男子高校生がゆるく会話するだけの回です。
「なあ、顔が可愛ければ相手が男でもいけると思わないか?」
「……何を言ってるんだキミは」
俺の楽しい話題を、優太は低音ボイスでバッサリと切り捨てた。
高校1年の夏休み。
俺は同級生である優太のエアコンのきいた涼しい自室で、優太のベッドに仰向けに寝っ転がって優雅に漫画を読んでいた。
「いやいけるだろ。何か問題があるのか」
「問題は…」
「いやない」
優太の反論を断固たる反語で打ち消す。
商業誌で市民権を得て久しい男の娘漫画を読んでいる俺には、優太の様子はまったく見えなかったが、長い溜息だけははっきりと聞こえてきた。
「……問題は、それがいまここで話すことかってことだろ…」
俺はベッドの上で寝返りを打つと、ベッドに背を預けて絨毯に座っている優太とは反対方向に体を向けた。
一般誌であるはずの男の娘漫画の、成人向け並みの性描写に、俺の股間が一気に滾ってしまったからだ。
「はぁ~…彼女が欲しいなぁ~」
硬くなりすぎて痛くなったチンポジを直しながら、俺は深い溜息を吐いた。
チンポジ直すために触ったらちょっと気持ちよかったので、男の娘がスカートの下で明らかに射精してるシーンを読みながら、自分の息子の先端を指でマッサージし続ける。
男の娘の股間から滴るコレが汗であるかのように平然と扱われるなんて、最近の一般誌はいかれてやがるぜ。最高。
「少なくとも、こんなところに引きこもってたら無理な話だね」
優太の的確な言葉が俺の心を深く抉る。
「いや、俺の知らないところで俺を好きになった可愛い子が、今頃家の前でラブレター持って出待ちしてるはずだ」
優太に背を向けて寝転がったまま、俺はつま先で優太の頭を軽く突っついた。
素足のつま先に、俺のものとはまったく違う柔らかな髪質の感触が触れる。
「じゃあ早く行ってやれよ。愛しのその子が熱中症でぶっ倒れるぞ」
俺の足が、優太の手で払われる。
俺は逆らわずに足を元に戻すと、男の娘漫画の続きに集中した。
あっ、やべっ。いじりすぎて我慢汁出てきちゃったよ。
「こんな炎天下の中ストーカー行為をする女なぞ御免蒙るわ」
「そうかよ」
漫画の中では、ヒロイン(?)である男の娘とは別の男の娘に迫られた主人公が、自身の硬く張ったテントについていやらしく詰問されている。
素晴らしい。
「いやでも男の娘にそこまでされたら許しちゃうかもしれない。可愛い子限定だが」
大きな麦わら帽子に白いワンピースを着た幸薄そうな美少女男の娘が、木陰で俺の家を切なそうに眺める姿を思い描き、俺は一人でうんうんと頷いた。
「それが可愛い女の子だったら?」
「全然いけるわ」
優太の問いに即答する。
さっきは貞子みたいな女の子を想像しちゃったが、白いワンピースの下についていようがなかろうが、妄想したような可愛い子なら多少のストーカー行為は許容範囲内だ。
俺の家は住宅街ど真ん中で、木陰なんぞ他所様の敷地内にしかないがな。
「お前はどうなんだよ。女の子と見間違うような可愛い男の娘がいたとしたら、いけるのかいけないのか」
「人に自分の性癖を語る趣味はないな」
「こんな漫画買っといて何言ってんだ」
俺が読んでるこの男の娘漫画は、実は優太の持ち物だ。
見た目体育会系で、実際に柔道部に所属しているライトオタな俺は、大量に漫画を持っている優太の存在が非常にありがたい。
周りには脳筋ばっかりで同じ趣味の奴なんかいないからな。
もちろん、そのためだけに友達やってるわけじゃないぞ。
「持ってる漫画で性癖が決まるなら、キミも相当だろ」
「お前には質でも量でも負けるがな」
俺は博愛主義者のオールラウンダーだからな。
ガチホモ系以外はだいたいいけるんだよ。
背後で優太が立ち上がる気配がした。
「んじゃ、従姉妹を駅まで迎えに行ってくるよ」
「ん? おおぅ、そうだったな。んじゃ俺は帰るか」
俺は漫画を閉じると、充填120%発射寸前になっている息子をなんとか隠そうと模索しながら、ゆっくり体を起こした。
「いや、そのまま留守番しといてくれよ。ちょっと時間はかかるけど」
「留守番って、せっかく親戚が遊びにきたんだし、どっか行かないのか?」
俺は体の正面は壁の方に向けたまま、顔だけぐるりと優太の方に向けた。
これがシャフ度か。
「いや、今日は出掛けないよ。それに、従姉妹にキミの話をしたら、大変関心を持たれてね」
「ほう」
「だから今日は、キミに顔合わせしたいとも思ってたんだ」
「ほう!」
俺はベッドの上で素早く起き上がると、ずずいっと優太に詰め寄った。
もちろん、前屈みと両腕で股間のモノはしっかり隠している。
「いやーそうかそうか! そういうことはもっと早くに言ってくれよ! いやぁ持つべきものは友達だなぁ!」
「だから、従姉妹を家に連れて来たら、僕はそのまま買い物に出掛けるから」
「えっ」
盛り上がった気持ちが急激に萎える。
充填マックスだった息子も心なしか元気が無くなった。
「いやそれは無理。ムリムリ」
優太の袖を掴んで懇願する。
そんな初対面の女の子と二人きりとかハードル高すぎだろ。
「へたれ」
「なんとでも言え。お願いします助けてください」
中高一貫男子校で、すでに同年代の女性から3年以上離れている俺にそんなことが許容できるわけがない。
というか、優太も中学から同じ学校通ってるはずなんだから、それくらい察してくれよ。
「……はぁ、わかったよ。僕も立ち会うよ」
「ありがとうございます」
優太の手を俺はガッシリと両手で包み込んだ。
こいつの手は俺と違って、細くて柔らかいな。
「ってか、普通は初対面の顔合わせくらい仲立ちしてくれるもんじゃね? いきなりハードル高過ぎだろ」
「向こうの希望だよ」
え、いきなり二人きりで会いたいって?
これもしかして期待出来るんじゃね?
「……ちなみに、相手の子は俺の顔とか知ってんの?」
「これを見せた」
そう言いながら優太がかざしたスマホには、上半身裸で変顔ポージングする俺及び柔道部の面々が写っていた。
「うぉい! 第一印象最悪じゃねーか!」
「大丈夫、爆笑してたよ」
「全然大丈夫じゃねーよ!」
変顔もそうだが、ちょっと筋肉がいい感じについてきたってくらいで、調子に乗ってボディビルダー並のポージングしてるのがなおさら痛い。
仲間内で冗談で送りあった画像で、まさかこんな目に会うとは。
「ぬぐおおおおおおおううう」
ベッドの上で転げ回る俺を、優太は声を押し殺して嘲笑っている。
おのれ他人事だと思いやがって。
「そうだ! 相手の子の写真とかないか!?」
ふと思い至り、俺はベッドから跳ね起きると優太に飛び付いた。
向こうも俺の画像見てるわけだし、俺にも見る権利はあるはずだ。
「あー…でももう出発しないと…」
「ちょっとだけ! 先っちょだけでいいから!」
「なんだよそれ…」
俺の必死の懇願を受けて、優太は黙ってスマホを操作し始める。
これは見せてくれるってことか。
俺はベッドの上に正座すると、背筋をしっかり伸ばして待ての姿勢を取った。
誠意は態度で示さないとな。
「ん〜………」
優太が難しい顔でスマホをいじる。
あんまり長い時間を掛けているので、自分で頼んでおいてなんだが従姉妹さんを迎えに行く時間は大丈夫なのか心配になってきた。
「………これ」
たっぷり時間を掛けた後、優太は俺から顔を逸らしながらスマホを突きつけてきた。
そこには夏らしく涼しげで、かつ清楚で上品な雰囲気の可愛らしい女の子が、真っ赤な顔を恥ずかしそうに俯かせながら立っていた。
「くっはーっ!」
あまりの衝撃に、俺は頭を抱えながらベッドに転がった。
こんな美少女が俺と二人きりで会いたいって言ってくれてるなんて!
今日は人生最高の日だ!
「ありがとう!」
「えっ、ああ…うん…」
俺が優太の細い両肩をガッチリ掴んで感謝の言葉を告げると、優太はどこか気の抜けた返事を返してきた。
「よし! 留守番は俺に任せろ! 気を付けて行ってこいよ!」
俺は上機嫌で優太を部屋から送り出すと、ウキウキとした気分でベッドにダイブした。