ダンジョンに性交を求める眷属の物語 作:kuracjaponski
ダンジョンを運営、管理するギルド本部。華やかな宮殿のようなそのロビーで働く受付嬢たちはみな、容姿端麗でうら若い娘たちばかり。
「じゃあ、お先に休憩いってきま~す」
昼の休憩は、一時間。エイナはデスクを立ち、廊下を歩いていく。目的の場所は休憩室…ではなく、応接間だった。
がちゃっと扉を開けると、そこで待っていたのはテルクシノエ・ファミリアの団員、ハムザだった。
「遅かったな、エイナちゃん。もうちんぽこが破裂寸前なんだ。さっそくいつもの頼むぜ」
「…はいはい」
カチャカチャとベルトを外し、ズボンをおろす。既にはちきれんばかりに膨らんだ股間を確認してから、勃起したペニスを外に開放してやる。
「…んー。一日も経てば、すっかり元気になるんだね~。…はむっ」
「ふひひひっ...。エイナちゃんのおしゃぶりマジ気持ちい~。最初と比べれば、だいぶうまくなってきたな」
エイナは、数日前にハムザに半ば無理矢理その気にさせられ中出しセックスを許してから、毎日欠かさずこうして休憩時間に応接間で淫行を繰り返していた。しかしそれはあくまで仕事の一環。彼の持つ特殊なスキルを解剖し、詳細な報告書を作り上げること。そのために、ギルド職員であるエイナ自ら男の性欲のはけ口となる。
「…テルクシノエ様が提出してくれた昨日までの成長率は、やっぱり最初と比べると控えめなんだよね。それでもトータル100オーバーだから、十分と言えば十分なんだけど」
ここ数日の実験の内容。それは少ない刺激、少ない回数での効果範囲を調べる事だった。
「一日一回、オナニーで射精しただけじゃあ、あんまり効果は出なかったね。それでも、一般の冒険者と比べると破格の成長率だったけど…んっ」
じゅるるるっ、と音を立てて舌と唇でペニスを刺激する。
レアスキル、セクロス・シテーゼ。エイナはまず、成長率に関する報告書を作成している。一日における具体的な射精の数と量を記録し、成長率と比較したグラフを作る。初日は、自分でオナニーをさせた。翌日からは手こきをしてやったり、フェラチオで抜いてやったり、本番以外の様々なバリエーションで射精へと導く。本人が望む通り、いやらしい行為からいやらしい行為へエスカレートしていくに連れ、成長率を表すグラフはみるみる伸びていった。
「おほほほほっ…いいぞ、おぉそれ、気持ちいい~…」
フェラチオを始めてから十数分。男が絶頂を迎えようとしたところで、エイナは動きを止めた。
「ふふふ、だーめ。今日はイくのを極限まで我慢する実験だって、ちゃんと伝えたでしょ?」
不思議な事に、エイナとの行為では一回の射精が限度だった。そのため、最初の様に出鱈目なステイタスアップは望めない。ならば一回の量を増やしたらどうなるかということで、今日は休憩時間の一時間まるまる使い舐め続ける予定だった。
「え~…。そんなこと言われても。我慢するのしんど~い」
エイナはピクピクと痙攣するペニスを両手で包み込んでから、舌先で裏筋を舐め上げる。なるべく暴発させないように刺激し続けるのはエイナにとって簡単な事ではない。しかし最近の彼女は、時間があるときはいつも愛撫フェラチオの練習をしている。そんな彼女の練習の成果が、いま試されるところだった。
「それにエイナちゃん。一時間もしゃぶってたらランチ食う時間はないんじゃないか?」
再びペニスを頬張り、じゅっぽじゅっぽと音を立てながらゆっくりと上下運動を繰り返して彼女は言う。
「んっ…ほのために、たっくさんだしてくだはいね?」
「ちくしょう、エロ可愛いエイナちゃんまじ天使…」
●
ファミリアを結成し、迷宮攻略を始めるようになったからまだ数日しか経っていないにも関らず、ハムザは既に4階層まで到達していた。何度か来たことがある階層をふらふらと獲物を求めて彷徨うも、今日は肝心のモンスターになかなか遭遇しない。
「あ~...どうなってんだ、ほんとに。全然モンスターいねぇじゃん…」
静かすぎる、と。『ダンジョンが何が起きるかわからない』というエイナの忠言を思い出す。もしかして、俺様のオーラでモンスターが全部死んじまったのか?そんなくだらないことでがはははと笑いながら曲がり角に差し掛かった時、その先で何者かの足音が聞こえた。
息をひそめ、その足音の主を想像する。
(軽い足取り。金属の触れ合う音。モンスターではないな。小柄な剣士、か…?)
「……む」
角を曲がって現れたのは、白髪のヒューマン。ルベライトの瞳をきょろきょろと動かして、自分と同じように周囲を警戒しながらダンジョンを進んでいるようだった。
「…おい。まさかお前がモンスター共をぶっ殺したのか?」
「えっ…?そ、そんなことないですっ!ボクもずっと探してるんですけど、全然遭遇しなくて…」
おかしいですねぇ、と空笑いをする小柄なヒューマン。
(挙動不審だな。怪しい奴だ…)
まぁ、とにかく。
「下に行けば掃いて捨てるほどいやがるか。よし、推定レベル100くらいはある俺が、お前の剣技を鍛えてやろう。進め若人、5階層へ進軍~!」
「は、はいっ!こ、心強いです!」
(凄い自身だなぁ…。ダンジョンで他のファミリアに関らないようにするのは暗黙の了解ってエイナさんから聞いたけど…。まぁいっか。きっとこの人は、上級冒険者かもしれない。こうなったらいろいろアドバイスを貰えるように、頑張ろう!)
(こんなよわそ~な冒険者でも、いざというときの囮くらいにはなるだろ、きっと…)
それぞれは別々の思惑を抱えながら、5階層へ通じる入口までやってきた。白髪のヒューマンを先頭に、二人は初めての階層に足を踏み入れる。
その瞬間。
『ヴヴオォオオオオオオオオオオォッ!!』
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!?」
「ほあああああああああああああああああああああっ!?」
二人は同時に悲鳴を上げた。
5階層に足を踏み入れた途端、ハムザの倍以上の巨躯を誇る『ミノタウロス』に遭遇。目線が合うや否や、化け物は二人を追いかけ始めた。
「け、剣士さんっ!あいつを何とか倒せないですかっ!?」
「無理無理無理無理っ!あんなデカい奴とやったら俺のケツの穴が裂けちまう!」
全速力で駆け抜ける二人組。
えらいことになった。あれはダンジョンのラスボスに違いない。迷宮と牛、よくあるパターンだ。やつは間違いなくミノタウロス。そうなれば、迷宮の主…。
『恩恵』を受けて常人離れした速度で駆けるにもかかわらず、怪物はその体躯に似合わぬ速度で二人を追いかける。
『ヴヌゥウウゥゥウウウウウウンッ!』
ミノタウロスの蹄が頭の上をかすめる。間一髪で身をかがめ、攻撃を回避することに成功した。牛頭人体のモンスターはその巨大な角を突き立て、少年に狙いを定めて突進した。
(…よしよし。そのままぶっ倒れろ。化物がこいつを喰ってる間に逃げるのが最善かな)
そんなハムザの期待に、少年は応えなかった。
「うわあああああああああっ!?」
体勢を無視して全力で横っ飛び。そして片手に短剣を握りしめ、壁に激突したミノタウロスに無謀にも斬りかかった。
がきんっ、と。
少年の獲物は化け物の皮膚を傷つけることなく折れた。単純な強度の差だった。Lv1程度の下級冒険者では、この怪物を倒すことなど出来はしない。少年は焦燥した。
(そもそも、ミノタウロスって10階層以下のモンスターなんじゃ…!?なんでこんなところに…)
まずいっ…。どくん、どくんと鼓動の音が頭の中で鳴り響く。
まずいっ…!
壁に突き刺さった角を力任せに引き抜いて、ミノタウロスは怒れる双眸で冒険者たちをにらみつけた。そのおぞましい姿に、少年の心はほとんど打ち砕かれていた。
怪物は怒気をはらませながら突進した。
『ヴモオォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォッ!!!!』
「やべぇぞっ!逃げろ!」
少年と同じく、ハムザも焦燥していた。
やばいやばいやばい。まだまだ全然ヤりたりない!もっとたくさんの美女とセックスがしたい…!ダンジョンにセックスを求めてしまったのが、そもそもの間違いだったのか!?
黒い巨大な影に追い込まれるように彼らは通路を走り抜け、いくつもの角を曲がり、ついに膝に手をついた。
「…行き止まり…」
少年のつぶやきが、あまりにも虚しくダンジョンに響く。その声色は、もはや諦観そのもの。強者の前に、弱者は跪く。当たり前のことだ。自然の摂理だ。ボクはここで死ぬ。神様、生まれてきてごめんなさい…。
(嘘だろ!?オラリオ中の美女とセックスするはずの俺がここで死ぬなんて…そんなこと、マジでありえない!ええい、くそ。考えろ、こいつを生贄にする方法を…)
既に心が折られた少年とは異なり、ハムザはまだ諦めていない。この状況を打開する策がまだ、あるはずだ……。
二人が息を切らせて片膝をつく袋小路には、その怪物が姿を現した。
ずしん、ずしんと大きな音を立てながら距離を詰めてくる怪物を前に、策を考えたハムザが言葉を絞り出した。
「おいお前、俺が今から究極の魔法を詠唱するから、十秒で良いから奴を足止めしろ。大丈夫、俺って強そうだろ?俺がお前を救ってやる」
思いがけない言葉に、少年の瞳に希望の光が灯る。そうだ、この人はまだ、諦めていない。ボクが少しでも時間を稼ぐ言葉できれば、生き延びられるかもしれない…!
「お願いしますっ…!」
窮地に立たされながら、彼は思った。死地を共にする仲間って、なんて素晴らしいんだろう、と。潜り抜けた死線の数ほど、絆は深まって行くのだろう。今だソロプレイの少年としては、ダンジョンで初めて組んだパーティだった。
(やってやる…!)
予備のナイフを装備し、再び立ち上がる彼の背中で、ハムザが詠唱を開始した。
(凄いっ…!本当にあの人は魔法が使えるんだ…!)
ハムザの詠唱が、一瞬だけ少年に勇気を与えた。
【美女とセクロス。おまんこぺろぺろ舐めたいな。エルフのパンティー被ったドワーフ…】
(ど、どんな詠唱式だ!?い、いったいどんな魔法!?)
ふざけた詠唱式に驚愕する。
『ヴモオオオオオオオオオッ…』
怪物が近づいてくる。やるか、やられるかだ。もうどうにでもなれっ…!数秒でも稼げれば、魔法で倒せるかもしれないんだっ…!
少年は怪物に突進する。振り回される蹄を必死にかわしながら、その風圧で吹き飛ばされながらも、必死で後ろには行かせない。
(なんだ、意外と根性あるなこいつ。ま、どうでもいっか)
ハムザは適当に詠唱っぽいものを並べ立てながら、隙を伺っている。
【まもなく精子は放たれる。我が名はおちんぽ…】
いまだ、と。
「…雑魚は生贄じゃあああぁぁぁあっ!」
どんっ、とハムザは少年の背中を蹴り飛ばす。
「…えっ?」
少年は予想外の攻撃に無様にも怪物の前にひれ伏した。
突然眼前に倒れこんだ獲物にミノタウロスが気を取られた瞬間、ハムザは怪物の脇を駆け抜けた。
「はははははははっ!作戦成功!またな若人、あとは頑張れよ~!」
あまりにも非情。無垢な少年をだまし、生贄にする。しかしダンジョンでは、常に生き残った者が勝者。無慈悲な謀略も、生き残れば妙策だ。
高笑いをしながら疾走するハムザの正面から、金髪の女剣士が凄まじい速度で通路を駆けて行った。
すれ違う直前、その金の眼とわずかに目が合った。
(おいおいおい!な、なんだ?今の、すっげーかわいこちゃん…)
振り返ると、その剣士は既に遥か遠く。
(…かなり気になるな。ガキはどうでもいい。だが今のパツキンガール…上玉だった)
ハムザは踵を返す。美女と知り合えるチャンスを、逃すわけにはいかないからだ。
「…よし。ブヨが陽のあたる方へ飛んでいくものなら、俺は美女の居るところに全力ダッシュするまでだ!」
彼は再び今まで走ってきたダンジョンの通路を駆け戻っていった。
●
先刻まで少年を襲っていたミノタウロスは、いまは真っ二つの肉塊になっている。
「あの…。大丈夫ですか?」
女神様と見紛う程の美しさ。その剣士の少女は、返り血を浴びて真っ赤になった少年に手を伸ばそうとするも。
驚愕の表情で目を見開いた少年は、無言で走り去ってしまった。
「ぷくくくくっ、なんだよあのガキぃ、それにアイズ。逃げられちまってんじゃねぇか!」
一部始終を眺めていた獣人の男が笑う。アイズと呼ばれた少女は少しうつむきながら、悲し気にその金色の目を閉じた。
(なんで、逃げられちゃったんだろう…)
「爆笑もんだぜ、なぁ?ぷくくく、まぁ…逃げたミノタウロスはこれで全部片づけた。フィン達が待ってる。さっさと帰るぞ、アイズ」
うん、と頷いて金髪の剣士は風になって駆けていった。
そこに入れ違いでハムザが舞い戻る。
「なんだ、誰もいないな」
しかし、地面にはミノタウロスだったものがぐちゃりとどす黒い血だまりを作っている。少年の姿も、金髪剣士の姿もない。一歩遅かったか、と悔やむ。
(お?これはなんだ)
その血だまりの中で。今までに見たこともない大きさの魔石と、ミノタウロスの巨大な角が横たわっている。大方、先ほどの女剣士が怪物を倒したのだろう。でもどうやら急いでいたようで、ドロップアイテムを回収し損ねたらしい。
儲けもんだ。今日は雑魚がいない分全く稼げてないからな。そう思って魔石と角をバックパックにしまい込んだ。怪物との逃走劇に、若干の疲労を感じ始めている。これ以上の迷宮探索は危険を伴うだろう。
「…潮時か」
そう呟いて、ハムザは帰還の道のりについた。
●
「流石だな!やはりお前は見込み通りの男だ!お前がすばらしい鑑識眼を持っていることは、最初から分かってたぜ~!」
先日の横柄で攻撃的な態度とは打って変わって、彼は換金所で上機嫌になっていた。それもそのはずだ。今日入手したのは大きな魔石とミノタウロスの角が一つだけだったにも関らず、三十万ヴァリスもの大金をゲットしたからだ。
「やれやれ…現金な奴だ。お前は運がいいぞ、なぜか最近『ミノタウロスの角』はなかなか市場に出回らん。今じゃ通常の三倍の値がついているからの。それだけ状態が良ければ、まぁこんくらいの金額が妥当だろう」
お前良い奴、見直したぞ。金貨の詰まった袋をじゃらじゃら言わせながら、意気揚々と換金所を後にする。今日の戦果を、エイナちゃんに報告しなければ。
「おーい、エイナちゃーん。どこだ~っ」
「あ、ハムザ君…。おかえり、どうだった?」
戦果を報告する。まったく雑魚に遭遇しないと思っていたら、五階層でダンジョンのラスボスであるミノタウロスに襲われたこと。弱っちいガキと一緒に逃げ回った挙句死にそうになったが、機転をきかせて逃れおおせたこと。そして金髪のかわいい子ちゃん剣士の情報が欲しいと思っていることも。
「えぇ~!?あなたも?言っておくけどミノタウロスはLv2クラスのモンスターなだけで、決して階層主ほど強くはないから…」
それに、と。
「まぁハムザ君の場合実力的にも5階層に行ってもやっていけるだろうけど、少しでも異変を感じたら引き返さないとだめじゃない…それに、アイズ・ヴァレンシュタイン氏の情報はあなたには教えません」
「なんだそれ。じゃあ誰になら教えるっていうんだ?」
エイナは、先ほどまで血だらけになった少年、ベル・クラネルにも同じ質問をされた。よわよわしく頼りない、まだまだ実力のない新米冒険者である彼にはアイズの情報をこっそり教えたのだ。しかし目の前の男には、教えてはいけない気がする。きっとまた、トラブルを起こすに違いない。
「秘密。とにかく今後は、ちゃんと気を付けてダンジョンに潜ってね。それと…」
エイナは耳うちする。
(…明日は朝からギルドに来てね。出来ればテルクシノエ様も一緒にお願い。今後の事について話したいことがあるのと…)
彼女は耳元で、より小さな声で囁く。
(フェラチオとか、前戯による射精に関するデータは集まったから。次は、本番に関するデータを取るからね。さすがに人気の多いお昼時にはできないから、出来るだけ早い時間に済ませちゃおう)
柔和な笑顔。しぐさの可愛らしいハーフエルフ。スタイルも良く、冒険者からの信頼はとりわけ厚い。そんな彼女を仕事とはいえ独り占めしている者がいると知ったら、きっとその日のうちに刺されているだろう。そんな彼女が日常的にギルドで淫行を繰り返し、挙句の果てには早朝出勤してセックスをするなどとは、誰も思ってもいないだろう。
もし、彼女の支持者がその事実を知ったなら。
きっと、地面に額をついて、両手を叩きつけながら悔しがったことだろう。
外へ出ると、もうすっかり夜中だった。酔っ払いが真っ赤になりながら千鳥足で歩いている。どんな酔っ払いにも不思議と正確な帰巣本能がある。あんな状態で良く家に帰れるものだと思いながら、ハムザは帰路についた。
●
「いよーう!眷属様のお帰りだ!」
テルクシノエ・ファミリアの本拠地であるテント。主神は暇そうに呆けながら、帰ってきた眷属に訴えた。
「眷属様、遅いのじゃ。私はもうお腹がぺこぺこじゃ。眷属様~ご飯をくれないと死んでしまうぞ~」
ファミリアが発足してから、炊事係は自然とハムザの担当になった。一日中テントにこもって暇を持て余している神様は、炊事にかんしては極度の面倒くさがりだった。ハムザが料理しなければ、きっとこの神は餓死するまで食事をねだり続けるだろう。だから彼は仕方なく炊事係を引き受けていたのだった。
「主神ちゃん。今夜はお肉を食べれるぜ?なにせ三十万ヴァリスも稼いだからな!」
「わーお。眷属様凄いのう!お肉万歳!稼ぎの良い眷属様ばんざーい!」
彼らの生活は、路上生活者とさして変わらない。食事は専らテントの外で取る。当然料理も外でするのだが、そこはあくまでも路上。近頃は料理時に合わせて近所に住む連中が匂いにつられて群がってくる。そうした連中は宴会の輪に加わるために、自ら差し入れを持ってくるのが常だった。
まともな家もない、財産もない。しかしいざそういう生活をしてみると、これが案外しっくりきた。オラリオに流れ着いたならず者同士がこうして顔を突き合せれば、愉快な冗談で話が弾む。こうして毎夜、テルクシノエ・ファミリアの本拠地では路上で宴が繰り広げられているのであった。
「ねーハムザくーん。いつになったらアタシとセックスしてくれるの?レアスキル持ってるんでしょ?一度でいいから試してみな~い?」
娼婦のアマゾネスが誘惑をしてきたり。
「バカ野郎、こいつはホモなんだ。女には興味ないんだよ。だから特別に俺のケツを貸してやろう。今ならたったの三百ヴァリスでいいぞ!」
どこの馬の骨ともしらんゴロツキの冗談を真に受け、顔をひっぱたいたり。
「おぉー今日もやってるねぇ。やぁハムザ君。調子はどうだい?ほら、差し入れだよ。ドワーフの火酒をどうぞ」
羽付き帽子の胡散臭い神様が輪に加わってきたり。
「このヘルメスはお前のレアスキルの情報が欲しくてたまらんのじゃ。何も隠してはおらんのに全く信頼しない。いけすかないペテン神さ」
神様同士の言い争いを見学したり。
「はははは!お前ら全員みすぼらしくて貧乏そうで可哀そうだから、リッチな俺が特別に酒を恵んでやるか。ほれ、飲め飲め!」
良いようにおだてられては、差し入れの酒を次々と空けていく。
こうして宴会は続き、テルクシノエと二人きりになる頃にはすっかり深夜になっている。
「あ、そうだ。忘れてた」
宴会の片づけをしている途中、ハムザは急に思い出した。
「明日は早朝にギルドに行く事にしたんだった。エイナちゃんがどうしても俺とセクロスしたいらしいからなぁ。神様にも来てほしいって言ってたぞ。エルフと神様で3Pかぁ。俺も出世したなぁ」
「そうか。朝は苦手じゃ…。まぁ、ギルドの招集なら無視はできんな。あと私からも言い忘れてたことがあった」
テルクシノエも伝え忘れていたことを思い出す。
「お前、ガネーシャ・ファミリアの門兵を斬ったこと、覚えているか?私の予想通り、見事に賞金首と要注意人物に載っていてな。だからガネーシャ・ファミリアに乗り込んで、あいつを誘惑してやった。あっさり引っかかってきたぞ。それからは後の祭りじゃ。ガネーシャ自ら被害を取り下げたことで、一応事なきを得た」
「一体どんな手を使ったんだ。エロ神様」
「まぁ、神のすることは子供には想像もつかんじゃろう。それはともかく、一応丸くおさまったのだが、ここにきて事態が再燃してきているようじゃ」
ハムザはバーベキューの炭に水をかけ、火を消した。ジューと音が路地裏に響く。
それを見届けながら、主神は話を続ける。
「お前が腕を切り落とした人物。ジーガという奴がな、ずいぶん反発しているらしい。自分を襲い掛かった奴がのこのこと表舞台で生きているのが気に入らんようだ。だからいずれ、決着をつけねばならんと思う」
「それ、ぶっ殺していいってことか?」
そう単純な話ではない、という。
「相手が悪かろうと、殺人は罪だ。ギルドによって罰せられるし、ファミリアの活動は即停止じゃ。だからうまいこと考えるのだ。こちらに罪を着せられることなく、相手の息の根を止める方法を」
「…面白そうじゃないか」
面白い。実に面白い。そういえば、そんな雑魚もいたなぁ。ジーガか、ふむふむ、覚えておこう。
「話はそれだけじゃ。じゃ、私は明日朝早いからもう寝る。おやすみじゃ~」
(明日朝早く起きるのは、俺も同じだが…。ふひひひ、明日はエイナちゃんと生ハメガチセクロスだからなぁ。細かいことでいちいち怒るほど、俺はガキじゃない)
●
「では、招待する神は以下のリストでいいんだな、ガネーシャ?」
ガネーシャ・ファミリアの本拠地、アイ・アム・ガネーシャでは近日中に行われる神の宴が開かれる。ファミリアの団長を務めるシャクティは、もう一度確認する。
「知っているだろうが、ここに例の神テルクシノエは入っていない。この前うちとひと悶着あったのはあそこだろう?本当に入れなくていいんだな?」
民衆の神、ガネーシャ。彼は今、顎に拳をあてて黙考している。ややあって、その屈強な体に似つかない弱々しい声で告げた。
「…予定変更だ。テルクシノエも、入れておけ」
それと。彼は付け加える。
「ジーガを見張るよう言っておけ。怪物祭も控えている。今騒ぎを起こすのは、まずい!」
了解、おやすみ。シャクティはそう返事をして部屋を出る。
(いま騒ぎを起こされてはいかんが、あいつの怒りももっともだ。俺が不甲斐ないせいで…)
ガネーシャは憂鬱そうに窓の外から低い街並みをみやった。
「…くよくよしてはいられんか。そうだ。俺は、ガネーシャだ!アイ・アム・ガネーーーーシャ!」
『うるせぇぞっ!何時だと思ってんだ、馬鹿主神っ!?』
●
翌朝。早朝からメインストリートを歩くテルクシノエとハムザ。横を歩く女神様はぐうたらで、ハムザから見ても変神である。それに、だらしなくても神は神。プラチナブロンドの美しい髪は、シャンプーや香水などをつけてもいないのに極上の香りを漂わせているかのよう。雪のように白い肌と、盛り上がった二つの双丘。美しく気高い外見とは異なり、纏う服の生地は薄く、露出が多い。嫌でも見る者を惹きつける。それに初対面の人の多くは、彼女が美の女神だと錯覚するほどだ。
だが、彼女は芸術の神。本来は色事とは無関係である。そしてその女神には、一つだけ欠点と呼べる要素があった。
女神テルクシノエは、背が低い。美の女神たちと比べてしまえば、どうしてもその背の低さが目立ってしまうだろう。しかしそんなことは、当の本人は全く気にかけていないようだが。
「エロい視線ばかりじゃ。やつらの頭の中は簡単に読み取れるのう。セックスしたい、オナニーしたい、精子をぶちまけたーい」
「男なら当然だろ。そうじゃなければそいつはインポか、童貞。もしくはジジイだ」
「街を守る紳士たちが変態でなにより。オラリオは今日もスケベだらけで平和の限りじゃのう」
その時、ハムザの視界に見覚えのある人物が飛び込んできた。
あそこにいるのは、確か昨日の…弱っちいヒューマン?やっぱり生きていやがったか。
その少年は生意気にも小奇麗な制服を着たウェイトレスと会話をしている。なかなかの上物だ。陽光を浴びて輝く銀色の髪を後ろで束ねている。血色のいい健康的な肌色は若さの証拠か。男心をくすぐる初心なはにかみ。上気した頬は薄いピンク色に染まっている。そのしぐさの一つ一つが、ツボを押さえているというか、わざとらしいほどに『可愛い』のだ。それを知ってか知らでか、当の本人は何気ない顔つきで最高の笑顔を贈る。
「もったいないな~。まるで釣り合わなん。これじゃオークにグリモワール魔導書だ」
少年と少女は睦まじく視線を交わしてから、別れの挨拶をしたところだった。
「よう、おはようさん。さっきのは彼氏か?」
早速声を掛ける。こんな良質街娘を放っておくほど、俺様の股間は萎えちゃいない。
「え?いいえ、違います。今会ったばかりで。あなたは、どちら様ですか?」
ちらり、と横目でテルクシノエを見る少女。神様を連れて朝から何用だ、と少し訝しんだようだ。そんな様子を察してか、主神が返答する。
「テルクシノエじゃ。こいつは私の眷属、ハムザ。よろしくな、娘さん」
初めまして、と頭を下げる少女。おぉ、かわいい。
「シル・フローヴァと申します。ただいま営業開始の準備中ですので、ご来店は後ほどお願いできますか?」
「俺は今からダンジョンに行く所だ。…なぁ、帰ってきたら、どでかい花束を持って来るから君のセフレに立候補していいか?君と毎晩スケベして愛を確かめ合いたいんだ」
これ、と眷属の頭を叩く女神。
「失礼だったかのう。こいつはいつもこんな調子じゃ。ま、悪い奴じゃない。じゃ、また今度な」
「また今夜、だ!絶対来るからな、待ってろシルた~ん」
去っていく二人の背中を見送る間もなく、開店準備をする同僚が声を上げる。
「こら~!シルがサボってるにゃ!さっさとそのテーブルを運ぶのにゃーっ!」
「もう、アーニャったら!サボってなんかいませんよ」
店の奥で睨みを聞かせる大柄の女将に少し萎縮しながら、先ほどの同僚と一緒にテーブルを運ぶ。
(ベルさんにハムザさん、かぁ…。どっちも独特で、かわいいなぁ…)
一方、主神とその眷属は、メインストリートを歩いている。
ギルド本部までは、もう少しだ。
「さっきの店、豊穣の女主人とは興味深い名前をつけたものじゃ。それにあの娘、気を付けておいたほうがよさそうだぞ」
思いがけない主神の発言。気を付ける、とはいったいなんのことだ?
「別に中出しセックスするな、とは言わんのだが…。まぁ、気を付けておくのじゃ。今はそれしか言えん」
「はいはい。ちゃんと避妊薬を飲ませるから安心しろ」
●
ギルドに着くなり、エイナは二人を応接間に通した。早朝のギルド本部。まだ勤務時間まで長く、建物内に人影は見当たらない。これから行われる行為を考えれば当然、だれもいない方が都合がいいのだが。
「それで、テルクシノエ様は同席されないんですね?」
「ん、あぁ、よい。楽しい二人の時間を邪魔するのも悪いだろう。私はロビーで待機しているから、事が済んだら呼びにくるのじゃ」
そういって神様は応接間を出て行った。
「ぐふふ、どれどれ。久しぶりのエイナちゃんのおまんこは、どんな具合かな?」
後ろから豊満な胸を鷲掴みし、股間に指を這わすと。
「おぉ、もうぐしょぐしょだ!ぐふふふふ…」
「ふふっ…。エッチな私を見ると、興奮するんでしょ?実は二人がくるずっと前から待機して、オナニーしていたの」
エイナは絡みつく手から逃れ、応接間にある一脚のソファーに座り、自ら股を開いた。
「ほら、見てごらん?私もう、こんなに濡れちゃってる…」
おほほほ。よきかな、よきかな。ハムザは既に準備万端のペニスを取り出し、誘うエイナを押し倒し、びしょ濡れのまんこにペニスを突っ込んだ。
(あぁ、これ…いいわぁ。やっぱりオナニーより、気持ちいい…)
彼女は突かれるがままに快楽に身を任せ、思う存分セックスを堪能した。
それから一時間程。ロビーで寝ていたテルクシノエはエイナに起こされた。彼女に案内され、再び応接間に戻ると射精してだらしなく脱力した我が子がよう、とあいさつしてきた。
「…おほん。今日は本番行為でしたが、射精は膣内以外にしてみました。男性は膣内射精以外にも顔射によって征服欲を満たすことがあると聞いたので、私の顔に射精してもらいました。本番行為にも幾つか射精パターンがありますので、ここ数日はそれらを検証していきます」
「エイナちゃんのちっちゃい綺麗な顔にぶっかけるのは、至福のひと時だった。でも、欲を言えばえろ~いセリフで下品に舌を出しながらおねだりしてほしかったなぁ」
「そ、そのパターンも検証予定表に追加しておきましょう。でも、そういう些細な変化で劇的な上昇がみられるかは、今のところわかりません」
かしこまった口調で、テルクシノエに説明を続けるエイナ。その口調には、あくまでもこれは仕事であり私情は挟みたくないという気持ちがこもっているようだった。
(彼を喜ばせるためには、もっと欲求の満たし方を研究して、実践していかなきゃ…)
決して自分が楽しむためではない。決して。そう言い聞かせながら、話題を変える。
「…それと、ダンジョン攻略に関してですが。ハムザ君の場合、常人離れした成長速度のせいで通常の攻略モデルケースがどれも適用できません。しかしステイタスが高いからと言って経験を積まずにどんどん下層へ降りていくのは、やはり危険なことだと思われます。ですから…」
すっかり仕事モードに入ったエイナは、ほとんど話を聞く気がないハムザを視界にいれないようにして説明を続ける。
「パーティを募集してみてはいかがでしょうか?正式な団員を募集するのも、いいかもしれませんね。私は今後、成長速度だけでなく他人への作用も検証したいと思っています。そのためにはもう一人、ファルナを授かった女性が協力者として必要なんです…」
「じゃあエイナちゃんがうちに入ればいいじゃないか。それで万事解決、欲求不満の問題も一気に解決だ~」
そんな提案はあっさり却下される。
「これはあくまでもギルドの調査です。公平を期すべき身分の私が、特定のファミリアに入団することはできません」
むむぅ、とうなる主神。
「団員を増やす…。それはいいのじゃが、募集をかけるのは面倒でなぁ。私としては、いちいち面接なんかせずに、ハムザがヤりたいと思った女を引き抜いてくればいいと思っているのだが」
そうですか、と頷くエイナ。
「それでは、女性冒険者をスカウトの形で増やしていくのが理想ですね。少し時間をかけてでも、納得のいく女性を探してきてください。とりあえず現状では、サポーターを雇うことをおすすめしておきます」
サポーター。支援特化の専門職といえば聞こえはいいが、要はダンジョン攻略時における荷物持ち。魔石やドロップアイテムの回収もさることながら、回復薬や予備の武器を運ぶ存在である。基本的に単独攻略者はこれを自分で行わなければならないため、物理的にも時間的にも効率が悪い。だからアドバイザーとしてのエイナの意見は、十分聞き入れるに値することだった。
「わかったか?ハムザ。サポーターで、女で、セックスしたいなーと思うやつを探してくるのじゃ。それまでは5階層くらいでしっかり稼いでくるのだぞ~」
「いやいや、お前も少しは仕事しろよ…」
そんなやり取りを聞いて、エイナはあはは、と笑い声をあげた。
それでは最後に、と。
「効率的にスケジュールを組めるように、ハムザ君には目標を立ててもらいます」
そういって一枚の紙を取り出した。
紙にはインク文字で『短期』『中期』『長期』と書かれた空欄がある。
「このそれぞれの空欄に、好きなだけ目標を書き入れてください。そしてそれを、毎日見える場所に飾っておくこと。そうすることで、より明確に目標を意識して生活できます」
テルクシノエは、ほほーとうなる。いやぁ本当に下界の子は面白いことを考え付くものじゃ。そういって紙を見つめる。
「めんどくせー…」
一方やる気のないハムザは、鼻をほじりながら上の空だ。
「簡単じゃ、ハムザ。セックスしてみたい女の名前を言ってみろ。それでほとんど埋まるだろう」
それもそうか、と。
「よし、まず『短期』には、百万ヴァリス貯めて
「犬人で薬屋…。どこかのファミリア所属…。もしかして、ミアハ・ファミリアかな?そしたら、ナァーザ・エリスイスさんですね」
よし、そいつだ、と。
「サポーターのセフレを入団させて、あとはさっきのシルちゃんとセックス。この前見つけた金髪の剣士ちゃんは、『中期』だろうなぁ。まだ名前も知らん。アスフィちゃんともう一度セックスしたい。美人と評判の純粋なエルフともセックスしないとな。簡単そうだけど、アマゾネスとも。パルゥムは…。まぁそのうちか。『長期』に入れておこう。あと、世界中の美女を集めてハーレムを作る。これは男のロマンだ」
こうしてエイナの目標管理シートはある程度埋めることができた。書かれた名前を見て、エイナはふと気づく。
「あれっ?ハムザ君が言ってた最初に抱いた女性って、アスフィさんのことなの?」
「そうそう!アスフィちゃん!意外とビッチでなかなかのセックスだったぞ!もう一回中出しセックスしたいなぁ。ただ、あの不審な神様は超うざい」
そういうことか、と何度も小さくエイナはうなずいた。
アスフィ・アル・アンドロメダと言えばヘルメス・ファミリアの団長だ。神によって付けられた二つ名は『万能者ペルセウス』。自身は上級冒険者にカテゴライズされるLv3であり、数少ないレアアビリティ『神秘』の持ち主だ。彼女とのセックスでハムザは何度も射精が出来たという。エイナでは一回、アスフィでは数回。これはもしかしたら、対象者のレベルや恩恵の有無によっても影響を与えているのかもしれない…。
内心、ずっと気がかりだったことだ。セックスで一度しか射精が出来ない原因は、私にあるんじゃないか。私の魅力が足りないから、彼は何度も射精が出来ないのかもしれない。エイナはほぼ間違いなくそうだろうと結論付ける直前だった。想定外の可能性に希望を抱き、翡翠色の瞳を燃やした。
(まだまだ検証することが山ほどありそうね!…ふふ、やりがいがある素晴らしい仕事だわ)
徐々に深みにはまっていることに、彼女はまだ気づかない…。
●
ギルド本部を後にして、二人はダンジョンの入り口で立ち止まる。
「じゃ、とりあえず行ってくる~。お前の眷属様はモンスター狩りだけじゃなく、可愛いセフレを探す旅に出る。ダンジョンにセックスを求めて何がわる~い!」
「その意気じゃ。気を付けるんだぞ。ところで…」
主神は眷属に言う。
「五万ヴァリスほど貸してくれ。最近お前がダンジョンに行っている間手持無沙汰でのう。仕事は嫌いだから、ちょこっと賭博で儲けてくるつもりじゃ」
「お前って神は本当に…」
ファミリア結成当日にこのギャンブル癖によって全財産をすられた経験から、ファミリアの金銭管理は全てハムザが行っていた。主神の悪癖を矯正することも眷属の義務かもしれないが…。生憎その眷属も能天気でずぼらな性格だった。
「まぁ、別にいいか。どうせ最近調子がいいし、さっさと百万ヴァリス稼いでナァーザちゃんとしっぽり中出しセクロスするぞ!」
「さすがは我が眷属!天才じゃー偉大な英雄じゃー」
そこから遠く離れたミアハ・ファミリアの青の薬舗で。
「くしゅんっ!?」
(誰かが私の噂をしている…?)
ナァーザのくしゃみがお店に響いた。
練習で書いているものです。クオリティはあまり追及していないので、誤字脱字、本編との矛盾等はご容赦ください。
ご意見・ご感想大歓迎です。
変な点があったら教えてください。しょっちゅう加筆しています。