※この作品はR-18です。

ダンジョンに性交を求める眷属の物語   作:kuracjaponski

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エピローグ -戦場にて-

 

 

 迷宮から本拠に帰還したリリは、ハムザのために珈琲を淹れていた。

 

 「魔石製品なんて邪道ですよ。リリは昔ながらの製法で作る珈琲の方が好きです。こうしてしっかり火でお湯を沸かして、香りの良い挽きたての豆の後に、たっぷりお砂糖を入れてーー」

 

 「分かった分かった。それより神様はどこ行った?」

 

  アイズによって爆砕されてしまった魔石珈琲製作機の代わりに買ってきた、簡単な作りのカップを火にかけながら、二人は昼下がりから寛いでいた。リリが淹れ立ての珈琲を持ってきて、隣の椅子に腰掛けた。

 

 「さぁ?額縁でも見に行ったんじゃないですか?」

 

 ずずず、と一口飲むと、絶妙な甘さとほろ苦さが、香りと共に口一杯に広がった。思わずハムザは「うまい」と唸った。

 

 「珈琲はこうやって淹れるのが一番ですよ。暗闇より黒く、愛より甘くです。甘くない珈琲なんて邪道です」

 

 「それは俺も同感だな」

 

 「それにしても、いつの間にランクアップしていたのですか?普通、偉業は文字通りの偉業を成し遂げないと、実現しない筈ですが」

 

 「さぁなぁ」

 

 もう一口飲んでから、ぐったりと背もたれに凭れ掛かる。今日はまだ昼下がりだというのに、随分と疲れてしまったものだ。

 

 「まぁ、目標の一つだったエルフとのセクロスも達成したし、おまけにあの超アイドル、アイズ・ヴァレンシュタインもハメ倒した…いや、倒されたからなぁ。俺にとっちゃ、牛の怪物を倒すよりもそっちが偉業だぞ」

 

 「特別なスキルを持っていると、そういう抜け道もあるって事ですかね…?」

 

 リリはずずずと珈琲を飲み干しカップを置いた。そしてばっと立ち上がる。

 

 「それじゃ、リリは引越し先の下見に行って来ます。それとハムザさま、明日からは迷宮探索を頑張りませんか?」

 

 「なんだぁ急に?ついさっき探索してきたばかりではないか」

 

 「はい、ですが…リリは思うんです。ハムザさまほどの才能をこのまま眠らせておくのは、あまりにも勿体無いと」

 急に神妙な顔つきを作ってみせたハムザは、見事にリリに乗せられて「確かに」と頷いた。

 

 「リリの言う通り、俺クラスの冒険者には、迷宮こそふさわしい戦場なのかも知れん」

 

 「そうですよ、その通りですよハムザさま!」

 

 まんまと煽て上げられ、ハムザはすっかりその気になってしまっていた。リリは単純に、これから狙われる事が多くなることを予期して、ファミリアを大規模にしていきたいだけだった。そのためには、団長には強くなってもらわなければならない。

 

 「ダンジョンに出会いを求めるのも、アリかもしれん」

 

 ハムザの発言にリリは「へっ?」と間抜けな声を出す。

 

 「俺クラスの冒険者なら、ダンジョンで困った女の子を助ける王子様になり、惚れさせてからセクロスを楽しむ事くらい、日常茶飯事かも知れん。下手に路上でナンパなぞするよりは、効率的なのではなかろうか?」

 

 神妙な顔で真剣に考えるハムザに背を向けて、リリはテントを出た。この男に、何を期待しても無駄かもしれない。下半身の欲望だけで生きている男だからだ。

 

 暖かな日差しは、普段から薄暗い歓楽街の路地裏にもしっかりと降り注いでいた。太陽は世界の頂点に君臨し、優しく全員を包み込むように輝いている。リリは今も命がある事に安堵しながら、メイン・ストリートへと歩いて行った。

 

 ●

 

 「大分おいたしたみたいやけど、まぁレフィーヤたんもアイズたんも育ったし、団員を貸してくれたこと、感謝しとくでー」

 

 ロキはテルクシノエと午後のティータイムを本拠で楽しんでいた。

 

 「まぁ、それを言うならこちらも感謝をしなければならんな。ハムザもランクアップしたし、フレイヤのアホもからかえたのじゃから。しかし、我が耳を疑ったぞ、ロキ。お前がハムザに好き放題やらせてみせて欲しいと言った時は」

 

 「そうやなぁ…。ほんまにウチもどうなるかと思ったけど、あの異常なスキル持ちやで?ぜったい試さん訳にはいかんって、思ったからなー。遠征前に盤石を期すのは、団員達だけの仕事ちゃうで?主神であるウチも、たまーには神らしく後ろから応援してやらなあかん」

 

 「ふふ…変わったな、お前も。しかし、傑作じゃ。あのフレイヤの従者の顔、写真に撮って飾って置けないのが残念でならんのじゃ。一生からかえただろうに」

 

 「ほんま、傑作やで。アホの色ボケ女神が悔しさに地団駄踏む姿、見たかったなー」

 

 「そうじゃな。それよりこれから額縁が完成するのじゃ。見に来るか?」

 

 ロキは軽く「おーいくわー」と返事をして立ち上がった。

 

 「持つべき者は友やなー。あのオッタルが落ち込んで帰る姿!笑いすぎて死ぬかと思ったで。まぁ、隣の小さい子には、ちょっと残酷やったかもなー?」

 

 「なに、時として優しさより、残酷さの方が有難いものじゃ。それより、あのアホがオラリオの頂点に偉そうにふんぞり返っていると思うと、とても我慢ならん。最強はロキ、お前が取らなきゃのう」

 

 「あったりまえやー!フレイヤの首、取ったるでー!」

 

 二人の女神は肩を組んで、陽光が燦々と降り注ぐ外へと出て行った。

 

 

 ーー迷宮32階層。【ロキ・ファミリア】の遠征隊は凄まじい速度で進み続けていた。レフィーヤは素早く隊と合流し、第一線の部隊に復帰を果たしている。あのハムザとミノタウロスの戦闘から、もう大分経った頃だろう。団員達は「あいつにだけは負けたくない」と気負い、いつも以上に激しくモンスターを屠り続けていた。

 

 戦闘を終えたアイズが、レフィーヤに近づいてきた。先ほどの出来事以来、アイズは暇を見つけてはレフィーヤの隣にやって来ていた。その度に、レフィーヤは嬉しさで心が躍った。こんなにも愛しの彼女と距離を縮めたことは、ファミリアに入団してから一度たりともなかったはずだ。

 

 「ねぇ、レフィーヤ…どこで並行詠唱を覚えたの?」

 

 アイズに同調するように、傍で戦況を見つめていたリヴェリアが口を開く。

 

 「見違えたぞ。詠唱の威力も速度も上がっているようだし、おまけに並行詠唱まで完璧だ。どんな訓練をしたんだ?」

 

 彼女は思ったままに答えた。ハムザを追い掛け回す時、たまたま初めて並行詠唱が出来たこと。そして初めて、頭を空にし冷静さを保ちながらも魔法に気持ちを乗せられるようになったこと。そうした経験が、きっと自分の魔法に影響したのかもしれない、と。

 

 それを聞いてふっと笑みを漏らし、リヴェリアは彼女を褒めた。

 

 「魔法とはな、最初は誰でもまぐれなんだ。そして練習を積み重ねることで、段々とまぐれを体が覚えてくる。それが次第に実力となり、まぐれではなくなっていくものだ。お前は随分吸収が早いようだな。期待しているぞ、レフィーヤ」

 

 「そうだね…レフィーヤには、きっと凄い才能があると思うよ…」

 

 アイズにも褒められ、レフィーヤはとても嬉しかった。リヴェリアは戦闘で傷ついた下級団員を癒しに行く為に、その場から離れて行った。アイズとレフィーヤは地面に腰を下ろし、肩を並べて語り始めた。

 

 「ねぇ…レフィーヤは、ハムザと何回も、その、したの…?」

 

 驚いたレフィーヤは聞き直したが、アイズはもう一度同じ質問を彼女にぶつけてきた。少し考えてから、レフィーヤは口を開く。

 

 「え、えーっと…はい、本番は一回だけですが…その、舐められたり、指でイかされたり、好き放題されてしまいました…」

 

 清廉潔白な金色の少女と比べて、自分は何と淫らで汚れているのだろうと、レフィーヤはとても後ろめたい気分になった。変身したあの少女にまんまと騙されたとはいえ、あのアイズ・ヴァレンシュタインが性行為をするだなんて想像することは、つまり自分自身が穢れている証であるはずだ。

 

 もしも自分が目の前の清らかな少女と同じように清純な心を持っていれば、きっと騙されることもなかっただろう。アイズと比べれば、自分など卑しい娼婦と何ら変わりがない。そう考えると、レフィーヤは剣姫との差に愕然とするのであった。

 

 実力だけではなく、女性としての魅力まで、やはり遥かにかけ離れていると認めざるを得ない…。

 

 「そうなんだ…」

 

 そう考えていたレフィーヤだったが、アイズの表情に徐々に暗い影が宿った気がして、慌てて付け加えた。

 

 「えーっと、その。偽物のアイズさんに唆されたから、しただけで…恋愛とか、そういうのではないです。もちろん清く純潔なアイズさんが、あんなことをするなんて信じられませんでしたが、でも…え、えっと…アイズさん?」

 

 「私が、純潔…?」

 

 暗い表情で聞き返すアイズに、レフィーヤはたじろいで答えられなかった。今の今まで纏っていた金色のオーラが陰りはじめていた。何か嫌な予感がした。不吉な何かが、今すぐにアイズの口から飛び出てくるだろうと、レフィーヤは身構えた。

 

 「ねぇ、驚かないで聞いてくれる?実は私も…ハムザとしちゃったの…」

 

 絶叫と共に驚いて飛び上がる、という数コンマ前に、アイズはレフィーヤを制止した。

 

 「静かに…誰にも、言わないで…」

 

 口を開けてぱくぱくとしてから、声にならない枯れたうめき声をあげてレフィーヤは弱々しく俯いた。

 

 「それは、まぁ…えっと、でも、どうして、そ、そんなことに…」

 

 アイズは理由を説明出来なかった。レフィーヤの日記帳を読んでしまったと彼女に告げたら、きっととてもショックを受けるに違いない。誰でも秘めた心の叫びを聞かれてしまうのは、嬉しいことではないのだから。

 

 レフィーヤが落ち着きを取り戻すまで、暫く時間がかかった。それからアイズは、出来るだけ彼女を刺激しないよう、優しく語り掛けた。

 

 「ねぇ、レフィーヤは、ハムザのこと、どう思ってるの?」

 

 そう言われた彼女は目を泳がせてから、しばらく黙り込んだ。しかし、やがて堪忍したかのようにため息を吐いてから、ゆっくりと語りだした。

 

 「うーん…気になるかどうかといえば、気になるんですが…。なんというか、恋愛とか、そういうものではないんですよね。でも、その、行為の最中は、とっても嬉しくて、気持ちよくて、出来ればずっとあの人と一緒に居たいって、思ったんですけど…。やっぱり後から冷静になってみると、ちょっと、違うのかなーって…うまく、まとめられません」

 

 「ただ、強くなりたかった?」

 

 「はい、そうです、そうなんです。あの時はなんていうか、必死でした」

 

 「うん、わかるよ…私も、そうだった」

 

 アイズも頷いた。二人の間に、暫く沈黙が続いた。息をする度に小さく揺れるアイズの肩が、レフィーヤの肩と暫くの間ぶつかり合った。戦闘を終えた団員達が、武器や防具を確かめてから隊列を組みなおした。もう直ぐ、フィンの号令が聞こえてくるに違いない。

 

 (リヴェリアには、ハムザとのこと、黙っていた方がいいのかな…)

 

 先ほどのハムザ達との会話から、リヴェリアの彼への態度が軟化したことは間違いなさそうだ。でも、アイズにはどうしても事実を切り出す勇気がなかった。勘違いから体を許してしまったと知られたら、一体どんな顔をされるだろうか。きっととんでもなく怒られるか、呆れられるかのどちらかだ。

 

 どうやら悩んでいるのは、アイズだけではないようだ。隣に座るレフィーヤも、きっとハムザとの出来事をどのように処理したらいいかと決めあぐねているようだった。

 

 「ねぇ…レフィーヤ。ハムザのこと、だけど」

 

 アイズは思い切って切り出してみた。

 

 「あの人のこと…暫くは、二人だけの秘密にできない、かな…?」

 

 「秘密、ですか?」

 

 「うん。ハムザのスキルのこと、皆あまり詳しく知らないみたいだし…」

 

 うぅーんと首を捻り、レフィーヤは少しの間考えた。

 

 「ハムザさんが一か月でランクアップしたこと、リヴェリア様が皆さんに黙っている理由、アイズさんは知っていますか?」

 

 アイズはきょとんとして「ううん、知らない」と答えた。その言葉を聞いて、レフィーヤは話を続けていく。

 

 「実はリヴェリア様、ハムザさんと約束をしたらしいです。一か月でランクアップしたら、その、体を触らせてあげてもいいって」

 

 思わずアイズは聞き返した。まったく信じられない、と金髪金眼の少女は目を見開いて驚いていた。あのリヴェリアが、あの気高い王族が、まさかそんな約束をするなんて…一体何の間違いだろう。

 

 「それで、ハムザさんが見事にランクアップを果たしてしまったので…遠征から帰ったら、きっと約束を守る事になると思うんです。もし、そうなったら…」

 

 「リヴェリア、居なくなっちゃかもしれない」

 

 「えっ?いなくなる、ですか?私はむしろ、逆かもしれないと思っちゃいました」

 

 「逆って、どういうこと?」

 

 「もし、もしですよ、アイズさん」

 

 真っ直ぐにアイズの瞳を見つめて、レフィーヤは誰にも聞こえないよう、とても小さな声で言った。

 

 「もしリヴェリア様がハムザさんのスキルの効果を体験したら…もちろんそんな事になってしまうのは想像したくもありませんが…。でももしもそうなったら、リヴェリア様も分かってくれるかも知れません。その…体を許すことで、強くなるということを」

 

 なるほど、とアイズは頷いた。ハムザの事だ。リヴェリアの背中をぽんと叩いて、約束は果たされた、などとは言わないだろう。きっと自分に対して執拗に行為を要求してきた時の様に、徹底的に行くつもりなのだろう。もしそうなったら、流石のリヴェリアにもかわし切れるかどうかは分からない。むしろ、ああいった話題に弱いリヴェリアのことだ。案外押し切られて、そのまま押し倒されてしまうことも十分に考えられた。

 

 「だから…私はアイズさんの意見に賛成です。取り合えず遠征後、リヴェリア様がご自身でハムザさんとの問題を解決した後に…私たちの問題を報告してみても、いいかもしれません」

 

 「うん、そうだね。いろいろありがとう、レフィーヤ。これからも、よろしくね…」

 

 アイズはレフィーヤに寄りかかった。ふわっといい香りがして、レフィーヤは思わずアイズに抱き着いた。

 

 「アイズさんっ…。だいすきですっ!」

 

 そんな少女に少しだけ驚いたアイズだったが、そっと両腕を回して、彼女を包み込んでから優しく言った。

 

 「うん…私も好きだよ、レフィーヤ…」

 

 「ふふふふふふ…アイズさぁん…ふふふ」

 

 柔らかい腕の中で、レフィーヤはにやにやしながら極上のひと時を堪能しながら、ハムザに思いを馳せた。

  

 (いろいろ苛立つことがありましたが…アイズさんとの距離も縮まりました。一応、感謝をしておいてあげましょう、ハムザ・スムルト…)

 

 

 

 ここがダンジョンでなければ、麗らかな陽光降り注ぐ草原で、鳥の鳴き声を聞きながら二人の少女を見送ることになっただろう。だが、ここはダンジョンだ。数多の冒険者を飲み込み、凶悪な怪物達を産み落とす、歴とした戦場である。

 

 で、あるからして。

 

 団長の鋭い矢のような号令の後、二人の少女は手を取りながら立ち上がり、風のように一団のもとへと走り去っていった。

 

 

 




気分をリフレッシュするつもりで間を開けたら、進行がよくわからなくなり、訂正がプロットの修正を生み、書き直しがモチベを低下し…最後は勢いでやっつけることも出来ず、ただ打ちひしがれて続きを書いていました。

次は、命ちゃんのお話になりますが…時事無視で他のキャラに焦点を当てただけの短編もちょくちょく投稿していく予定です。

つたない文章で荒も相当ですが、練習のため頑張っています。
ご意見お待ちしています。
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