「びっくりしたねー! しっぽちゃん」
「うん……びっくりしたよ…あれがセルリアンなんだね。
助けてくれてありがとうサーバルちゃん。」
「ううん。気にしないで!」
僕とサーバルちゃんがカバさんと別れゲートに向かう道すがら、青色の小さなセルリアンと遭遇してしまい、なぜかそのセルリアンは僕に狙い定めて近づいてきて、サーバルちゃんが爪で攻撃して守ってくれたのだ。
「でもおかしいなぁ……あれだけ離れてたら気づかれない事の方が多いのに。
……う~ん。今日はセルリアンが多いっていうのも何か関係あるのかなぁ?
まぁいっかー! 先に進もうしっぽちゃん! もうすぐゲートだよ。」
「う、うん。」
サーバルちゃんは首を傾げるのをやめて、また僕の手を引き始める。
僕はセルリアンに襲われた事に驚き、サーバルちゃんがやっつけて守ってくれた今になって、もしあのまま襲われていたらという怖さを覚え始め、その怖さからサーバルちゃんが差し伸ばしてくれた手を離さないよう強く握る。
サーバルちゃんは僕のそんな情けない様子を気にすることなく、一度振り向いて優しく微笑み、優しく握り返してくれた。
……僕は自分がまだ何が得意なフレンズなのかわからない。
サーバルちゃんに守られているだけの状態が、僕には少し悲しくて、そしてちょっぴり悔しかった。
サーバルちゃんの言う図書館に行って僕の事を調べれば、きっと僕が何が得意なフレンズなのかもわかるはず。
そうしたら、きっと僕がサーバルちゃんを助ける事もできる。
だから僕は頑張って絶対に図書館に行かなきゃいけない。
今サーバルちゃんが僕の手を引いてくれるように、僕がサーバルちゃんの手を引っ張れるようになるんだ。
そう決意するのだった。
・。・。★・。・゜☆・。・。★
「しっぽちゃん! もうすぐさばんなちほーの出口がみえてくるよ!」
時折休憩を挟みながら歩きつづけ、立て看板を見つけたサーバルちゃんが嬉しそうな声をあげる。
どうやら立て看板が目印のようで、長い移動に一つの区切りが近づいてきたことに僕も嬉しくなり小走りで立て看板の元へと向かう。すると立て看板には『絵』でこのまま直進して行けば違うちほーに入れるようなイメージが描かれていた。
「わぁ。本当だ。 ……ん?」
立て看板の脇には透明な箱に何枚もの紙が入っていたので取り出してみる。
取り出した紙は折りたたまれていて色々な事が書いてあり、広げて中身を見るとジャパリパークに何があるかが記された『地図』だった。
地図には、今目の前にある立て看板の位置が記されていて、僕とサーバルちゃんが今いる場所がどこなのかが見てわかるようになっている。
地図にはジャパリパークにある色々な建物の名前も記されていて、図書館の名前も見つけることが――
「わーーっ! なにそれなにそれー!
どこにあったのー!?」
僕が地図を調べようと思った直後、サーバルちゃんが驚いたような声で僕の広げていた地図を覗きこんでくる。
「箱の中に有ったよ。
ほら。ここの箱。」
僕は一度地図を折りたたみ、箱に入っている物と同じ状態にしてサーバルちゃんに見せてあげると、サーバルちゃんの目がキラキラと輝きだした。
「すっごーい! 今まで知らなかったよー!」
サーバルちゃんが箱の中から地図を取りだそうと透明な箱を触り出す。
でも取り出す事は出来なかった。
透明な箱には蓋が付いているから、蓋を開けて取り出す必要があるのだけど、サーバルちゃんには蓋を開けながら取り出すという動作が難しいみたいなのだ。
「……とれないよーしっぽちゃん。」
サーバルちゃんがしゅんとした声を出す。
「良かったら僕が取ろうか?」
「うんっ! お願い!」
サーバルちゃんの役に立てそうで少し嬉しくなりながら声をかけると、サーバルちゃんも嬉しそうに笑顔を返してくれる。
――その時、サーバルちゃんの耳がピクリと反応し、サーバルちゃんはゲートの方へと向き直り厳しい表情へと変化していく。
「ど、どうしたの? サーバルちゃん」
突然の変化に動揺しながらサーバルちゃんに問い掛ける。
「誰かの叫び声が聞こえた……行こう! しっぽちゃん!」
サーバルちゃんが動きだし、僕もその後を追って走り出した。
・。・。★・。・゜☆・。・。★
ゲートに到着した僕とサーバルちゃんが見たのは、大きな、すごく大きなセルリアンだった。
最初に会ったセルリアンは僕の膝までくらいの大きさで小さかったから、僕はセルリアンというのはそういう生き物だと思っていたのだけれど、今、僕たちが目にしているセルリアンは『さばんなちほー』から『じゃんぐるちほー』へと繋がる橋いっぱいに広がるゲートを塞ぐほどに大きく、触手のような物をゲートに絡みつかせて浮かんでいた。
「……お、大きいね…サーバルちゃん。」
「うん……」
サーバルちゃんはこれまでの陽気な雰囲気から一変し、危険を察知したのか厳しい空気を纏わせていた。
「……さっきの叫び声……もしかしたら誰かがあのセルリアンに食べられちゃったのかもしれない! 助けなきゃ!」
独り言のようにそう呟いた後、サーバルちゃんはあっという間に駆け出す。
「サーバルちゃんっ!?」
僕は僕やサーバルちゃんよりもずっと大きなセルリアンは、カバさんの言った通りに逃げる方が良いと考えていたから、サーバルちゃんの行動に驚き呼びとめようとした。
でもサーバルちゃんは僕の呼び声は聞こえているはずなのに、セルリアンへと向かうスピードを緩める事は無く、そのままセルリアンへ向けて走りつづけ、あっという間に目の前へと迫っていく。
「みゃみゃみゃみゃみゃーー!」
サーバルちゃんは勢いよく走った。
だが突如両足でスピードを殺して立ち止まり戸惑ったように声を上げた。
「――っ!? イシが無いよっ! どこっ!?」
セルリアンの『イシ』を探し始めるサーバルちゃん。
サーバルちゃんの声で、まるで目を覚ましたようにセルリアンの青く丸い体の中央にあった目が ぐりん と動き、サーバルちゃんを見た。
そしてその巨体は、驚くほどの速さでサーバルちゃんに迫り、サーバルちゃんは咄嗟に後ろへ飛んでセルリアンの突撃を躱す。
ドォンっ!
と、大きな音が響き渡り、次の瞬間に僕の目に飛び込んできたのは、セルリアンがその巨体を地面に突撃させて大きな穴をあけ、そこに半分埋まった姿だった。
どう考えてもセルリアンの繰り出した攻撃が当たったら、怪我無しでは済まされない。
サーバルちゃんが危ない。
「サーバルちゃんっ!」
僕は、サーバルちゃんに危ないところから戻ってきて欲しくて必死に声を上げる。
お願いだから戻ってきてほしい!
そして一緒に逃げよう!
「えーーっ!? イシが無いよー? なんでー!?」
でも、サーバルちゃんはセルリアンから引き下がるつもりはなく、目の前のセルリアンに集中していた。
僕はもどかしさを感じながらも、サーバルちゃんを苦しめるセルリアンに苛立ち込めて目を向ける。
すると僕の位置からセルリアンの後ろに光る宝石のような物が見えた。
アレが『イシ』だ!
「サーバルちゃんっ! セルリアンの後ろにイシがっ!」
「えっ? あっ! ほんとだ! 裏側にある!」
サーバルちゃんがイシの位置に気づくと、セルリアンはゲートに張り巡らせていた触手を解いて、埋まった地面から出ようとする。
サーバルちゃんはイシに向けて攻撃をしようと迫るけれど、その頃には地面から脱出したセルリアンはその大きな目でサーバルちゃんを捉えておいかけ、目の裏側にあるイシをサーバルちゃんに見せる事は無かった。
「うぅ~~……めちゃくちゃ見てるよぉ……向こう向いてよー!」
サーバルちゃんが叫ぶ。
そして、そのサーバルちゃんの叫び声は、僕に閃きを与えた。
セルリアンの注意を少しだけでも逸らせればいいのなら、僕にもできるかもしれない――
サーバルちゃんとセルリアンのにらみ合い。
一触即発のような緊張感が漂う。
「う~っ……こんなの初めてだよ~。どうしよ~。」
サーバルちゃんの戸惑いの声。
……そんな二人の間を割って入る存在があった。
「ふえっ?」
セルリアンだけでなく、サーバルちゃんも思わず目を惹かれたモノ。
紙飛行機が飛んでいく。
僕が放った紙飛行機は、驚くほど飛び、セルリアンも珍しそうに飛ぶ紙飛行機を目で追っていく。
紙飛行機は僕のイメージしたようにセルリアンを超えたあたりから旋回し、目で追うセルリアンは自分のイシをサーバルちゃんに向ける姿になった。
これでサーバルちゃんが攻撃できる。
そう思ってサーバルちゃんに目を向けると、サーバルちゃんもセルリアンと一緒に不思議そうに紙飛行機を眺めていた。
「さ、サーバルちゃん!? 今! 今がチャンスだよっ!」
「みゃっ!?」
僕の大声にサーバルちゃんが反応する。
そして、同時にセルリアンも僕の存在に気が付いてしまった。
「あっ」
僕はセルリアンに見られているのを感じ、恐怖に固まる。
――怖い。
……でも僕は、僕よりもずっとセルリアンの近くで頑張っている勇気があって強いサーバルちゃんに近づきたい。その一心で、踏みとどまってセルリアンを睨み返す事が出来た。
セルリアンが僕を見ていれば、サーバルちゃんではなく僕に注目していれば、その間にサーバルちゃんがイシを攻撃できる。
その瞬間。
セルリアンは僕に触手を驚くほどのスピードで伸ばして来た。
その触手の速さは
僕には避けようのない速さだった――