ダンジョンに性交を求める眷属の物語 作:kuracjaponski
レヴィスは地下書庫の隅に拵えた簡易的な魔石製調理器具の前に立ち、鍋に火をかけた。
卵を一つ取り、それを奇妙な目で見つめてから割って鍋に落とす。じゅわっと音を立てる鍋に蓋を落とし、じっと数分待った。それから出来上がった料理を慣れない手付きで皿へ移し、長卓に座るハムザの所まで持っていった。
「こんなものでいいか」
昨晩リリに習ったのは目玉焼きだった。初心者に教える簡単な料理として選んだ目玉焼きだったが、形にはなっているようだ。レヴィスは開き直ったような態度で、『笑いたければ笑えばいい』と言いたそうな表情で腕を組んだ。
ハムザはそれを口にした。そして、箸を置く。その様子を見たレヴィスの目に影が差す。
「口に合わなかったか。捨ててこよう」
皿を奪い取ろうとする彼女の手を払ってハムザは言った。
「塩を忘れてる、塩を。それがあれば問題ないぞ、まぁ、不味からず美味からずだ」
「美味くないのなら食べる必要はない」
重ねるように言ったレヴィスの言葉を無視して、ハムザは塩を振った。それから一気に目玉焼きを平らげた。そんな彼の行動を、レヴィスは不思議な顔つきで眺めていた。
「それより、ここに置いてあったチョコレート、半分食ったやつは誰だ?」ハムザは全員を見渡すように首を回した。まず、リリが首を振った。それからテルクシノエも首を振った。
「命かな?」
しかし、リリはそれを否定する。
「命様はしばらくここには来ておりません。ずっと階上を掃除していますから」
「じゃあ、残るは……」ゆっくりと視線をレヴィスに移し、ハムザは首を傾げて言った。
「賢いネズミが居るなぁ」
リリはぷっと吹き出した。レヴィスも口元を緩め、ハムザに合わせるように言う。
「全くだ。ご丁寧に中身を箱に戻し、元の場所に置いておくなど、確かに賢いネズミが居るようだな」
「お前だろう。腹が減ってるならそう言えよ、まぁチョコレートくらい、気にもしないがな」
「腹ならずっと減っている。私の身体は燃費が悪くてな…いくら食べても膨れない」
「どれくらい食べるものなんですか?」リリが聞いた。
「昨夜の酒場での料理、ざっとあれの百回分は必要だ。食べ物だけでなく、魔石も必要だな」
「それ、百万ヴァリスくらいはするぞ?」呆れたように言うハムザ。
「まさか毎日そんだけ食うわけじゃないよな?」レヴィスが返す。
「当然毎日だ。力を戻すには、それを毎日続ける必要がある」
リリは急いで帳簿を計算し始めた。それから顔を上げ、難しい顔をする。
「…リーテイルの売上だけでは足りませんね。ファミリアの貯金でさえも、三ヶ月で食い潰してしまいます」
ファミリアにどんよりとした空気が流れる。レヴィスというジョーカーは【アポロン・ファミリア】との戦争の際には大きな戦力になるが、常に維持するには莫大な資金が必要らしい。そんな悪い空気を、テルクシノエが吹き飛ばす。
「ポエブスならごっそり持っておるのじゃ。あの阿呆を殺し、ファミリアを全滅させ、資産の全てを奪い取るのじゃ。そうすれば、私はレヴィスがこの派閥に入ることを許す」
「待て。私はまだ仲間になる訳ではないぞ」レヴィスはテルクシノエの提案を拒否するように言葉を継ぐ。
「力を貸すだけだ。そこから先は、好きにさせて貰う」
それからハムザは主神にステイタス更新を頼んだ。面倒くさがりなテルクシノエは難色を示すが、アポロン打破のためと説得されてようやく重い腰を上げた。
力と耐久の評価値がBまで上がっている。その他はCだ。アスフィ、レフィーヤとのセクロスにより能力が上昇したようだ。しかし、来る【アポロン・ファミリア】との決戦に備えるにはまだ足りない。
「なぁ神様、リヴェリアを振り向かせるにはどうすればいい?」
寝床としている机の下へと潜ろうとした所を呼び止められたテルクシノエは、そんなことかと振り返る。
「昔から女子の心を射止めるには恋文と相場が決まっておるのじゃ。どれ、手伝ってやろう。乙女心は心得ておるからな」
●
『黄昏の館』には、珍客が訪れていた。輝く男神のアポロンがロキを訪ねて来たのだ。突然の神の訪問、それに目下世間を騒がしている神の来訪に、【ロキ・ファミリア】の団員達は大慌てだった。
ロキはそんな子供達をなだめるように軽口を叩き、アポロンを応接間に招き入れた。
「それで、どないしたんや」
豪華な調度品が並ぶ部屋は、二人の神によってより一層輝いていた。アポロンは足を組み直してから、目を閉じたままゆっくりと落ち着いた口調でロキに問う。
「テルクシノエは、いつになったら
言い終えた後に、アポロンは目を開いた。神の視線には強い非難と憎悪が宿っていた。しかし、ロキは身じろぎもせずさらっと答えた。
「知らんねん。会うてへんからな〜。ウチを代理に立てたのはそもそもギルドやし?ウチにしたって、面倒な役回されて困ってるんやで〜」
じっとロキを観察しながら、視線を外さず、アポロンは口だけを動かす。
「中立を装うつもりならそれで良い。だが、お前の子供達はハムザ・スムルトを助けているのではないか?剣姫に
「知らんもんは知らんで。子供達の動きを一つ一つ見張るつもりなら、それこそ
アポロンは微動だにせず、ロキを睨みつける。不穏な空気が応接間に漂い始めた。しばらく無言を貫いていたアポロンは、再びゆっくりと口を動かした。
「では、中立であるという証明をして貰おう。ロキよ、お前が知っている彼らの情報の中でも特別我々に利する物を一つ、今ここで述べて貰おう。そうすれば【ロキ・ファミリア】が【テルクシノエ・ファミリア】に支援をしているという疑念は、自ずと晴れるだろう」
ロキの眼が光った。口元を怪しく歪め、悪事を企む悪党の様に笑った。
「そうやなぁ。ガネーシャんとこの、ハシャーナっておったやろ?Lv.4の子なんやけどなぁ、リヴィラで殺られたらしいで。頭ぐしゃってなぁ、いとも簡単に潰されてしもうたらしいわ」
アポロンはこの時初めて視線を外した。左上に目をやり、口に手を当てて考え込む。しかし、すぐに再びロキに視線を戻して言った。
「……その犯人がハムザ・スムルトだと言いたいのか。Lv.4を、計略により討ち取ったと」
「情報なら与えた。それをどう料理するかはお前次第や、アポロン」
納得がいかない様だったが、アポロンはややあってから立ち上がり、ロキに簡素な礼を述べてから部屋を後にした。外で控えていた付き人のヒュアキントスに小声で囁きながら、館内の出口へと二人は進んでいく。
「間違いなくハムザは策を持っている。問題はそれがこちらの読み筋にあるのかどうかだ。ヒュアキントス、連絡用の魔法具を用意せよ。いざとなれば全ての諜報員に情報を伝達できるようにしなければならない」
ヒュアキントスとアポロンが館を去った時、談話室で読書をしていたリヴェリアのもとに一通の手紙が届けられた。差出人を見て、リヴェリアは思わず額に手を当てる。ハムザ・スムルトからの手紙だったのだ。
手紙を机に置き、リヴェリアは立ち上がって窓の傍へ歩いた。それから落ち着かない様子で談話室の花瓶が置かれている壁際から反対の暖炉の所までを、行ったり来たりしながら歩き続けた。
しかしついに観念したように机に置かれた手紙の元まで行き、溜め息と共にそれを読み始めた。蚯蚓がのたくったような文字で、手紙にはこう書かれていた。
『あぁ 美しい顔よ 涼しい目元よ 気高く美しい物腰よ
乱暴者には慎ましさを 卑しい者には凛々しさを説く お前の言葉よ
如何なる愛の矢ですら射貫けなかったこの胸を 容易く射貫いて見せた嬉しい微笑みよ
こんな後の世に降りたたなければ 御身こそ王国を統べる 栄えある王女!』
リヴェリアは封筒を裏返し、もう一度差出人を見た。差出人は確かにハムザ・スムルトとなっていた。一体本当にあの男がこの文章を書いたのだろうかと訝しむ。とんでもない内容を想像していただけに、肩透かしを食らったような気分だ。
もう一枚の羊皮紙に、更に続きが書いてあった。
『まともに太陽に立ち向かう鷹が居れば 明るい光を苦にし 日の暮れにやっと外に行く梟も居る
また愚かにも 火遊びを恋うあまり 光を慕って 燃え盛る火の 身を焼き尽くす力を知らされる虫も居る
我が身はその終いの群れにあり お前の輝きを見つめる程の勇者にはあらず
暗闇や 夜更けを待って隠れもできず
おのが身を焼く運命とは知らず 光を慕い お前の後を追う』
手紙はそれで終わっていた。リヴェリアはそっと机の上にそれを戻し、顎に手を当てて考え込んだ。それから立ち上がって、魔道衣の上から肩掛けを羽織った。
「……誰の作品を盗んだかくらいは、聞きに行ってやるとするか」
●
「あんなんで本当に来るのか?」足を投げ出して椅子に座るハムザは、芸術神テルクシノエに文句を言い続けていた。
「来なかったらお前のせいだぞ、神様」だが、女神の自信は揺るがない。
「心配無用じゃ。女子は恋文に弱い。それはどんな時代になっても変わらないのじゃ」
本当かなぁとハムザはリリを見る。リリは『自分に聞かないでくれ』というような表情で肩を竦めた。
その時、階上から命がやって来て、ハムザに言った。
「
跳ねるように立ち上がってハムザは命の手を取った。
「でかしたぞ!もう掃除は切り上げて、ゆっくり休んでいてくれ!」
命は「でも…まだ蜘蛛の巣が」と口ごもるが、そんな彼女を置いてハムザはさっさと上へあがった。
少しだけ見栄えが良くなった大聖堂内を早歩きで進み、大きな正面門を両手で押し開けた。
リヴェリアは大聖堂の骨のような尖塔を見上げていた。それから自分に気が付き、懐から手紙を取り出して言った。
「これは誰の作品だ?」
「良くできた作文だっただろう」
「お前が書いたのか、と聞いている」
「もちろん俺が書いたさ」
「お前の独創ということだな?」
「あー、うん。そういうことにしておいてくれ」
歯切れの悪い返答に苦笑する王族。ハムザはしかし、女神の素晴らしい作文の効果にすっかり感心していた。本当にリヴェリアがやって来た。たった一つ手紙を出しただけで、頼みもしないのに、自らの足で。
「………」
リヴェリアは無言だった。こちらが黙っていても仕方ないので、ハムザは切り込んでみる。
「歩くか。ついでにそろそろ陽が落ちる。バベルのレストランにでも行って、お互い腹の底から話をしてみようじゃないか」
「何を話そうと言うのだ?」
咄嗟にハムザは答えた。
「もちろん、レヴィスについてだ。【ロキ・ファミリア】の幹部からしたら、放っておけない情報だと思うぞ?フィンに土産話でも持って行けば、なに、一回の面会くらいどうってことないだろう」
「本当に我々に利する【
リヴェリアは納得したようだった。二人はメイン・ストリートへ出た。それからバベルの高級レストランの一席を確保した頃には、すっかり夜になっていた。バベル程の高所からオラリオを見下ろすと、街灯や民家の明かりが宝石のようにきらきらと輝いて見えた。
【ロキ・ファミリア】の幹部が話題の【テルクシノエ・ファミリア】の団長を連れ立ってやってきたことに、給仕係の目元には隣人の噂話のネタを探す主婦のような、噂話を探るような色が浮かんでいる。二人はそれを無視して適当に注文を終え、ハムザは正面に座るリヴェリアに目を注ぐ。
真っ直ぐに伸びた背筋。ただ座っているだけで、その気品が漂っている。なるほど、神と見紛う程の美しさとは、本当のことだ。今更になって、ハムザはリヴェリアの魅力に取り憑かれ始めた。彼女こそ、剣士達の世界を率いるべき清らかな聖女であり、不思議な魅力を秘める魔法世界の姫のように思われた。
「あの本、俺には読み切れん。さっさとそっちに運んでくれないか」
ずっとハムザの言葉を待っていたリヴェリアは、そう聞かれてすぐに返答した。
「いいか、本はお前が思っているほど無価値ではない。中には優に百万ヴァリスを越える物もある。貴重なんだ、本というものは」
ハムザはめげずに問答を続ける。強引さでもって王族をここまで連れ込んだのだ、もうひと押しすれば、いけそうな気がする。
「関係あるか、そんなこと。俺が持ってる、お前が欲しい。ならばお前が取るべきだ。そうだろう?」
「お前の論理はおかしいな。所有物の交換は、等価交換でなければならない。仮に私があの本全てを受け取ったとして、私が持つ物の中で、その価値と釣り合う物は何もない」
「お前の話こそおかしいぞ。俺が持ってるものを、お前に渡す。富める者が貧しい者に分け与えるのは当然ではないか」
リヴェリアはハムザの言葉を咀嚼しながら、グラスに口をつけた。
「お前、産まれはどこだ?」リヴェリアはハムザに問う。答えるべきかどうか迷ったハムザだったが、間を置いてから言った。
「エル・アルズ地方だな」
「そうか、それで合点がいった」なるほど、と頷いてからリヴェリアは言う。
「その地方には特殊なコミュニティがあったらしいな。神の恩恵を嫌い、魔石製品による生活の変化を拒み続ける部族が居たと聞いたことがある。性質は原始的だが、所有欲が無いという点で異質であったと聞く。お前はそこの生まれか」
「ん……?」目を丸くするハムザ。リヴェリアの論理は明後日に向かって突き進んでいった。
「富める者が貧しき者に全てを分け与え、貸し借りという概念を放棄する、か…社会的にはある種革新的でもある。何故持たないか、という問いへの反問として、何故持つのか、という回答か……面白いな」
「えっと、うむ…まぁそうだな…」
「お前の考えは分かった。蔵書を寄贈するというその提案、半分は受け入れることにしよう…」
半分は、と言うのが引っかかる言い方ではあったが、どうやらリヴェリアは本をもらい受けるつもりらしい。運ばれてきた無駄に装飾に凝った焼き魚に手をつけながら、ハムザは期待を込めてリヴェリアの次の言葉を待った。
「公共図書館を作らせてくれ。費用の一部は私が負担しよう」
公共図書館?一体何のつもりだと、口に運ぶ寸前にフォークを止めて、開口したまま固まった。
「あれほどの知的財産を私だけが独占するのは気が引ける。おまけに他派閥から譲り受けるなど、【ロキ・ファミリア】としてはあってはならない行為。それならば、お前の善意を社会貢献に利用させて貰おう。なに、公共図書館の所有者はお前にするし、知り合いの本の虫達に資金協力を仰ぎ、必ず実現させよう」
何となく、話がおかしな方向へ進んでいるのは分かった。しかしリヴェリアのきらきら光る瞳の圧力に負け、ハムザはその提案を飲んだ。こんなに嬉しそうにしているのだから…きっと意味はあっただろう。
それから思い切って報酬の話へ移ることにした。
「じゃあ…まぁ図書館を作ればいいさ。阿呆のアポロン一派をすっかり全滅させたら取り掛かればいいさ。それより…お前からも俺に贈れる物があると俺は考えるのだ」
ぴたり、とリヴェリアの動きが止まった。
「ほう…私からお前に、だと?」まるで危険を察知した猫のように警戒心を纏い、注意深くハムザの動きを目で追う。
「そうなのだ。お前のおっぱいを揉みしだいたあの時から、夢におっぱいが出て来て眠れん。素晴らしいおっぱいを持っているのだから、男に揉ませないのはずるい。だからもう一度揉ませてくれ」
「………やはりそういう話になるか。そう来るならば、私も聞きたいことがある」
リヴェリアはフォークをテーブルに置き、射貫くようにハムザをじっと見つめた。
「アイズとレフィーヤに手を出したな?」
否定する意味もないので、ハムザはあっさりと頷いた。リヴェリアは「やはりか…」と嘆息してから言葉を続ける。
「ロキがお前を信頼しているとはいえ、今はまだファミリア間の連携協定も結ばれていない。本来ならばあり得てはならない禁じられた関係だ。とはいえ、お前のスキルによりステイタスが強化されている以上…それにロキが認めている以上…私からは文句は言えんな」
文句は言えないという言葉とは裏腹に、リヴェリアはとても文句を言いたそうな顔をしていた。お堅いエルフ様のことだから、きっと美徳やらなにやらを持ち出して、お説教をしたいに違いない。
「セクロスは悪いことではない。アイズもレフィーヤも、成長できたことを喜んでいるぞ。何も問題ないではないか」
「勘違いをするな、お前を相手に問答しようというつもりは毛頭ない。災害そのものに被害を訴えて慈悲を乞おうというのは、愚かな行為だからな。だが、私はアイズもレフィーヤも、そしてティオナも…団員達を娘のように想っている。出来れば不幸になって欲しくはないのだ」
「何が言いたいんだ?さっぱり分からん」
ナプキンで口元を拭ってから、王族は口を開いた。
「彼女達が望む以上、手を出すのは構わない。だが、そうするのならとことんまで彼女達をケアしてくれ。ティオナはずっとお前を待ち続けているし、アイズだって、レフィーヤだってそうだ。お前はほったらかしにする傾向があるからな、それを治して欲しいと言いたいのだ」
リヴェリアは続けていく。
「率直に言えば…お前は興味深い男だ。神や私を前にしても物怖じしない豪胆さという、他の男には見られない美点を備えている。あの子達の興味を引くのも理解出来る。男も女も強さには関係がないこの時代、お前のように男らしい人間は少ない」
「それなら」ハムザは思わず口が滑ってしまった。
「俺とセクロスしよう。エルフのおまんこをぺろぺろしたいのだ。ついでにいっぱい中に出してみたいのだ」
しまった、と口を覆うハムザ。せっかく良い雰囲気の店に連れ込んで、良い感じに彼女の態度が和らいできたと言うのに。口が滑ってしまったせいで、すべてが台無しだ。
――断られる。それも大声で怒鳴られるかも知れない。机を壊したらどうしよう?会計がとんでもない値段になったらどうしよう?財布には金はある…でも、もし法外な値段を吹っかけられたら払えるだろうか?
そんな考えが頭を過る。リヴェリアは氷のように冷たい目でこちらを睨んでいる。そして、死刑判決を言い渡す判事のように、決然としてゆっくりと口を開いた。
「――いいだろう」
(え、いいの?)ハムザは固まった。予想外の返答だったので、聞き間違いではないかと思った。
「いいのか?」
「いい、と言っている。ついて来たのはもとよりそのつもりだ。いくぶん直接的な言葉に困惑はしたが…お前のことだ。そんなところだろうな」
「それなら、リヴェリア。さっさとお会計を済ませて、場所を移そう。こんな大して美味くもない気取ってばかりの店じゃ、やることもやれんからな」
ハムザがホールに目をやると、こちらを探る様に見つめていたウェイターが急いで目を逸らした。
「同感だ。だがまだ大切な話が残っている」
リヴェリアに止められて、ハムザは首を傾げた。
「レヴィスだ。あの女の情報があると言っていたな、それをまず聞かせて貰おう」
「あぁ、そのことか」ハムザは席を立ち、リヴェリアのもとへ寄って、誰にも聞かせたくないという大真面目な表情を作り、彼女の耳元でそっと口ずさんだ。
「実はな…あいつの作る目玉焼きには、殻が二つ入っていたんだ」