※この作品はR-18です。

ダンジョンに性交を求める眷属の物語   作:kuracjaponski

42 / 51
一章 ー調教ー

「…畜生、あぁっ…」

 

 ギルドの旧地下牢獄では、ハムザによる調教が行われていた。

 

 台座に乗せられたレヴィスはオリハルコン製の鎖に繋がれ、手足を固定されたまま。

 

 一週間の間、昼夜を問わず続いた性的拷問。最初のうちは、レヴィスも余裕のある口調でハムザを挑発したものだった。だが、ナァーザ特製の媚薬により性感帯が敏感になったレヴィスは、絶頂の感覚を体に覚え込まされた途端、女の弱さを見せ始めていた。

 

 何十回目の絶頂に達したレヴィスからは鋭い眼光が消え失せ、今では虚ろな目をしていた。

 

 「…私は…くそッ…。……っ」

 

 指がレヴィスの性器に出入りする度、思わず甘い声を漏らしてしまう自分を恥じるように唇を噛んだ。

 

 「ぐひひ…びちょびちょではないか。あれだけ牙を剥きだしていたのに、今となってはクリちゃんを剥き出しにするばかり…レヴィスも所詮は女だったということだな」

 

 敏感になったクリトリスを強く擦ってやると、レヴィスは腰を跳ねさせて声を漏らす。それを数秒続けただけで、レヴィスは何度目かも分からない絶頂に達した。

 

 「イキ続けると狂っちまうらしいぞ。俺としては、お前がチンポ狂いになる所が見たい。お前みたいな美女が、快楽に落ちるのを見るのが楽しみなんだ」

 

 そう言ってハムザは勃起した股間をレヴィスに見せつける。今までは指での愛撫のみだったが、ここでハムザは始めて男の味をレヴィスに教え込むと決めた。

 

 「…それは…止めろ……」

 

 止めろとは、どういう意味だろう。意外にも、女の尊厳を感じているということなのだろうか?ハムザは考えた。人と怪物の混合種、怪人(クリーチャー)。それがレヴィスの正体だ。魔石を喰らい能力を向上させることができる強化種でもある。そんな怪物でも、処女喪失は愛する人と…なんて思ったりするのだろうか?

 

 「言う……分かった、お前の勝ちだ…。私達は『宝玉の胎児』を育て、モンスターに寄生させる事で大幅な能力強化を成功させた……。食人花とそれらの化物を使い…地上を蹂躙する計画を立てている…。これで見逃せ」

 

 「お前は何か勘違いをしているな」

 

 ハムザはレヴィスにゆっくりと近づいた。ずぼんを半分下ろしているせいで、足取りは随分滑稽だった。

 

 「俺はオラリオなんてどうでもいい。オラリオ転覆だとか、そんなことよりセクロスがしたい。レヴィスみたいな美人可愛い女に死ぬほど中出ししたいだけだ。分かるな?」

 

 「っ…。下衆め……」

 

 「今日は記念日だ。記念すべき罰則の終焉。セクロス解禁日だ。分かるな?」

 

 「…地獄に落ちろ。猿め」

 

 レヴィスはそそり立つペニスに向かって、ぺっと唾を吐き出した。

 

 「そうだ、そういうのが良い。お前は気が強い感じでいてくれなければつまらん」

 

 そう言って無理矢理レヴィスの穴に捻じ込む。

 

 「止めろ…ッ!抜け、抜け!猿め…、お前は屑だ!ゴミ、虫けら……」

 

 言葉とは裏腹に、愛液で洪水となっていたレヴィスの膣は、求めるように絡みついてきた。きつく締め付けてくるその感覚に酔いしれるハムザは、腰の動きをどんどん早めた。

 

 レヴィスは途端に無口になり、口を噛みながら声を出すまいとしている。だが、試しに奥まで一気に突いてやると、悦びの声が飛び出してきた。突く度にいやらしい音を立てるレヴィスの膣は、かなり良い具合だ。流石は悪の親玉(ボスキャラ)。戦闘能力だけでなく、こっちの方もなかなかに厄介だ。

 

 久方ぶりのセックスだったので、我慢をするつもりはなかった。良い具合の角度だけを貪るように突き続ける。まるでレヴィスを自慰に使っているようだ。だが、そんな感覚は寧ろ興奮を強くしたし、殺人狂には寧ろこのような仕打ちが相応しいというものだ。

 

 「よし…いくぞ」

 

 その声を聞いたレヴィスだったが、もう諦めたのか無言のまま為すがままとなっていた。

 

 「おらっ……!!!」

 

 「……っ」

 

 深くまで打ちつけられた男根から迸る精液。異物が送り込まれる感覚に気が付いたのか、彼女は目を白黒させた。

 

 「…ぐっ…これは……」

 

 悪くない。ハムザは彼女がそう言うのかと思った。しかし違った。

 

 「……ゴミめ」

 

 「ゴミに中出しされてどんな気分だ?」

 

 最悪だ、とレヴィスは吐き捨てる。

 

 「気が済んだだろう。さっさと【ロキ・ファミリア】から鍵を奪って来い。私の身体を好きにさせてやった代わりにな」

 

 ハムザはレヴィスをじっと見つめながら、腕組みをし、暫く何かを考えていた。そしておもむろに口を開いた。

 

 「…飯でも食いに行くか」

 

 運動したら夜食が欲しくなった。

 

 ハムザはレヴィスの身体拘束を緩め、彼女の身体を起こしてやった。

 

 「…何をしている?」

 

 突然拘束が緩んだことにぎょっとして目を見開いたレヴィス。まさか自由が与えられるとは思っていなかったのか、突然得た脱出の機会の意味を熟考する様子を見せる。

 

 「オラリオをぶっ壊したいなら、俺が遊んでからぶっ壊せ。協力してやってもいいぞ」

 

 蛇のような目つきを取り戻したレヴィスは無言のまま、服を着直すハムザの様子を注意深く見つめていたが、どうやら意図を図りかねているらしい。

 

 「俺はここにハーレムを作る。美女だらけの宮殿を作るのだ。邪魔な神は殺す。お前が殺したい奴も、俺が殺してやる」

 

 「――ならばアリアを殺せ、今すぐだ」

 

 アリア…その名前が指す人物がアイズ・ヴァレンシュタインだと言うことは、ハムザも理解していた。

 

 「アイズは殺さん。あいつはむしろ俺の仲間になる。それよりお前に聞きたい。俺が外に出してやったら、今すぐオラリオをぶっ壊すつもりなのか?」

 

 ほう、とレヴィスは眉を吊り上げた。どうやら感心したらしい。

 

 「どうかな。勿論そのつもりだ、と言いたいところだが…。敵の陣中で単独行動する程、私は無謀ではない」

 

 「だが」レヴィスは続けていく。

 

 「私を解放したら……。そうだな、どうなっても知らんぞ」

 

 殺意に満ちた空気を纏うレヴィスだったが、何だかレヴィスが可哀想に思えてきた。こんなに可愛い顔をしているのに、怪物と同様に迷宮内で過ごしていたなんて、理不尽だ。

 

 自分達も『13階層の災害』によって迷宮で遭難した経験があるからこそ、それがどれだけ辛い事なのかがよく分かった。【ロキ・ファミリア】に狙われているのも不運だ。奴らは限度というものを知らない。それに拷問をしようとしている。こんな美人なのだから、ちゃんと着飾らせて、礼儀作法を覚えさせて、地上での暮らしに順応させてやれば、もっと幸せになれるに違いないというのに。そんな美人に拷問だと…?許さん、【ロキ・ファミリア】め……。

 

 射精後の賢者モードは、ハムザが今まで彼女に性的拷問をしていたことをすっかり忘れさせた。そして彼女がオラリオに復讐を考えるのも、無理もないとさえ思えてきた。

 

 「よし、ついて来い。地上を見せてやる」

 

 拘束具を外され、レヴィスの身体は完全な自由を得た。ハムザはもう檻の外に出ていた。レヴィスはどんな罠が待ち受けているのかと警戒しながら、一歩外へ出て周囲の様子を探る。

 

 「……………」

 

 経年を感じさせる薄暗い地下道だった。檻はずっと奥まで連なり、火が灯されているのはこの通路一帯だけだ。

 

 「これを着ろ。ロキ・ファミリアがあちこち嗅ぎ回っててな、身バレしたら終わりだぞ」

 

 古椅子にかかっていた埃まみれのローブを手渡されたレヴィスは、黙って従った。薄茶色のローブに身を包むと、フードの奥の表情をはっきりと認識することは難しかった。魔石灯で明るい大通りにさえ出なければ、これが『怪人』だとバレる心配はなさそうだ。

 

 ハムザはボロボロになった石階段を数段上がり、木製の扉についている錠を開けた。軋んだ扉の開く音が地下道に響き渡る。

 

 暫く階段を上り続けると、だんだんと明かりが増えていった。それから更に上へ登っていくと、厳重な鍵が取り付けられた大扉が現れた。ハムザががちゃちゃと音を鳴らして何とかその鍵を抜いて扉を開くと、まばゆい光が飛び込んできた。

 

 床は石材から大理石に変わり、壁や柱に豪華な彫刻が施されている空間。完全に牢獄から抜け出たことに、嫌でもレヴィスは気付かされた。

 

 「ギルドだ」

 

 ぴくり、と彼女の指先が反応する。

 

 「オラリオをぶっ壊すならまずここだ。でも、その必要はないな。既に所長のロイマンは我が主神の言いなりだから」

 

 フードの奥で押し黙るレヴィスは、立ち止まってハムザを見つめたまま動かない。本当にギルドがハムザの手中にあるのかどうかを、見極めようとしている様子だった。

 

 「正面玄関はあっちだ。人目につかない裏口がこっち」

 

 ハムザは雑踏から離れるようにいそいそと歩き始めた。それから二人は裏口から細い小路に出る。

 

 暗く、往来のない裏通りだ。

 

 通りに面するのは宮殿のように豪華なギルドと、連なる汚い古民家のみ。何となく、迷宮の通路に似た雰囲気がある。ほの暗く、不気味で、警戒心を抱かせるような。

 

 「この時間なら、人はほとんど通らない。いるのはゴロツキか酔っ払いだけだ」

 

 無言のまま頷いて、小路を進んでいく。すると、地面に座り込んで顔を真っ赤にした酔っ払いが、管を巻いていた。

 

 「…うぃっく!おぉ、ブラック・パーヴだ!イカレポンチの大法螺吹き…俺にもおまえみたいな才能があったらなぁ!史上最速のランクアップ…まったく、凄まじい嘘の才能だぜ」

 

 ハムザは酔っ払いの腹を蹴飛ばした。酔っ払いは地面に伏し、意味不明な言葉を呟き始める。

 

 「エルフのおまんこぺろぺろ…ぐへへ」

 

 ボロ雑巾のような酔っ払いを一瞥してから、ハムザは再び歩き出す。

 

 「俺は一カ月でランクアップした。それをやっかむ阿呆は星の数ほどいる」

 

 二人が暗い小路を歩き始めてから数分経つと、民家の陰から男が声を掛けてきた。

 

 「よう、ハムザ・スムルト。やってくか?」

 

 傷だらけで無精髭を生やしており、あまり真っ当な人間には見えない男の顔を、レヴィスはじっと眺めた。

 

 「…闇派閥(イヴィルス)か?」

 

 馬鹿な、と男はすぐに声を荒げる。

 

 「危ねぇことを言うんじゃねぇ!闇派閥(イヴィルス)なんて言葉、冗談でも口に出しちゃいけねぇぜ。俺達のシノギは連中なんかよりずっとまともだからな。なぁ、ハムザ、今日はとびっきりの娘が入ってる。見てくだけなら無料だぜ」

 

 「あまり気乗りはしないが、まぁ付き合ってやるか」

 

 男に案内されるがまま、二人は古民家に入った。それから地下の一室に入った途端、咽返るような男の臭いが飛び込んでくる。

 

 「…………」

 

 レヴィスは男が群がる先に目をやった。まだ年端のいかない少女が、血と精液にまみれて床に倒れ伏していた。男は無理矢理少女の髪を引っ張り、性器を幼い少女に捻じ込んでいく。

 

 半分気を失ったように力が抜けている少女を、男達は喜んで輪姦している。レヴィスが不思議と握りこぶしに力を込めたその時、輪から外れた男達がハムザに声を掛けて来た。

 

 「よう、ハムザ。お前さん、持ってるか?今切らしちまってな」

 

 「おい。薬なら他を当たれ。俺は売人じゃない」

 

 「おっと、おっと」男は両手を上げ、煙草をふかしながらおどけた様子で言った。

 

 「そういうことになってるんだったな。でも、お前がギルドに俺達コルリオーネ組の口聞きをしてくれた件、皆感謝してるんだぜ。お陰でヤクの売り上げは絶好調だ。ついでに女もな。おっと、そっちの女、お前の奴隷かい?なかなか良い体つきしてんじゃねぇか」

 

 ハムザはレヴィスに顎で合図した。

 

 「もう行くぞ。馬鹿共と同じ空間に居るとこっちまで馬鹿になりそうだ」

 

 踵を返す二人の背に、ティシェールは明るい声を掛ける。

 

 「じゃあな、ブラック・パーヴ!」

 

 

 二人は再び暗い小路に出た。新鮮な空気を吸い込んでから、ハムザは弁明しようとする。

 

 「あいつら勝手に来て、勝手に話を進めやがってな。一体どこから俺達がギルドと繋がってることを聞きつけたのやら」

 

 「…私は奴らの仕事を支持する。このオラリオに破壊を齎す奴らの存在は、私にとって都合が良い」

 

 それから暫くの間、ハムザは小路を真っ直ぐに歩き続けた。そしてまだ明かりの消えていない一軒の酒場にするりと入り込み、レヴィスを手招きした。

 

 大柄の男が、流し場からぎろりとレヴィスを睨んだ。カウンターに腰を下ろすと、そろそろとやって来た犬人の男性にメニューを手渡される。

 

 「……『混沌亭』」

 

 メニューには値段も料理名も書かれていなかった。ただ『甘い』『辛い』『塩辛い』と書かれてあるのみ。

 

 「お前みたいなおのぼりさんには、かえってこれくらいが丁度良いだろう。好きな味を言えば、勝手に作ってくれる。まぁ、馴染みじゃなければぼったくられて終わりだがな」

 

 「…………そうか」

 

 睨み続ける料理人に、ハムザは大声を出した。

 

 「辛い奴!!!!」

 

 大声を咎めるように、レヴィスはハムザを睨んだ。だが、ハムザは耳うちする。

 

 「あいつ、耳が遠いんだ。だから客を注意深く観察する癖がついちまった。ずっと睨んでるのは、そのせいだ」

 

 レヴィスはそうかと頷いてから、呟いた。

 

 「……甘いのを貰おう」

 

 だが、料理人は睨み続けたまま動かない。ハムザがレヴィスの代わりに叫んだ。

 

 「甘い奴!!!!」

 

 料理人は頷いてから仕事に取り掛かった。レヴィスはふむ、と首を傾げる。

 

 「…あいつがこっちに来て、私がメニューに指を差してやれば良いだけなのに、何故そうしない」

 

 グラスに水を注ぎながら、ハムザは言ってやった。

 

 「店名にも書いてあるだろう、混沌(めちゃくちゃ)だって」

 

 

  

 【ロキ・ファミリア】の執務室に、ノックの音が響いた。

 

 「失礼します、えっと、団長。報告をしに来ました」

 

 「やぁ、レフィーヤ。ちょっと待ってね、今この書類を片付けるから」

 

 そう言ってフィンはいそいそと羽ペンを動かした。何もすることがなかったレフィーヤは窓の外に浮かぶ月を眺める。もう深夜だと言うのに、フィンはずっと仕事を続けている。きっと団長がこんなに勤勉だから、【ロキ・ファミリア】はここまで成長してこれたのだろう、とレフィーヤはフィンに対する尊敬の念を深めた。

 

 「…ふぅ。これでようやくだ。さて、レフィーヤ。報告を聞こう」

 

 背もたれに寄りかかり、書類が散乱した大きな机の向こうからフィンが声を投げかけた。

 

 「はい、えっと…。【テルクシノエ・ファミリア】に動きはありません。ハムザ・スムルトの所在は不明で…恐らくはギルドに居るんだと思います」

 

 「報告ご苦労、レフィーヤ」

 

 フィンは椅子に深く座ったまま考え込んだ。暫くしてから、そわそわしているレフィーヤに伝言を伝える。

 

 「…流石に【怪人(クリーチャー)】を外に放つような真似はまだしない……か。部屋に戻る前に、リヴェリアの部屋に行ってこう伝えてくれ。もうすぐフィンが来ると」

 

 「えっと…この時間に、ですか?」

 

 「大丈夫、リヴェリアはあまり寝ない。この時間でも、間違いなくまだ起きている。さぁ、行ってくれ。伝言を伝えたら今日の任務は終了だ」

 

 レフィーヤは分かりました、と言い残し部屋を去っていった。一人になったフィンは机の書類を片付けてから、自分も部屋を後にする。暗い廊下を進み、リヴェリアの寝室の扉をノックした。

 

 「…フィンか、入れ」

 

 ぎっしり詰まった本棚が並ぶ部屋の中央で、いつもと同じ格好のリヴェリアは姿勢良く椅子に座っていた。手元には閉じられた本が見える。

 

 「読書中すまない。ちょっとハムザの件で相談したい事があってね」

 

 ハムザか…とリヴェリアは呟いてから、耳に掛かった翡翠色の髪をかき上げた。

 

 「【怪人(クリーチャー)】は未だ囚われのまま。だけど、もう一週間が経った。動きがあるとしたらそろそろだと、僕は睨んでる」

 

 「全く馬鹿な男だ。あの女を本気で御そうと思っているとしたら、愚かにも程がある」

 

 フィンは苦笑しながら、脇にあった椅子を手繰り寄せて座った。

 

 「【テルクシノエ・ファミリア】は面会拒否、その上ロキには団員の『尾行』も辞めるように言われている。それでもあの女を放っておくことは出来ないから、僕は『観察』を続けさせているけど…表立って出来ない以上、追跡の精度は悪い。今夜レフィーヤはハムザの姿を見失ったようだ」

 

 リヴェリアは額に手を当て、ため息を吐いた。

 

 「あの男のことだ、レヴィスに何をしているのかは容易に想像が付く」

 

 困り果てた様子のリヴェリアをフィンはからかった。

 

 「…そう言えば君も、口説かれたうちの一人だったね。『約束』は果たしたのかい?」

 

 失笑を漏らしてからリヴェリアは天上を仰いだ。

 

 「一月でランクアップしたら私の胸を自由にする約束…か。あれから一カ月。私は奴の目から逃れるようにこうして自室に籠りきっている」

 

 「それなら君は【怪人(クリーチャー)】に感謝しなければならないね。彼女のお陰でハムザはあまり外に出てこない。彼女に夢中だからね」

 

 リヴェリアは笑みを溢した。馬鹿を言うな、とフィンに首を横に振ってみせる。

 

 「それを言うならお前の方こそ、レヴィスに夢中のように見えるぞ。四六時中怪人怪人と、彼女のことばかり口にしているからな。ティオネが嫉妬するのも、無理はないな」

 

 「は、は…」

 

 フィンは空笑いを返す。それから真面目な口調を取り戻し、リヴェリアに言う。

 

 「これからは尾行の任に、アイズを付けようと思う。本格的に【怪人(クリーチャー)】脱走の可能性が疑われる以上、Lv.6の彼女を付けなければ不測の事態を収めることが出来ないからね」

 

 「同意だ。だが、フィン。この件に関しては、ロキの指示に従った方が良い。彼らを刺激しない方が、かえって安全というものだ」

 

 「それはどうかな。勇者として、僕は彼女を野放しには出来ない」

 

 「…まぁ、お前がそう言うならそれで良いだろう」

 

 リヴェリアは簡単な返事を返す。フィンは考え込んだまま顎を手でさすっていたが、ため息の後に立ち上がった。

 

 「全く、こんなに気を揉む事態になるとは。ハムザ・スムルト、いや黒い変態(ブラック・パーヴ)。本当にやってくれた……」

 

 おやすみ、と彼女に言ってから部屋を出て、扉を閉じる。紫色の魔石灯が照らす廊下を歩きながら、フィンは独りで考えを巡らせた。

 

 (『13階層の災害』を乗り越え、【闇派閥(イヴィルス)】の幹部を捕らえた、か……。世間が彼らを次世代の担い手だと騒ぐのも無理はない。でも、彼らは危険だ。本当にあの女を御しきれると思っているのかい?ハムザ……。出来る訳がない。最悪の事態を招く前に……場合によっては、僕が……)

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。