「ふにゃぁぁあー! なにこれなにこれ~!」
「はっはっは。
楽しいねー。 楽しいねー」
「うん! たのしー!
たのしーし、きもちいー!」
「うんうん。僕もキモチイー!」
ぱんぱんぱん
ぬっちゅにゅちゅんちゅ と、ぬちゃつく音と腰を打つ音が、さばんなちほーに響き渡る。
「あー! あー! きもちー!」
――枯草のような草木が生い茂る荒野の世界。
かろうじてある木々の木陰で、快感を一切隠す事のない獣耳を生やした女の子に腰を打ちつけ、僕自身をキュっときつく締め上げてくる肉の快感を感じながら思う。
――何がどうなってるんだ?
まぁ……きもちいーからいーか……
・。・。★・。・゜☆・。・。★
「…ん……ん?」
ジリジリと肌を焼くような強い日差し。
瞼を通り抜けてくる日光。
覚醒を促す要素に包まれているのを感じて目を開くと、目の前には枯草のような植物があった。
呆気にとられつつも『おかしい』という感情が沸き上がる。
だが、何を『おかしい』と感じているのかはわからない。
不可思議な感情に支配されつつも周囲を警戒する。
何もわからない状態ではあるが、直感として今の状態は『危険』だと本能が囁いていた。
幸いな事に枯草は上半身を起こしたくらいでは周りから見えない程の高さがあり、外敵が居たとしても見つかる可能性は低そうだ。
少しの安心を覚えつつも『なぜ』自分が『どうして』ここに居るのかを考える。
だが記憶はモヤがかかったように全てを覆い隠し、考えようという意識の糸と針を垂らしても、そこに引っ掻かる物はなにも無かった。
そして気付く。
――そもそも『僕』は誰なんだ?
自分自身の事すらモヤがかかったように思い出せない。
恐怖感が生まれ震えだす手。
自然と口元を押さえだし、少しでも情報を手に入れようと自分を隠している枯草の向こうを見ようと体を起こす。
「――っ!」
起こした体をすぐさま低くし、心の中で自分に声を激しくぶつける。
『落ち着けっ! 落ち着くんだ!
チラっとしか見えなかったが、ネコ科の肉食獣っぽい耳が見えた!
だが距離はある! 500メートル以上離れていたはずだ!
大人しくしていれば大丈夫なはずだ!』
身体を小さくしながら、ネコ科の肉食獣の居た方向に向けて構える。
記憶が無いはずなのに、なぜか肉食の獣は隙を見せた瞬間に襲ってくる事を理解していたのだ。
ス、ス、フ
聞こえてくる鼻から出る息の音。
随分と浅い。
かなりの緊張状態に陥っているのは間違いない。
だが焦る事は悪い結果を招く。
だから落ち着くんだ。
そう言い聞かせながらも身体は恐怖からか情報を求めて、再度枯草の向こうを覗き見る。
そして後悔した。
『近づいてきてるっ!!
ヤバイヤバイヤバイっ!』
肉食獣らしき獣の耳がさっきよりも確実に距離を詰めていたのだ。
待った無しで決断を迫られているのを感じ、落ち着きかけていた精神はまたも焦燥感に駆られ出し、身体は自然と後ずさる。
恐怖からまたも耳を確認しようと身体を起こすと、耳は見えなくなっていた。
だが確実に近づいてきているのが、動く枯草から分かった。
慌てて助かる術がないか周囲を見回すと、少し離れたところに木が立っている。
――狙われている以上、木から枝を折って武器にして戦うしかない。
そう直感が駆け抜けると、体は獣の居る方向に正面を向けながら後退を始めていた。
息を飲みながら移動しているというのに、枯草の揺れと時折現れる獣の耳が、まるでこちらの動きを見ているかのように少しずつ距離を縮めてくる。
――ジリ貧だ。
嫌な汗が頬を伝う。
このままだと木にたどり着くまでに確実に襲い掛かられる距離に近づかれる事を悟ったからだ。
走れば木までは50mくらいの距離。
獣は視認してはいない。
であれば、一度全力で走ってすぐに向き直る形で距離を稼ぐか!?
……一度武器になりそうと考えてしまった物がみつかると、それをどう手に入れるしか頭になくなり、正常な思考は既に遠い過去の物となっていた。
『やるしかないっ!
一瞬だけのダッシュならいける可能性もあるはずだ!』
決まった肚はすぐに行動へと移された。
「フッ!」
手の指をピンと伸ばし、木に向けて前傾姿勢をとって駆け出す!
駆け出した瞬間に
ガサッ!
と、強く枯草が揺れる音が聞こえる。
――その音は自分が駆けだすのと同時に聞こえた。
「マズイっ!!」
5歩目ですぐに振り返るべく踏ん張り、振り返ると、枯草の揺れと獣の耳は超スピードで距離を一気に詰めて来ていた。
「くそっ!」
手遅れかもしれないが必死で抵抗すべく、片足を引き正中線を隠し、両の拳を強く握って首元を隠して向き直る。
「あははー。まてまてー」
「…………え?」
呑気で楽しそうな女の子の声が聞こえた気がした。
そしてその声は近づいてきている獣の方からだった。
幻聴かと思いつつ迎撃態勢を崩さず見守っていると、すぐそこまで迫った枯草の揺れが止まる。
「あれー? 逃げないのー?
もう狩りごっこはおしまい?」
そして、また幻聴が聞こえた。
「…………お……おしまいだよ~。」
「な~んだー。えへへ~。
たのしかったねー。」
獣が居るであろう所から、猫のような耳をピンと立てた美少女が立ち上がる。
「え?」
「えへへー」
軽くスキップをしながら近づいてくる美少女。
ただ、そのスキップは明らかに僕が全力で幅跳びするよりも距離が出ている。
その身体能力もさることながら
「……かわいい」
白色のノースリーブに特徴的なヒョウ柄の蝶ネクタイとミニスカートとニーソックス。
無意識に口が賞賛してしまう愛らしさを持っていた。
あっという間に目の前にやってきてニコっと満面の笑みを浮かべる美少女。
「ありがとー! えへへへー」
人懐っこさを感じさせる笑顔に、さっきまであった緊張感は霧散して行き安心感が生まれ始める。
「あ……」
安心感が生まれると同時に極度の精神負担から、僕は腰が抜けるようにその場に座りこんでしまった。
そして目に飛び込んでくるのは美少女の揺れる尻尾。
「あれー? だいじょーぶ?」
「き……キミは一体……」
「わたし? わたしはサーバルキャット!
サーバルちゃんって呼んでー。」
「サーバル……キャット?
……ネコ?」
「うん! サーバルちゃんだよー
ねぇねぇ! 休むならこんな日の当たる所じゃなくて木の陰がいーよ? いこー」
「あ……」
サーバルちゃんは明るく微笑みながら僕の手を引く。
その感触は間違いなく女の子の手で、僕はついドキっとするのだった。
「ね? こっちの方がいーでしょ?」
「あ。うん。そうだね。」
木陰に入るとサーバルちゃんは僕をマジマジと見始める。
会話ができる安心感があるとはいえ、僕が知っている何かとは違うという違和感から落ち着かない。
「な、なにかな?」
「ねーねー、キミはなんの動物のフレンズなの?」
「えっ!? ぼ、僕は――あれ?」
「んー?」
「――――なんだ……っけ……」
すっぽりと抜け落ちたような記憶。
真っ黒な穴を見ているような不安が再燃する。
だが、それは太陽のように明るい声で切り捨てられた。
「んー? なんだろーね?
羽はあるー? んー。ないねー」
「ちょ、サーバルちゃん!」
自分の回りをグルグルとまわりながらペタペタと身体を触られ、パーソナルスペースの距離感をまるっきり無視してくるサーバルちゃんに戸惑いつつも、その表情や仕草にドキドキと胸が高鳴るのを感じずにはいられなかった。
「んー。じゃあしっぽはー?」
「し、尻尾?」
「そうしっぽー。
しっぽは特徴があってわかりやすいんだー」
「さ、サーバルちゃん!」
自分の尻尾を見せようとしたのか、お尻を向けて尻尾を動かすサーバルちゃん。
そんなサーバルちゃんは――
はいてなかった。
フリフリとお尻を振る姿は、まるでサーバルちゃんの大事なところを見せつけるようだった。
その姿に僕の中の何かが切れた。
「……尻尾は……どうだろうね。
ちょっと脱ぐから見てみてくれるかな?」
「うん。いーよー!」
立ち上がりベルトに手をかけ、そしてズボンを脱ぐ。
「わー。変わったしっぽだねー! あれ? 前にあるよ? しっぽ?」
マジマジとピンと立った尻尾に顔を近づけるサーバルちゃん。
無垢な顔の前で大きくそそり立つ尻尾。その倒錯感に僕の中の何かの扉が開く感覚を感じずにはいられない。
自分の口角が自然と上がるのが分かった。
「そっかー。
変わってるのかー。
じゃあ……サーバルちゃん。
ちょっと、このしっぽを触ってみてよ。
触って、おかしいところがないか調べてみてくれない?」
サーバルちゃんが満面の笑みを浮かべる。
「いーよー!」
~ つづける? ~
感想あったら続きかくー