ダンジョンに性交を求める眷属の物語 作:kuracjaponski
プロローグ もう一つの眷属の物語―ファミリア・ミィス―
ここは迷宮都市オラリオ。
太古からこの地に存在するダンジョン―無限に湧き出る怪物と、未知なる資源が眠る迷宮―に富と名声を求め、世界中から人々が集まる文字通りの世界の中心だ。ダンジョンがこのオラリオにもたらしたものは、英雄譚に語られるほどの栄光や、贅を極める巨万の富だけに留まらない。
天界での暮らしに退屈した神々が現世に降臨し、人々に
かくしてオラリオはここ数百年間歴史の中心として幾多の人々・神々を受け入れ、数々の英雄や豪商を生み、同時に数多の犠牲者も出してきた。
そんな迷宮都市オラリオの一角で。
今日も新たな冒険を始める人々が街へ入る審査を受けるため、城壁のように高く聳え立つゲートの前で、列をなしていた。
「おい、門兵。さっさと通せ。こんな俗物共と一緒に列をなして入国を待つなんぞ、真っ平ごめんと言うところだ。もう三十分は外で待たされているぞ。貴様らの鈍い仕事に付き合わされる身にもなってみろ。え、何とも思わんのか?三下どもが」
浅黒い肌に、漆黒の髪。血のように赤く、ナイフのように鋭い目つきをしたヒューマンは悪態を吐いた。
「はいはい、お前こそ感謝するんだな。お前がダンジョンへ入ったら十分と経たずにモンスターの腹の中だ。こうして待っている以上は、お前も残りの人生を楽しめていると言うわけだ。はい、次の方どうぞ!」
オラリオを管理するギルドと連携して、ガネーシャファミリアは慈善的に街の出入りを管理していた。オラリオが誇るファミリアの顔ぶれの錚々たるは言うまでもないが、その戦力が外へ流出したとなっては一大事。だからオラリオに住む冒険者たち、また一般人たちは、この場所を簡単に離れることはできないようになっている。
門兵は歴戦のファミリアの中でも最上位に位置する、ガネーシャファミリアの一員だ。毎日毎日途切れることなくオラリオに入ってくる人々には、さっきの男のように無礼な輩もいる。誰が彼にどんな罵詈雑言を浴びせたとしても、彼としては慣れっこだったうえ、殴りかかってくるような命知らずには、恩恵―ファルナ―を授かった神の眷属の力がどれほどのものかわからせてやることもできる。だからこの日も門兵は先の不届きものに対して、別段代り映えしないいつもの感情を吐き出したのだった。
「おとといきやがれ、糞野郎」
「…なんだと?」
ぎくり、と門兵は先の男を見た。その紅い目のヒューマンが放った言葉の威圧感に、歴戦の勇士であるはずの彼が一瞬たじろいだ。
その瞬間、刹那の間に門兵は右手を切り落とされた。
「ぐ、おおおおおおおおおおっ……!」
剣を抜いたのも見えぬほどの早業だった。
列をなしていた人々は驚愕の相貌を浮かべ、あたりの門兵たちが血相を変えて集まってきた。
「なんだ、おい!?」
「ならず者だ、ひっ捕らえろ!」
切っ先を紅い血で染めた剣を握りながら、手を切り落とした男は叫んだ。
「糞野郎はお前だ。間抜けな門兵ども!捕らえられると思うならやってみろ!俺の名はハムザ、英雄になる男だ!はははは!どけ~!道を開けろ、軟弱者!」
その男、ハムザは武装した門兵の波を正面から突破し、オラリオの門をくぐった。
門兵はあっけに取られ、姿が見えなくなるまで彼の背中を見送っていた。一体、どういうことだ?
恩恵―ファルナ―を授かり、常人離れしたはずの自分たちが、ただの一般人に出し抜かれるとは。一点を突破する疾風のように突っ込んできた男の気迫を前に、猛者たちは怯んでしまっていた。考えられることは一つ。やつもまた、恩恵―ファルナ―を受けた身に違いない…。
ハムザは走っていた。門兵を斬ったからには、ギルド本部が黙っちゃいまい。オラリオの表舞台に居場所はないということだ。
「それなら、裏舞台か」
そう呟いてオラリオを疾駆する。行く先は一つ。そう。男の夢、歓楽街だ。あははうふふな情事の楽園。美女が股を開いて俺様を待っているとなれば、いかない理由がどこにある?はやる心に足を早めようとした途端、裏路地から出てきた小柄なヒューマンにぶつかった。ヒューマンの少年は情けなく地面にしりもちをついた。
「おいてめぇ、どこ見てやがる!」
「あ、ご、ごごごめんなさいっ!?すみませんっ!」
ルベライトの瞳に、白髪のヒューマン。背丈はハムザの三分の二ほどだ。よわよわしく俯く少年をよそに、ハムザは歓楽街へと走っていった。
少年は呟いた。
「はぁ…。ついてないなぁ。ファミリアには入れない、ボクを雇ってくれる神様はみつからないかぁ」
太陽は真上からオラリオを照らしていた。いつものようにファミリアへ自分を売り込みに行くのだが、今日も収穫はゼロだった。彼のように弱々しい年端もいかない若造を受け入れるファミリアなど、オラリオにはないかと思われた。溜息をつくと、小さな影が少年を覆う。
「きみぃ、ファミリアを探しているのかい?奇遇だねぇ!ボクはファミリアに入る子供を探しているんだ。ねぇ、よかったらボクのファミリアに入る、最初に団員になってくれないかい?」
振り返ると、その女神は。
少年にとっては眩しすぎる笑顔を浮かべ、ツインテールをなびかせていた。少年はおずおずと聞いた。
「あの、本当にボクなんかでいいんですか、神様?」
「もちろんだよ!むしろボクの方こそそう聞きたいくらいさ!ボクはヘスティア、今はしがない神の一柱をやっているよ!ねぇ君、名前を聞いてもいいかな?」
少年は少し恥ずかしそうに、だが顔をほころばせながら。
「ぼ、僕の名前は、ベル。ベル・クラネルです!」
嬉しそうに相好を崩すベルとヘスティアには、裏通りを走り去っていくハムザの足音はもう届かなくなっていた。
●
歓楽街に到着したハムザは、言葉を失った。
「…閉まってやがる」
それもそのはず。今は真昼。歓楽街がにぎわい始めるのは夜のとばりが下りてからというのは、当たり前のことだ。
あっけに取られるハムザの背後で、なまめかしい声が聞こえた。
「何をしておるのだ?」
暗い路地裏から姿を現したその影に、ハムザは声を失った。
(うおおおっ!なんという美女!なびくプラチナヘアー!雪のように白い肌!そして新緑色の瞳!おっぱいも、うおっ!でけぇ!くそっ、揉みしだいてやりたいっ…!)
「なんじゃ、いやらしい目つきをしておるのう。お前の名前は?」
威厳と淫猥さが混在したその姿は、見る者を虜にする一種の魔力のようなものを秘めているように思われた。肌を隠す布地は薄く、露出は多い。まるで天界の娼婦のような雰囲気で、その絶世の美女はハムザに話しかけていた。
おほん、と咳ばらいをして、いつもよりトーンの低い声で言う。
「俺はハムザ。海のある遠い場所から来た。最強の紳士であり、この世界をいずれ統べる英雄になる男だ」
美女はクスッと笑い、手を差し伸べて言った。
「面白い男だ。私はテルクシノエ。ムーサの四柱の一人。つまり、神様じゃ。どうかな、ハムザ。私はオラリオに来て日が浅い。見たところお前もそうだろう。ここはひとつ、二人で新しいファミリアを始める気はないか?」
燦然と照り付ける太陽の下、迷宮都市オラリオ。今日この時、新たに二つのファミリアがひっそりと誕生したことを、街の住民たちは知る由もない。
ルベライトの少年と、漆黒のヒューマン。決して交わることのない二人が紡いだのは、別々の英雄譚。
そう、これはもう一つの
練習で書いているものです。クオリティはあまり追及していないので、誤字脱字、本編との矛盾等はご容赦ください。
ご意見・ご感想大歓迎です。
変な点があったら教えてください。しょっちゅう加筆しています。