女の子に負けるわけがない。
そう思っていた時期が俺にもありました。
「くっそおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
俺の絶叫とともに、テレビ画面の中の俺のキャラが場外へ派手なエフェクトとともに吹っ飛んでいく。
この一時間で一勝も出来なかった…
いい勝負ができる時もあったが、基本的に一方的な展開がほとんどだった。
「はい勝ち」
ユウちゃんの涼しげな声が後ろから響き、コントローラーが俺の横の絨毯の上にそっと置かれた。
「待った! もう一戦! もう一戦だけ!」
俺はゲーム画面を凝視し、次のステージを選びながら言った。
しかし、ユウちゃんの反応はそっけないものだった。
「ダメダメ。さっきも言ったでしょ。というか、何度も言ってるじゃない、これがラスト」
「ううううううぅぅぅぅぅぅ」
ちっくしょう。
まさかここまで完膚なきまでにやられるとは。
勇太より強いんじゃないか、この子。
ゲームを通して、なんだかユウちゃんと仲良くなれたというか、だいぶ打ち解けられたように感じる。
実際ユウちゃんの態度もだいぶ気兼ねがなくなったというか、遠慮がなくなった感じがした。
まあ、俺の思い上がりかもしれないけど。
童貞男子高校生には、女の子の気持ちなんて欠片もわからんですよ。
「さぁ、じゃあ約束を守ってもらおっかな」
ユウちゃんは軽い調子で言うが、俺はその言葉にびくんと体を緊張させる。
ユウちゃんの手が、後ろから俺の肩にそっと置かれた。
シャツ一枚挟んだ俺の体に、ユウちゃんの体温が伝わる。
ユウちゃんの手の平は、冷房の効いた部屋の中のはずなのに、熱いくらいの熱を帯びていた。
「えっと? 『負けたら何でも言うこと聞くから』だっけ?」
ユウちゃんの手が、俺の首元を撫で、背中を掠めるようにしながらゆっくりと降ろされた。
ユウちゃんの囁きとその蠱惑的な手の動きで、俺の全身には一気にぞわりと鳥肌が立った。
その言葉には鈍感で経験不足な童貞でもよくわかる、性的な匂いがあった。
「かっ、金なら無いぞ!?」
俺はわざとらしく声をあげながら、若干ユウちゃんから距離を取るように妙にしなを作った座り方をしてみせた。
今、黙って流れに乗れば、夢にまで見た『イイコト』ができる気がする。
だが、童貞の悲しい性が、嘘・冗談であったときのための予防線を張らせてしまう。
しかしそんな反応をしながらも俺の股間は、浅ましい期待で大きく膨らんでいた。
ズボンの膨らみを隠すために、俺はわざとらしく極端な内股の体育座りをする。
「大丈夫、そんな難しいことじゃないから…」
俺のふざけた反応を完全に無視して、ベッドに座ったユウちゃんは俯きながら独り言のように小さくそう言った。
ユウちゃんが、ゆっくりと動く。
俯いたまま、猫のように四つん這いの姿勢で、座り込んだ俺ににじり寄ってくる。
前髪で隠れて、表情が見えない。
だけど、真っ赤になった耳や、荒く深い呼吸音が、ユウちゃんの興奮を俺に伝えてくる。
いままで体験したことのない異様な雰囲気に、俺は完全に固まっていた。
ユウちゃんが、俺に覆い被さるように動く。
しかし、その体は俺のどこにも触れていない。
間近に迫ったユウちゃんからは、とても良い匂いがする。
ユウちゃんの顔は俯くを通り越して完全に下を向いており、これだけ近づいてもまったく顔色は伺えなかった。
深呼吸をしているようなユウちゃんの呼吸音が、ゲームのBGMが流れる部屋に妙に響いた。
ユウちゃんの手が、俺の顔に伸ばされる。
えっ、ええっ? 俺はどうすればいいんだ?
こんなときどんな顔したらわからないとか言えばいいのか?
馬鹿げた思考で現実逃避している俺の顔の横を通り過ぎ、ユウちゃんの手がテレビの電源を消した。
ゲームの能天気なBGMが消え、部屋の中にはユウちゃんと俺の呼吸音だけになった。
俺の顔の横、少しでも動けば頬に触りそうな距離に、ユウちゃんの白い腕が伸びている。
そのまま、しばらく時間が過ぎる。
本当に短い時間、ユウちゃんは呼吸を止めると、前髪の間から上目遣いに俺を見つめた。
「射精するとこ、見せて」
「……………えっ?」
衝撃的な発言を聞いて頭が真っ白になる中、聞き間違えかと思って俺は声を漏らした。
しかし異様に力のこもったユウちゃんの囁きは、俺の脳内ではっきりとエコーしている。
俺の問い返しを無視するように、ユウちゃんは伸ばしていた手を俺のうなじの辺りに這わせた。
その細い指先が、俺の髪の毛を掻き分けるようにしながら後頭部を撫でる。
「ね、いいでしょ? ココもこんなにおっきくなってるんだし」
ユウちゃんのもう片方の手が、俺のズボンの膨らみの周囲を撫でる。
本体やその周りの俺の体には触れず、出っ張って膨らんだ峰の部分だけを焦らす様に指先だけで弄ってくる。
まるで、触ればすぐ出てしまうのを察しているかのような動きだった。
「自分でするのが恥ずかしかったら、私が手で手伝ってあげてもいいし………ね?」
ユウちゃんの指先が、俺の股間の周りをくるくると動く。
その度にズボンの中のモノが微妙に擦れ、ユウちゃんの指に触れようとするかのようにビクンビクンと跳ねた。
これが据え膳だ、と俺の中の調子のいい部分が叫ぶが、状況についていけない俺の体はぴくりとも動かなかった。
そんな俺の様子に業を煮やしたのか、ユウちゃんは少し眉を顰めると俺の耳元に顔を近づけて囁いた。
「……自分で言い出した罰ゲームなんだから、拒否権はないんだよ? さあ、立って。ズボンを下ろして」
低い声で囁かれ、俺の全身に電流が流れる。
ユウちゃんは四つん這いのままゆっくりと下がると、そのままベッドに座り直して足を組んだ。
俺はユウちゃんの顔を見ないように俯きながら、のろのろと立ち上がるとユウちゃんの目の前でズボンを下ろした。
罰ゲームだから仕方ないと何度も自分に言い聞かせながらも、最後のブレーキがかかって俺はパンツを下ろせないでいた。
それでも、俺のパンツは隠しようのない膨らみをくっきりと浮き上がらせているし、そのてっぺん付近は蛍光灯の明かりを反射しててらてらと輝くほど大きな染みを作っていた。
「ねぇ、最初に質問。なんでそんなにおっきくなってるの? 何にそんなに興奮したの?」
腕を組んだユウちゃんが、じっと俺の股間に視線を注ぎながら聞いてくる。
完全に状況に飲まれた俺は、ユウちゃんに聞かれるがままに答えた。
「それは……ユウちゃんが、可愛いから…」
素直に出た俺の感想は、若干答えとしてずれているように自分でも感じた。
可愛い子見れば誰にでも立つのかよって思われたかな。
それはそれで事実ではあるけど、なぜか俺はユウちゃんに悪印象を持たれることを極端に恐れていた。
初めてこんなにも身近で触れた異性だからかもしれない。
刷り込み効果とこの異様な状況による吊り橋効果が合わさって、俺はユウちゃんに恋をしてしまったのかもしれない。
「可愛い? へぇ……もっとよく見てよ。私が本当に可愛く見えるの?」
ユウちゃんが大きく腕を左右に広げ、薄い胸を張った。
「ね、ちゃんと見て? 私のことを見て、キミはおちんちんをそんなにおっきくしちゃったの?」
ユウちゃんに言われ、俺はユウちゃんの全身を舐めるように視線を這わせる。
足を組んだせいで、太ももまで露わになった白い足。
細く締まった、可愛らしい服に包まれたお腹。
ギリギリブラジャーを着けているとわかる程度の慎ましやかな胸。
大きく広げられた二の腕は、無駄な脂肪がまったくついておらずスラリと細い。
興奮のせいかほんのりと朱に染まった首筋や頬。
薄く色付きリップの塗られた、小さな唇。
小さく形の良い鼻から、化粧によりパッチリと開かれ、濡れた輝きを灯す綺麗な瞳。
俺とユウちゃんの視線が絡み合った瞬間、俺の脳内に一瞬煌めくものがあったが、慌てて目線を下に落として視線を外す。
…………従姉弟なんだから、似てるに決まってる。