※この作品はR-18です。

ダンジョンに性交を求める眷属の物語   作:kuracjaponski

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第三章 ―風俗探検ツアー―

 

 霧の出る晩だった。夕闇に包まれたオラリオが幻想的には程遠く思えたのは、まだ夜も更け切らぬうちに酩酊し嘔吐する酔っ払い集団で賑わっていたからだ。

 

 度数の高い、強い酒を飲むことのみに誇りを見出すその聖なる軍団は、路上にも関らず小瓶をあおり続け、気違いじみた雄叫びを上げてはお互いを罵り合っている。

 

 かと思えば今度は肩を組んで一同で歌を歌いながらメイン・ストリートを闊歩し始めるなど、素面の人間が見れば狂気じみた挙動を繰り返す。見上げるバベルの塔は霧に隠れ、不気味な光を薄く靄がかった空気の向こう側から放っている。

 

 霧の深い、オラリオの夜だ。

 

 レフィーヤは何もない街路の一角で、ハムザを待ち続けていた。約束の時間はとうに過ぎただろうか。今も酔っ払い集団が道路を一周して、元の位置まで戻って来た。

 

 「もう…なによっ。デートの誘いなのかは分からないけど、いきなり遅刻するなんて酷い奴っ」

 

 オラリオ風俗探検ツアー、とその男は言っていた。それが何を意味するのか、レフィーヤにはある程度は想像することが出来る。娼館に行くのかも知れない。あるいは、酒場に入り目ぼしい女性に声を掛けるつもりなのかも知れない。

 

 だが、指定された待ち合わせ場所は娼館のある歓楽街からは遠く、酒場の数も少ない。西のメイン・ストリートで待ち続ける暫くの間、レフィーヤはただ酔っ払いたちの痴態を眺めていた。

 

 「よう、待ったか。レフィーヤちゃん」

 

 ようやくその男、ハムザ・スムルトが姿を現した。手提げの紙袋を持って近づいてくる男に、レフィーヤはたっぷりと睨みを利かせてやった。

 

 「遅いんじゃないですか?女性をこんなに待たせるなんて、どんな神経をしているのか分かりません」

 

 「まぁそうぷりぷりするな。これでも食え」

 

 ハムザは手提げ袋から瓶詰を取り出し、レフィーヤに渡した。

 

 「こ、これは…?」

 

 「プレゼントだ」

 

 まじまじとその瓶詰を眺める。まさか毒ではないだろうかと訝しみながら。

 

 「あ…。これ、ジェリー・ビーンズ?」

 

 ジェリー・ビーンズとは、蜂蜜と砂糖で作られた柔らかい小型のキャンディーだ。色とりどりの豆粒のように小さい飴がつまった瓶詰は、子供に人気のお菓子としてよく知られている。

 

 しかし、自分はこれを貰って喜ぶ程子供ではないのだが…。

 

 「ただのジェリー・ビーンズではないぞ、よく見ろ。巨大蜂デッドリー・ホーネットの蜂蜜だ」

 

 レフィーヤは驚いて言った。

 

 「えぇ~!?本当に食べれるんですか…?あんな凶悪で毒だらけのモンスターから、蜂蜜が採れるなんて知らなかった…」

 

 「いいから食ってみろ。腰抜かしても知らんぞ」

 

 言われるがままに一粒を手に取り、食べる。

 

 その瞬間、口の中でまるで蜂蜜そのものを食べたように甘い舌触りが広がっていく。それは普通の飴にはない、上質な甘味だった。

 

 「…おいしい。でも、高かったんじゃないの?」

 

 一粒食べただけでも分かるその高級感は、他の甘味食材とは一線を画する程だ。それに巨大蜂の蜂蜜なんて、今まで耳にしたこともない。

 

 「まぁな。この蜂蜜は《ブラッディー・ハイヴ》のドロップアイテムだ。もともと希少性の高いモンスターな上、どうもドロップ条件が面倒らしい。それだけに味は一級品だし、魔力回復効果もある」

 

 「そ、そうなんだ…その、ありがとう…」

 

 《ブラッディー・ハイヴ》は巨大蜂と共生するハチの巣のようなモンスターで、通常は遭遇したら巣ごと魔法で壊してしまうことが多い。とにかく遭遇するだけでも厄介な敵だ。普通の冒険者なら定跡通りに魔法で破壊してしまうのだろうが、どんな手段を使うのかは知らないが、このドロップアイテムの存在が知れ渡ればまた別の攻略方法が広まっていくのかも知れない。

 

 レフィーヤが知る限りでも、このような新たな発見は枚挙に暇がない。ダンジョンが生み出すのは危険だけではなく、当然恩恵も含まれるのだ。間違いなくこの蜂蜜はそんな流行の最先端だろう。存在を知れただけでも、レフィーヤにとっては嬉しいことだった。

 

 意外と気の利く贈り物を貰いすっかり機嫌を直したレフィーヤは、ハムザにこれからの行先を聞く。こんな酔っ払いの通り道で時間を浪費するのは、もうたくさんだった。

 

 「そうだな。今日は酒場に行き、酒を飲む。あれが見えるか?」

 

 ハムザが視線で示すのは、例の飲んだくれ集団だ。レフィーヤは頷いた。

 

 「これから酒場に行って、朝まで酒を飲む。訳が分からなくなって道端でぶっ倒れる程にな。俺と、お前でだ」

 

 「むむむむ…ちょっと待って。私もお酒を飲むの?」

 

 「そうだ」

 

 「それで、あんな痴態を晒すまで飲み続けるの?」

 

 「そうだぞ」

 

 レフィーヤは少し考え込む仕草をして、言った。

 

 「嫌です」

 

 「ばか、お前に拒否権はない!いいか、これは強くなるために必要な事なんだ」

 

 納得できない。いったいどうして酒を飲むことが強くなることに繋がるのか。頑なに拒絶し続ける自分に、ハムザは業を煮やしてまくし立てる。

 

 「エルフはこれだからダメなんだ!誇りだのなんだの偉そうに言って、自分達の世界から出てこようとしない。新しい世界を知るのは悪いことではないぞ。酒もそうだ。殻を破るためには、器を昇華させるためにはあらゆる挑戦を続けねばならん。お前がそれを知らない訳でもないだろう」

 

 「そんなこと、あなたに言われたくないです。まだLv.1のくせにっ!」

 

 「なんだこの野郎、やる気かっ!じゃあいいんだな。もう抱いてやらんし、自分だけで強くなったらいい。きっとアイズちゃんは幻滅するだろうな。レフィーヤったら、そんなこともできないなんて残念エルフ、ってな具合でな」

 

 この発言は効果てきめんだった。「むむむむ…」と返答に窮した残念エルフは暫くののち、頷いてハムザの提案を受け入れたのだった。

 

 「わかればよろしい。この挑戦が終わった頃には、お前は泣いて俺に感謝しているだろう。ではいざ行かん、きちがいの世界へ」

 

 歩き始めた二人が酔っ払い集団とすれ違った時、彼らは大声で歌を歌っていた。

 

 『進め我が軍、砲弾よりも速く!酒がお前を待っている!』

 

 

 

 ハムザに連れてこられた店の名は、『飲み屋—国会議事堂—パルラメント』というものだった。店内にはその名の通り賢そうな飲兵衛たちが行儀良く様々な法案について審議している。その中の一人、げっそりとしたひげ面のヒューマンがレフィーヤを見るなり鼻の下を伸ばしながら議事を提案した。

 

 「お嬢ちゃん、可愛いねぇ。処女かい?今晩よかったらお相手にどうだい?」

 

 聴衆のドワーフが火酒をぐいっと傾けてそれを却下する。

 

 「短小包茎は綺麗に洗って出直してこい!嬢ちゃん、俺の方がいいぜ。ズル剥けの極太だ、これじゃなきゃダメって女は、掃いて捨てる程いるぜ」

 

 (何ですか、このゴロツキ達は。こんな品の無いお店、サイアク…)

 

 「おい、てめぇらよぉく見てみろ。【ロキ・ファミリア】だぜ…」

 

 「な、なんでこんなところにいやがる…」

 

 目敏い何者かの発言に、辺りは静まり返った。粗相すれば、殺されかねない。そんな緊張感が広がっていく。何人かはレフィーヤを見ただけで慌てて逃げ出した。

 

 さすがは最強派閥といったところか。紋章をちらりと見せただけでこの有様だ。

 

 ハムザはそんな店内の雰囲気には我関せず、店の奥へ奥へと進んで行く。

 

 案内されたのは、店内の奥まった一角にある小部屋だった。彼いわく、オラリオの住人たちはみな開放的なせいか、貸し切り部屋などの閉鎖的な空間を持つ店は殆どないそうだ。レフィーヤは納得し、着席する。

 

 ふと前を見ると、ハムザがさっそくメニューを眺めていた。

 

 褐色の肌に、紅の瞳。風貌だけで言えばそこいらのゴロツキと変わりはないが、不思議とオーラの漂う青年だった。もし彼が変態でなければ、きっと自分は今悪い気分はしないだろう。しかし、事実彼は変態中の変態であり、自分が大嫌いな男の典型だ。

 

 きっと小部屋を用意したのも、これから幼気なエルフ(じぶん)を酒に酔わせ、無理矢理襲う腹づもりのためだろう。しかしもう覚悟は決めている。いつ初めてを奪われようと、気にすることはない。

 

 すべては強くなるため、一歩でも憧憬の剣士あの人に近づくためだ。

 

 「決まったか?」

 

 「知らない。どれにするか、あなたが決めてよ」

 

 ハムザは了解し、店員に注文を頼んだ。

 

 「しかし、何故エルフは酒を毛嫌いするのか、俺にはわからん」

 

 「節制よ。己を律するためには、娯楽から離れなければいけないから」

 

 「ふん、なにが節制だ。酒、煙草、女、賭博。これが神が人間に与えた最高の喜びだぞ」

 

 「貴方に理解して貰おうとは思いません。でも、その四つはどれも低俗な快楽ですね。人助けとか奉公にも喜びを見出すことは出来るんですよ」

 

 「それならなぁ、人助けだと思ってお前、あそこのおっさんのチンポしゃぶって来い。俺は絶対にごめんだ」

 

 取り合えず下品な言葉にも、レフィーヤは丁寧に対応しようと心掛けていた。短い時間しかこの男と一緒にいたことはないが、とにかく息を吸うように変態発言が飛び出すびっくり箱のような男だ。

 

 例え救いようのない馬鹿でも、一応は高貴なるものへの道を説くことはする。聖職者などではないが、善の探求に美を求めるのは、エルフの価値観そのものなのだ。

 

 「いい?悦楽には善と悪があるの。性交の快楽は悪。滅私奉公は善。貴方達はみんな、悪の悦楽の信奉者です」

 

 「そんなもん、誰が決めるってんだ!」

 

 ハムザは大声で叫んだ。すると扉を開けて店員が入ってきて、酒を置いて出て行った。

 

 「…さぁ?私にはわからない」

 

 レフィーヤ自身はエルフだが、たまに種族本来が持つ強い道義心に対し、違和感を覚える事があった。実のところ何が善で何が悪なのか、自分にはよく分からない。

 

 「リヴェリア様なら、明快な論理でしっかり説明できるんだけど…。私はただ、そう習っただけだから。でも、貴方のやっている事は最悪です。これだけは断言できます」

 

 エルフの里は数多くあれど、リヴェリアのような王族の数はそう多くない。レフィーヤにとってリヴェリアとは奉仕の対象であり、同時に指導者でもあった。彼女が右と言えば右、左と言えば左だ。

 

 しかし幼い頃から教え込まれたエルフの道徳観念は、オラリオでは普通ではなかった。

 

 ハムザの言う通り、ここでは多種多様な種族が快楽に耽る。ドワーフは貪欲な性格でしょっちゅう女性を口説いて回っているが、彼らは専ら同種族に対して積極的であり、他種族には奥手になる事が多いらしい。

 

 獣人には発情期という極めて性欲の強まる時期があり、噂では発情期の獣人たちが寄り合う乱交パーティが日夜開かれているようだ。

 

 ヒューマンはと言えばどの種族とも子をもうけることが出来るため、とりわけ女性があらゆる種族から人気がある。男性はハムザのように誰彼構わずセックスを求め、一度抱いたら再び別の女性を求めて旅立つことが多い。

 

 女性しか産まれないアマゾネスは、連日のように雄を攫っては種付けさせるほど性に貪欲だ。オラリオの失踪事件の大半はアマゾネスによる犯行であるらしい。

 

 そしてエルフはその中でも異色の存在だ。

 

 ここオラリオでは極めて珍しい事を表す比喩表現として、盲亀の浮木、優曇華の花という言葉に並んで『エルフのセックス』と語られる程に稀なことなのだ。

 

 心を許した相手にしか肌を触れさせない。そして心を許すには、膨大な時間を必要とする。それが通常のエルフだ。

 

 しかし…。

 

 自分はどうだろう。生まれ故郷の《ウィーシェの里》は他の部落と異なり、他種族への理解が強い。それはここオラリオ程ではないが、少なからず他種族との交流があった歴史的背景によるものだろう。

 

 そのため、自分たちウィーシェの住人は、そこまでエルフエルフしていないという特徴があった。レフィーヤにとっては肌の触れ合いにそこまで嫌悪感はないし、性交渉に関して言えば…興味がある、それだけで体を許すことだって出来るだろうと考えていた。

 

 もちろん、それは自分が相手を「良い」と思える時のみの話なのだが。

 

 百パーセントはっきりと言えることは、もし自分が普通のエルフ達と同じ考えを持っていたのなら、既にこのハムザはダンジョンの塵となっていたに違いない。

 

 ふと気が付くと、酒の他にも美味しそうな料理がテーブルに並べられていた。

 

 「…では、乾杯するにあたって、我が祖国の習わしを教えよう」

 

 グラスを手に取ったハムザは不敵な笑みを浮かべて言った。

 

 「祖国では、乾杯の時に『ちんちん』と言うんだ。お前も一緒に言ってみろ」

 

 「は、はぁ~…!?」

 

 ふざけた提案に驚倒するレフィーヤだったが、言わなければ始まらないらしい。まったく、とんでもなく子供だ。そう思いながら、エルフの少女ははじめてその言葉を口にした。

 

 誰にも聞こえないくらい、小さな声で。

 

 『ち、ちんちん…』

 

 

 

 宴もたけなわに、店内は酔いの回った客たちで大賑わいだ。席に着いてから既に数刻は経った。レフィーヤは目の前のハムザを見つめた。

 

 ぐでぐでだ。たった数杯の果実酒を飲んだだけでこの有様。どうやらずいぶん酒に弱い体質のようだ。

 

 「もう、ちゃんと話聞いてるの?どこまで話したっけ、アイズさんの武勇伝…。あっ、そうだ。それで新種のモンスターを華麗に切り刻んで、私たちを救ってくれたの。アイズさんの『風』は別格よ。付与魔法エンチャントの類とは思えないほど強力で、ほとんど反則の域なの」

 

 「む、むぅ…?そうか、それはよかった。うぃっ…」

 

 「それからアイズさんは階層主にソロで立ち向かって、今まで誰も成し遂げられなかったソロ討伐を——」

 

 ハムザはグラスを煽り、テーブルに叩きつける。

 

 「もう武勇伝は充分だ!くそ、口を開けばぺちゃくちゃとアイズちゃんのことばかり。この破廉恥レズエルフめ。俺はお前のことが知りたいんだ。さっさとお前のことを話してくれ。俺の意識がまだあるうちにな…うぃっ…。あぁ、くそが。もっと酒を寄こせ」

 

 「私のこと…?むむむむ、私は…強くなりたい。アイズさんに助けてられてばかりじゃなくて、傍にいて守ってあげられるような力が欲しい」

 

 自分について話す段階になって初めて、レフィーヤは机に置かれていた料理に手を付けた。これまでの数刻はひたすらアイズのことばかりを語り続けており、ハムザはすっかり聞き手として振り回され、疲れ果てていた。

 

 レフィーヤはふと気付く。我ながら、今日はよく舌が回る。ぽかぽかと体が暖かく、今なら何でもできそうな気分だ。これがお酒の力なのだろうか。これはこれで嫌いではないな、と思った。

 

 「…それで俺のチンポが欲しいわけだ。ぐひひ…レフィーヤちゃんみたいな可愛い美少女に誘惑されたら、一瞬でバキバキに勃起してしまうだろうなぁ。あぁ、ヤリてぇ…」

 

 「なによ、変態。はぁ、私も並行詠唱くらい出来るようにならないとなぁ…。あ、勘違いしないでね。ちゃんと練習してるし、フィルヴィスさんに手伝って貰うようになってコツは掴み始めてるから」

 

 「並行詠唱?なんだそりゃあ、そんな訓練より俺とスケベなことを楽しんだ方が効果があるぞ、絶対。間違いない、うむ。うぅいっ…」

 

 ハムザの発言をレフィーヤは聞き流す。手元にあったサラダを口に運ぶ。野菜の味がしたが、それだけだった。

 

 「おい、エルフはドレッシングすらかけんのか?生野菜を頬張って何がうまい。まるでハムスターだな」

 

 「そんなことはありません。ドレッシングなんてどこにもないじゃない。もう駄目そうね、貴方。幻でも見えてるのかしら」

 

 そうは言われて、ハムザは机にあった緑色の液体を指示した。濃緑の液体は、まるでモンスターの体液のようにどろどろとして不気味に光っている。しかしどうやら、これがドレッシングらしい。ハムザはレフィーヤの取り皿を奪い取り、サラダにその液体を掛けてから塩を振り撒いた。

 

 「騙されたと思って食ってみろ。お化けカボチャの種油だ」

 

 恐る恐る口に運ぶと、滑らかな舌触りと濃厚で深い香りが広がっていく。塩が絶妙に絡み合い、ただのサラダが全く別物に生まれ変わったようだ。

 

 「…おいしい」

 

 「ほれみろ。少なくともここいらじゃ、最近流行っているな。菜種油なんかと比べても格段に健康的らしい」

 

 「貴方、意外と色々詳しいのね。Lv.1のくせに」

 

 「お前たちが勉強だの訓練だの迷宮探索だのと無駄骨を折る時間に、俺はオラリオを満喫しているんだ。それに俺は、並行詠唱の極意を知っている」

 

 並行詠唱の極意とは、一体何事か。魔導士でもなく、魔法に関する知識も全く無さそうなこの野蛮人からそのような誘惑の言葉が飛び出してくるとは。つくづく、予測の出来ない奴だとレフィーヤは考える。

 

 「私だって知ってます。それは詠唱の際に不動の心を持ち続ける事だけです。何事にも惑わされず、動じることがない不動の心が、並行詠唱の極意です」

 

 「なるほど、なるほど。まぁ、一理ある。それでは、並行詠唱を一週間で取得できるように俺が稽古をつけてやろう」

 

 「あなたが稽古?出来るわけないでしょう」

 

 「いや、出来る。セクロスで能力を底上げするだけじゃなく、並行詠唱の取得にも手を貸してやる。その代り…」

 

 「その代り…?」

 

 レフィーヤはごくりと喉を鳴らす。

 

 「…俺は今猛烈に、レフィーヤちゃんの、エルフのおまんこをぺろぺろしたいのだ…。ぐひひ」

 

 「むむむ…」

 

 気難しそうな表情で、考え込むレフィーヤ。暫くののち、彼女は言った。

 

 「わかったわ」

 

 大歓喜するハムザをよそに、ため息を吐く。この変態に体を預けるのは気が引けるが、強くなるためだ、仕方ない。

 

 「一応聞いておくけど、貴方が私に付きまとうのは、単にエルフとセックスしたいからなんですね?」

 

 「もちろん、その通りだ」

 

 ハムザは臆面もなく頷いた。あまりに正直な反応だったため、怒る気もしない。

 

 「それなら私は単純に強くなりたいから、貴方に体を預けます。それ以外のことは、絶対に求めないで下さい。単なるギブ・アンド・テイクです」

 

 「どうかな。まぁ、今の所はそれでいいだろう」

 

 その時、女性の大きな声が店内に鳴り響いた。そして次々に歓声が沸き起こり、異様な雰囲気が漂い始める。

 

 突然の出来事に呆気に取られるレフィーヤは、何が起こったのかとハムザを見やった。

 

 「…始まったな。ぐひひ、風俗探検ツアー第一日目は、乱交酒場の見学だ」

 

 

 驚愕したレフィーヤは急いで個室を出て、状況を確認する。そして絶句した。

 

 ヒューマンの女性が全裸になって、汚い言葉を叫びながら一心不乱に騎乗位で男根を貪っている。それに他の男たちが群がり、ペニスを無理矢理喉奥に押し付けたり、胸を乱暴に揉みしだいたりと好き放題だ。

 

 その一団だけではない。次から次へと男と女は互いに群がり合い、情事を繰り広げていく。

 

 絶句するレフィーヤの肩をぽんと叩き、ハムザは言った。

 

 「ここは割と有名な乱交酒場だが、普通とはちょっと違う。驚くなかれ、ここは女が通う乱交酒場だ。飛び切りのビッチが集まる場所で有名なのだ」

 

 店内の様子は、もはや圧巻だった。神聖で清いものだと教え込まれていた男女の営みが、かくも醜悪に、 醜穢に行われている。様々な種族の若い女性達が恍惚に涎を垂らしながら、男根を嬉々として受け入れていく。もはやこの世のものとは思われない程の、異様な光景だった。

 

 「どれ、これ以上のんびりしていると連中は気が狂ったようになるからな。ちょっとインタビューでもしてこよう」

 

 ハムザはレフィーヤの手を取り、乱交を楽しむ一団の中心に無理矢理体をねじ込んでいく。その途中、男たちの汚らしいく汗ばんだ肌が何度もレフィーヤの体に触れた。

 

 むせ返るような雄の空気に、思わず嫌悪の顔を作る。

 

 『オイっ、順番守りやがれ!』

 

 『てめぇ、割り込むんじゃねぇ!聞いてんのか、この野郎!』

 

 罵声が飛び交うも、ハムザは意に介さない。レフィーヤの存在に気付いた男たちは目の色を変え、彼女に飛び掛かろうとした。

 

 自分の身を護るため拳を作るレフィーヤだったが、彼女よりも先にハムザが男たちを殴り飛ばしていった。無残にも床に横たわり鼻血を垂れ流す彼らは、悪態を何度も吐きながらも別の乱交集団の中に逃げて行った。

 

 その様子は、まるで獲物から引きはがされた蟻たちのようだ。

 

 気づいてみれば、その場所には女を貪る数人の男たちと、レフィーヤとハムザの二人だけがそこにいた。

 

 男根に跨り快楽を貪り続ける若いヒューマンの女性に、ハムザが質問する。

 

 「おい、君の名前は何だ?」

 

 「えっ…?なぁに、お兄さんもヤーニャにちんちんくれるの?嬉しいっ。んんんっ…」

 

 ヤーニャと名乗った彼女は直後に口をペニスで塞がれた。しかしものの数十秒でペニスを射精に導き、再び言葉を発する。

 

 「はやくぅ、ちょうだい?全然足りないよぅ…」

 

 「聞くがな、ヤーニャ。どうして乱交なんかしてる?お父さんが悲しむぞ?」

 

 「えぇぇ?なぁに、お父さんならあっちで楽しんでるけど。あたしはね、ロマンチックな雰囲気も愛の言葉も要らないの。ただたくさんの大きなちんちんを見るだけで、もうどうしようもないくらい濡れちゃうから。ほら、あなたも大きいの持ってるでしょ、はやくちょうだい?」

 

 レフィーヤは驚いてからハムザに視線を送る。目が合ったハムザはにやりと微笑んでから彼女の手を取り、別の一団に近づいていく。

 

 「おい、お嬢さん。乱交は楽しいか?」

 

 今度の女性は、赤みがかった綺麗な髪を振り乱しながら喘いでいる。驚いたことに、まだ若いエルフの女性だった。

 

 「えぇ…最高です。貴方も私に入れて下さるのですか?生憎、男根はあり余っていますから…そこで扱きながら、私の痴態を眺めていて下さる?」

 

 「いや、遠慮しておく。それより誇り高きエルフがこんなことをしていて良いのか?」

 

 「エルフの矜持なんて古臭い時代遅れの考えですわ」

 

 息を飲む程美しいエルフに向かって激しく腰を振る男が、二人の会話を遮って声を荒げる。

 

 「おい、お前黙ってろ。気が散るだろうが。お前はそこの『千の妖精サウザンドエルフ』にでもさっさと突っ込んでろ」

 

 美女の口内を堪能していたドワーフが言葉を継ぐ。

 

 「ほほほ、最高じゃわい。いけ好かないエルフのフェラチオを堪能する日が来るとはなぁ、長生きするもんじゃ。お若いの、こいつは常連だが、伴侶がおる。だがそいつはセックス嫌いでなぁ、性欲を持て余したこの女は毎日ここに来ているらしい。ぐぅ、いくぞッ…飲めっ!」

 

 ドワーフの太い男根から放たれる精液を、躊躇いもなくエルフの美女は飲み込んだ。正常位で行為を続けながらごくりと喉を鳴らし、舌なめずりをしながら蠱惑的な流し目をハムザに送る。

 

 「…行きましょう」

 

 それまで無言を貫いていたレフィーヤは、ハムザの手を取りむりやり元の個室へと戻って行く。

 

 バタンと扉を閉め、レフィーヤはハムザの目を見て言った。

 

 「はぁ…もう限界。こんな乱交見てたら、気が狂っちゃいます」

 

 ヤリたくなったのだろうというハムザの問いに首を横に振り、レフィーヤは肩を落とす。

 

 「むしろ、逆。刺激が強すぎて、ちょっと引いた…かな」

 

 それでも、とレフィーヤは言葉を続ける。

 

 「エルフにもああいう開放的な女性がいると知って、ちょっと安心しました。私だけじゃないんだなって、思って。その…エルフの考えが、古臭いと思っている人って」

 

 「そりゃ、他にもたくさんいるだろう。それより話を戻すぞ」

 

 「……?」

 

 きょとんと首を傾げたレフィーヤは、直後に『あっ』と意味を理解した。

 

 「…そうだ。おまんこぺろぺろさせろ。ぐひひ…いよいよこの時が来た」

 

 いつの間にか取り出した酒瓶を手渡し、ハムザは乾杯をして一気に飲み干せと言う。レフィーヤはそれに従い、中身を一気に飲み干した。ハムザも負けじと飲み干す。

 

 「ぐぇっぷ。あんな気狂い集団と一緒にいたせいで、すっかり酔いが醒めたようだからな。ここいらで燃料追加だ。よし、そこのテーブルに座って、股を開いて見せろ」

 

 レフィーヤは言われた通りにした。純白の下着が露になり、ハムザは局部に顔を近づける。

 

 「ちょっと。ち、近いって…」

 

 少女は既に敏感になった恥部に吐息が吹きかかるのを感じていた。今にもむしゃぶりつかれてしまいそうだ。期待と不安で胸が高鳴っているのが分かる。

 

 両股を大きく開いて机に座るレフィーヤを見上げると、青碧色の瞳を輝かせながら頬が桃色に染まっている。後頭部で束ねられた豊かな絹のように美しいの山吹色のまっすぐな髪が、さらさらと揺れている。

 

 (ぐひひ…やはりとんだ淫乱エルフだ。こいつは)

 

 「おいレフィーヤ。今この状況で、詠唱が出来るか?」

 

 「…えぇっ?そ、それは多分、無理じゃないかな」

 

 「やってみろ。これが並行詠唱の練習だ。俺の悪戯を我慢しながら、詠唱を完成させるのだ」

 

 魔法を完成させてはまずい、ここ一帯が焼け野原になるからとレフィーヤは言うが、ハムザは「どうせ出来っこない」と言い放つ。

 

 プライドを逆撫でされ、闘争心が沸々と湧き上がってくる。

 

 (ふんっ、なによ。やってやろうじゃないの)

 

 「…どうなっても、知らないわよ」

 

 きりっと双眸を細め、精神を落ち着かせたレフィーヤは一瞬にして集中状態に入る。そして足元に魔法陣が生成された。

 

 『…誇り高き戦士よ、森の射手隊よ。押し寄せる略奪者を前に弓を取れ』

 

 (おぉ、さすがはロキ・ファミリアか。完成したら相当ヤバそうな魔力だな)

 

 酒を飲みつつも、両股を開き恥部を他人に見られながらも、魔力の装填に意識を割ける精神力はさすがと言ったところだ。

 

 (ぐひひ、しかしこれはどうかな?)

 

 「…同胞の声に応え——ひゃあんっ!?」

 

 ハムザがレフィーヤの股間を指先でひと撫でした途端、魔法陣は消え去り魔力は霧散して詠唱が中断された。魔力の粒子が霧のように空気へ溶け込んでいく様子が、魔法に疎いハムザにも感じられるほど膨大な出力の詠唱だったようだ。

 

 それでも失敗は失敗だ。たった一撫でで精神を乱されるようじゃ、とても並行詠唱など出来はしない。レフィーヤは、己の無力を痛感していた。

 

 「駄目じゃないか。まだ割れ目をなぞっただけだぞ?ほれ、続けてみよ、若輩者よ。ぐひひ」

 

 むむむむ、と唇を噛み、再び魔力を装填する。

 

 「…誇り高き戦士よ、森の射手隊——ひゃんっ…あぁっ…!」

 

 今度は下着をずらされただけで、詠唱は中断された。

 

 「これこれ。吾輩はおまんこに触れてすらいないと言うのに、お主は集中力が足りんようじゃな。ぐひひ」

 

 「…ちょっと、何よその口調。馬鹿にしているの?ふん、見てなさい。次こそ本気でやってあげる…」

 

 強気な言葉とは裏腹に、先ほどよりも精神の集中が難しくなっていることを自分で認めながらも、妙に神経が集中する局部には極力思考を向けないようにして、再び詠唱に入る。

 

 『…誇り高き戦士よ、森の射手隊よ——』

 

 「おぉ、レフィーヤちゃんのおまんこ、ピンク色で美味そうだなぁ。ぐひひ」

 

 (集中、集中っ…!)

 

 卑猥な発言に耳を貸さずに、ただ詠唱だけに精神を向ける。

 

 『押し寄せる略奪者を前に弓を取れ——』

 

 「クリちゃんもしっかり見えてるぞ。たっぷり抓って気持ちよくさせてやろう」

 

 (耳を傾けちゃ駄目。不動の心、不動の心!)

 

 眉をぴくぴくと動かしながらも、レフィーヤは詠唱を紡ぎ続ける。

 

 『……同胞の声に応え…矢を番えよ。帯びよ炎…森の灯火——』

 

 「しかしなぁ、おまんこびしょ濡れだぞ?これは相当溜まってると見た。ちゃんと普段からオナニーしているのか?」

 

  (不動、不動、不動、不動っっ!!!!)

 

 『撃ち放て、妖精の火矢… 雨の如く降りそそぎ——』

 

 「おちんぽ欲しくて堪らないんだろう?想像してみろ、これから見ず知らずの男に中出しされるんだ」

 

 挑発的な言葉を全力でスルーし、詠唱は最終局面を迎える。

 

 (ふんっ、無駄よ!もう終わる、勝ったわ、勝ったんだわ!!)

 

 『…蛮族どもを焼き払え』

 

 それは冷ややかな視線と共に呟かれた、冷酷な宣言だった。

 

 途端に凄まじい魔力の渦がレフィーヤを包む。魔力の装填が完了し、詠唱は最後の一声を待つだけだ。

 

 (あ、いかん。遊び過ぎたか…)

 

 冷や汗を垂らすハムザに対し、レフィーヤは勝ち誇る。

 

 (燃え尽きなさい、外道っ、変態っ!)

 

 オラリオを馳せる名声の中心軍団、【ロキ・ファミリア】のエース候補が放つのは、尋常ではないほど強力無比な炎属性の広域魔法。間違いなくここ一帯は灰と化すだろう。

 

 それは弱者への死の宣告であり、強者の勝利の雄叫びだった。

 

 偉大なる彼女の魔法名が店内に轟いた。

 

 『ヒュゼレイド・ファラァあぁぁぁんッ…!』

 

 静まり返った。乱交を繰り広げていた男女の群れが、一体何事かと個室に視線を送る。

 

 巨大な魔力の渦が集まり、彼らは死を覚悟していた。しかし魔法は打ち出されなかった。

 

 強力無比な魔法に代わって鳴り響いたのは、少女の喘ぎ声。

 

 命拾いしたと悟った彼らは、気持ちを切り替えてまたもとの乱交作業へと戻っていった。何事もなかったかのように。

 

 対する個室では。

 

 レフィーヤは項垂れていた。

 

 「あううぅ……ずるい、舐めるなんてっ卑怯…っ!」

 

 じゅるじゅると卑猥な音を立て、恥部を舐められている。襟元についた大きなリボンを噛み締めながら、レフィーヤは喘ぎ声を押し殺す。あんな大声で詠唱しながら、最後は殆ど喘ぎ声だった。そのことで頭が一杯だ。聞かれたに違いない。品行方正と噂される【ロキ・ファミリア】にあるまじき痴態を晒したことで、レフィーヤは羞恥に顔を歪めながらもされるがままに体を痙攣させている。

 

 ハムザは一度顔を上げ、少女の恥部から顔を離した。

 

 両股を大きく開く少女のふとももに、薄手の魔法衣のスカートが襞を作りながら局部へと流れ落ちている。下肢を覆う清潔な白いストッキングは清純な乙女を連想させるが、魔法衣をたくし上げるとまるで男を誘うかのような、艶めかしくまろやかな臀部と内股が露になった。

 

 その様子だけでも男の欲望が限界まで膨張するのに十分だろう。だが、その奥にある秘部は獣欲をそそる雌の匂いを撒き散らし、汚らわしい欲望を受け入れるために既に愛液でぐっしょりと濡れていた。

 

 ハムザは指先をレフィーヤへと挿入した。少女は大きく喘ぎ声を上げる。その声色はもはや歓声そのものだった。濡れそぼった内部で指を前後させながら、少女の反応を探る。奥へ奥へと突き進むほど、少女の悦びは深まっていくようだ。

 

 「とんだ淫乱雌エルフだな、まったく」

 

 下品な形容にエルフの少女はハムザを睨みつけた。だが、物欲しげに潤む瞳に紅潮する頬、淫靡な吐息がその剣幕を台無しにしていた。まったく怖くないな、とハムザは内心でほくそ笑む。

 

 「さっさと突っ込んで射精したらいいじゃない。そんな手つきじゃ私が絶頂する前に朝が来てしまいますよ?」

 

 「口を慎め、ビッチエルフ」

 

 「…っ!誰がっ…!」

 

 これまでの反応を探るような緩やかな動きを止め、ハムザは少女の膣を蹂躙するかの如く掻きまわした。局部に痛みが走ったのか、途端に抵抗の素振りを見せるレフィーヤ。

 

 「あまり余計な事を言うと、また今のお仕置きをするぞ」

 

 目に涙を溜めた少女は屈辱に唇を強く噛みながら、ぷいっとそっぽを向く。

 

 次にハムザが優しい手つきで愛撫を始めると、先ほどまでの処女とは思えない程の感度の良い反応が戻って来る。陰核に触れた途端、卑猥な歓声が漏れる。乱交が広がる店内の異様な雰囲気と、酒による理性の放棄も手伝ってか、普段のレフィーヤ自身にはまるで想像もできない声色だった。

 

 レフィーヤはハムザに弄ばれる局部から込み上げる、今までに体験したこともない感覚に気が付いていた。それは少女の恥部の奥から湧き出る不思議な快感で、レフィーヤは既にその快楽に身を任せる心地よさに酔いしれている。

 

 膣の奥や陰核など、執拗に心地よい場所を攻め立てるハムザの指先により快楽の渦は次第に膨れ上がっていき、もう自分の小さな体には収まりきらないと思われるほど大きくなっていった。

 

 「あ、だめっ…あぁ」

 

 膣の中で繰り返される刺激の連続に、限界は既にすぐそこまで来ているようだった。先ほど啖呵を切ったばかりなのに、ものの数分で絶頂されられたとなっては沽券にかかわる。何とか耐え凌いでやろうと全身で快楽に抵抗を始める。

 

 だがその抵抗も僅か数分だった。

 

 レフィーヤは下腹部に渦巻く莫大な熱量を持った快感を御しきれなくなり、ついに観念して体の硬直を解いた。

 

 その刹那、下腹部に溜まった快楽が爆発し、迸る快感となって全身を駆け巡る。

 

 有無を言わさぬ絶頂に、腰の痙攣を抑えきれない。愛液を垂れ流す局部を曝け出し、淫らな腰が何度も小刻みに震える。

 

 それは少女にとって初めての体験だった。快楽の爆発の後は、ただ満たされた不思議な喜びが体を満たしていく。レフィーヤはだらしない笑みを浮かべながら、「あぁ…」と呟いた。

 

 目を閉じながら絶頂の余韻に浸って暫くした後、眼前には苦しそうな程膨張したハムザの男根があった。

 

 何も言葉を発する必要もない事は、レフィーヤには分かり切っていた。この大きなペニスを、きっと今挿れるつもりなのだろう。そのための準備は、十分すぎるほど。

 

 「経験値の素が欲しいのか、俺のチンコで気持ちよくなりたいのか、どっちだ?」

 

 「うるさい。さっさとしたらいいじゃないですか」

 

 ハムザはレフィーヤの体を起こし、床に立たせてから上半身を無理やり机に押し付けた。

 

 魔法衣を乱暴に捲し上げて、艶やかな臀部をはだけさせてから、それに平手打ちした。

 

 「っっ~~…!」

 

 ぺちん、と良い音が鳴る。二度、三度と平手打ちを繰り返す度に、肉付きの良い太ももと臀部が揺れた。

 

 「お前は少し反抗的すぎる。経験値の素が欲しければ、俺の命令や質問には素直に応えろ」

 

 「い、いや…そんなのいや」

 

 ぺちん、と再び平手打ちをした。

 

 「じゃあなんだ、アイズちゃんに幻滅されても良いんだな?俺の言うことを聞かないと、あいつとの約束を守ることは出来ないぞ」

 

 「むむむむ…」

 

 交渉にアイズを出されてしまえば、レフィーヤは頷くしかない。酒に酔って正常な判断が出来ないことも相まって、結局少女は頷いた。

 

 「よろしい。では再び聞こう。俺のペニスが欲しいのか、経験値の素だけが欲しいのか、どっちだ」

 

 少し間を置いて、ぽつりとつぶやく。

 

 「…どっちも」

 

 今度は思いっきり力を込めて、ハムザは臀部に平手打ちをした。すでにうっすらと赤く染まり、少女は苦痛と恥辱に悶絶した。

 

 「嘘をつけ。本当はどうなんだ?」

 

 「むむむむ…」

 

 少女は観念して、先ほどよりも更に小さな声で言った。

 

 「…今は、その。ペニスの方が欲しい、です…」

 

 「先にそう言っていればいいんだ。まぁいい。今度から嘘は許さん。それに俺の命令は絶対だぞ。わかったな?」

 

 「う、うん……」

 

 「うん、ではない。はい、だ。それに俺のことは、これからハムザ様と呼べ。お前が経験値の素を欲しがる限りは、俺はお前の主だ。いいな?」

 

 「は、はい…わかりました。ハムザ様」

 

 (ぐひひ…とんだドM淫乱雌エルフだな、こいつは)

 

 この場で気が狂うほど淫乱にまぐわってもいいだろう。しかし、未だ罰則は解けず。本番は出来そうにもない。ハムザは「おしおきだ」と適当に理由を付けてペニスを仕舞い、レフィーヤも乱れた衣服を直し始めた。

 

 「アイズちゃんは特別だが、お前は違う。レフィーヤ、これからは俺の精子が欲しければ態度で示して見ろ」

 

 少女は羞恥に顔を歪めたが、すぐに頷いた。呑み込みの早い彼女に、ハムザは満足だった。二人は席を立ち店内に再び顔を出した時には、既に客たちは乱交を楽しみ終えた後だった。窓硝子の向こうには、薄らと明るみを帯びた雲が見える。夜明けが近いのだろう。

 

 ハムザは最高の気分だった。エルフの少女を手籠めにしたことが、心地よい酔いをさらに素晴らしいものにしていた。対するレフィーヤも、何だか分からない満足感を感じていた。これが酒のせいなのか、ただ単純に先ほどの行為によるものなのかは、分からない。

 

 程よくいい気分になった二人はカウンターでもう一度酒を注文し、乾杯した。レフィーヤはこの時は店内に響き渡るほどの大きな声で、『ちんちん!』と声を上げる。そのように命令されたからだった。

 

 「おい、実はお前にもう一つプレゼントがある」

 

 紙袋から取り出されたのは、柔らかい素材で出来た男根を模る物だった。いわゆる、ディルド。レフィーヤはそれを手渡され、今後は必ずこれで毎晩挿入の練習と、自慰しながらの詠唱を練習することと言い付けられた。

 

 先ほどエルフの女性の口内を楽しんでいたドワーフの老人がやってきて背後から声を掛けた。

 

 「お若いの、ちょっと火を貸してくれんかのう?」

 

 紙煙草を咥えた老人はレフィーヤは眺め、いやらしく鼻の下を伸ばす。

 

 「生憎だが、火は持ってない。悪いな、ジジイ」

 

 「なんと!」

 

 その老人はひどく酔っぱらっているように見えた。大仰な反応を見せ、生気が漲った眼球をキラキラと輝かせながら二人に言った。

 

 「それじゃあ一体どうやって、お二人は愛の火を灯すと言うのかね?えぇ、鳩ぽっぽちゃん?インポ男じゃ女を幸せに出来ん。火のない煙草じゃ俺は幸せにならん…」

 

 酔っ払いドワーフを追い払った後、二人は何杯も酒を飲み続けた。

 

 すると酔いが深まり、次第に狂気じみた雰囲気がハムザを覆う。レフィーヤは既に出来上がっており、ハムザが卑猥な発言をする度に大笑いしている。

 

 急に、ハムザが奇声を上げ先ほどのドワーフに殴りかかった。拳が顔面に直撃する直前に、驚いた老人の足が縺れて自ら倒れ込んだので、大事には至らずに済んだ。そしてハムザは言った。

 

 「お前、エルフのパンティー被れ!」

 

 それからハムザはレフィーヤにストリップを命じ、大勢の客の前で少女は裸にさせられた。本人はまんざらでもないという顔つきで服を脱ぎ始めたので、うら若いエルフの痴態に大興奮した客たちは大いに盛り上がった。

 

 レフィーヤのパンティーを被せられたドワーフの老人は泣いて喜び、ハムザの靴に這いつくばって口づけした。そこかしこで狂気じみた言動が繰り返され、レフィーヤはおかしくて堪らず何度もお腹を抱えて大笑いしていた。

 

 それからハムザが気分が悪いと言い出したので、二人は外に出た。道端で彼が嘔吐を繰り返し始め、レフィーヤは彼を介抱してやり本拠まで送ってやろうとした。

 

 その道中、飲み始める前、ハムザを待っていた時に目撃した酔っ払い集団と遭遇した。彼らは壁に向かって尿をぶちまけていた。レフィーヤは形や大きさの異なるペニスをまじまじと眺めた。その中のどれでもいいから、欲しくてたまらないと彼女は感じている事に気が付く。

 

 するとハムザがレフィーヤのもとを離れ、奇声を上げ彼らの輪に入って尿を壁に引っかけ始めた。その後彼らは肩を組んで歌を歌い始める。誰も歌詞や旋律を理解しておらず、全くバラバラの殆ど奇声に等しい歌だったのだが。

 

 結局ハムザがそのままどこかへ歩いて行ってしまったので、レフィーヤは仕方なくそこで彼と別れたのだ。

 

 そんな気狂い集団に別れを告げ〈黄昏の館〉帰る途中、どうしても公園に寄りたくなったのでレフィーヤは覚束ない足取りを運びながら、大きな公園に辿り着く。

 

 「えへへぇ~…。アイズさんとあんなこと、私もしたいにゃぁ~…」

 

 先ほど見た何本ものペニスが頭を離れなかった。何の目的もなく公園を横断するレフィーヤは、すぐ隣に短剣を装備し訓練をしているヒューマンの少年を見つける。

 

 「ぼくぅ、いまの、聞いた…?駄目ですよ、誰かに言っちゃあ…ふふふ」

 

 「え、えっと…!?聞いてません、アイズさんが何とかとか、聞いてませんから!!」

 

 白髪の少年は素振りを続けながら、不自然な笑いを作りながら大げさに否定した。レフィーヤは安心し、少年の不格好なナイフ捌きに駄目出しを始める。

 

 「もっとぉ、腰いれなきゃ。男の子なんだから力強く、腰をいれなきゃあダメだにゃぁ…ふふふ、アイズさぁん」

 

 レフィーヤはナイフを奪い取り、「こうやるの」と言いながら素振りをして、転んだ。少年が慌てて駆け寄り、「大丈夫ですか!?うわっ、酒臭い」と鼻をつまむ。

 

 少女は胸元をわざとらしくはだけさせて言った。

 

 「えへへ…ねぇ~ちょっと休憩しない?私、疲れちゃったなぁ~」

 

 

 「っっ…!?」

 

 美しく可憐なエルフの美少女からの誘惑に、ルベライトの瞳の少年は真っ赤になって飛び上がる。

 

 (他意はない、他意はないよね!?)

 

 彼は逡巡した。こっそり木陰に連れ込んで、イケないことをしてしまおうか。すると少女がむくりと起き上がり、虚ろな口調で言った。

 

 「あれぇ?さっきの可愛い男の子、いなくなっちゃったのぉ?なぁんだ、残念。ふふふ…。まぁ、いっか。アイズさぁ~ん。むふふふ…」

 

 愕然と立ちすくむ少年を背に、レフィーヤは再び歩き始めた。

 

 その少年は遠ざかる背を暫く眺めてから、目をごしごしと擦った。

 

 「…夢だよね、夢だよね!?」

 

 再び目を開くと、彼女の姿は見えなくなっていた。

 

 「ゆ、夢だったの…?」

 

 そうだと思いたい。もしこれが現実だったら、自分はとんでもないチャンスを逃してしまったのだから。追いかけようか、と少年は考える。しかし自分の理性が欲望を押し留め、彼は訓練に戻った。

 

 オラリオには、もうすぐ明るい朝日が昇るだろう。愛しの女神様が起きる時間までに訓練を終え、朝食を買って帰らなければ。

 

 そう、才能のない自分には、愚直に鍛錬を続ける事しか出来ない。美少女と飲み明かして、ゆきずりのセックスを楽しめるような身分じゃない。

 

 そして心に強く誓った。出来るだけ早く、そうなりたい、と。強くなって、オラリオの女の子とイケない事をしてみたい。

 

 「オッタルさんに言われた通り、今度ハムザさんに決闘を申し込もう。ボクはやるんだ…絶対に、勝ってみせる!」

 

 思い出すのは昨日の出来事。『最強』との出会いと、彼の言葉。

 

 『お前はハムザに挑戦しろ。そうすれば、冒険者としての新たな道が開かれるだろう』

 

 彼は自分の中に眠る才能を見出したに違いない、と少年は考える。今は芽が出ていないだけで、きっかけさえあれば自分も変われる。少年はそう信じ込んだ。

 

 そして決闘の末、勝者が手にする物。

 

 それは決まって、敗者の所有物だ。

 

 ハムザ・スムルトがアイズ・ヴァレンシュタインと付き合っているということは確認済みだ。それはあのオッタルからも確認したことでもある。二人は肉体関係にあり、仲睦まじく毎日逢瀬を重ねているという。

 

 許せない。ボクだって、アイズさんとえっちな事をしてみたいのに。初めての体験を彼女と過ごすことができたら、どれだけ幸せだろう。

 

 勝って、アイズさんを求める。軽蔑されたっていい。それに減るもんじゃないんだから、一回くらいはいいじゃないか。

 

 少年はその想いを一身に、愚直に素振りを繰り返す。

 

 「ボクは…強くなるんだ」

 

 女神から授かった 《ヘスティア・ナイフ》が音を立て、空を切り裂く。

 

 何もない少年が勝者に提供できるものは、そのナイフだけだ。もちろん、女神様には相談はしていない。全て自分の我儘と、独断だ。

 

 だが、勝ってみせる。

 

 勝って栄誉を手にしてみせ、女神様にも楽をさせてあげたい。そのためには、まず決闘を申し込む文章を考えなければならないのだが。

 

 汗を滴らせながら、少年は素振りを終え手元のナイフに視線を落とす。

 

 「…ボクだって、できるはずだ。何が何でもやるんだ、そうだ。ボクなら出来る」

 

 やるべきことは、わかっている。

 

 少年は眦に力を込め、明るくなった朝空を見上げていた。

 

 ベル・クラネルの心には、勇気が漲っていた。

 

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