ダンジョンに性交を求める眷属の物語 作:kuracjaponski
少女が出て行ってからしばらくして、主神はハムザに声を掛けられてステイタスの更新を行っていた。
「はぁ、何だか知らんが熟練度の評価値がSに近づいてきておるなぁ。最近セックスしたか?」
「思い出したくもないが、あの少女とやったのが最後だ…」
「なんじゃ、ロリは成長に良く作用するのか?攻撃なんかがやたらと上がっているぞ」
(攻撃…攻撃…。ダンジョンで蟻を大量に殺してたっけ、そういえば)
「まぁ、セクロスするだけじゃなくてモンスターを殺せば成長も早まるって事だろう。もうロリのことは忘れさせてくれ。頼むから。さっきの子供も断りはしたが、妙にエロくてかなわん。勃起が収まらなかったぞ」
「あれがか?お前、本当にロリコンになってしまったのじゃな…。母上はさぞ残念なことじゃろうに」
(うっるさいなぁ、こいつ…。しかし、ロリコンになったのはやはり事実かも知れん)
「そんなにショックか?」
主神の質問には頷く気にも、答える気にもなれずハムザはただじっとステイタスの更新が終わるのを待っていた。
「そうじゃなぁ、昨日まで
「だがまぁ、気にするほどのものでもない、そのうち慣れる」
主神はそう言ってから、急に手を止めた。
「……なんだ?さっさとしろ」
「魔法じゃ」
「…は?」
「魔法が発現しておる。これがロリの魔力か?」
「なんだとっ…!?」
ステイタスの更新が終わり、主神が手早く共通語に翻訳した紙切れをハムザに渡す。
彼は眺めて絶句していた。
【ハムザ・スムルト】
Lv.1
力:A 866 耐久:A 828 器用: D 506 敏捷: D 523 魔力:H 140
<魔法> 【イェベン・ティ・マーテル】
<スキル> 【性交一途-セクロスシテーゼ-】
・性交の数だけ早熟する
・精液に魅了効果 経験値ーエクセリアー付与
・快感の丈により効果上昇
「【イェベン・ティ・マーテル】?この魔法は何だ?お前、一体どんな余計なことをしたのじゃ?」
ハムザは今日の出来事を思い起こす。しかし魔法が発現するきっかけとなるような事と言ったら、一つしか思い浮かばない。『豊穣の女主人』で見た、あの夢だ。
「…ううむ。リューちゃんのところで本を読んだら眠くなって、夢をみたのだ…。俺の物真似をした奴が、魔法について生意気な講釈を垂れる夢だ」
ハムザが持ち帰ったその本は机に置いてあった。それをテルクシノエは手に取り、「そうか、この本か」と主神は頷いて、ぱたんと本を閉じた。
「お前が読んだ本は、
ハムザが本を開いてみると、なるほど中身は真っ白だった。主神は横から「
「うむ、なかったことにしよう。シルちゃんには失くしたと言ってしらを切り続ければいい。しかし一体どこの阿呆がそんな本を店に放置してたんだ?」
主神はハムザの質問に答えられなかった。しかし、恐らくこういうとんでもない馬鹿をするのは決まって神のどれかだ。何者かの神意の上で、誰かが踊らされている…。それが誰かと問われれば、答えは明白だ。
(しかし、じゃ。
ハムザは突然魔法を授かったという事実に呆然としている。手を閉じたり開いたりして、その感覚を確かめようとするも特に変わりはない。
「よし、今からダンジョンで試し打ちをしてくるぞ。お前、寝とけ」
「ん?まぁ、気を付けろよ。私は明日から本気だーす」
主神は呑気に大きなあくびをしてから、ベッドにどさっと横になった。
その様子を見てからハムザはテントの外へ出た。聞きなれた歓楽街の喧騒が遠くから聞こえてくる。薄暗い路地裏を進むと、可憐な少女に肩を回しエロい顔つきをしているヒューマンとすれ違った。
昔のハムザなら、ロリコンめくたばれと悪態を吐いたことだろう。しかし、今の自分にそんな事を言う権利はない。魔法を手に入れた高揚感は既に失われ、再びハムザは後悔の渦にとらわれていた。
そんな状況だったせいか、重い足取りでバベルまで辿り着くまでに、いつもの倍の時間を要した。時刻は深夜を回ってしまっているだろうか。しかし、ここまでくれば引き返すわけにも行かない。ハムザはダンジョンの入り口へと進み、やがて一階層へ辿り着く。
いつもなら人気の多いダンジョンとオラリオを繋ぐこの『始まりの間』には、今は人影すら見えない。ここから少し進んでから、ゴブリンあたりに試し打ちをしてみるのが妥当だろう。
(ううむ、落ち込んでいる場合ではないな。取り合えず今は魔法の事だけを考えればいい。後の事は後で考える事にしよう)
深く進んでいくにつれ、燐光の瞬くダンジョンはまさしくダンジョンらしいその様相を表し始める。すると百メートル程先に、小さくうごめく影を見つけた。
ゴブリンだ。間抜けな顔で目的もなく徘徊している。足音に気づいたのか、ゴブリンはその爪を立てながらハムザへと疾走を始めた。
『ギィィィアアアア!』
数秒のうちにゴブリンはハムザとの距離を半分ほどまで詰めていた。不思議とハムザには、何をしたら良いかわかっていた。右手を上げ、手のひらを大きく広げながら叫べば良い。それが『詠唱』となり、目の前の愚かなモンスターを一瞬で灰にするだろう。
息を吸い込み胸を膨らませて、大声でその魔法を叫ぶ。
『イェベン・ティ・マーテル!』
すると右手から、どす黒く光る粒子の波がだだっ広い通路を覆いつくすように光速で広がっていき、消えた。
一瞬の出来事だった。
何が起きたのか分からず辺りを見渡すと、先ほどこちらに疾走していたゴブリンはかっと目を見開いたまま地面に寝転がっている。
「死んだ、のか?」
試しに蹴飛ばしてみても、全く反応がない。しかし、ゴブリンは灰にもならず、流血もする事なくただそこに横たわっているだけだ。まるで気絶しているかのように、身じろぎ一つすることなく脱力している。
これが魔法の効果なのだろうか?しかし確証を得るには、もうしばらく実験が必要だ。他の種類のモンスターにも魔法を当ててみて、どのような結果になるかを調べなければならない。
「ううむ、よくわからん。深夜だが、もう少し降りてみないと仕方ないか…」
それからしばらくの間、ハムザは魔法を詠唱し続けていた。
結果は全て同じ。どんなモンスターもそのどす黒い波に飲み込まれた途端に行動をやめ、地面に力なく崩れ落ちていくのだった。ハムザは結論を下す。
「気絶させる魔法、ってことか。何かしょぼいな。大型モンスターに効くかもわからんし…」
『…イェベン・ティ・マーテル~』
試しに気力のない詠唱で魔法を打ってみても、結果は同じだ。
ニードルラビットの群れがただそこに横たわっている。一匹ずつ長剣で串刺しにして灰に変えていく作業が面倒で、ハムザはそれを放置することにした。
(もういっか。充分に実験したし、帰るとするか。しかしなんか釈然としない魔法だなぁ…)
そうだ、全く釈然としない。火を噴き出すわけでもないし、突風で切り裂く訳でもない。
黒い粒子の嵐が飛び出て、後は敵が寝っ転がるだけの魔法だ。一応、緊急時には使えるかもしれないが、この手の状態異常系の魔法はモンスターが強くなればなるほど効果が出辛くなるのが目に見えているし、それは対人戦でも同じだろう。
相手に『耐異常』のアビリティがあれば、かんたんに打ち消されてしまうに違いない。
そう考えると、ハムザはこの魔法を捨ててしまいたくなった。溜息を吐きながら上の階層への階段へ向かうために踵を返すと、背後の通路から人声が聞こえてくる。
こんな時間に迷宮探索とは珍しい。その声はだんだんと近くなる。女性二人の声だ。
「そうだ、最近ヤってないからここらで襲ってみるのも手かも知れん」
期待に胸と股間を膨らませながら佇んでいると、その影は青い燐光に照らされて姿を現した。
『あっ』
ハムザとその少女は同時に声を出した。
(アイズなんとかちゃんと、美人エルフのリヴェリアちゃんじゃないか)
自分が口を開くより先に、リヴェリアが言葉を発する。
「ハムザ・スムルトだな?こんな時間に何をしている…と聞くのは野暮か」
リヴェリアは知性に満ち満ちた瞳でエロい表情を作るハムザを見つめている。隣でアイズはきょとんとした表情で佇んでいた。
「…リヴェリア、知り合い?」
アイズの質問に、彼女は頷いて応える。
「以前シルの酒場で出会った冒険者だ。この前と同様に、やはりまともな男には見えんな」
それもその筈だ。ハムザは股間を膨らませて今にも襲い掛かりそうな気配で近づいている。
その様子を察知したアイズは、途端に雰囲気を豹変させて剣呑な視線でその動きを制止する。
「…止まって。それ以上近づけば、斬ります」
ハムザは射すくめられた。彼女がいつ剣を抜いたかも分からなかったが、ともかくその剣先が自分の喉元から僅か数センチの所で止まっていた。目で追う事すら出来ぬ早業。
冒険者としての、レベルが違う。こんな化物を相手にしても仕方がないと痛感させられたハムザは、後退りして弁明を始める。
「いや、すまんすまん。二人があまりにも綺麗だったもんで、つい近くで見ようと思ってな。俺は今『魔法』の試し打ちをしていたところだ」
「…試し打ちだと?新たに発現でもしたのか」
ハムザはこの時、少しだけリヴェリアが狼狽したのを察知した。
自分が一か月のうちにランクアップすれば、リヴェリアのおっぱいを弄り倒した挙句セクロスする事が出来る。そういう約束を取り付けた記憶があった。
本来であれば軽くあしらわれてしまう要求だっただろう。だが悪名高い【ロキ・ファミリア】の連中は強くなることに異常な程に執着をしているようだと主神は言っていた。
だから魔法が発現する程の急速な成長を目の当たりにすれば、いよいよこの気高いエルフも自分から股を開いて中出しを懇願してくるに違いない。ついでに隣のアイズちゃんもずるいずるいと言いながらむしゃぶりついてくること請け合いだ。
「…そこのニードルラビットの群れを見てみろ。俺の魔法を喰らってこの有様だ」
二人は近くに横たわり動かないモンスターの群れを見た。確かに数匹のニードルラビットが何らかの外的要因により行動不能になっているようだった。
「実はな、魔法を撃ったものの効果がよく分からんのだ。気絶しているというか、寝てるというか」
「ほう、興味深いな。アイズ、どう見る?」
リヴェリアの質問に、金髪金眼の少女は「わからない」と首を横に振った。
「ハムザ。魔法を空打ちしてみろ。私が分析してやる」
願ってもない要求だ。他の派閥に自分の手の内を晒すのは癪だが、他ならぬリヴェリアちゃんの頼みであれば無碍にすることもできないし、一応本職の魔導士による分析を聞いてみたい。だからハムザは了解し、右手を構える。
「よし、あっちに撃つぞ。範囲が広いが一瞬だからな、しっかり目を見張っておけよ」
そして力いっぱいに叫んだ。
『イェベン・ティ・マーテル!』
すると、どす黒い粒子が波打つ嵐のように広間を駆け巡り、一瞬のうちにして消えた。
振り返ると、二人は驚いた顔をしている。
「…詠唱無しの、速攻魔法か。そう簡単にお目にかかれる魔法ではないようだな」
「うん。範囲も広いし、速いね。不意打ちだったらまず避ける事は出来ない」
二人の感想に、ハムザは大満足だった。
「そうだろう、そうだろう。しかし肝心の効果が良く分からん。気絶って事でいいのか?」
「それについては、何とも言えん。アイズ、試しに受けてみるか?」
それはいくら何でもまずいだろうと思ったハムザだったが、なんとアイズはあっさりそれを了承した。
「うん。『耐異常』のアビリティなら私も持ってるし、レベル差を考えればまず効果は出ないと思う…」
(お、おう?なんだかずいぶん舐められてる気がするが…)
アイズはハムザを見つめた。その金眼と初めて視線を合わせたハムザは、改めて彼女が纏う黄金の雰囲気に股間を膨らませていた。
驚くほどの美女が二人だ。誰が勃起を押さえていられようか。しかしそんな事は今は無関係だ。「いいよ」とだけ言ってアイズはハムザに相対する。
「…一応確認するが、何が起きても文句は言うなよ?」
ハムザはそう言って、再び右手を上げた。次の瞬間、詠唱が広間に鳴り響く。
『イェベン・ティ・マーテル!!』
どす黒い波がアイズを瞬く間に包み込んだ。それは暫く彼女の傍で踊りながら、やがて昇っていき消えた。
「なっ…」
自信たっぷりに『効果は出ない』と胸を張っていた彼女は、今では力なく伏していた。
「し、信じられん!おい、アイズ!起きろ!」
リヴェリアは彼女のもとに屈みこみ、アイズの容態を必死に調べ始める。
なんかだとても不味い事をしてしまった気がして、ハムザは咄嗟にナァーザから受け取った『
「…ん」
ぱちり、とアイズは目を開けた。その様子を見てリヴェリアは心底安心したようにため息を吐いた。
「お、俺は一応確認したからな。間違っても今更怒るなよ…?」
「アイズ、いったい何が起きた?今体がどんな状態か、わかるか?」
リヴェリアの問いかけに、アイズは頷いて答える。その口調は先ほどとは打って変わって疲れ果てたようで、鈍かった。
「う…うん。なんだろう、
再び彼女はがっくりと頭を垂れて、次第に寝息を立て始めた。
リヴェリアは彼女をそっと寝かし、立ち上がってからハムザに振り向いた。
「…驚いた事だが、今の出来事ではっきりとわかった事がある」
「…ん?」
「お前のは『魔法』などではない。単純な状態異常魔法なら、アイズに効果が出る筈がないんだ」
「じゃあ、何なんだ」
ハムザの問いかけに、リヴェリアは瞑目する。
少し間を置いてから、その口をゆっくりと開いた。
「
「…強い状態異常を引き起こす、『魔法』とは一線を画すもう一つの『魔法』だ。
なるほど。それならば自分に相応しい魔法かもしれない。問答無用で相手を気絶させられるのであれば、それなりに使い道はありそうだ。
「…驚くほど厄介だ。私の読みが正しければ、これは『強制的に
「…ほう。悪くないな。これさえあればどんな化物を相手にしても一本取れるかもしれないわけだな」
ハムザの発言に、リヴェリアは首を縦に振った。
「その通りだ。しかし、呪詛はその強力な効果から、詠唱者に身体的負担を強いる。お前、体が怠いとか動かないとか、そういった症状が出ているだろう?」
その言葉を受けて、ハムザは四肢を動かしてみる。別に普通だ。
「いや、別に?」
「嘘を吐くな。
「そんなこと言われても、平気なもんは平気だ」
リヴェリアは信じられないといった面持ちで、呆れたように首を左右に振っている。実際にの
オラリオ中の冒険者が
(念のため確認しておいて、正解だったな…)
リヴェリアはハムザに背を向け、寝息を立てているアイズを担いで言った。
「この事は、内密にしておいてやろう。お前の魔法を見れてこちらも事前対策が出来るわけだからな。おあいこと言ったところだろう」
そう言い残して立ち去ろうとする彼女に、ハムザは声を掛けた。
「まぁ、そんなことはどうでもいい。それより例の約束、ちゃんと覚えているな?」
リヴェリアは少し立ち止まり、ハムザに背中を向けながら答えた。
「…ああ。覚えている」
「それなら良い。アイズちゃんにもよろしくな」
ハムザからはこの時リヴェリアがどのような表情をしているのか、伺い知れなかった。それでもハムザは満足だった。
何故ならアイズを抱えて地上へ戻るリヴェリアの背中から、はっきりと動揺の色が見て取れたからだ。