ダンジョンに性交を求める眷属の物語 作:kuracjaponski
「金ががっぽり入ったのじゃ。地下金庫の財産を軽く見積もっただけでも、十五億ヴァリスはくだらん。これで当面はどうにかなるじゃろ」
【アポロン・ファミリア】との抗争を経て、テルクシノエ達は大いに懐を潤わせていた。大聖堂の改築にしっかりとした業者を手配し、ナァーザと約束した新薬舗の建築にも取り掛かる手筈が整った。
ギルド長のロイマンに裏金をしっかり渡しておいたお陰で、今回の急襲には何のお咎めもなかった。むしろ、巷ではテルクシノエ達は悪を討ち取った英雄として、尊敬のまなざしを集めるようにもなっていたのが、なんとも心地がよかった。
そして、この日ハムザは、【アポロン・ファミリア】から奪い取った二人の麗しい女性の横で、素っ裸で寝息をかいていた。
「なんなら、今すぐにこいつの首をかき切って、どこへでも行けそうな気がしない?」
ダフネはカサンドラに言う。だが、数日をハムザ達と共に過ごしてみて、二人は居心地の良さを感じ始めていたので、カサンドラはそれが彼女なりの冗談だとすぐに気が付いた。
「じゃあ、私が口を押えるから、ダフネちゃんはひと思いにやっちゃって……」
「―――本気ではないだろうな、まさか?」
二人は振り返った。短刀を手に取ったレヴィスが、二人を睨みつけている。あははは、と空笑いを作り冗談だと説明するも、赤髪のボディガードは疑り深い眼差しで二人を睨み続けていた。
「……はぁ、それにしても、予言が成就しちゃったんだなぁ……」
「後からなら、何とでも言えるわよね。でも、アポロンと別れることが出来たことには、感謝してるわ。これで真っ当な冒険者生活が出来るって訳だもの」
「うん……それなんだけど、やっぱりダフネちゃんは、【テルクシノエ・ファミリア】に入るのは嫌?」
「考えてはいるけど……どうするか、まだ決めてないわ。だって、ここも滅茶苦茶じゃない。団長はただの変態だし、主神はぐうたらだし……。まぁ、実力があるってのは認めるけどさ」
「そっかぁ……。まぁ、ハムザさんはよく考えると良いって言ってくれてるし…こうして体の関係を続けているだけでも、幸せだよね…」
私はそうは思わない、とダフネは肩を竦めた。ともかく、自由になれた。今はそれだけで、満足だった。
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【アポロン・ファミリア】壊滅の噂が落ち着き始めた頃になっても、フィンはまだ怪人の動きを追い続けていた。主神であるロキは放っておけばそのうち収まると気にも留めなかったが、団長フィンの猜疑心は日に日に強まり、ついに彼を行動に動かした。
ある日の夕刻のことだった。
レヴィスが一人で外出している際、薄暗い路地裏で囲まれる少女がいた。
フィンは遠くからその様子を眺めていたが、レヴィスが拳を鳴らすのを見るや否や、槍を抜いて一目散にその場所へ飛んでいった。
(……次におかしな行動を見せたら、絶対に僕が仕留めてやろう)
僕は、勇者なんだ。フィンはいつかリリに言われた言葉を出来るだけ思い出さないようにして、自らの使命に身を委ねた。
「お嬢ちゃん、悪いことはしないよ。ただ、ちょっとお股におちんちんを突っ込んで、白い液体を出すだけだよ」
「へへ、怖くないよ、お嬢ちゃん。ついでに手足も切って、歯も抜いて、お偉いさん方好みの便器に替えてあげるからね、心配いらないよ」
にじり寄るゴロツキ達の輪の中で、アイスクリームを手に震える少女が丸くなっていた。
「——相手が欲しいなら、私でどうだ?」
ゴロツキ達が振り返ると、露出の多い服に身を包む赤髪の女冒険者——レヴィスが、怪しげな笑みを浮かべて壁に寄りかかっていた。
「おぉ、おぉ。こりゃあえれえ上玉だ」唾を飲む男たち。
「遊んでくれるんだな?」レヴィスは言った。
「もちろん、遊ぼうじゃないか。どんな遊びが好みだい?まぁ、聞くまでもねぇか」
「……それはな。殺し合いだ」
レヴィスが身体から殺気を放つと、男達の形相が一片した。
「ひっ!?」
男の腹を拳打が貫いた。臓器を撒き散らして転がっていく。続いて、もう一人の男の首が飛んだ。血を撒き散らしてこと切れる仲間達の姿に恐れをなし、残党はもつれあいながら逃げていった。
「雑魚……遊びにもならん」
「――随分と、楽しそうだね」
レヴィスが振り向くと、槍を構え、戦闘態勢を見せるフィンが立っていた。
「……LV.6、フィン・ディムナ。まだ、つけていたか。執念深い奴だ」
血だまりと、死体に目を向け、レヴィスは溜息を吐いた。終わりだ。フィン・ディムナに殺害現場を見られた。この男は、もし自分がオラリオの住人に危害を加えたら、自分を殺すと宣言していたではないか。
「……お前なら、今の私を殺せるだろう。【アポロン・ファミリア】との戦闘で力を使ってしまったせいで、まだ本調子ではない」
視線を空に向け、レヴィスは小さな声で哀願した。
「ハムザには伝えてくれ。済まなかった、と。それだけを約束してくれるなら、お前の手にかかるのも良いだろう」
「僕は約束はしない。怪物とは、決して」
フィンは柄を持ち直した。その時、少女がレヴィスに声を掛けた。
「お姉ちゃん、ありがと。アイス、あげる」
血だらけになったアイスクリームを手渡され、レヴィスはぎこちなく固まった。
お礼を言って去っていく少女の背を眺め、レヴィスは言う。
「さぁ、ひと思いにやってくれ。私にはもう、使命など残っていない」
レヴィスの予想に反して、フィンは肩を竦めた。
「君は何か勘違いをしていないかい?レヴィスさん。僕はたまたまここを通りかかっただけで、君のことは何とも思っていない。さぁ、はやくこの場所を離れた方がいい。でないと、君が殺人犯だと疑われてしまうだろうね」
背を向け、フィンはその場を後にした。たまたま通りがかった馬車を止め、フィンはそれに乗り込んだ。
「どこへ向かいやす?」御者が馬上で言った。
「どこでもいい。しばらく気の向くままに、走らせてくれ」