12話 じゃんぐるちほーへ
僕は、触手が迫り『もうダメだ』と強く目を閉じる。
すると間もなく予想通り、僕の身体は強い衝撃に襲われた。
ただ一つ予想と違ったことは、その衝撃が横から走った事。
衝撃で飛ばされた僕はゴロゴロと何度も地面と肌を合わせるように転がる。
「うぅぅ……」
僕は目を回しながら、声を漏らす。
だけれど地面の草が僕を傷つけないように優しく受け止めてくれたおかげで、怪我をせずに済んだようだ。
「みゃみゃー!」
サーバルちゃんの大きなかけ声が聞こえ、僕はなんとか頭を振って、ぐるぐる回る世界を止めてサーバルちゃんに目を向けると、大きなセルリアンの姿がどこにも見えなくなっていた。
「……よかった……サーバルちゃん…無事だった。」
だけれど、サーバルちゃんは顔を少し下に向け、何かを思い悩むようにして僕の方へと歩いてくる。
僕はこんな険しいサーバルちゃんの表情は見たことがなく、もしかして怪我をしたのかと不安にならずにはいられない。声をかけようか二の足を踏んだその時
「すっごーい!」
「へぇ!?」
「さっきの! なにあれ!?
ひゅーって空を飛ぶやつ! あれ、なに? どうやったの!?」
サーバルちゃんが思い悩んでいると感じたのは、どうやら思い過ごしだったらしい。
僕は気を取り直してサーバルちゃんに答える。
「か、紙飛行機のこと?
あれは僕が作ったんだけど……」
「つくった!? すっごーい!!
どうやって? どうやってつくったの? しっぽちゃん!」
サーバルちゃんはいつものように元気よく、そして明るかった。
僕はその可愛いらしさに『もうダメかもしれない』と思った事も忘れ、思わず笑顔がこぼれる。
「じゃあ、もう一個作ってみようか。」
「うん!」
サーバルちゃんの声は僕にとって、とても心地よく、安心できて……そして楽しい気持ちにさせてくれるのだった。
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僕がサーバルちゃんに紙飛行機を作って見せると、サーバルちゃんはすごく喜び、僕もそれがただただ嬉しくて、気が付けば透明な箱の中に入っていた地図は全部紙飛行機へと形を変えていた。
そして太陽もその首を傾げ、その顔を半分だけ隠して赤く染まっている。
「すごーい! いっぱい! いーっぱい紙飛行機だよー! あはははー!」
「もう、紙なくなっちゃったね。」
「ありがとー! しっぽちゃん!
しっぽちゃんは交尾の他にも、こんなにすごい事ができるんだね!」
「え? す、すごいかなぁ?」
「すごいよー! 私、しっぽちゃんみたいなフレンズ初めて見たもの。」
「……僕って本当、なんのフレンズなのかなぁ。」
「気になるよねー! しっぽちゃん! 調べたい時は図書館だよ!」
「うん!」
僕は立ち上がってゲートの先、じゃんぐるちほーに目を向ける。
紙飛行機を折りながら地図を見た感じだと、いくつかのちほーを抜けないと図書館には辿り付けなさそうだった。
先はまだまだ長い。
僕の折った沢山の紙飛行機を腕に抱えてサーバルちゃんが微笑む。
「じゃあしっぽちゃん。気を付けてね!
じゃんぐるちほーでも『図書館に行きたい』って、フレンズの子に話せば、次のちほーまで案内してくれるから!」
「……ありがとう。」
サーバルちゃんの言葉は
『さようなら』
を告げる言葉のように感じられ、僕の胸の中には、たくさんの言葉が浮かんでは消え、言葉に出せない感情が心を埋めていく。
サーバルちゃんに守ってもらった事。
サーバルちゃんとたくさん交尾をした事。
僕はサーバルちゃんに甘えてばかりで、紙飛行機を作るくらいの事しか返せていない。
でもサーバルちゃんは僕の作った紙飛行機を腕に抱え、心から嬉しそうに微笑んでくれている。
……僕は……サーバルちゃんと別れたくない。
でも、これは僕の甘えでしかない。
カバさんは『自分の力で生きること』がジャパリパークの掟と言っていた。
足をひっぱる事しかできない僕が『サーバルちゃんと一緒にいたい』なんて我儘を言っていいワケがないんだ。
「……サーバル…ちゃん」
「ん?」
「……その……ぼく…」
「うん!」
「……サーバルちゃんがいなかったら……どうなってたか…
……本当に有難うございました。」
「何言ってるのー?
しっぽちゃんはこんなにすっごい事ができるんだもん!
何があっても大丈夫だったと思うよ!」
サーバルちゃんの力強い言葉。
励ましの気持ちではなく、純粋に心からそう思ってくれている事が伝わってきて、その言葉が僕が一歩を踏み出す勇気を生んでくれた。
僕はサーバルちゃんの言葉を噛みしめ、一度目を閉じて頷く。
僕だけでも、きっと図書館に行ける。
なぜなら、大好きなサーバルちゃんが僕を認めてくれている。
僕ならできると信じてくれているのだから。
「じゃあ、行ってきます!」
サーバルちゃんに背を向け、じゃんぐるちほーに向けて足を踏み出す。
「しっぽちゃん! 何の動物のフレンズかが分かったら、またサバンナちほーに寄ってね!」
振り返ると、サーバルちゃんはいつものように太陽のような笑顔。
それは別れを惜しむのではなく、次の再開を楽しみにしてくれているように見えた。
「うん!
僕がなんのフレンズか分かったら、必ずサーバルちゃんに会いに来るよ!
だから……またね! サーバルちゃん!」
「うん! またねー!」
僕たちも風景も、何もかもが夕日の色に染まっても、サーバルちゃんの笑顔だけは何にも染まらない輝きを放っていた。
僕も精一杯の笑顔をサーバルちゃんに返し、そして踵を返して歩き出すのだった。
久しぶりに更新しました。
あと、突然ですが活動報告(R18指定)で『けだものフレンズ』の今後の展開アンケートを開催しております。
もし、お時間のございますフレンズは、良かったらお言葉聞かせてくだしあませ。