※この作品はR-18です。

ダンジョンに性交を求める眷属の物語   作:kuracjaponski

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第二章 -それぞれの一日-

 ハムザは眠っていた。股間のあたりがむずむずするので、手でまさぐろうとした。すると、サラサラした何かに指が触れ、意識がだんだんはっきりしてきた。

 

 「む……」

 

 「おふぁようございます、ハムザ殿」

 

 本拠のテントの魔石灯は消えており、外はまだ薄暗い明け方のようだった。そんな早朝にも関らず完璧にめかし込んだ命が、ベッドに乗り自分の股間に顔を埋めていた。

 

 「おぉ…もうそんな時間か」

 

 ハムザは股間の感覚に集中してみた。気が付けば勃起しており、命の丁寧な奉仕が心地良い。リリも主神もまだ寝息を立てているようだ。

 

 「…ふう。朝から元気ですね」

 

 嬉しそうにペニスに口づけをする清廉な少女。淫靡な行為を躊躇わず行う大胆さが、見た目とのギャップによく映える。黒髪美少女が、ペニスの先端を舌先で弄りながら、くすりと微笑んだ。

 

 「そろそろ出させて差し上げましょうか?」

 

 その言葉と共に、口と手を滑らかに前後させ、奉仕は激しさを増していった。瞬く間に射精感が込み上げ、寝ている間に溜まった朝の濃い一発を命の口内に解き放つ。

 

 「んっ…すごい…です」

 

 両手で命の顔を押さえつけながら、射精が収まるまで腰を突きあげ続ける。ようやく収まった一発目の射精の後、命は口内に溜まった精液を舌の上で転がしながら、ハムザに見せた。

 

 「こんなに出ましたね」

 

 ごくりと喉を鳴らして呑み込んで、淑やかな笑みを作る。

 

 命による目覚めのフェラチオは、ここ一週間毎日続いていた。これがないと、きっと一日が始まった気がしないだろう。ハムザはむくりと起き上がって、魔石珈琲製造機にスイッチを入れる。

 

 「命も上手くなったなぁ。最初はあんなにぎこちなかったのに」

 

 「そんなっ…!?ご指導のおかげです。ハムザ殿、私にもいつものを淹れて頂けますか?」

 

 いつもの、というのは緑茶のことだった。今日もいつもの日課が続いていく。今にも匂いに釣られてリリが起き出してくる。それから買い溜めてあるパンをかじりながら鎧を着こみ、薄暗い朝の街に飛び出すという訳だ。何でこんなことをしなければならないのか……不満そうにカップを乱暴に机に置くと、その音でリリが唸った。

 

 「ん〜…?あ、おはようございます。ハムザさま、命様」

 

 「よう。珈琲なら出来てるぞ」

 

 リリが起きてきたので、余分に作っておいた一杯をリリに渡す。それからリリは、熱々の珈琲を冷ますように何度も息を吹きかけていた。

 

 「あと15分もしたら、出発ですね」

 

 緑茶をありがたそうに飲む命がそう言った。あと15分で、【ヘファイストス・ファミリア】に出発しなければならなかった。オラリオ屈指の鍛冶派閥ということで、かなり有名な派閥であるのは間違いなかったが……正直あの神様に関わるのは、できればこれっきりにしたかった。

 

 つまり――鍛冶神ヘファイストスは、あまりにも職人気質で面倒くさい奴だったのだ。

 

 ●

 

 一方その頃、【ヘファイストス・ファミリア】の工房群の一画で、女神はじっと羊皮紙に目を落としていた。

 

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 ハムザ・スムルト

 

 Lv.2 力:【G】252 耐久:【G】219 器用:【H】130 敏捷:【I】88 魔力:【H】197 

 

 悪運:【I】狩人:【I】性技:【I】

 

 《魔法》

 【イェベン・ティ・マーテル】(呪詛)

 ・速攻魔法

 ・無言詠唱

 ・対象を一時的に強制的な精神疲弊ーマインドダウンー状態にする

 

 《スキル》

 【性交願望(セクロス・シテーゼ)

 ・性交の数だけ成長する

 ・快感に応じて効果上昇

 ・性交対象に魅了効果付与、経験値付与、回復効果付与

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 「まったく、滅茶苦茶ね…」

 

 そして一枚ページをめくる。

 

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 ヤマト・命

 

 Lv.2 力:【I】87 耐久:【I】65 器用:【H】120 敏捷:【G】280 魔力:【I】48 

 耐異常:【I】

 

 《魔法》

 【フツノミタマ】

 ・一定領域を超重圧で圧し潰す。

 

 《スキル》

 【八咫白烏】

 ・効果範囲内における眷属探知。

 ・同恩恵を持つ者のみ効果を発揮。

 ・任意発動(アクティブトリガー)

 

 【八咫黒烏】

 ・効果範囲内における敵影探知。隠蔽無効。

 ・モンスター専用。遭遇経験のある同種のみ効果を発揮。

 ・任意発動(アクティブトリガー)

 

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 「…こっちもなかなかよねぇ。魔法の効果が限定的過ぎてアレだけど…」

 

 さらに一枚めくる。

 

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 リリルカ・アーデ

 

 Lv.1 力:【G】207 耐久:【G】201 器用:【F】384 敏捷:【F】309 魔力:【I】93 

 耐異常:【I】

 

 《魔法》

 【シンダー・エラ】

 ・変身魔法

 ・変身後は詠唱時のイメージ依存

 ・模倣推奨

 ・詠唱式【貴方の刻印(きず)は私のもの。私の刻印(きず)は私のもの】

 ・解呪式【響く十二時のお告げ】

 

 《スキル》

 【縁下力持 アーテルアシスト】

 ・一定以上の装備過重時における補正。

 ・能力補正は重量に比例。

 

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 「この子は…う~ん。ステイタスには現れないけど…原石よね」

 

 ヘファイストスは真紅のビロードで覆われたソファーに座り、足を組みながら、目を瞑って着想を練り始めた。

 

 【テルクシノエ・ファミリア】のリリとハムザ、そして【タケミカヅチ・ファミリア】の命のために造る特注品。オラリオ最大鍛冶派閥の主神として、そして鍛冶の神の一柱として、ヘファイストスには妥協するつもりは全くなかった。

 

 幸いなことに、これまでのところ彼らも自分の熱意に応えており、毎朝五時に工房に来ては色々な調査に付き合ってくれているのだった。近接遠隔問わず様々な武器を振らせたり、団長の椿と模擬戦をさせてみたり、怪物に対する得手不得手や将来習得してみたい理想のスタイル等の情報を聞き出したり、それこそ思いつく限りの全てを、槌を振るう前に行うことが出来ている。

 

 その甲斐もあってか、ヘファイストスの中にはイメージが膨らみつつあった。

 

 手元の希少素材を眺めながら、女神は熟考を続け、思いついた単語を口にしていく。

 

 「…必殺の忍者、不沈の軍師…。ハムザ君は、そうね。冷酷な災害……」

 

 う~んと唸る鍛冶の神。その時、三人が工房へやって来た。

 

 「よう、元気か。片目の神様」

 

 「あら、お揃いね」

 

 リリと命は頭を下げて挨拶をする。ハムザは大机に胸当てを置き、続いて剣も投げ捨てるように置いた。

 

 「全く、今日は何をするつもりだ。あの椿とやらの模擬戦は勘弁だぞ。何がLv.5だ、ちくしょうめ」

 

 近くの椅子に腰を落とし、ハムザは欠伸をした。ヘファイストスは弓なりに目を細め、笑顔を振りまいている。

 

 「いやねぇ~。強者との戦闘は成長の過程で欠かせないのよ?だから今日も呼んであるわ、椿を。そろそろ来る頃だと思うんだけどねぇ~」

 

 「まじか……」

 

 三人は肩を落とした。まるで絶対に受けたくない教師の授業を受ける生徒のように、緊張し、落ち着きがなくなり、顔から余裕が消えていく。

 

 「待たせたな!」

 

 そして、椿はやって来た。大声を張り上げて、扉を豪快に閉めた。

 

 「主神から聞いておるぞ。今日は手前が本気を出させて貰う。そして三人は連携して、手前の攻撃を防ぐのだ。なんと、楽しそうな模擬戦だ!さぁ、ハムザ。お前の力を見せてみろ!」

 

 ハムザはリリと命の間でそっと呟いた。

 

 「用事を思い出した気がする……帰っていいか?」

 

 

 

 模擬戦を終え工房を出た頃には、すっかり太陽が真上に昇っていた。三人は本拠へ戻り、未だ寝ている主神を揺すり起こした。

 

 「おい、神様。火事だ、火事だ。テントが燃えている…」

 

 「むにゃ…。嘘つけ、馬鹿め。騙されんぞ」

 

 テルクシノエは手を振り払うように身を捩り、寝返りをうって枕に顔を埋める。

 

 「大変だ!が、額縁が!額縁が燃えている!」

 

 途端にがばっと身を起こし、テルクシノエはあたりをきょろきょろと見渡した。

 

 「……なんじゃ、嘘か」

 

 そう言うと主神は体を脱力させ、気を失ったようにベッドに倒れ込んだ。相変わらずの光景に、命もリリも笑顔を見せる。いつもの平和な一コマだった。

 

 女神の髪はぼさぼさだった。ちゃんと身を整えれば綺麗なのに、女神はいつも自分の容姿に無頓着だ。

 

 「そうじゃ、命。入団試験があるのじゃ」

 

 枕に顔を埋めたまま、主神が思い出したように言った。

 

 「し、試験、ですか?」

 

 「そうじゃ」女神はようやく起きるつもりになったらしく、ゆっくりと上半身を起こして、ベッドの上を這いながら何とか立ち上がった。古びた机の引き出しを引き、羊皮紙を取り出して言う。

 

 「曲がりなりにも同盟の一員として、我が根城に足を踏み入れるのだから、詩心がなければならん。リリもハムザも、なかなかの才能を持っておるからの」

 

 おっぱいの詩とお詫びの一句が入っている額縁を愛おしそうに眺めながら、ぶっきらぼうに女神は告げる。

 

 「ペンとインクはその辺にあるのじゃ。形式はソネットじゃ。弱強五歩格以外は認めん」

 

 「え、えぇと…?」

 

 主神は再び布団に潜りこんだ。命はリリとハムザと顔を見合わせて、何事かと顔を引きつらせている。

 

 「大丈夫」

 

 ハムザが不安げな素振りを見せる命に言ってやった。

 

 「手伝ってやるよ。こいつは分かってる振りをしてるだけの(バカ)だから、適当でどうにかなる」

 

 「リリも手伝います。ソネットは…韻律詩ですよね。取り合えず、何となくそれっぽいリズムを作るのが大切だった気がします」

 

 命は頭を悩ませながらも仕方なしと俯いた。

 

 「…俳句なら心得があるのに…どうしてソネットなんでしょう。あぁ、困りました……」

 

 命は頭を抱えながらも、二人に別れを告げて【タケミカヅチ・ファミリア】へと帰って行った。彼女曰く、そろそろ主神との稽古の時間らしい。命はいつもこうして午前を共に過ごし、午後は自分の本拠へ戻る。夜を食べに来ることも頻繁にあった。

 

 二人きりになったリリは、まるでさも当然のようにハムザの膝の上に乗っかった。

 

 すっぽり収まるリリの小さな身体を抱いてやると、リリは猫のような声を出す。そして上目遣いで栗色の瞳を潤ませた。

 

 「……昼飯前に一発、やっておくか」

 

 リリは満面の笑みを向け、口づけをした。首に手を回し、貪るように何度も舌を絡ませてくる。それから溶けたような笑顔で手を跨ぐらに導いてから、既に濡れた恥部に指先を触れさせた。

 

 「リリにもたっぷり注いでくださいね?」

 

 もちろんだ、と頷いてズボンを下ろし、座ったまま濡れた恥部に挿入する。軽いリリの身体を掴み前後させ、きつい膣内を堪能する。幼い体つきの少女との行為は、背徳感を感じさせる。腰回りにある幼さは、ともすれば純朴な少女のそれに相違ない。だが、その腰は固くそそり立つ男根を飲み込み、いやらしい音を立てながら愛液を撒き散らしていた。

 

 小人族というのは…何だか癖になる。ハムザはリリとの行為に慣れてはいるものの、改めて少女の身体付きを眺めると、何だかいけないことをしている感覚に陥ってしまう。だが、もう関係ない。

 

 ハムザはリリを持ち上げて、立ち上がった。そのまま思い切り腰を動かし、激しくリリを責め立てる。

 

 「あっ…ちょ…激しっ…あっ」

 

 リリは初めての体位に感じてしまい、体を何度も痙攣させている。幼く無知な少女にエロい行為を教え込むと言うのは、ロリコン紳士としての嗜みだろう。と、ハムザは思わず顔を振る。

 

 (いけない、俺はロリコンではないのだ。リリが特別なだけだ)

 

 抱えたリリをベッドに下ろし、今度は後背位で突き立てる。リリのきつい膣の締め付け具合はが丁度良い。込み上げてくる射精感に身を任せて突き続け、思いっきり中にぶちまける。

 

 「あっ……凄い、出てるのが分かります」

 

 ぐったりと倒れ込んだリリに覆いかぶさり、身体を密着させたままペニスを奥まで押し付けて、最後の一滴まで注ぎ込む。それが終わって引き抜くと、リリはすぐに起き上がって残り滓を舐め上げ始めた。

 

 「うほっ……ヤバい、また立っちゃう」

 

 「…経験値の素ですから。一滴も零す訳にはいきませんよ」

 

 それから二人は二回戦を楽しんだ。

 

 

 「はぁ~。嫌になっちゃう。見てよこの書類の山~」

 

 エイナは片肘を付きながら乱雑に重ねられた紙の束の前でため息を吐いた。同僚のミィシャは引き出しに隠してあったチョコレートをこっそりと口に放り込んでから、悲嘆に暮れるエイナへ軽口を叩く。

 

 「何でも引き受けるエイナが悪いんだって~。アタシならその半分は、ゴミ箱に捨てて忘れちゃうな~。だって、ほとんど不必要な仕事だもん」

 

 「そんな事言ってもぉ…断れないのよ~…」

 

 再び溜息を吐くエイナの後ろで、ミィシャはもう一つチョコレートを口に放り込んだ。その時リリとハムザが二人で受付にやって来たので、彼女は指を差す。

 

 「あっ、変態だ」

 

 「あら、こんにちは。参ったなぁ、もうそんな時間?」

 

 顔を上げて困った表情を作るエイナに、リリはぺこりと頭を下げてから書類を提出した。

 

 「こちらが『13階層の災害』の際の主神の行動証明書です。テルクシノエ様は迷宮には入らず、ずっと『豊穣の女主人』の下宿先で匿われていました。証人にも印を押して貰いました」

 

 エイナは「どれどれ」と書類に目を通す。そしてすぐにそれを受理した。

 

 ロイマンと繋がりのある【テルクシノエ・ファミリア】は、【ヘルメス・ファミリア】とは異なり罰金が免除された。主神は確かに迷宮に入り込み、ギルドが定める『ルール』を破ったことには違いなかったが…所長の口利きにより所定の書類さえ提出すれば問題ない、とのことだったので、女神は大喜びをしていた。対して哀れなヘルメスは資産の半分を没収され、アスフィにより数日間監禁されたという。

 

 「じゃ、行こっか」エイナは席を立ち、デスクに不在を示す札を置いてから、先頭に立ってギルドの廊下を進み始め、一番豪華な応接間までリリとハムザを案内した。

 

 「これはこれは、どうぞお座りください」所長ロイマンが、既に座っていた。

 

 「…さてさて。我がギルドとしましては、女神テルクシノエ様の眷属様方の当ギルドに対する数々の奉公に対し、多大なる感謝を表明させて貰いましょう」

 

 リリとハムザは顔を見合わせた。ここ一週間、特にギルドの特になるようなことは何もしていない。恐らく、この中年男はコルリオーネ組との薬物取引により更に私腹を肥やせたことを喜んでいるのだろう、とハムザは何となく理解した。ゴロツキ共の組織が行っている薬物売買をギルドは意図的に見逃し、その分利益の一部を頂戴する。そんな図式だろう。

 

 「それと私個人的には、闇派閥との繋がりのある【怪人(クリーチャー)】なる者を捕縛した事にも、言及せねばなりますまい。その者は、何か情報を漏らしましたかな?」

 

 そう言われて、レヴィスが何かを言っていたことをハムザは思い出す。

 

 「そう言えば、ナントカを寄生させた怪物を使って、オラリオを攻撃するようなことを、言っていた気がする。まぁ、大した計画じゃないな。俺が完全に阻止できる陳腐な計画だ」

 

 「それは心強い」

 

 ロイマンを手を揉みながら続けた。

 

 「【テルクシノエ・ファミリア】こそ新たなる覇者だと世間が騒いでいるのは、もう耳にしておりますかな。未だかつてハムザ様ほどのスピードでランクアップした者はおりませんし、派閥としましても、もう間もなく等級が上がるでしょう。武力も財力も急速に成長しており、迷宮攻略の方も…信じられない結果を残しておいでです。そんな新進気鋭の新派閥と内密に関わることが出来、当ギルドとしても、大変嬉しく思っております。…これをどうぞ」

 

 ロイマンは茶菓子を二人に勧めてから、エイナに視線を送る。その意味を理解したエイナは、今後の方針について話し始めた。

 

 「えぇと、アドバイザーとしての意見を言わせて貰うわね。【テルクシノエ・ファミリア】には、有望な冒険者が現在二人在籍しているけど…団員が二人だけというのは物足りないわね。出来れば十人以上の団員を集めて、路地裏ではなくしっかりした建物に引っ越すべきね。固定収入も相当あるようだし」

 

 エイナは書類に目を落とした。リリはその『固定収入』を差すのが、【リーテイル】からの売り上げ利益であることが分かった。【ソーマ・ファミリア】の神酒の売り上げも、どうやら順調らしかった。副団長のチャンドラは、うまくやっているのだろう。

 

 そんなことを考えながら、リリはエイナの意見に口を挟む。

 

 「…有望な冒険者が一人、ですよ。エイナ様。勿論命様を団員に数えても良いのであれば二人です。リリは足手纏いですし、冒険者のうちには入りませんよ」

 

 「そんなことないわ。『13階層の災害』…もとい『未開拓領域』で、強化種を倒したという話が本当なら、足手纏いに数える訳にはいかないでしょ?」

 

 諭されたリリは呻き声を出しながらも、「それは確かに、そうですが…」と納得せざるを得ない様子だった。

 

 「ともかく、当面はファミリアの等級を上げることを目標に、頑張ってみましょう。それと、ハムザ君」

 

 半分眠りかけていたハムザは、エイナに名前を呼ばれてびくっと動いた。

 

 「な、なんだぁ?寝てないぞ、寝てない」

 

 「はぁ…。スキルについてなんだけどね」

 

 エイナは呆れながらも丁寧な口調で二人に説明を続ける。

 

 「分析の結果、ハムザ君は本当に性交を続けないと成長しないみたい。どれだけ怪物を倒して経験値を稼いでも、どれだけ対人戦で成果を残しても、能力値には全然反映されていないみたいなの。多分強化種を倒すより、より格上の冒険者と性交した方が、成長するみたいね」

 

 「…だから帰って来てからあまりステイタスが伸びていなかったのか。Lv.5くらいにはなっていると思ったが」

 

 レヴィスを捕らえ地上へ帰還する間に、色々な戦闘を経験した。かなりの成長が見込まれるだろうと期待をしていたが、実際のところ、ステイタスの伸びは今一つだった。その理由を説明されてみると、確かにそうだとハムザは納得する。

 

 アイズやレフィーヤといった強豪とのセクロスを経験した後、すぐにランクアップした。となれば、強くなるにはまたあの【ロキ・ファミリア】の美女達にお相手願わなければならないだろう。ついでに、ナァーザやアスフィといった中堅どころも忘れるべきではない。いっそのこと、関りのある女性達をもう一度片っ端から抱きまくるべきだ、とハムザは考える。

 

 リヴェリアとの約束もまだ果たせていない。あの我儘おっぱいを一日中好きにしてから何発も中出しをするべきだ。ついでにアマゾネスの子にも誘われていた。アマゾネス…そう言えばまだやっていなかった。先にどちらに手を出すべきか……。

 

 「…何やら良からぬ妄想をされているようですが、ハムザ様。あの人の調教はどうなんですか?魅了効果の検証も兼ねて捕まえている、あの怪人です」

 

 「んん??」

 

 レヴィス、レヴィス…ハムザは何かを忘れているような気がした。そう言えば昨日、一緒に酒場に行ってから……まずい、覚えていない。

 

 「…すまん…逃げたかも」

 

 「はあぁあぁぁぁぁ!?逃げたぁぁぁぁ!?」

 

 エイナは叫んだ。

 

 「…オラリオを破壊すると宣言している彼女を、みすみす逃がしたのですか?」リリの冷たい視線が胸に突き刺さる。だが、ハムザはあえて胸を張って二人に言う。ロイマンの慌てた顔が滑稽で、思わず吹き出しそうになるのを堪えながら。

 

 「待て待て、酒のせいであまり覚えていないだけだ。昨日あいつを外に連れ出して、メシを食いに行った。その後は…覚えていないが、多分また鎖に繋いだだろう。うん、そんな気がするという確信がある」

 

 大丈夫、多分牢屋に居るだろう…というハムザの言葉は説得力が皆無だった。リリは青い顔をしてハムザの手を引っ張り、無理矢理立ち上がらせてから二人に平謝りをする。

 

 「すみません、本当に…。何かの間違いだとは思うのですが。とにかく…逃がしていたら危険です。はやく牢屋を確認しに行きましょう。エイナ様、ロイマン様、後ほど報告に伺いますので、今はこれで失礼します」

 

 ●

 

 無数の打擲の音が響き渡る。

 

 【奴隷の間】では、主神アポロンが自ら鞭を取り、調教の進み具合を確認している最中だった。

 

 男神は蚯蚓腫れを作る少女の肌を指先でなぞる。怯えた声を上げ、涙を溜める少女。アポロンが恥部に触れると、そこは湿り気を帯びていた。

 

 「合格だ。まずまずといった具合だ。誰が躾けた?」

 

 ダフネが前に進み出た。

 

 「ダフネ、君か。悪くない仕事だ。継続するように」

 

 続いてアポロンは隣の少年に鞭を打つ。何度も何度も打たれた少年は涙を流すばかりで、徐々にアポロンは苛立ちを見せ始めた。

 

 「…なんだこれは。まるで駄目だ!おい、誰が躾けた!?」

 

 おずおずとカサンドラが前に出た。アポロンは不服そうな表情で彼女に伝えた。

 

 「…カサンドラ。お前はまた奴隷に情をかけたのだな!?」

 

 声を荒げて怒る主神を前にすっかり萎縮してしまったカサンドラは、震えながら首を縦に振った。

 

 「良いか、打たれて勃たない奴隷はいらん!お前の情けは、非情な情けだ。理解しているのか!?」

 

 アポロンが思いきり少年の腹部を蹴っ飛ばすと、少年はそれっきり動かなくなってしまった。

 

 「こんなもの!…すぐに売りに出せ。ヒュアキントスが新たな奴隷を仕入れ次第、お前には別のモノを授けるとしよう。次はもっと良く躾けるように。良いな!?」

 

 「…は、はいぃ~っ…」

 

 アポロンの厳しい確認は次から次へと続いていく。いつもに増して怒りに満ちている主神に対し、ほとんどの団員は恐れをなしてしまっていた。

 

 ようやく主神が遠くの奴隷を確認するようになってから、カサンドラとダフネは二人でひそひそ話をして時間を潰す。

 

 「どうしてアポロン様は売りを急いでいるのかなぁ…」

 

 「そりゃあんたね、【テルクシノエ・ファミリア】との抗争を控えているからだと思うわよ。あの【ロキ・ファミリア】との繋がりも噂される新興派閥よ。お金を作って、最善の策を打ちたいからだと思う」

 

 「う~ん。じゃあ、どうしてあんなに怒ってるのかな……」

 

 「それは…トゥリウス様の死のせいよ。その原因も、【テルクシノエ・ファミリア】にあるって言うじゃない?やりきれないのよ、あの方も」

 

 「そっかぁ~。でも……少し時間があれば、奴隷君を調教出来たと思うんだけどなぁ~」

 

 ダフネは信じられないと首を振る。

 

 「私には一年あっても無理だと思うけど。まぁ、次は頑張りなよ。男より女の方が気が楽だから、交換してあげてもいいわよ」

 

 「うん……優しいね、ダフネちゃん……」

 

 カサンドラがアポロンに目を向けると、丁度男神は少女の膣に男根を挿入している所だった。鞭で尻を打ち、背中を打つ度に少女は快楽の叫び声を挙げる。どうやら向こうの調教はうまくいっているらしい。そして、カサンドラは溜息を吐く。

 

 「…こんなこと、本当はやりたくないんだけどなぁ……」

 

 

 

 「う~~~~ん……」

 

 レフィーヤは机に突っ伏して、魔法書に顔を埋めていた。

 

 それからバタバタと両手足を動かしてから、急に立ち上がって叫んだ。

 

 「…生のアレが欲しいっ!」

 

 魔法書の脇には、ハムザから手渡された男根を模した張型が転がっている。その叫びに、ベッドの上で寝ころんでいたアキが応えた。

 

 「そりゃあ、誰だって欲しいわよ」

 

 毎日毎日この張型で欲求を解消していたレフィーヤだったが、さすがに同部屋のアキにはバレてしまった。だが、優しい相部屋人はその行為に理解を示し、実は自分も二つ持っていたと引き出しから張方を引っ張りだして見せてあげたのだった。

 

 それからというもの、二人の仲は深まった。お互い秘密を打ち明け合ったことで、以前よりも距離が縮まったのだ。

 

 「レフィーヤから誘ってみれば?だって、考えてみなさいよ。私が男だったら、こんな可愛いエルフちゃんから夜のお誘いを受けたら、絶対に受けるわ」

 

 レフィーヤは涙声になりながら、それが出来れば苦労はしないと言う。アキはやれやれと肩を竦めた。

 

 すると駆ける足音が聞こえてきた。どたどたと音を立てて、一直線に部屋へと向かってくる。慌ててレフィーヤは張型を引き出しに隠した。

 

 「レフィーヤ~!今日も来たよ~!」

 

 バーン、と大きな音を立てて現れたその人物は、ティオナだった。極めて露出度の高い服を着て、ショートカットの黒い髪の毛の上に可愛らしいリボンが乗っかっている。

 

 いつものガサツな雰囲気は消え去り、ティオナはすっかりめかし込んだ少女のような風貌で笑顔を振りまいていた。

 

 「…ティオナさん、今日も可愛いですぅ~」

 

 もじもじしながら、レフィーヤは変貌を遂げた少女を素直に褒める。嬉しそうな反応を見せたティオナは、窓にぴったりと額をくっつけて動かなくなった。

 

 「まだかなまだかなぁ~」

 

 『あはは……』

 

 ここ数日続いているいつもの光景に、思わず二人は視線を交わし合う。

 

 ティオナはハムザに愛を打ち明けた。そしてハムザはそれを受け入れた。もちろんティオナ本人の中ではの話だ。それ以来毎日身だしなみを整え、リヴェリアに頼み込んで可愛く髪をカットもしてもらい、リボンやら髪留めやら、何かしらの可愛い物を身に着けて、ハムザを待ち続けているのだった。

 

 この部屋は窓が大きく、大通りが良く見えるのだと言う。ハムザが来るとしたら間違いなくこの方向と言い張って、ティオナはレフィーヤ達の部屋を訪ねてはハムザの来訪を心待ちにし続けていた。

 

 すっかり少女になってしまったティオナを羨ましくも思いながら、突然現れたライバルにどんな声を掛けていいやら分からないレフィーヤは、ただ「あはは…」と空笑いを続けるのだった。

 

 「ねぇ、レフィーヤも、ハムザとセックスしたんでしょー?」

 

 「うっっっっ!?」

 

 突然とんでもないことを聞いてくるティオナに、レフィーヤは冷や汗をかく。

 

 「アイズが言ってたよ。秘密なんだってねー。いいなぁー、アタシも秘密が欲しい!二人だけの秘密が欲しいなぁ~」

 

 「…バレてる時点で二人だけの秘密じゃないわよね」

 

 冷静に突っ込むアキを余所に、ティオナは満面の笑みを崩さずじっと窓の外を見つめ続けていた。

 

 ●

 

 その時、ハムザとリリは言葉を失っていた。

 

 ギルド地下、旧牢獄にて、レヴィスは完全に姿を消してしまっていたのだ。

 

 蛻の空となった牢屋の中で、ハムザとリリは行ったり来たりしながら対策を考えていた。

 

 「…不味い状況ですね。もしかしたら既に迷宮へ戻ってしまったか…いや、あまりに楽観的過ぎますか。状況としては、いつ破壊活動が始まってもおかしくありません」

 

 「うぅむ…ヤバいな。でも、一度逃げてしまったらもう見つからないだろう。考えても無駄かも知れん、忘れよう」

 

 と、ハムザが諦めたその時、通路の暗闇の奥で誰かの声がした。

 

 「……ハムザか?」

 

 こつこつと足音を鳴らしてやって来たのは、レヴィスだった。

 

 「あ、あれ…?逃げたのではなかったのですか?」

 

 リリは驚いた。以前のような危険な雰囲気が消え去り、レヴィスの表情は落ち着いていて、幾分か穏やかにさえ見えた。

 

 「お前は昨日の事を覚えていないのか?」

 

 問いかけられても曖昧な返事しかしないハムザに、レヴィスは呆れたような口調で昨夜の出来事を説明していった。

 

 「『混沌亭』で、お前に出されたのは辛い酒だけだった。それから酒を飲み過ぎたお前の言動はあまりにも支離滅裂で、急にあの料理人に喧嘩を売った」

 

 「そ、そういえばそうかもな……」

 

 リリの白い目が突き刺さる。レヴィスは何食わぬ顔で牢屋に入って来てから、床に腰を落とした。

 

 「お前は料理人を殴り飛ばしてから、外へ出ろと私に命令した。それから裏通りの人間を片っ端から蹴っ飛ばして、大通りに出ようとした。その時、私がお前を止めた」

 

 「止めた…ですか?」リリの訝しむような言葉遣いに、レヴィスは勘違いするなと返す。

 

 「目立ちたくはない。敵の陣の中央で騒ぎを起こせば、【ロキ・ファミリア】がやって来る。今日一日街を歩いていたが、確かに奴らは目を光らせている。特に迷宮への入り口にはな」

 

 ハムザとリリは何となく【ロキ・ファミリア】がこちらを観察していることは理解していたが、まさかバレてしまったのだろうか?【怪人】が脱走したと気がついたら、奴らが襲ってくるのも時間の問題だ。不安になる二人をよそに、レヴィスは昨晩の出来事を再び話し始めた。

 

 「お前は怒った。それから『もう知らん』と言って、私を牢屋に連れて行った。それから『体調が悪い』と言って、私に鍵を寄こしたな」

 

 「……そうだった、かな?」

 

 そんなことは全く覚えていなかったハムザは、昨晩の自分の行動を知って驚かされていた。

 

 「鍵を寄こしたお前はこう言った。『お前は奴隷だ。だが、自由を与える。この鍵で好きなように行動して良い。俺はもう帰る』とな。私は耳を疑ったぞ」

 

 「げぇ…」

 

 「……僥倖だ、と私は感謝したさ。だが、同時に惨めな姿のお前を殺す気も失せていた。それから寝ずに街を歩き回り、【ロキ・ファミリア】の動きを探っていた」

 

 「それで…今後はどうするおつもりですか?」リリは探る様にレヴィスに問う。

 

 「どうもしないさ、今動くのは得策じゃない。ハムザ、お前はクノッソスの鍵を持ってこい。それと引き換えに、茶番に付き合ってやる」

 

 「茶番……?」

 

 レヴィスは鋭い眼を光らせる。その迫力にリリは思わず息を飲んだ。だが、発現は随分奇妙だった。

 

 「…調教ごっこさ。お前の欲望を私が受け止めてやる。その代わりに、お前は鍵を持って来い」

 

 「そんなんで良いのか……?」だが、レヴィスは不敵に笑った。

 

 「先程お前の主神が訪ねて来てな。テルクシノエ、と言ったか。スキルについて話してくれたぞ。実に興味深い。お前のスキルが強化種の私にも作用するのであれば、お前は貴重な駒だ。飼いならす理由は十分にある」

 

 「…あの馬鹿、余計なことを…。いや、まぁいいか。お前がその気なら、レヴィス。俺には案がある。明日から本気を出すぞ。もう行くぞリリ。命と神様が腹を空かせて待ってるからな」

 

 背を向けるハムザにリリは付き従った。だが、後ろ髪を引かれるようにレヴィスを振り返る。本当にこの危険人物を放置して良いのだろうかと、リリはどうしても不安を拭い去ることが出来なかった。

 

  

 

 本拠へ帰った二人を、羊皮紙を持った命が出迎えた。

 

 「ちょっと…お二人とも、これを見て下さい。ソネットを書いてみたのですが…その、うまくできているかどうか」

 

 ハムザは羊皮紙を読んだ。

 

 

 

 『貴方は雨が好きだと言う それでも貴方は傘を差す

 

 貴方は太陽が好きだと言う それでも貴方は日陰を探す

 

 貴方は風が好きだと言う それでも貴方は窓を閉める

 

 だから、貴方が私を好きだと言った時 私は不安に思うのです』

 

 

 「ど、どうでしょうか……?タケミカヅチ様を想っていたら…この詩が浮かんだのですが」

 

 おずおずと上目遣いで反応を伺う命に、ハムザは厳しい評価を下した。

 

 「…技巧的すぎる!意味が分からない」

 

 「意味なら分かりますが」

 

 だが、ハムザはリリの言葉に聞く耳は持たず、ペンをインクに浸して何やら新しい詩を書き始めた。それは数十秒のうちに出来上がった。これを渡せば大丈夫、とハムザは命に手渡してやる。それを読んだ二人は青ざめた。

 

 「リリには…理解できませんが」

 

 「私にも…これはちょっと…」

 

 だが、ハムザは頑としてそれを主神に見せるように伝えた。それから命はその詩を写生し、ハムザは自分の書いた原文を火で燃やしてしまった。

 

 「手伝ったことは秘密だぞ。あいつは馬鹿だからバレやしないだろうが」

 

 「誰が馬鹿じゃ?」

 

 主神がテントに入って来た。夕食の食材を抱えている。と言っても、あるのは肉ばかりだが。

 

 「おう、命が詩を書いたぞ。ほれ、見てみろ」

 

 テルクシノエは荷物を置いて、羊皮紙を食い入るように読み始めた。

 

 

 『私は雨が好きだと言う それでも私は傘を差す

 

 貴方は太陽が好きだと言う それでも貴方は日陰を探す

 

 私は風が好きだと言う それでも私は窓を閉める

 

 貴方は私を好きだと言う それでも今晩のオカズを探す

 

 だから、貴方のしている事は とっても正しいのです』

 

 

 テルクシノエは羊皮紙がくしゃくしゃになりそうな程強く握り、わなわなと震えてから叫んだ。

 

 「凄い!なんて才能じゃ!採用、採用~!!」

 

 嬉しそうに詩を掲げて飛び回る女神に対し、命は完全に言葉を失っていた。

 

 (危なかった…真面目にやっていたら、きっと落とされていたのでは!?)

 

 ともかく、額縁の中に新たなコレクションが加えられたことで、主神は大満足の様子だった。それから四人は夕食の調理に取り掛かる。

 

 歓楽街の裏通りには、愉快な声が跳ねるように響き続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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