと言わんばかりに近づいていく。
お互いの吐息が感じられるくらい近づいたところで、葵が瞳をぎゅっと閉じる。
彼女の顎に指をやり、くっと持ち上げると、そのまま唇を重ねた。
火照った舌で葵の口の中を余すところなく堪能し、腰に回していた腕の位置を下げて、むっちりとしたお尻へと伸ばす。
ぷりぷりとしたお尻をわし掴みにすると、痛みを感じないように注意しながら、それでいて大胆に揉みしだいていく。
瑞々しい肌はまるで海斗の指に吸い付く様な心地良い感触を宿している。
水泳で鍛え上げられたお蔭なのか、適度に引き締まっていて、そのくせ女性的な柔らかさも兼ね揃えている。
「んっ、ふうっ、はぁ……っ!」
アルコールに酔ったような蕩けた笑みを浮かべながら、ゆっくりと唇を放す。
誰かが来るかもしれないというスリル、学業の一環であるはずの修学旅行中でありながら情事を致そうとしている背徳感が、ゾクゾクとした快感と共に背筋を駆け登っていく。
止めなければならないと理性では分かっているのに、かつてない昂奮に苛まれた本能がもっと先へと囁き続けている。
「んっ、ぢゅっ……! ぷはぁ……、はぁ、はぁ、はぁ~……えへへ」
「……どした?」
「ん~、何か久しぶりっていうか、こうしてるとすっごく落ち着くっていうか。昨日、海斗くんと一緒に寝られなかったからかな?」
「一晩だけだろ」
「それでも、だよ。なんだろ……こうやってべったりしてるのが、当たり前な気がするんだよね」
「しっぽりともいう」
「……海斗くんってば、やっぱりえっちでしょ?」
「発情期真っ只中な青少年はみんなこうなんです」
「思春期って言ってくれないかな!? なんかヤダ! お耳を汚す的な意味でっ!」
「やれやれ、なんてワガママっこなお姫さまだ……ゴメンナサイクチガスギマシタフクロダケハカンベンシテクダサイ」
「次は『キュッ』として『ぷちっ♪』 ってしちゃうからね?」
「ら、らーさ……」
全面降伏によって、男性に2つだけ備わっている内臓器官的なお稲荷様が再起不能になる事だけは回避できたようだ。
やや熱めの湯船に浸かっていながら背筋が凍る思いを味わえるとは我、感激……的な自虐思考を持ち合わせていない海斗は心の底から安どのため息。
そんな彼のコロコロと変わる表情を見て笑みを溢す葵。
学校生活ではまず見ることができない、海斗の色々な表情。
呆れた顔、意地悪な顔、怖がった顔。どれも、
それは嫌でない、だからこうしてじゃれ合い、笑い合える。
最早彼らにとって、同じ屋根の下で暮らし、寝食を共にすることで自分達が肩を並べて
それこそ、一晩離れていただけで調子が狂ってしまうくらいに。
人目がある内は自分の心を誤魔化していられた。
だが、周囲に気を配る必要も無い状況下で2人っきりになったので、いろいろと溢れてきてしまったようだ。
秘唇から溢れ出す蜜液がお湯に溶けて広がっていく。
もう我慢できないとばかりに葵が身体を揺らせば、身体に巻き付けていたタオルが解けて、解放された乳房が直接海斗の胸板に押し付けられる。
先端の突起はもう硬くなっており、ゴムマリのような柔らかさの中心にコリッとした感触が加わって、筆舌しがたい快感を齎してくる。
それは葵の方も同様らしく、火照った吐息を漏らしながら海斗の腰に足を絡ませてきた。
完全に密着したことで快感が増したのか、喘ぎ声が徐々に大きくなっていく。
海斗は、尻肉を左右に引っ張りながら、隙間へと指を滑り込ませる。
指先が撫でる様に割れ目を走り、やがて誰にも触れさせたことが無い葵の尻孔……アナルへとたどり着く。
ビクンッ! を肩を跳ねさせた葵が慌てて海斗を見上げると、彼は意地の悪そうな笑みを浮かべて、尻孔をつっついてやる。
「ひゃっ、やぁ、やだぁ! そんな、トコっ! さわっちゃ、やぁああっ!」
家族にも見られたことが無い恥ずかしすぎる場所に触れられて、葵がぶんぶんと首を振って取り乱す。
あまりの恥ずかしさに半泣きで睨み上げてくる葵に流石にやりすぎたかと反省したのか、海斗の指が離れていく。
ほっ、と葵が気を緩めてしまった瞬間を狙いすましたかのように、今度は秘唇へと指が差し込まれた。
「はっ、はううっ!?」
お湯以外の液体でトロトロになっていたそこは、瞬く間に差し込まれた指の第二関節まで呑み込んでいく。
膣内をかき回す様に指を動かして、膣肉をほぐしていく。緩急をつけて、時折指の角度を変えながら、葵を絶頂へと誘うために快楽の波を送り続けていく。
腕が背中越しに回されているので逃げられず、立てつづけに注ぎ込まれてくる快楽に身を捩ることしか出来ない葵は、恥ずかしさと気持ち良さでどうにかなってしまいそうだった。
おねだりする様な腰の動きも、勃起した乳首を擦り付けることも止められず、身体中を満たす快楽の奔流に翻弄され続ける。
喘ぎ声はどんどん大きくなり、途切れ途切れになる呼吸が彼女の限界が近い事を物語っている。
そして、一層深く指を差し込まれた瞬間、とうとう我慢することが出来ず、快楽に屈してしまった。
膣内が激しく収縮を繰り返し、膣奥からマグマのように熱い蜜液が大量に溢れ出てきた。
「あっ、や、……やぁあああっ! いっ、イクッ、イッちゃ――ッ!」
弓なりに背中を反らし、海斗の腕の中で激しく痙攣を繰り返す。
ビクンビクンッ、と何度も身体を震わせた彼女は、そのまま意識を失ったように脱力すると海斗へともたれかかってくる。
口端から零れ落ちる唾液を拭うことも出来ないほどの虚脱感に襲われて、喘ぎ声を零し続けている。
それでも海斗を放さないとばかりに腕を解かない葵の頬にキスを落として、彼女の秘所に突き刺さったままだった指を引き抜いていく
ちゅぷん、という恥ずかしい音と共に引き抜かれた指先を水面から出して、しげしげと眺めてみる。
お湯を潜っているというのに、指先にはしっかりとした粘り気のある液体が付着していて、照明の光を反射しながらキラキラと輝いていた。
「はぁ、はぁ……ぁ、こ、コラ!」
何を眺めているのか気付いたらしく、更に顔を赤くした葵がぺしぺしと海斗の頭を叩いてきた。
絶頂を迎えた直後と言う事もあって、全然痛みは無い。
誤魔化す様に唇を奪いながら、彼女の尻肉を掴んで位置を調整する。
限界近くまでいきり立っている分身の亀頭を秘唇に擦りつけると、一気に最奥まで押し込んだ。
「んうっ!? ふっ、うぅ~っ……!」
心地良い締め付けを感じさせる膣壁をかき分けながら、肉壺の奥へ奥へと潜り込んでいく。
お互いの腰がくっ付いたところで、亀頭が一番深いところにある硬いもの……子宮口へとたどり着いた。
ずくん! という衝撃と共に、最も大切な所が押し上げられる感覚が駆け巡り、葵は一際大きな喘ぎ声を上げてしまう。
一晩のお預けを受けていたからか、それともこの状況が興奮剤となったのか、ざわざわと煽動するかのように動く膣肉が海斗の男根をしごき上げてくる。
頬を上気させながら喘ぎ声を上げている葵の唇を奪い、火照った舌同士を絡め合わせながら、味わうようにゆっくりと腰を動かしていく。
押し込む、と言うよりは突き上げるような動きで、滾った膣内を心ゆくまで堪能する。
お湯の中と言うこともあってスムーズに挿入することが出来ている。
ピンク色に染まった裸身を震わせて快楽を感じている葵をさらに気持ち良くさせるべく、挿入する動きを前後からかき回すような円運動へと変化させる。
火照ったカラダは全身の神経が敏感になっているので、快楽の波も一際激しいようだ。
カリ首が膣肉を抉る様に暴れ回り、とめどなく溢れてくる蜜液が白い靄となってお湯に溶けていく。
掃除する人は大変だなと他人事のように考えながら、葵の最奥を征服せん勢いで、腰のストロークを加速させていく。
「あ、ああ……いぃっ、よぉ……気持ち、いいのぉ……!」
海斗の腰を抱くしなやかな足に力が籠っていく。
すると、両者の腰は相手の全てを呑み込むまで離さないとばかりに密着の度合を増し、亀頭が子宮口をぐりぐりと擦りつけていく。
びりびりとした快感が小刻みな波となって葵の理性を溶かしていく。
お湯を波立たせるほど激しく腰をくねらせながら、さらなる悦楽を求めてよがり声を上げていく。
膣全体が収縮を繰り返し、精液をちょうだいと激しく煽動を繰り返す。
海斗は、葵と繋がったままで足に力を込めて持ち上げると、彼女を湯船の淵に腰掛けさせる。
そのままタイルの上に押し倒す様に覆いかぶさると、彼女のくびれた腰を掴みながら突き上げの動きをさらに加速させていく。
「葵……お前の
「わた、わたしっ、もぉ……きっ、気持ちいいよぉ! あっ、あ、あ、ああっ! ひっうぁあああっ!?」
2人の腰の動きが完全に同調した瞬間、めこぉっ! という芯まで響く音と共に、亀頭が子宮口をこじ開けた。
亀頭部分が子宮の中へと侵入し、膣内とは全然違う感触が、男根を通じて海斗の背筋を奔る。
葵の一番大切な場所に到達したと言う感動が、海斗の胸を満たしていく。
新たな生命を育む神秘の領域に触れたことで、竜ヶ崎 葵と言う少女の全てが手に入ったかのような錯覚を覚えてしまう。
「すっ、げ……! これが、子宮のナカなのか」
「かっ、は……ひぃ……!?
かつてない衝撃に半分意識が飛んでしまった葵の腰を抱え直し、一層激しく挿入を再開する。
ミキサーのような激しい挿入に翻弄される葵が、海斗の背中に爪を立ててしまう。鋭い痛みを感じながら、それでも海斗は動きを緩めるようなことはしない。
硬く尖った乳首を捻り、耳たぶに舌を這わせながら、むさぼる様に腰を動かし続ける。
焼けた鉄の杭を体の中に突き刺されるかのような衝撃が葵へと襲い掛かり、乱暴な挿入の痛みはかつてない快楽へと変換されてしまう。
膣肉の締め付けが一層キツくなり、激しく射精を促してくる。
奥へ奥へと煽動する膣肉の動きに呼応して、男根の中を熱いもので満たされていくのが分かる。
むさぼる様に口づけを交わしながら、一番深いところまで男根を押し込んだ瞬間、膣全体から齎される蠢くような刺激に誘われるまま、熱い滾りを放出した。
「あぁあっ! あっ、あつ、い……ひっ、あ、あぁあああああっ!」
子宮の中に直接精子を注ぎ込まれた感覚に堪えきれず、大浴場の中に葵の絶叫が響き渡る。
限界まで背中を反らして硬直した葵を支えながら、海斗は睾丸にため込まれた全ての精液を注ぎ込まんと、男根を押し込み続ける。
膣肉の蠢きは収まる気配を見せず、海斗の全てを絞り尽くさんと快楽を齎し続けている。
やがて、完全に射精が終わったのを見計らってからゆっくりと引き抜いていくと、治まりきれなかった白い液体が、粘り気を増した蜜液と混じり合いながら溢れ出してきた。
濃厚なオスとメスの匂いが鼻孔に纏わりつき、熱の籠った呼吸が重なっていく。
全てを出し切ったと言うのに、海斗の男根はいまだに固くそそり立っていた。
タイルの上で胡坐を掻きながら息を整えている海斗に気づいた葵は、自分も荒い呼吸を繰り返しながら、ゆるゆると四つん這いになって、未だに治まりがついていない彼のものへと近づいていく。
「……葵?」
「ん……」
返事もせぬまま、胡坐を掻いた海斗の股へ首を差し入れると、精液と蜜液に塗れたそれの亀頭へ唇を寄せる。
そして……、
「……ぁむ」
「っ!?」
突然亀頭を咥えられ、海斗の背筋がゾクリと震えた。
熱い吐息を零しながら、葵は熱に侵されたかのような表情で亀頭を舐めまわしていく。
暖かい口内の柔らかさ、慣れていない故に時折当たる歯の硬い感触が、初めてのフェラチオだという事を証明している。
不慣れながらも精一杯の奉仕をしてくれていると言う事実に、海斗は興奮を隠せない。
葵は徐々に反り返っていくそれの根元に指を当てると、唇を窄めさせながら頭を前後に動かしていく。
唇の隙間から溢れ出すぴちゃっぴちゃっという淫猥な音、上目使いに海斗の様子を伺う表情が治まりを見せていた興奮を再燃させていく。
口の端から唾液と精液と蜜液が混ざりあったものが零れ、葵の顎を伝いながらタイルの上へと零れ落ちていく。
心地良すぎる刺激を堪えることが出来ず、葵の口の中で亀頭が大きく跳ねた。
それに驚いた葵が男根を吐き出すのと、大量の精液が噴出するのはほぼ同時のことだった。
「きゃっ!? ……え、これ、せーえき?」
勢いよく放たれた真っ白な体液を顔に受け止めながら、葵は頬を伝うそれを手に取ると、興味深げに眺めてみた。
親指とひとさし指を擦り合わせて話してやれば、その間を白い橋が掛かる。
むわっ。とした雄の匂いに、とろろよりも粘り気の強いそれが珍しいのか、興味津々と言った表情で欲望の滾りとも呼べるそれを眺めている。
やがて好奇心に惹かれたのか、指先に付着したそれを
「……ぺろっ」
と、舐めてみた。
「うえっ!? 変な味ぃ~!?」
そして、盛大に
「いや、いきなりやるか普通……」
「だってぇ……海斗くんのなんだし美味しいのかな、って……」
どうやら葵は男心を擽る手段を心得ているらしい。
思わず抱きしめたくなる衝動に駆られるものの、ここまでやらかしといて、居続けることは危険すぎる。
いつ人が来るかもしれない上に、情事後ですと言わんばかりの匂いで満たされた場所に2人でいることを見つかりでもすれば、どれほど頭の緩い奴でも海斗達の関係を勘ぐるだろう。
「さすがにこれ以上ここにいるのはアレだからな。さっさとでるぞ――って、コラ。いつまでクンカクンカしてやがるか。さっさと顔でも洗ってろ」
「えぇ~、その言い方はひどいんじゃないかな?」
「顔面ベトベトの状態で部屋に帰るつもりか? いいから、撤収だ撤収」
「は~い」
備え付けのシャワーで汚れを洗い流すと、最低限の片づけを済ませてから、足早に更衣室へと向かう。
入り口の脇に換気扇のスイッチを押して浴場の中を換気しながら、手早く着替えを済ましていく。
そんな時でも海斗の脳裏によみがえってくるのは、どんどん大胆になっていく葵のあられもない姿。
秘部を掻き回されてよがり狂う姿も、どうしようもない『女』を感じさせる色っぽい表情を浮かべた姿も、自分の男根に舌を這わせて奉仕する姿も。
その総てが愛おしくてしょうがなくなってきている自分自身に、どうしようもなく戸惑ってしまう。
(俺は、ここまで一人の女に執着するような奴だったのか?)
仕事上、不特定多数の女性と肉体関係を結んてきた中では、一度たりとも経験したことの無かった感情。
SEXは愛情が無くても出来ることを知っている。
だからこそ、自分が抱いている感情が『愛』と呼べるものなのかが分からない。
けれど――
「あいつと一緒にいたいって思っていることだけは間違いないんだよな……」
なら、今はそれで良いと自分に言い訳をしながら、海斗は湯上りのコーヒー牛乳を入手すべく自販機へ足を向けるのだった。
桐生君、言いくるめられちゃうの巻。
ゆっくりと幼馴染の変化に気づき始めたけれど、まだまだ核心には至っていない模様。
大丈夫、君にもきっといい出会いがあるさ!
で、幼馴染が悶々しているのを尻目に、葵ちゃんが冒険を!
……でも、結局海斗君の正体は有耶無耶に(笑)。
翌朝、噂を耳にした早苗ちゃんの反応が実に楽しみですな♪