(仮)クルゼレイ憑依転生もの 作:WRWI
クルゼレイさんは自分がカオスなのを自覚するべき。
「すまないな、グレイフィア。色々教えてもらえて助かっている」
「いえ、こればかりは経験していないとなかなか分からないことですから」
和平会談以降、私達は三大勢力の相談役的な立ち位置に収まることが出来ていた。オーフィスさまさまといった所だな。それにより、例えば私達の拠点のひとつにこうしてグレイフィアがやってくることも増えていた。
「アスモデウスとレヴィアタンの間に生まれてくる新たな悪魔。魔王様達だけでなく、執行部の方達も気にかけていらっしゃいますから」
「爺どもに何を言われても嬉しくも何とも無いがな……」
「手を出してこない分、気は楽になるわよ。クルゼレイ」
少し腹部が大きくなったカテレアがそっとお腹を撫でながら、静かに微笑んでいる。グレイフィアは身近な出産経験者として、サーゼクスの好意でこうして定期的に様子を見に来てくれていた。
なお、グレイフィアはヴェネラナとの関係を勘付いているが、グレモリー夫人としての役割を変わらずに果たしていることを踏まえてか、とやかく口は出してこない。義母様を泣かせることの無いようにお願い致しますとだけ、それも一度きり言われただけだ。カテレアや黒歌はもう少し突っ込んだ話も聞いたようだが、今の私が私らしく生きれば問題ないことだからと詳細は語ろうとしない。
ただ、冥界の男共はもう少し紳士の中に野性が必要という見解で一致したらしい。悪魔の女性には草食系男子は評判がイマイチなようだ。頑張れよもっとお米食べろよ。むしろ肉か。うむ……今晩は牛丼にするか。
「それもそうか。グレイフィアの助言やサポートを堂々と受けられる、それだけでも大きいことだからな」
「ふふ、ミリキャスを産んでからそろそろ十年近くが経つから思い出しながらのことだけど……こうしてベビー服を編むのも懐かしい感じよ」
カテレアは体力維持のために起伏が激しいこの街を適度に歩き、また戦闘訓練の代わりに、水鏡や魔力制御に時間を費やすようになっていた。こうしてグレイフィアに教わるように編み物や裁縫、料理にも時間を割くようになっている。私の影響だと笑うカテレアは、徐々に母親になるための準備を重ねていた。
「カテレア、まだ産まれない?」
「そうね、オーフィス。あと半年ぐらいかしら。その頃にはもっとお腹が出てくるわよ」
「意外に大変。動きにくそう」
「身体が子供を無事に産むために適した状態へ変わっていくのよ。だから、動きにも制限が出るのもお腹の中で育っている赤ん坊のためね」
龍神様の情操教育にも繋がっているようだ。まだ流石にお腹を蹴るのが明確に分かるわけではないようだが、その様子もオーフィスには見せていくつもりだとカテレアは言う。
「失礼するよ」
「お、ヴァーリ。次回の模擬戦は明後日だったはずだが」
結界を張るための要員を確保しないと戦場が先に崩壊するらしい。難儀なことだが、サーゼクスやアザゼルが場所を確保してくれているのでその辺りは任せていた。
「ああ、今日はアザゼルからの差し入れを持ってきた。聖母の微笑の新規保有者を一斉捜索した手伝いに関する礼だそうだ」
確かに自分の目的もあって手伝いはしたがな。分かりやすく言うと保有者の一人を美味しく頂いた。その後で記憶を封じてアザゼルに預けたという寸法だ。
私は回復の手段を手に入れたし、その女も堕天使の男と恋仲になったらしい。清楚な雰囲気に反して男を骨抜きにする夜伽の技を持っているギャップが決め手だったとかどうとか。いや、不思議なこともあるものだな……ちょっと仕込み過ぎたか? まあ、私には関係のないことだ。無いったら無いのだ。
「ほう、結界系の人工神器か」
「レーティングゲームが出来るほどとは言わないが、この家周辺を包むぐらいなら十分らしい。次元をずらせるから襲撃の備えの一つにでもしろとのことだ」
流石アザぜもんだな、知人になったのは色々面倒臭いこともあるが正解だった。ハーレム万歳というならさっさと築けばいい。管理が面倒だなんて理由でこっちに嫉妬マスクばりのちょっかいをかけるのも大概にしろとは思う。
「そういえば性転換したグレモリー眷属の僧侶が君に逢いたがっていたぞ。夢を叶えてくれた恩人だって」
女装趣味のあの男の娘か。性転換銃と私の魔力で身も心も女になれたわけだが、性に奔放になることは無かった。恐らく元々性欲が薄かったことや、女そのものへの憧憬が強かったため、一番優先される欲が女であり続けることだった辺りが関連していそうだ。
なお、グレイフィアを通じて、編み上げたベビー服を送ってきたりもしている。カテレア達と一緒に手料理を振る舞われたこともある。実にいきいきして過ごしているようだ。
そんな彼、もとい彼女から聞いた話でちょっと吸血鬼連中の土地を荒らし、聖杯を身に宿すハーフヴァンパイアを攫ってきて、家の中の一部屋に黒歌の結界を張ってそこで静養させている。攫う際には仙術で自分とオーフィスの気配を周りに溶かしこみつつ、龍のオーラ砲を二人で乱射。混乱を誘発して後は目的の人物を確保。さっさと転移してミッションコンプリートだ。いやあ、私もなかなか規格外になったものだな。どの邪龍の襲撃だと大騒ぎになったと風の噂で聞きました。
なお、このハーフヴァンパイアレディは保護時には正気を失っていたので強烈な感覚で……まあ、がっちり頂いたわけだ、それで上書きして現世に引き戻して弱り切った身体を回復させている最中といった按配だ。血も吸われて、回復力も高まってもう一回戦とかいうエンドレス。大人しく休んでなさい。
ただ、もう少し遅かったら体内の聖杯を抜かれていた節がある。無理やり引き抜くための術式が身体に刻まれていたからな……厄介なことにリゼフィムが絡んでいた形跡が見られた。聖杯を使ってロクでもないことを考えているのだろうが、美女の命を奪うことに何の躊躇いも無いのか……! 全く、価値というものを理解していない。
聖杯は願望機の一面もあれば、生命に関する強力な力を有していたりもする。聖母の微笑と合わせれば瀕死の患者もすぐに完全回復できる。身体強化もお手の物だし、魂さえ無事なら身体ごと復活させることも出来る。
当然代償も大きく使い過ぎることで精神汚染が進んでしまう。彼女が正気を失っていたのはそのせいでもある。が、私は既に無限の一面を持ってしまったため、その辺りの制限が非常に緩い。チートというならば言えば良かろう。全力で隠遁生活に利用していく所存である。作物がよく育つので重宝しているのだ。
「ん、まあ近いうちにな。赤龍帝に随分熱を上げていると聞くし、勝手に幸せにやってくれという感じだが」
ただ、君の幼馴染は私の女にしたし、もう渡しはしないがね。というか私の血を完全に食事がわりにしているので、多分離れることはないし、実力的にも手放すわけにもいかない状態になっていくのは間違いない。動きに制限のかかるカテレアの守りを完全に任せられるぐらいになるのもそれほど時間がかからないだろう。
「今晩はやはりステーキに変えよう……」
「……大丈夫か?」
「大丈夫だ、問題ない」
「我、一番いいステーキを頼む」
オーフィスがメタなツッコミやボケまでこなすように成長していることに、私は幸せを感じるんだ……。
「クルゼレイ、おふざけばかりしていないでオーフィスと一緒に畑から大根を取ってきてください。ヴァーリはじゃがいもの皮剥きです。食べて帰るつもりなのでしょう。働かざる者食うべからずです」
グレイフィア母ちゃんの号令で私達は晩御飯の準備に取り掛かるのだった。ステーキ? 明日以降に順延に決まっている。
「誰が母ちゃんですか、いい加減にして下さいね?」
オーフィスと共に震え上がる私である。実力差とかそういうものとは違う、おかんには顔が上がらないのは世界の共通項なのだ。
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「ロキ……あの北欧神話の?」
それからまた少しの季節が流れ、主神のオーディンが三大勢力に接近しているからと、神々の黄昏起こすのだー(バリバリー)と日本へやってきているらしい。フェンリルの親子を引き連れて。
天照殿に連絡を取り、日本神話の代行者として殺ってしまって構わないと確認も取れたことだ。ぬらりひょん殿達のバックアップも得られるらしい。結界張りとかは任せて戦うことに集中していいとのことだ。
「ヴァーリだけで勝てるのではないのか?」
「フェンリルの攻撃を凌ぎながらとなると流石にな。あの牙は神や龍をも容易く砕く。あの身体も非常に強靭で傷をつけるのも容易ではない。なのでどちらか担当してもらえると助かるかな」
「まっ、待てよ! 俺達だっているんだぜ!」
と赤龍帝が申しております。おい、ヴァーリ。反応してやりなさいな。オーフィスはそのペロペロキャンディは誰から貰ったんだ。似合ってるのが何というか。
「むしろ足手ま……もが」
「ヴァーリ、それ以上いけない」
「相変わっらず自由だなおい。まあ、変に緊張するより余程いいんだがよ」
「お、駄天使じゃないか」
「まてやこら明らかにイントネーションがおかしかったぞ」
「気のせいだ」
「クルゼレイ様、私も初戦ですが全力で頑張りますね。とりあえず聖杯でフェンリルの寿命を奪って……」
「止めなさい。また見えちゃいけないものが見えるから」
ヴァレリーも赤い双眸を輝かせながら気合を入れている。私の無限の力を内包した血を毎日飲んでるから、きっと大丈夫って何の安心にもならないからな。ぶっつけ本番とか止めなさい。君が倒れるような真似をさせるつもりはないし、カテレアにも黒歌にもヴェネラナにも二人揃って正気を失うまで説教されるぞ。
「分かりました、そこまでする相手でもないということですよね」
違うから。君の私への過剰な信頼の強さは何なのか。私の血にアルコールでも混ざっているのか。
「白音。クルゼレイの影響を受け過ぎるとあんな感じにごり押しパワープレイ一辺倒になってしまうにゃ」
「それだけ全能感に満ちてしまうということですよね」
「確かにヴァレリーの力の高まり方は明らかにおかしいんだけどにゃ……でも、クルゼレイ本人は出来るだけ苦労せずに勝ちたい性格だから、パワープレイする前に色々仕掛けてから一気に爆発させるから、まだその域には達してにゃいというか」
黒白姉妹は少し離れたところで批判めいた視線を私に投げてきているし……いや、確かに自重しないがな。でも、必勝のための仕込みは大切だと思うのだ。舐めプ駄目絶対。
「ギャスパー、貴女も気合を入れなさいな」
あの男の娘から娘になった幼馴染に発破をかけながら、ロキもフェンリル達もまとめて時間停止してしまえとなかなか無理強いしようとしている。
「む、無茶だよぉ……」
「頑張れば貴女も私と一緒に暮らせるかもしれないわよ?」
「ヴァレリーと一緒に……?」
「毎日、美肌に効果のある温泉にも入れるし、身体に入れるものは出来るだけ自然環境で育てたものに絞っているし、血は美味しいし、クルゼレイ様の寵愛を頂いて身も心も溶かされて眠りにつく生活……!」
「ヴァレリー、ぼ、僕頑張るよ! でも寵愛はなくてもいいかな?」
「え、どうして。女の子になったのだから、知らなくちゃ女の価値の8割損するわよ」
「は、8割!?」
いやあ、8割はない。ヴァレリーも覚えたてでまだこなれてないから、それが全部みたいになってしまっているところがある。あるはずだよな?
「6割はあると思う、我」
「なん……だと……」
オーフィスのまさかの主観に、私は思わず膝をついた。いやぁ、繋がるなら互いにとことん気持ち良くなった方がwin-winとは思うし、身体の反応がどんどん良くなるから私は頑張るのだが……生きる価値の半分以上って言い過ぎだろう。私は酒や食事も同列で大好きだぞ。あとは良質な惰眠のために日向ぼっこが出来る身体に改善するのが最近の個人的目標だな。
「クルゼレイ、どういうことかしら……!」
「私が聞きたいわ……そんな話は聞いてないぞ?」
誰か、あの吹っ切れた吸血鬼のお嬢さんを止めてくれ……ヴェネラナの娘が怒るのも無理ないぞ、本当に。
「ヴァレリー、落ち着け。まずはロキ達を蹴散らすのだ」
「ふははははっ! 二天龍が手を組み、私に相対しようとはっ! 心が躍るぞっ!」
来たな、八つ当たり相手! 仙術と妖術で気配隠蔽、水魔法で幻影を作っておいて……魔力で強化した性転換銃発射! うむ、ダメージが無いからと無効化せずに喰らったな。その慢心が命取りとなろう!
「こんな攻撃そよ風にも感じぬぞ……ってあら? 背が縮んだ? 声が……な、なんだと?」
「うほーっ、これはロキがナイスバディな女神に生まれ変わったわいっ!」
「あっ、やりやがったな彼奴。あと、オーディンの爺さんは自重しろって」
「俺は大人しくフェンリルの相手をするかな……」
トランジスタグラマーのロキさん(女神)の誕生である。さあ、俺の怒りを受け止めるがいい! 完勝させてもらうぞっ! 姿が消えたまま魔力をたっぷり流し込んでやるっ!
「あ、あああっ!? な、なんだこの感覚! いやっ、何か上がってくる、なにこれ、頭真っ白になるのぉおおおおっ!」
全身ぴくぴくさせながら公衆の面前で本気イキする女神様、一丁上がりだ……! フェンリルも本能的に主人が嫌がってないのを察してこちらを本気で探らずに困惑した様子だったしな。しかし、セラフォルーを喚起させるような容姿になってしまったから、私としてはリリース案件だ。ツインテールだったら狂気に堕ちていたな。
「あんっ、いやあ……もう、もう戻れない……戻りたく、ない……こんな凄い感覚、女の感覚知っちゃったらもう無理っ! あん、やだっ、また、またクル! クセになってる、またクルのうううううううっ!」
「う、うひょーっ! や、やべえ、リアルAVの世界が見られるなんてっ!」
赤龍帝が小躍りして喜んでるな。ふむ、ならば君にあとは任せるとするぞ? 脱力したロキを赤龍帝の胸元に転移させれば……。
「あっ、これが男の人の匂い……私、完全に女に……ふふっ」
しな垂れかかりながら、本気絶頂の連続で悦びの涙で頰を濡らしたまま意識を失ってしまう出来立てほやほやの女神の出来上がりである。条件付けで男の匂いイコール赤龍帝にこれでなってしまっただろう。
こうして虚しい戦いは終わりを告げる。フェンリルはヴァーリがきっちり始末をつけました、と。
「いや、犠牲者も出なかったしいいことだけどよ……アスモデウスの力を変な方向に力を入れてるっていうか……」
「アザゼル、君のこの転換銃があってのことだ。感謝しているよ」
「こんな時だけ爽やかに笑ってるんじゃねえよ! 今後が明らかにカオスじゃねえか!」
堕天使の前総督の胃痛一つで平和が得られる。実にいいことではないか。さて、ヴァレリー。例の小料理屋に寄って帰るぞ。妹分も誘うといい。黒歌、妹さんは来るのか? おお、そうか。じゃ増援部隊はクールに去るとしよう。
「逃げんじゃねーぞぉおおおっ!」
ははは、トップを辞めたといっても実質的に堕天使の会長職みたいなアザゼルだ。まぁがんばれ。ん? ヴァーリも来るのか? ラーメンではないがいいのか。ほぅ、鍋を頼んで〆に麺……なるほど、そういうのもありだな!
そっちの北欧の護衛のヴァルキリーのお嬢さんもご一緒にどうかね。主神はまた夜の店に行くようだし、アザゼルに任せてしまえばいい。君みたいな麗しい女性に酌でもしてもらえたら、食事がもっと美味しくなるのだが。
「え、わ、私ですか!? そんな風に私言って貰ったことなんて初めてで……」
職務柄かもしれないな。さぁさぁ行こう。この駒王町の小料理屋なんだが、いいものを出してくれるんだ──。
なお、この後飲みやすい日本酒で一発でぐでんぐでんに酔ったロズヴァイセを無茶苦茶介抱して、神器で回復させて食事を一緒に楽しんだ結果、あっさり惚れられた模様。
どれだけ男運無かったのかとクルゼレイさんは戦慄した。方言可愛いし、節約志向なのも悪くない。ただ、100金至上主義は頂けないので、モノを見る目を仕込むとのこと。費用対効果は大事。