ダンジョンに性交を求める眷属の物語 作:kuracjaponski
【アポロン・ファミリア】、【玉座の間】にて。
玉座に座す輝く男神のアポロンは、足を組み、顎に手を添えながら、眼前の盤面を見つめていた。
【玉座の間】の高窓は、ちょうど光が玉座に射すように設計されており、午後の陽光を一身に浴びるアポロンは、まさしく威厳と神々しさに溢れた神そのものの姿で遊戯に興じている。
対面しているのは、団長ヒュアキントス。こちらの美青年もまた神の従者として恥じない美貌を備えており、赤絨毯に沿って整列している団員達は、皆二人の姿を惚れ惚れしながら眺めていた。
「その手があったか、なかなかの着眼点だ」
ヒュアキントスの一手に長考の姿勢を取るアポロン。すると、【玉座の間】の大扉が開かれ、美しいエルフの男性が一礼の後に玉座へ歩み寄る。
「ご遊戯中申し訳ございません。かの派閥に動きがございました」
「仔細に述べよ」明瞭な声が響く。
「歓楽街の本拠の火事の後、【テルクシノエ・ファミリア】はギルドへ退避致しました。それからハムザ・スムルトと小人族のサポーターがオッティー・スタンコ邸を訪ね、旧大聖堂に向かいました」
微動だにせず、輝くアポロンは長考する。象牙の駒を動かして一手指した後、美しい顔を上げて従者達を見回した。
「ギルド籠城は読み筋の一つだ。だが何故、奴らは老魔術師の館を訪ねたのだ?そして何故、旧大聖堂に赴いたのだ?」
質問をぶつけられたエルフの男は、少しだけ顔を引きつらせながら意見を述べる。
「それは…報酬を期待しての事でしょう。報奨金こそ少ないものの、かの老魔術師の財産は莫大です。我が栄光のアポロン・ファミリアへの応戦を考えているならば…資金は必要でしょうから。旧大聖堂につきましては、私にはその…分かりかねます」
「新本拠の下見だろう」
ヒュアキントスは被せるように言った。
「奴らが旧大聖堂を訪れたのは、新しい本拠を探しているからだ。あそこは我らの館と目と鼻の先、戦を想定しているからこそ、あの場所を新たな本拠に選んだのだ」
新たな一手をヒュアキントスは確かな手つきで進めた。アポロンは片手を上げ、エルフの男に指示を出す。
「ご苦労、リッソス。列に加わり、私を眺める事を許す」
それから静かな口調でアポロンは続けた。
「私の見解はな、リッソス。お前とは少し異なる。奴らには潤沢な資金がある。老魔術師を訪ねたのは、
「見事な洞察です、太陽神様」ヒュアキントスは頭を下げて神に敬意を払う。
「そこで、だ。聡明なるヒュアキントスよ。奴らが一つ魔法を発現させたとして、それは驚異になり得るか?」
「答えはいいえでしょう。こちらの戦力は数百規模、対して奴らは数名です。個々の能力もこちらにはLv.3が一名、Lv.2が十数名。奴らはLv.2が二名いるだけ、しかも先日器を昇華させたばかりの新人です」
「その通り」輝く目を動かしながら局面を精査していたアポロンは一手を決め、駒を動かした。
「この戦力差を埋めるには、策が必要だ。私がテルクシノエならば、奇手を用意する事だろう。良いかお前達、決して侮るな。引き続き他派閥から情報を得よ。いくら払っても良い。装備を新調したい者も、これを機に考えるのだ。出費は惜しまん、幾らでも使って良い」
列を為す団員達は声を上げて喜んだ。アポロンの気前の良い決断に、皆が相好を崩して新しい武具について考え始めているようだった。
だが、その弛緩した空気をアポロンが引き締める。
「浮かれるな、美しき者達よ。情報が正しければ、奴らは【ヘファイストス・ファミリア】の武具を用意している。しかも、神ヘファイストス直々に製作しているようだ。それが本当であれば、武具性能で引けを取らないのは『太陽の
団員達はざわめいた。ヒュアキントスは口端を緩め、腰に差した
「ヒュアキントスの考察は正しい。戦力差ならばある。だが、奴らに金がついて回っているうちは侮れん。気を付けなければならん、奇策に嵌る事だけはな」
乱れていた列が、その一言で整然となった。アポロンは額に皺を寄せ、再び盤上に目を落とした。ヒュアキントスの手が、先程アポロンが指した駒に伸び、それを取った。
「食らいついたな。五手後にチェックメイトだ」
すかさず次の一手を指すアポロン。ヒュアキントスはしまったと額に手を当て、わざとらしく空を仰いだ。
「まさかあの手が罠だとは!見事に毒蝮を喰らってしまったという訳ですか…」
上機嫌なアポロンは姿勢を崩し、愉快そうに笑い声を響かせる。
「これが策だ、ヒュアキントス!策があれば小軍をもって大軍を制す事が出来る!だからこそ、気をつけねばならん」
高らかに声を上げ、アポロンは二人の名を呼んだ。
「ダフネ!カサンドラ!」
列から二人の少女が進み出る。おっとりとした表情のヒューマンのカサンドラと、同じくヒューマンで壮麗な空気を纏うダフネが神の前で礼をした。
「お前達二人に任務を与える。テルクシノエ一派を見張り続けろ。そして逐一報告をするのだ」
「分かりました、アポロンさまぁ~」
「かしこまりました、我が神」
対照的な返答を送り、二人は【玉座の間】を出た。大扉が閉まる大きな音の後に、二人は同時にため息を吐き、呆れたように顔を見合わせた。
「はぁ、調教の次は諜報…ってね。まったく、ここのファミリアに来てから嫌なことばかりやらされるわ」
本当にそうだ、とカサンドラはぶんぶん頭を縦に振る。それからおずおずと『予知夢』について言及した。
「…でも、もし未来が予言の通りになるとしたら……何だっけなぁ。『太陽は堕ちねばならぬ』…それと『二羽の籠の鳥の飛翔は叶わん』…って、どういう意味だと思う?ダフネちゃん」
「そうねぇ」ダフネは豪華な絨毯の上を歩きながら、わざとらしく考える素振りをしてみせる。
「【アポロン・ファミリア】が戦争に敗けて、アポロン様が天界に送還されて、私達二人が解放されるってことじゃない?」
最後に一言、ダフネは付け加えた。
「まっ、ある訳ないけどね、そんなこと」
それから足取りを早め、真っ青な空を誇る街へ繋がる前庭に飛び出した。
「さぁ、さっさと行きましょう。テルクシノエ一派はギルドだから、ギルドの出口を見張りましょうかね」
●
「人生は演劇じゃ」
時を同じくして、地下牢に移動した【テルクシノエ・ファミリア】は、椅子に立ち演説をする主神の言葉に耳を傾けていた。…と、言うよりも、無理矢理聞かされていた。
「この世界を舞台に、お前達には何らかの役割が与えられる。平凡な村人、富んだ貴族、優れた冒険者。だが、生まれた時からその役職を持つ人間はいない。皆、いつの日にか決断をするのだ。『私はこの役目を演じよう』と」
女神の声は静かで、落ち着いている。テルクシノエは最初にハムザを見た。それからリリ、そして命。最後に隣でこちらを睨んでいるレヴィス。
「お前達は今まで、誰を演じていた?何に怒り、何に笑い、何を目指して生きる人物を演じていた?…いや、答えなくても良いのじゃ。今日、私は主神としてお前達に命じる。復讐に燃える悪魔になれ。今までの役割を捨て、ただ私の無念を晴らす事だけを考える、悪鬼の皮を被るのじゃ」
ハムザが手を挙げた。
「質問。その復讐の鬼の着ぐるみっていうのは、どこに落っこちてるんだ?」
「ふざけるでない。私は大真面目じゃ。のらりくらりとした生活は、もうお終いだ。あの阿呆のポエブスの首を取るまではな」
主神は満足気に全員を見回した。それからわなわなと体を痙攣させ、怒りに震えた声で両手を突き上げた。
「…ポエブスめ、ポエブスめ。私の宝物を…許されんぞ、こんなことは……」
テルクシノエの分かり辛い演説が皆の心に響く…ということはなかった。それでも、主神の悲しみを感じ取った団員達は皆、アポロン一派へのリベンジに燃えていた。本拠が黒煙に包まれたその時から、復讐心はしっかり皆の心に根付いていたので、テルクシノエが今言ったことには『何をいまさら…』としか思えない。それでも、主神が復讐を誓ったことで、改めて【アポロン・ファミリア】との戦争が避けて通れる道ではないということが確認できたので、ハムザは満足だった。
「俺達はもうとっくに復讐の鬼になってしまっているぜ。ちょっと遅かったな、神様。その証拠がリリの魔法だ。俺はこれから会わなきゃならん連中がいる。そこのレヴィスにも、世間というものを教えてやらなきゃいけないしな」
レヴィスはじろっとハムザを見つめた。どうせ鍵のことやら【ロキ・ファミリア】のことやらを考えているのだろう。【ロキ・ファミリア】が迷宮の入り口を見張り、レヴィスの帰路を絶っていることはかえって幸いだった。そのお陰で、この【怪人】はあまり牢屋を出ようとしないのだから。
「付いてくるのだ、じゃじゃ馬め」
冷笑を返すレヴィス。だが、体は言われた通りに動いていた。すっと立ち上がり、心底軽蔑したような冷たい目つきをしながらも、ハムザの背中を追いかけて行く。
二人が上階へ行ってしまってから、リリは命と顔を見合わせた。
「なんだかおかしな雰囲気ですねぇ、あのお二人は」
その通りだ、と命は相槌を打つ。
「…あのレヴィスという人物……。【ロキ・ファミリア】の話では大層な悪者と聞き及んでおりましたが……。何というか、少女っぽい所があるような…?」
「そうなんですよ、リリもそう思っておりました。あのわざとらしい蔑みの目つき…恋心を悟られまいとする少女のそれに似ているというか……う~ん」
主神が椅子から飛び降りて、二人に口を挟む。
「スキルの影響じゃ。魅了効果がしっかり作用しておるのじゃろう」
リリは肩を竦めてから牢屋の片隅に置かれていたバックパックを背負った。それを見た命も装備を拾い上げ、一つずつ装着していく。
「迷宮探索か、二人とも。私は一人になるのが、寂しい」
主神は顔を伏せ、憐れみを誘う口調で呟いた。だが、二人は仕方がないと彼女を説得する。
「復讐に燃える役目を演じているのですよ、リリだってお傍にいてあげたいです。でも、今は強くならなければいけませんから」
「その通りです、テルクシノエ様。自分はもっと強くなって、あの方の役に立つ刀になりたいのです」
「もちろん、分かっておる」
ちょっとした発言の過ちを隠すように手を上げ、テルクシノエは大人しく二人を見送ることにした。それから誰も居なくなってしまった牢屋の中で、テルクシノエは一人で泣き始めた。
額縁のかけらをその手に握りしめながら。
●
ハムザはレヴィスを連れてメイン・ストリートを歩き、まず御者を捕まえた。二頭の馬に引かれて街を北上していく。その間、二人は一言も発することはなかった。やがて目的の場所に着くと、御者は二人に降りるように言った。
「着きました。『青の薬舗』でがす」
馬車から下り、ハムザは御者にちっぽけな銅貨を投げて渡した。
「ご苦労。じゃあな」
「ま、待ってくだせぇ。足りないでがす、旦那様」
突然ハムザは沸騰した。
「何だと!?畜生め、お前らみたいな仕事にはこれでも多いくらいだ!ねじれっ鼻の、不細工じじいめ、お前は馬糞野郎だ、便所コオロギだ、側溝で暮らすドブネズミ野郎だ!金が欲しいってのか?冒険者様が命を賭けて稼いだ金が欲しいってのか?ならくれてやる、この下衆め、くたばりやがれ!」
あらん限りの罵声を浴びせてから、ハムザは銀貨一枚を御者に向かって投げつけた。あまりの剣幕にすっかり怯え切った御者は、銀貨を受け取らずにそのまま馬を走らせて逃げてしまった。
「…何をしている?」レヴィスはハムザの激昂の意味が解らず、不審な目つきで彼を見つめていた。
「あいつは私達をここまで運んだ。その対価を求めるのがそんなにおかしいか?」
ふん、とハムザは口を吊り上げる。
「もちろん、おかしいのだ。俺はあいつの仕事ぶりを一ヴァリスと評価した。だがあいつはその百倍も求めてきやがった。おかしいではないか」
それ以上、レヴィスは何も言わなかった。納得した様には見えなかったが、ハムザはさっさと先へ歩き、数軒先の『青の薬舗』の扉を思い切り開いた。
「ナァーザはいるか!」
びくっと肩を跳ねさせた犬人のナァーザが、レジ台の向こうから寝ぼけたような目でこちらに振り返った。
「いらっしゃ~い……」
頭の上に乗った茶色い垂れ耳を動かしながら、ナァーザはせっせと帳簿をつけている。大股で彼女まで近づいたハムザは、素早い動きで無理矢理彼女の唇を奪った。
「っ……!?」
突然起きた強引なキスに驚いて、ナァーザはハムザの頬を引っ叩こうと右手を振り上げた。だが、ハムザはその手を掴み取り、ナァーザを無理矢理椅子から引きはがし、両手に抱えてから彼女の体を床に落とした。
「きゃあっ…」
背中から床に落ちたナァーザは体を起こし、恨めしそうな目つきでハムザを睨んだ。しかし、その頃には既にハムザの下半身は何も身に着けていない状態となっており、彼女は赤面すると同時に目を伏せ、たどたどしい口調でズボンを履くように命令した。
もちろんハムザにはそんな命令を聞くつもりなど毛頭なく、股間を下品にぷらぷらと揺らしてみせてから、ナァーザのふわふわした毛並みの頭の上に置いた。その時、ただただ傍観しているだけだったレヴィスの口元に、はっきりとした嫌悪の色が滲んだ。
「お前は何をしている?何のためにここへ私を連れてきた?お遊びがしたいのなら、一人でしろ。お前の子供じみた遊びに付き合うほど、我々は暇ではない」
「我々はだと!?」
股間を揺らしながらレヴィスへ近づいて、ハムザは彼女の首を掴んで叫ぶ。
「お前は怪物だ!俺たち人間と一緒にするんじゃない。俺といるのが嫌ならどこへでも行ってしまえ。フィンやらアイズやらに捕まって、バラバラにされてしまえ。誰のお陰で生き延びていると思ってる!?よく覚えておけ、俺がお前の主人だ。俺の物だ!」
首に伸びた手を思い切り弾き、レヴィスは鎌首を上げる毒蛇の様に殺気を纏う。
「お前は勘違いをしている。私が生かしてやってるのはお前だけではない。お前のファミリアもだ。私がその気になったら、お前に親しい者を一人残らず殺し、怪物の餌にすることも出来る。何故私がそうしないのか、分かっているのか?」
「当然のことを言わせるな!お前はもう俺の物だ。お前の体、お前の考え、お前の将来は全部俺の物だ。いい加減気づいたらどうだ、俺について来い。そうすればお前の望みも叶えてやる。お前がオラリオをぶっ壊したいのなら、俺がぶっ壊してやる!」
床にへたり込んでいたナァーザが、「わぁ…」と小さく声を出す。ハムザのプロポーズにも似た発言に目を輝かせながら。レヴィスは顔をしかめ、何かを言おうと口を開き、閉じ、また口を開いてから閉じて、そのまま無言になってしまった。
「立場が分かったなら、そこで見ていろ」そう言ってからナァーザの体を抱えて起こし、服を脱がし始めた。ナァーザは嫌がる素振りを見せず、期待の籠もった熱い目つきでされるがままとなっていた。
ナァーザを四つん這いにして、濡れていない秘部にペニスをねじ込んだ。可憐な顔を苦痛に歪めるも、彼女はハムザを受け入れる。強く、早く腰を振り続け、ナァーザの尻尾を掴んで引っ張った。
「やぁ…ちょっと、ハムザ。強引すぎ……」
相手にまったくペースを合わせず、ただ自分の快感を得る為だけに腰を振っていく。だが、ナァーザの言葉とは裏腹に、秘部は確実に濡れ始めていた。深いストロークで思い切り奥まで突いて、ナァーザの柔らかい尻を叩く。ぱちん、という通った音が薬舗に響く。
「――このっ!――淫乱の!――犬めっ!」
ナァ―ザは喜びに溢れた声で「きゃん」と鳴いた。叩いた箇所が赤く腫れていく度、膣内は潤いに満ちていく。彼女のくびれた腰を両手で掴み、今までよりももっと激しく腰を振る。すると、次第に射精感が高まってきた。
「…よしっ、ご褒美だっ!どこに欲しいか言ってみろ」
「…いっぱい、中に…出して?」
再び形の良い尻を叩いてから、思い切り精液をナァ―ザに注いでいく。射精の深いストロークを重ねる度、彼女も体を震わせて絶頂していた。
「ふぅ……」
出したものが溢れる秘部からペニスを引き抜き、ハムザは傍で行為を見続けていたレヴィスを呼んだ。
「飯が食いたいと言ってたな。これが飯だ。舐めとれ」
「ふざけているのか?これは食事ではない」
「ふざけているのはお前だ!俺がそうだと言ったらそうなんだ!いいからさっさとしゃぶれ、レヴィス。俺が主人で、お前は奴隷だ。その綺麗な顔を汚すのも俺の自由、お前のうまそうな体を犯すのも俺の自由。分かったらさっさと舐めろ、分からず屋のこんこんちきめ」
無言のまま近づいてきたレヴィスは、ハムザの股間の前でひざまずき、きゅっと結んだ口元を開いてそれを口に含んだ。
無表情のまま眉一つ動かさずに舌を這わせていく。淫靡な行為と、彼女の扇情的な体つきも相まって、ハムザの股間は萎れるどころか硬さを取り戻した。それからレヴィスの口内を犯していく。
ナァーザは起き上がり、表に『閉店』の札を下げた。尻尾を振りながらレヴィスの横に座り込み、彼女もまた欲しがるように股間を咥え込む。
二人の美少女に愛撫され、思わず気の抜けた声が出る。レヴィスの舌使いはあまり積極的とは言えないが、そんなぎこちなさはかえって支配欲を満たしたし、ナァ―ザの積極的な奉仕もまた然りだった。気分が満たされたまま射精し、二人の美しい顔を汚すため、あらん限りの量を発射していく。
「ふふ……」
べっとりとした白濁液を指で絡め取りながら、ナァ―ザは怪しげな笑みを作る。レヴィスは嫌悪の色を浮かべながらも、凛々しい表情を崩さず精液を口に含んでいく。
「どうだ、今日の飯は美味いだろう」
レヴィスは首を振って答える。「お前は滅茶苦茶な男だな。まるで台風のような奴、こちらの手の届かない所で暴れまわる」
ズボンを履き直しながら、精液をすくい取っては舐め取っていくレヴィスに答える。
「俺が聞いたのは、美味いか不味いかだ。答えてみろ、あんぽんたん」
「……美味くはないな。だが、経験値にはなる」
「まぁいいか。ナァーザ、邪魔したな。行くぞじゃじゃ馬」
立ち去ろうとするハムザに、ナァーザは「待って」と声を掛ける。
「……私はハムザの、なに?」
答えづらい質問が飛んできたが。ハムザは即答した。
「俺が剣なら、お前は鞘だ。したくなったら訪ねて来るんだぞ、それと怪しい薬を作るのはやめろ」
「そっか…ふふ…ふふ」
ふらふらと立ち上がり、ナァーザは服を直してからレジに座った。レヴィスの顔にはまだ白い物が付いたままだったが、そのまま彼女の手を引き店外へと引っ張っていく。
背中で、ナァ―ザの声が聞こえてきた。
「また来てね〜…」
●
それから二人は食事を取るために店に入った。だが、ハムザは席に座って一分で立ち上がり、「飯が来るのが遅すぎる」だの「装飾が気に入らない」だの難癖を付け、罵声を浴びせてから外へ飛び出した。腹を空かせていたれヴィスは心底がっかりしたようで、再び訳も分からず沸騰するハムザを相手に、少々疲れを見せ始めていた。
今度は馬車を借りずに、ハムザはメイン・ストリートをどんどん進んでいく。きっとどこかで【ロキ・ファミリア】の監視役が目を光らせていると思うと、レヴィスは緊張を緩めることが出来なかった。もしここで『アリア』と出会うことになれば…命を捨ててでも殺さなければならない。だが、果たして今の状態で可能なのだろうか?今の自分は能力が落ちてしまっているし、単純に空腹のせいであまり力が湧いてこない。
食事をしたいとハムザに言っても、帰ってくるのは罵詈雑言の嵐だったので、レヴィスはすぐに諦めた。どこかから食べ物を盗むにも、こんな往来の多い道で騒ぎを起こせば、すぐに【ロキ・ファミリア】が飛んでくるだろう。結局レヴィスは何もすることが出来ず、ただハムザの背中を追い続けた。
するとハムザがすれ違う住人とぶつかった。大声で罵声を浴びせ、剣を引き抜いた。
「ぶっ殺すぞ!ゴキブリ野郎、俺の前を歩いていいのは俺の影だけだ!」
貧相な男は有名なLv.2の冒険者に喧嘩を売られてしまい、しわくちゃに顔を歪めて平身低頭平謝りを続ける。だが、ハムザの怒りは収まらない。
「軟弱な烏賊野郎め、穀潰しめ、税金泥棒め!誰のお陰でのうのうと生きてこられたと思ってる?冒険者様の死にもの狂いの迷宮探索のお陰で、マスターベーションが出来るってのが、分からんのか!?謝るつもりがあるのならお前の全財産を持ってこい、さもなくば今ここでぶっ殺してやるぞ、このゴミ虫、蛆虫、サナダムシ!」
次第に人だかりが出来ていく。レヴィスはフードの奥に出来るだけ顔を引っ込めながら、ハムザにこっそりと耳打ちをした。
「…目立ち過ぎだぞ。もう許してやれ」
「なんだと!」ハムザはレヴィスに食って掛かった。
「ご主人様に命令するだと!?お前はそれでも俺の奴隷か、言ってみろ!俺が悪いのか、こいつが悪いのか」
言葉が思わず口の端から出掛かったが、すんでの所でそれを飲み込み、レヴィスはゆっくりと口を動かした。
「そいつが悪いな。それは当然だ。だが…それ以上は可哀想だろう。引き下がれ」
ふん、と大きく鼻を鳴らしてから、ハムザは男に背を向けた。
「雑魚が命拾いをしたな。次はないと思え」
再び大股で広い街道を突き進むハムザを追いかけながら、レヴィスは先程の言葉を振り返り、自問自答する。
(――この私が、あんな男に『可哀想』だと?憐れんだと言うのか?いや…そんな筈はない。オラリオへの復讐、『アリア』の抹殺…私の願いは、一寸たりともブレはしない)
●
続いて二人はギルドに足を運ぶ。受付で忙しそうに書類と格闘しているエイナを無理やり呼び出し、人通りのない暗い階段の踊り場で、彼女を犯した。されるがままに膣内に射精され、ハーフエルフ特有の端正で柔和な顔を汚された。だが、そんなハムザの積極性はむしろエイナを喜ばせたらしく、「こういうプレイも、嫌いじゃないわよ」と前置きをしてから、彼女は去り際に呟いた。
「【アポロン・ファミリア】はどうもきな臭いのよねぇ。つついたら、他にも色々出てきそう。今、その調査で忙しいの。あまり邪魔はしないでね?悪くはなかったけど」
ギルドを出て【ヘファイストス・ファミリア】の工房群へ向かう途中、空が夕焼けで染まっていった。レヴィスは思わず空の美しさに感嘆を漏らすが、その小さな吐息は冷たい風に乗って消えていく。一際目立つ工房に辿り着くと、入り口の前で女神ヘファイストスと団長の椿が何やら言い合っていた。
「まったく、だから出費は抑えろと手前は忠告したんだ。あんな若造達に打つ武具に、どうして大金を注ぎ込んだのだ?」
二人の足音が聞こえた途端、ヘファイストスは「あら」と相好を崩す。代わりに椿は額に手を当て、呆れたように溜め息を吐いた。
「ようやく来たのね、待ちくたびれたわ。さぁ、入って。素晴らしい装備が出来たわよ。もっとも椿は気に入らないみたいだけどね」
「当然だ。主神様が下手にやる気を出したせいで、ファミリアの無駄な出費が増えた。部下達が汗を流して作ったお金を自己満足に使ったものだから…手前にはどう彼らに弁明したらいいか、何も言葉が思いつかない」
和風の装備に身を包み、黄昏れた目つきで夕日を眺める椿の姿からは、言いようのない哀愁が漂う。彼女をその場に残し、二人は工房の中に入った。
「これよ、どうかしら?」
高級な絹に包まれたそれぞれの装備は、見ただけで見事な出来栄えだと分かった。ヘファイストスはまず『魔猿の防皮』で出来たローブを手にとって、広げて見せた。
「素材が持っていた能力を上昇させるために、迷宮産の
満面の笑みで鍛冶の神は説明を続ける。
「少しだけど、襟元の素材にはオリハルコンを使ったわ。九割の灰色と、一割の赤。綺麗でしょ?デザインのイメージはあの小人族ちゃんにぴったりの、灰と炎よ。軽いだけじゃなく、一定ダメージ以下無効と、呪詛耐性、異常耐性が付与されるているわ」
「…名付けて『
「20点だな。その刀はどんな具合だ?」
ヘファイストスは思わぬ返答に顔を引きつらせたが、200点の聞き間違いかも知れないと思ったらしく再び笑みを作り、絹布に包まれた刀を披露した。
「これは凄いわよ?『悪夢の冷爪』を加工するのは、かなり難しかったの。強烈な冷気を秘めているせいで、火にくべても全然変質しないんだもの。だから、暗闇に溶ける性質を利用して引き伸ばしていったわ。強い魔力を含んでいたから、他の素材をミスリルにして魔力伝導率を最大限まで高めたわ。黒い刀身に刃紋は数珠刃、鞘の素材は全部オリハルコン」
再び「どう?」と笑みを向ける女神だが、ハムザはあまり内容が理解出来なかったので、無言のまま近くの椅子に腰掛けた。
「説明が長すぎる。簡潔でいい」
あらそう、と言ってからヘファイストスは一度レヴィスに目を向けたが、すぐに説明を続けた。
「端的に言えば完璧なバランス、鋭い切れ味。暗闇で変質する能力に形状記憶能力を併せ持つから、研ぎ知らず。刃こぼれしたら鞘に収めること。そうすればすぐに切れ味が元通りになるわ。でもデメリットがあってね、無限の切れ味を維持するには使用者の魔力を吸い続けるから…使い続ける場合は注意が必要ね。名付けて、『死霊剣』」
「30点だな。それで俺の武器はどうだ?」
やはり低い点数を与えられたのだと知ってショックを受けたヘファイストスはよろめいた。それから顔を口元をひくひくと痙攣させながら最後の武器を手に取った。
「『宝剣アルマス』ね。これはまぁ…二つの素材を合わせて宝石を散りばめただけなんだけど…。冷爪をあえて柔らかい状態で固定するために、防皮の繊維だけを取り出して二つを組み合わせてみたの。防皮の絶対防御と冷爪の魔力が重なりあって、超高品質な冷気属性の剣になったわ」
ヘファイストスはハムザの反応を伺いながら、更に説明を加えていく。
「鎧の方も手を加えて改良しておいたけど…えっと、うん。そうだった。元々呪詛の使用者しか着れない性能だったみたいでね、あの鎧は。呪詛持ちの特殊な魔力にだけ反応して、能力を発揮するのよ。だから、その効果を高めて、傷を直して…。防御力、耐久力、対異常、対呪詛、ついでに対魔法。全部の数値をひと桁くらい上げておいたわ」
「それと新しい剣も、呪詛の魔力に呼応するようにしてあるから、貴方以外の誰かが持っても、ただのぬるぬるした剣にしかならない」
そう言ってからヘファイストスはハムザに剣を手渡した。暗闇のような刀身がゆらゆらと動いていて、近づくだけでもその冷気を感じることが出来る。手に持ってみると素晴らしいバランスで、柄がよく手に馴染んだ。一度振ってみると、黒い影が残像となって空気を凍らせた。霜がぱらぱらと地面に落ちる。今まで見たこともない、本当に素晴らしい武器だった。
鞘に剣を収め、それを腰に佩いた。もう二つの武具を女神から受け取って、捨て台詞を残す。
「出来栄えは最悪だが、仕方がないので使ってやろう」
「そ、そんな…。非道いじゃないの。私は一週間も寝ずに頑張ったのよ?」
「関係あるか。偉大な作品は全て不眠不休の労苦が払われて当然だ。まぁ、悔しかったら次は俺が満足する武器を打ってみろ。鍛冶の神が、聞いて呆れるぜ。良い物を提供できなかったお詫びに…そうだな。おっぱいを揉ませろ」
「えっ…」
意味がわからないと固まるヘファイストに素早く接近し、ハムザは女神の胸を揉んだ。形の良さが服の上からでもよく分かった。そのボリュームもかなりのもので、人間にはない素晴らしい揉み心地は、まさに神がかっている。いつまでも触っていたいと思える胸だ。
「ちょっと…なによ。あんっ」
まんざらでもない表情で受け入れていたヘファイストスだったが、急に何かを思い出したように手を振り払い、張り手を食らわせようとした。
その張り手をさっと避け、くるりと背を向けてレヴィスに合図してから二人は既に暗くなった外へ出た。
「もう…何よ。変な子ね」
取り残されたヘファイストスは一人で溜め息を吐き、ドキドキと高鳴る鼓動を静めるよう、胸に手を当てて呼吸を整えようと努めた。
「私が手塩に掛けて育てた強化種の武器…これ以上素晴らしい武器はない筈だが」
帰路を歩きながら、レヴィスは後ろからハムザにそう言った。だが、相変わらず帰ってくる言葉はいつもの調子だ。
「お前は何も分かっていないな?俺が悪いと言ったら悪いのだ。見ろ、あれは太陽だ。夜なのに太陽、だが何もおかしいことはない」
「気でも狂ったか?」
「俺がそうだと言えば、月も太陽になる。わかったか」
「私が分かったのは、他の人間はまともで、お前だけがずっとふざけているという事だけだ。おふざけで迷惑を掛けるお前は、無目的という点では私よりも悪質だ。私も人を殺す。だが、ちゃんと意味がある。私にもちゃんと節操はあるが、お前にはそれがない。全てが気まぐれのおふざけだ。それが気に入らん」
「俺だけがふざけていると言うのなら、この世は気違いだらけだ。唯一まともなのは俺くらい、残りは阿呆と馬鹿で溢れていることになる。お前がそのことを理解出来るように、しっかり面倒を見てやるとしよう。それまでは寝ない、食べない、休まない。お前が理解するまで、ずっとな」
●
それから数日の間、ずっとハムザはレヴィスを連れ回しては人々に非道い仕打ちを重ね続けた。料理人が運んできた豪華な料理を机ごとひっくり返すのは毎度のこと、薬屋でポーションを叩き割り、武器屋で剣を折り、レヴィスが休もうと横になった傍から叩き起こし、無目的に街を歩き続けた。
その間【テルクシノエ・ファミリア】はギルド地下の牢屋を離れ、オッティー・スタンコが授けた図書館へと居を移した。リリと命は二人で迷宮に行っては武具の性能を確認し続け、またテルクシノエは神会への出席を拒み続け、大聖堂の地下図書館から一歩も外には出なかった。
アポロンが神会でテルクシノエの代理を務めるロキに対し戦争遊戯を申し込んだが、却下されたという噂がハムザの耳に入り込んできていたが、ファミリアのメンバーは誰もそれを気にはしなかった。こちらが準備しているのは遊戯などではなく、本当の戦争だからだ。
また、テルクシノエ一派の取り巻きも行動を開始していた。
【タケミカヅチ・ファミリア】は、旧大聖堂の入り口を自主的に見張り始めたし、【ミアハ・ファミリア】のナァーザもこちらに一時的に拠点を移し、そこで掃除を始めていた。
ある夜、レヴィスを連れ回して戻ってきたハムザは、地下図書館の一角で小さくなっているテルクシノエを見つけ、声を掛けてやった。
「万事順調だ、神様。元気出せよ、それからステイタスの更新も頼む」
仕方がないと顔を上げた女神の目元には、はっきりとクマが出来ていた。昨晩も泣きはらして過ごしたに違いない。この女神の額縁に対する執着心は、想像を絶する程のものだったらしい。
羊皮紙に共通語へと訳されたステイタスを写し、テルクシノエはさっさと机の下に潜り込んだ。絨毯の上に寝転んで布団を被る。随分と奇妙な場所に寝床を構えたものだ。
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ハムザ・スムルト
Lv.2 力:【F】378 耐久:【G】289 器用:【G】230 敏捷:【G】208 魔力:【G】277
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「あまり伸びてないなぁ」
自身のステイタスシートをしげしげと眺めながら、ハムザは長机に腰掛けた。年季の入った机には、染みやら傷跡やらが付いている。羊皮紙を置き、破かないように注意深く羽ペンで文字を書き入れ、力の数値を『1378』にしてみたが、虚しくなるだけだったのですぐに止めた。
やはり高レベルの美女を狙うしかないらしい。だが、リヴェリアは難しい。レヴィスを引き連れて【ロキ・ファミリア】の本拠に行くのは自殺行為だし、レヴィスを置いていくのは気が引ける。現在じゃじゃ馬慣らしの真っ最中なため、完遂するまではこの仕事を放り出したくなかったからだ。リヴェリアが難しいとなれば、残るはアスフィか。