12話 さばんなちほー カバさん
あっという間に近づいてくるセルリアンの触手。
触手の先端が、まるで口のようになっていて大きく開かれている。
――避けなくちゃ。
頭の中では分かっていた。
でも僕の身体は別物のように動いてはくれず、セルリアンの触手は目の前に迫ってくる。
『あ。ダメだ。』
ハッキリとそう感じたその時、僕の視界は僕の意思とは一切関係関係なく横にながれていく。
突き飛ばされ身体が横に飛んでいたのだ。
僕は突然の横からの衝撃に目を向けると、その先には、なんと水飲み場で出会ったカバさんの姿があり、僕は空中を飛ばされながらも驚きの声が口を開いていた。
「カバさんっ!?」
僕を助けてくれたカバさんは僕の声を気にすることなく、セルリアンの大きく口を開けた触手が迫る中、真正面から向き合い一歩も引かずに対峙し、そして触手がカバさんに迫る。
僕はカバさんの女性らしい体つきにヒドイ事になる事を感じずにはいられなかった。が、カバさんはその容姿に似合わない力でセルリアンの口を両手でがっしりと受け止めるのだった。
「私に大口勝負を挑もうだなんて……いい度胸ですわね!」
カバさんが触手とまるで力比べのように向き合った後、捕まえていた触手を力まかせに地面へと叩きつける。
すると触手は力と勢いを失い だらり とした状態へと変わる。
「みゃみゃー!」
カバさんがセルリアンの触手を受け止め、そして投げ捨てると、サーバルちゃんの方から掛け声が聞こえ目を向けると、サーバルちゃんがセルリアンのイシに向かって爪を走らせ、そして的確にセルリアンのイシを捉えんとする瞬間だった。
僕は飛ばされた勢いで地面を転がりながらも、サーバルちゃんの爪がセルリアンのイシを引っ掻き、そしてイシを壊されたセルリアンが一瞬の光を放った後に、細かく分裂し、そしてセルリアンは消えてゆく。
――サーバルちゃんが勝った。
僕に迫った触手も、まるで僕に向ってきたこと自体が夢だったかのように消え去り、ゲート周辺には平和な時が戻っている。
僕はカバさんに突き飛ばされて転がった眩暈から覚めようと頭を振りながら、セルリアンを倒して元気に喜ぶサーバルちゃんと、僕を庇って触手を受け止めたカバさんの姿を改めて見て、そして安堵する。
二人とも怪我をした様子もない。
「良かった……サーバルちゃん。無事だぁ……
カバさんも怪我してない……」
そう呟くと、身体から僕を支えていた力が一気に抜け、仰向けに倒れ込む。
すると、いつのまにかカバさんが近くにきて僕を覗きこんでいた。
「アナタも怪我が無くて良かったですわね。」
カバさんがニコリと微笑み、今だ転がる僕に手を差し伸べて身体を起こすのを手伝おうとしてくれている。
「カバさん……その、危ないところを助けて頂いて有難うございました。」
「別にいいんですのよ。
あなたもサーバルを助けようとして努力してくれていたんだし……でも、本当は見つからない内に去るつもりでしたのに……案外目ざといんですのね、あなた。」
クスクスと笑うカバさんから差し伸べられている手を取ると、その手はとても柔らかく、到底あの触手の口を真正面から受け止められるような手とは思えなかった。
こんなに柔らかく華奢な手だと、もしかすると僕を守ろうとして見えない所に怪我をしているかもしれない。
そう思うといてもたってもいられず、いつの間にか僕は身体を起こしてカバさんの差し出してくれた手を怪我がないか調べ始めていた。
「な、なんですの!?」
「あっ!
ご、ごめんなさい!
とても、その、や、優しい手だったから!
僕を守ってくれたせいでケガをしたんじゃないかと思って!」
「だ、大丈夫ですわよ。
私こう見えても力もありますの。」
慌ててカバさんの手を離す。
安心感も再び僕を襲い、僕の身体はまた力が抜けて足がもつれ、そして膝から崩れるようにカバさんの方へ倒れ込んでしまった。
ぽにゅん
と、柔らかい感触が僕の両頬を包み込む。
「……ふぇ?」
「なっ!?」
目を上に向けると、柔らかく大きな物に僕の視界が半分奪われながらも、驚いた顔のカバさんの顔があった。
どうやら僕は崩れ落ちた拍子に膝立ちになり、カバさんの豊満な胸に顔を突っ込んでしまったらしい。
サーバルちゃんのぷにっとしたハリのある胸とは違って、ぷにょんとした柔らかさを感じる胸は安らぎを感じるような胸のように思える。
その安心感に思わず目を閉じてしまう。
「……何してますの?」
「あ! ご、ごめんなさい!
あ、あれ!? あ、足が……うわっぷ」
声をかけられて失礼な事をしたのを思い出し、胸から顔を離そうともがく。
だけど勝手に崩れた足は僕の言う事を聞かず、またももつれてカバさんの胸に顔をうずめてしまった。
慌ててカバさんの腰に手を当てて、胸から顔を離す。
「んはっ!
ご、ごめんなさい! あれ?」
僕はカバさんの胸に包まれて安心したせいか、今になって身体全部が震え始めているのを感じ、カバさんに抱き着くのは失礼だと思いながらも、不安から逃げるようにカバさんにしがみつかずにはいられなくなっていた。
僕は抱き着きたい気持ちを我慢しながらも、手が勝手にカバさんに安らぎを求めようと腰に手を回そうとし始めているのを感じ、それを止めようと考える事で精いっぱいになっていく。
カバさんは、そんな僕に少し呆れたように息を漏らした後、怒るでもなく諌めるでもなく、逆に静かに僕の頭が胸に顔をうずまってしまうのも構わず抱きしめ、そして優しく撫でてくれた。
「怖かったんですのね……
まったく今回だけですわよ?
……よしよし。」
僕は感情の赴くままカバさんの腰を抱きしめて、そして胸の柔らかさに包まれ癒しを求めた。
カバさんは温かく、いつしか僕の身体の震えは小さくなっていた。
……そして、身体の震えが収まると同時に、なぜか僕の中で『今すぐ交尾をしたい』という欲求が生まれていた。
交尾をしたくてしたくて仕方ない気持ち。
まるで誰かに操られているかのように膨れ上がる気持ちが止められなくなり僕の尻尾は大きくなっていく。
「すごーい!
しっぽちゃんぴゅーってなにか……って、あれー?
カバだー! どうしてここにいるの?」
「偶然ですわ。
偶然通りがかったんですの。」
「へー! そうなんだー! あのね! すごいんだよ!
しっぽちゃんがなんかふわーって……って、あれー?
しっぽちゃんどうしたの? 大丈夫?」
「ちょっと怖い思いをしたのよ。
でももう震えも収まったみたいね。
ほら、しっぽちゃん? 自分の足でお立ちなさいな。」
カバさんの言葉に、僕は交尾したい気持ちを鎮めようと気力を振り絞りながら、足に力を込めていく。
さっきよりもずっと僕の意思通りに動く身体。
もう自由に動けそうだ。
カバさんの言うように離れて立たなくてはいけない気持ちと、柔らかなカバさんの身体に触れていたい、そしてカバさんと交尾をして、僕の尻尾液を注ぎ込みたいという欲求がせめぎ合い、僕はカバさんによしかかるようにして、ジリジリと立ち上がっていく。
カバさんはサーバルちゃんと違った匂いもするし、身体もぷにっとした柔らかさがある。
きっとカバさんと交尾をしたら、とても……とっても気持ちいい。
身体を密着させながら立ち上がっていくと、やがて僕のパンパンに膨れ上がった尻尾が、カバさんの大事なところの窪みに触れた。
その瞬間
「あっ」
カバさんが、大事なところに僕の尻尾が当たったせいで、声を上げる。
僕はその声で壊れてしまった。
カバさんのお尻を両手で鷲掴みにし、僕の尻尾がズボンの中に納まっているのも構わず、尻尾を衣服越しにカバさんの大事なところにぶつけ、擦りあげる。
何度も。
何度も何度も何度も。
「あっ、ちょ、コラっ! や、ヤメ! やめ……ん!」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」
僕の耳には、カバさんが擦れて時折漏らす甘い声だけが耳に残り、衣服越しに擦れる僕の尻尾の感覚が、ただただ心地よかった。