ダンジョンに性交を求める眷属の物語 作:kuracjaponski
『ねぇボクぅ、このおちんちんおっきいと思う?』
青髭のでっぷりと太った男はいきり立つその股間を押し付けるように近づいてくる。
(やめろ…)
先端から我慢汁を垂れ流しながらびくびくと動くそのペニスをしごき始める。
『ほら御覧、こんなになっちゃったのよ。ボクのせいよ…』
(やめて…)
男の紅潮した頬を見て悪寒が走る。目が合った。ハムザは言葉を聞くまでもなく、そのホモが何を言おうとしているかを理解してしまった。
(今からこの巨大なペニスでお前のケツを調教してやる)
「…やめろおおっ!」
がばっと起き上がると、体が冷や汗でびしょびしょになっている。動悸が激しく、今にも息が切れそうだった。まるで二百メートルを全力で走った後みたいだ…。
「…むにゃあ、アウト―…」
隣で主神が気持ちよさそうに眠りながら寝言を発する。悪夢にうなされるのは、今日が初めてではない。ホモに襲われる恐怖と、トラウマ。それは確かにハムザの心に傷を残し、すっかり怯えさせてしまっていた。だから目が覚めてすっかり安堵しきっても、再び眠りにつこうとは思えなかった。
「…本当にアウトか、ちゃんと見たか?ちょっとでもベースを踏んでいなかったか?」
「…いやぁ…たぶん、アウトじゃ…」
全く何の夢を見てやがる。こっちは悪夢にうなされていたというのに、呑気なものだ。外はまだ暗いようだ。ハムザはベッドから起き上がり珈琲を淹れはじめる。豆をガリガリと挽くと、なんとも心地のいい匂いが広がった。粉末状になった豆を水と一緒に容器に入ると、魔石
テントの外へ出てみると、外はやはりまだ暗かった。どこからか、男女の嬌声が聞こえる。ほとんど男が主導権を握られてしまっているようだ。アマゾネスあたりに攫われて、骨の髄までしゃぶりつくされているところだろう。ふあぁっと大きく伸びをしてからテントに戻ると、珈琲の良い香りが漂ってきた。オラリオに来てから既に半月と少し。少しずつだが、まともな暮らしが出来るようになってきた。少なくとも目覚めの珈琲を楽しむくらいには。
ふと、支柱に括り付けてあったエイナの『目標達成シート』に目がいった。昨日ナァーザちゃんをハメ倒したから、『短期』の目標の一つであった『百万ヴァリスを貯めてナァーザちゃんとセクロス』は消されている。残されたのは、『ランクアップしてリヴェリアちゃんのおっぱいを滅茶苦茶にする』と『シルちゃんと中出しセクロス』、『サポーターのセフレを探す』ことだけだった。
(シルちゃんかぁ…。あの酒場じゃリューちゃんに監視されて下手なマネはうてんからな。祭りにでも参加してくれてれば、どれだけやり易いか…)
ぴこん、ぴこんと音がして珈琲が出来た。カップを取り出し、近くに置かれている角砂糖を何個も入れる。ずずず、と一口飲むと、甘い珈琲が口いっぱいに広がっていった。
(…うまいうまい)
「…うぅぅぅ、私にも淹れてくれぇ…」
寝ぼけ眼をこすりながら、主神が目を覚ます。
「なんだ、もう
それからしばらくして、テルクシノエ・ファミリアの
「で、神の宴とやらはどうだった?友達には会えたのか?」
「…うむ、まぁ、一応じゃ。親友はおらんかったがの。それに、たっぷり荒らしてやった」
神の宴に赴いたテルクシノエは、片っ端からハムザのレスキルの事を吹聴していった。神々の反応は様々で、詳しく聞いてくる者や遠くから耳を傾けるだけの者など、とにかく全員が興味を示していた。
それもそのはずで、娯楽に餓えて現世に降臨した彼らにとっては、子供の『恩恵』は最も不思議で最も興味深いものの一つだからだ。全能の神を以てしても、子の可能性は無限大だった。時にまったく予期しない偉業を達成する子供が表われ、神々の予想すべてを覆す。ほとんどの場合、それを可能にするのは自らが与えた『恩恵』の力だった。
「…連中はお前の性交一途について、詳しく知りたがった。勿論今は噂程度だが、お前がランクアップする頃には大騒ぎになるだろう。それこそ、お前をスカウトしようと色々な神があの手この手でちょっかいを出してくるに違いない」
他のファミリアの団員を半ば強引に奪い取った例は、枚挙に暇がない。神々にとってそんなものはただのボードゲームであり、智謀知略を尽くして相手の持ち駒を奪い取ることは、むしろ当然の感覚だ。
「…お前のスキルは間違いなく神にとって垂涎の的だ。奪い取ろうとして来るものもいるだろうし、利用しようとするものも出てくるはずじゃ。まぁ、せいぜい頑張れよ」
女神が語る一連の話の結論に、思わずハムザは噴出した。
「お前、俺を守る気全くないんだな。まぁいい。神様の遊び事に付き合ってやろうじゃないか、俺に手を出せば逆にそいつの眷属を喰ってやる」
●
時刻は早朝を少し過ぎただろうか。まともな生活習慣を持った人々なら、朝食を取り終えて珈琲や紅茶などで一服してから、さぁ外へ出かけようと思うような頃合いだった。仕事へ行くもよし。買い物に出かけるもよし。しかし、今日だけはそんな野暮な用事で外出するわけにはいかない。なにせ一年に一度の祭りだ。そう、今日は怪物祭。往来を行きかう人の数は平日よりも多く、皆が嬉しそうな顔をしている。
怪物祭が開催される円形闘技場付近の広場では、商売熱心な働き者たちが美味しそうな匂いを存分に漂わせながら食べ物を売り始めていた。その中でも取り分け住民の心を惹きつける出店は『じゃが丸くん』だ。それを手渡された人々は嬉しそうに顔を綻ばせながらかぶりつく。今もまた男女一組のカップルが、そのうまそうな湯気をのぼらせるホクホクな『じゃが丸くん』を受け取った。
「う~ん。まずくはない。でもこの納豆味って、ちょっと臭くねぇか?」
「そりゃそうじゃ。納豆は極東の食べ物で、腐敗した大豆の事を指すからの」
男はうげぇと顔をしかめ、残りを全部主神に差し出した。
「…なぜ早く教えてくれなかった。眷属が腐った豆で腹を下すところだったぞ。これ、やる。もういらん」
主神は「なんじゃ、もったいない」と言ってその食いかけの『じゃが丸くん納豆味』を受け取る。二人は円形闘技場まで歩いていき、やがてチケット売り場まで辿り着いた。既に行列が出来ている。
「…おい、こんな人混みの中で何時間も待つつもりなのか?」
「せっかく来たんじゃ。名物の祭りを見ておかんとな。祖国のばあちゃんへの土産話の一つでもないとお前もつまらんじゃろ、ハムザ」
ハムザは遠い目で主神を見やる。以前もどこかで待たされた際に、三十分程我慢してやった覚えがある。その後は、雑魚の右腕を切り落とす程度で勘弁してやった。もしここで何時間も待たされるのであれば、一体何本腕を切り落とせば良いのやら…。
「俺は
くるっと背を向け、あっさりと列を離れる彼を見て、主神も仕方なくついてきた。
「あ、こら、待て。私はお金がないから一人じゃなにもできんのだ。ま~て~」
一方、彼らとは真逆の西ゲート付近では、神ヘスティアとその眷属が睦まじくいちゃついていた。
「はい、ベル君!あ~~ん!」
女神はそう言いながら口を開けて食べ物をねだっている。
「神様っ!?そういう時は普通神様が僕に食べ物をくれるんですよ!?」
「いいじゃないかベル君っ!細かい事を気にしてちゃ祭りは楽しめないぜ!?」
(ふふふ…。今日は念願のお祭りデートだ!今日はたっぷりボクのベル君を可愛がってやるんだっ!)
往来の人々はそんな神と人のラブシーンを見るなり、気まずそうに視線を逸らす。
『『昼間から何いちゃついてんだ、こいつら…』』
『『ほっときなさい。ちょっとでも邪魔しようものなら、女神の天罰が下るわよ…』』
そんな呆れた彼らの声に混ざって、女性の声が広場に響く。
「ベルく~ん!」
走り寄ってきたのは、ギルド職員のエイナだった。彼女はヘスティアを見るなり挨拶を始める。
「…初めまして、神ヘスティア。私ベル・クラネルさんの迷宮探索アドバイザーを務めております、エイナ・チュールと申します」
ぺこりとお辞儀するエイナを見やって、ヘスティアはふんと鼻を鳴らした。少しでもでもちょっかいを出してみろ、ボクはただじゃおかないぞ!と、そんな顔をしながら。
「…ベル君。この前も話したけれど、ちゃんとハムザ君にお礼を言ったの?ご飯代、立て替えてくれたんだよ。ちゃんとお礼を言わなきゃ」
ベルは俯きながら「でも…」とか「その…」ともじもじする。そんな彼の優柔不断な態度を見て、エイナは感じた。
(ベル君って、本当に子供みたい…。でもきっとこんな子の方が、面倒の見甲斐があって私好みなんだろうけどなぁ…)
言葉の冴えないベルの代わりに、女神が代弁する。
「…アドバイザー君。ベル君の話によれば、その男は愛しのベル君をミノタウロスの目の前に蹴りつけたそうじゃないかっ!そんな奴にありがとうなんて、例え結果的にベル君が助かったとしても、絶対いうもんかっ!」
「う~ん。ヘスティア様の言う通りではありますけど…。彼がロキ・ファミリアの剣姫を呼んだから間一髪ベル君は救われたわけですから…。お気持ちはわかりますけど、やはり謝罪をするべきだと思います」
エイナの言葉にヘスティアはむむむっと頬を膨らませ、ぷいっとそっぽを向いた。眷属が子供なら、神も子供のようだとエイナは思った。
「…神様、僕謝ります」
ややあって、ベルは言った。
「きっとあの人、僕を助けるために仕方なくやったんだと思います。それに、食い逃げ犯のままじゃ、シルさんと顔を合わせられません…」
「なんだいなんだい!ベル君の浮気者ー!それにそのシルとかいう娘は、ベル君の事なんて今頃忘れちゃってるに違いないさっ!さっ、ベル君!それよりあっちのじゃが丸くんの出店に行こうぜ!」
ヘスティアはベルの手を引きながら人々でごった返す道を駆けていった。
(はぁ、変わった神様だなぁ…)
エイナはため息交じりに呟いた。しかし、神様にまともな者なんているのだろうか…。自分が知っている限りでは、皆癖の強い神様ばかりだ。すると、周囲で警備と誘導役を務めている職員たちの声が聞こえてきた。
『...愚痴は後にしろ、はやく人をまわすぞ!』
怪訝な顔をして、エイナはその声の方向を見やる。すると更にざわつきは広がっていった。
『待機の連中は何やってやがる?』
『二日酔いとか、そういうレベルの状態じゃないって話だぜ…!?』
エイナは不穏な空気で話し合う彼らに駆け寄った。
「すいません、何があったんですか?」
「あぁ、西ゲートに待機してる職員が、何人かぶっ倒れているらしい。大方飲みすぎが原因だとは思うが、今代わりの職員を派遣しようとしていたところだ」
「…?」
こんな時に、こんなタイミングで。そんなに都合良く職員が何人も倒れるのだろうか。ざわつく心を必死で抑えながら、エイナは円形闘技場を見上げた。闘技場の向こうには、深い青空が続いている。
青空にモンスターの轟が響く。その直後、けたたましい歓声が闘技場に鳴り響いていた。
(私の思い過ごし…だよね?)
そこに光は届かない。正方形に切り取られた巨大な石が積み上がるその冷たい空間で、女神は微笑んでいた。その燃え上がるように輝く瞳で、その甘くとろけるような唇で、目の前の怪物に彼女は合図した。
(…さぁ、いってらっしゃい?)
銀色の毛並みを震わせながら、巨大な影は動き始める。
(…小さい
彼女の瞼に焼き付いて離れないあの色を。あの
…少しだけ、苛めてやりたい。
それはささやかな、それでいて苛烈な女神の悪戯だった。
「おー、シルちゃーん!」
闘技場では相も変わらず大歓声が鳴り響く。そんな熱狂の余波に弾かれるように、ハムザたちは闘技場から離れていった。そこでたまたま通りすがったシルを見つける。
「あ、ハムザさん!それに主神様もご一緒で。ふふ、今日はお二人でデートですか?」
「バカをいえ。こいつはかーちゃんみたいなものだ。デートをするなら君がいい。なんなら邪魔者神様は今すぐ追い払うぞ。ほれ、しっしっ!」
主神は白けた顔で眷属を見つめる。彼女は無言で手に持っていた綿菓子に噛り付いた。
「…いけませんよ、ハムザさん?リューが聞いたら、きっと悲しみます」
「リューちゃんとはまだ何もない。安心していいぞ、君だって彼女と比べても遜色ないほどの美人だ」
シルは少し顔を赤らめながら、上目遣いでハムザを見る。
「ふふ…ありがとうございます。ところで、私は丁度いま用事が終わりました。これから少し近くで出店の見学でもしようかな~なんて思っていたんですけど、財布を忘れちゃって」
てへっ、と舌を出す街娘。主神がごほんごほんとわざとらしく咳込みながら口を挟んだ。
「…のう、私ひょっとして邪魔者な感じ?」
「いえいえ、神様も一緒に楽しみましょう!」
そう言ってシルはハムザの手を引いて、出店の方へ歩いていく。
(別にいいんだが…何かうまいこと俺のおごりパターンに持っていかれてる?)
強かな街娘だな、そう思っていると彼女が矢継ぎ早に口を開く。
「それにしても、モンスターを調教するなんてよく考えましたよね。私なら絶対すぐやられちゃいますよ。ハムザさんはきっとお強い冒険者なんですよね?私も一度でいいからお強い方との色恋沙汰を噂されてみたいなぁ、なんて…。えへへっ、あ!あんなところに霜降り子牛のステーキ串がありますよっ!みんなで一緒に食べましょう?」
ハムザはシルに話術に流され、まんまと一本八百ヴァリスのステーキ串を買わされていた。それにしても…とまたシルが話を続ける。
「オラリオの娯楽って、あんまりないんですよね。血気盛んな冒険者さん達のガス抜きとしては、
「モンスターの調教が娯楽だって?そいつはひどいな。俺なら、シルちゃんに楽しい男女の娯楽を教えてやるぞ。どうだ、今度一緒に…」
『…きゃあああああああああっ!』
ハムザのエロい誘いを遮って、広場から悲鳴が聞こえてきた。「な、なんだぁ?」と彼らは慌ててその悲鳴の場所へ向かう。そこには、全身を覆う白銀の毛並みを靡かせて立つ、巨大なモンスターの姿があった。
●
「ガネーシャ様、大変です!まずい状況になりましたっ…!」
ガネーシャは円形闘技場の特別貴賓席に陣取り、腕を組みながら祭の進行を見守っている。眷属が慌てた様子で近づいてくるなり、状況を報告する。
「モンスターが逃げたっ!?それは大変だ。さすがにまずい状況だろう!」
「だからそう言ったじゃないですか!?監視員たちは皆ぶっ倒れて会話もままならない状況です!シャクティ団長もですよ!?このままモンスターが街で暴れはじめたら、うちのファミリアの信頼は失墜です!?」
(…まずいな、まさかジーガが?いや、ありえん。あいつにシャクティを打ち負かす能力があるとは思えんからな…)
ガネーシャは一考してから、団員に告げる。
「各派閥に協力を要請しろ。メンツは考えるな。民衆の安全だけを優先しろ!」
団員は了解して走り去っていった。闘技場は大歓声に包まれる。今まさに、団員がドラゴンの調教を終えたところだった。
ちょうどその頃、ハムザはシルバーバックと対峙していた。二人は間合いを測りながらじりじりと詰め寄る。ロングソードを構え、一瞬の隙も見逃さないつもりで視線を合わせ続ける。そして、尻尾と見紛う程の長さを誇る銀色の長髪が微かに揺れた。
(来やがる…っ)
シルバーバックは全身の筋肉を駆使し、一瞬で間合いを詰めよる。
疾い。しかし、かわせる…。ハムザはひらりと身を翻した。その瞬間、信じられない光景を見た。
自分に向かって突進してきたと思われたその大型モンスターは、ハムザを通り越して一直線にある人物に突撃している。そのモンスターの目線の先には、間抜けな顔をして呆ける主神の姿があった。
(やべっ…)
咄嗟に目の前を流れる銀色の長髪を掴み取り、それに力を込めて引っ張ることでシルバーバックの突撃を食い止めた。
「…無視してんじゃねぇぞ!糞ゴリラ!」
ここ数日間の修行セックスの甲斐もあり、ハムザのステイタスは飛躍的に上昇していた。今では剣の重みも、速さも、以前とは比べ物にならない程だ。全身に溢れる『恩恵』を噛みしめながら、モンスターに向かって突撃する。
止まる事のない斬撃の雨に、シルバーバックはたじろいだ。巨躯を素早く反転させながら回避を試みるも、肌を傷つける斬撃を避けきることはできない。苛立ちを隠せないシルバーバックは、耳を劈く咆哮を上げ力任せにハムザに体当たりをする。
ハムザはその衝撃を受け止めきることが出来ず、ごろごろと地面を転がった。大の字になり見上げると、主神の顔がある。
「お~い。はやくあの猿ぶっ殺すのじゃ。お前、意外と弱いな~」
(いらっ)
「は、ハムザさん!?大丈夫ですかっ」
シルが駆け寄ってくる。なんて事はない、ふっ飛ばされはしたものの、アイツに手傷は負わせてある。こっちの勝ちは揺るがない…。ハムザは剣を地面に突き立てながら体を起こす。興奮したシルバーバックは流れ出る血液を気にも留めず、ただ一直線にこちらを目指して進んでくる。
(…うーん、俺を狙っているというより、神様を狙ってるって感じだな。このまま力比べしても埒があかんし、疲れる。ここはいつものやつで行くか…)
「シルちゃん、大丈夫だ。下がってろ」
そう言ってハムザは主神に歩み寄り、首根っこを掴んだ。主神は「なにをするのじゃーっ!」と暴れている。力を籠め、投げた。主神を。
『『ええっ!?』』
いつの間にか溢れかえっていたギャラリーから、思わず驚きの声が上がる。主神を、生贄にした…?シルバーバックは歓喜の形相で「うほっうほほっ」と鳴いている。ふと、モンスターの股間が肥大してきた。
『『うわぁ…あれ、勃起じゃねぇ?』』
『『でかっ!一メートルはあるぜ、あんなの、凶器だよ…』』
固唾をのんで見守るギャラリー。その真ん中で、勃起した怪物と対峙しながら主神は冷や汗を垂らしている。
(な、なんじゃ?この状況…)
ハムザの姿はいつの間にか見えなくなっている。主神をダシにして逃げたか、あるいは…良からぬことを、企んでいるのであろうか。女神は怪物と目が合った。不思議と、彼の思考が読み取れた気がした。
(俺のイチモツを今からマンコにぶち込んでやるぜ…)
怪物の巨大な影が女神に覆いかぶさる。勃起した巨大なペニスからとろりと汁が零れている。あ、終わった。彼女がそう思い、ぺたんと尻もちをついた瞬間。
極上の獲物を前に隙だらけの怪物を、真上から飛び降りてきたハムザの剣が貫いた。体内の魔石を貫き、瞬く間にシルバーバックは灰になる。突然の出来事に周囲から歓声があがり、シルも嬉しそうに手を叩いている。ただ一人、主神だけは不機嫌そうに顔をしかめながら呟いた。
「…主神を囮に使う奴がおるか、ぼけ」
「主神を守る眷属をバカにしたあほはどこの神だ、まったく。ほれ、さっさと立て」
ハムザは不機嫌な主神に説明する。
真正面から向き合うのも面倒で、疲れる。だからモンスターの気を神で紛らわせている隙に屋根の上に登り、後はタイミングを見計らって飛び掛かれば何とかなるだろうと思ったと。咄嗟に考えたにしては、割と上出来な作戦だろうと。
ハムザが怪物を倒したことで、ギャラリーはほっと息を撫でおろしながら解散していった。シルは興奮しきってハムザを褒めたたえ、主神はそれに茶々をいれる。その時、ふと地面が揺れたような気がした。
「……んん?」
自分達の真下で、何かが蠢いているような。揺れは激しさを増し、弛緩した空気が一瞬にして張り裂ける。
「…避けろっ!!!」
彼が言えたのは、たったそれだけだった。咄嗟に二人を力いっぱい突き飛ばし、揺れる足場から遠ざける。そして、ハムザの真下で地面が割れた。粉塵が爆炎の様に舞い上がる。一瞬の出来事に絶句する二人は、迫り来る粉塵に隠れて、吹き飛ばされた彼の名前を叫んでいた。
夕刻の闘技場。演目はとうに終了し、観客の影は一つもない。夕陽は闘技場に降り注ぎ、以前として鎮座する浅黒いガネーシャの肌に真っ黒な影を落としている。
「…騒動はようやく収束したようです。放たれたモンスターは九匹。いずれもロキ・ファミリアの協力もあり被害は最小限に抑えられています」
「怪我人はなしか?」
その言葉に、報告をしていた団員は頭を横に振った。
「どこぞの冒険者が一人、重症のようです」
夕陽は、真っ赤にオラリオを染め上げている。一連の騒動の首謀者の事、怪我をした冒険者の事、そして今頃復讐に燃えているだろう自分の眷属の事。ガネーシャはその両目をそっと閉じ、徐に立ち上がる。
「…
精悍な顔つきを歪めながら、彼は自らの無力を恥じていた。
(せめて、無事でいてくれよ。どこぞの冒険者…)
●
西日が窓から入り込んでくる。忍び足に合わせて、木張りの廊下が歩を運ぶ度にぎぃぎぃと軋んでいた。足音はベッドの前で止まり、不安げな顔をしてそこに横にされている冒険者の姿を見た。ぼろぼろだ。
(助けて、くれたんだよね…。それでこんなにぼろぼろになっちゃって…)
「…リュー。容体はどう?」
『豊穣の女主人』の二階では、リューとシルが交代で看病を続けていた。今の今ま容体を見守っていたリューは、頭を振って「まだ意識は戻らない」と伝え、階下に降りていく。シルがそっと額に手を当てた時、彼は「うぅ…」と唸った。
「…ん?シルちゃん、おはよう。いてっ…」
ハムザが体を起こそうとすると、全身が悲鳴を上げた。指一本も動かせる気配がなかった。
「ハムザさん、大丈夫ですか?まだ無理しないで下さいね。数日で容体が回復するみたいですけど、まだ骨がくっついていませんから…」
シルの顔に安堵が浮かぶ。彼女はハムザに経緯を説明した。地面から新種と思われるモンスターが現れたこと、ロキ・ファミリアの第一級冒険者たちによって撃退したこと、上空に打ち上げられたハムザが付近の家屋内に屋根を突き破って落ちてきたこと…。
そして彼女は大急ぎで回復師を呼び治療を依頼した。テルクシノエは途中まで傍で見守り続けていたが、容体が安定するなり帰宅してしまったらしい。とにかく、「良かったです」と、何度もシルは安堵のため息を吐いていた。
「いててて…。体内に毒が回ってしまったようだ…このままでは死んでしまうかもしれない」
わざとらしく痛がる素振りを見せるハムザに、シルは首をかしげている。
「…?」
「まずい、解毒が必要だ。シルちゃん、ちょっとお腹の辺りをさすってくれないか…」
言われるがままに、シルはお腹をさすった。
「…こう、ですか?」
「そう、そうそう…もう少し下の方…」
(えっ?もっと下って…
「ぐひひ…もっと、もっと下だ」
こつん、とシルの滑らかな指先が勃起したペニスに触れた。
「………」
シルは動きを止め、じとっとした薄目でハムザを見る。ハムザはいやらしい顔付きでそんなシルを見返した。
「…うぅ、毒が回って、勃起が収まらない。はやく吸い出してくれないと、きっと死んでしまう。あぁ、誰か助けてくれ~」
「…ふざけているんですか?」
大真面目、なんだろう。聞くまでもなくシルは理解していた。ハムザがどういう人間なのかは、最初から分かっていた。垂れる薄桃色の髪をさっと掻き揚げ、流し目を送り笑みを浮かべる。
「…リューと私、どっちが綺麗だと思いますか…?」
その仕草を前にすれば、どんな男性も君が綺麗だと言いたくなるだろう。それはハムザにとっても同じことだった。
「お…俺はシルちゃんとセクロスしたい」
「それはダメです。それに、ちゃんと答えてください」
シルの柔らかい指先が、ズボンの上からペニスの先端に優しく触れた。そして、シルはそれを勢いよく掴んだ。
「…
体が動かないのはもとより、急所を握られてしまえば抗う術はない。可愛い顔して、恐ろしい事をする娘だ…。
「…シルちゃんの方が綺麗だ」
(本当は甲乙つけ難いんだけど、まぁそういうことにしておいた方が無難か…)
「…よくできました」
ふふふっと可憐な微笑みを浮かべて、シルはハムザのズボンを下ろして勃起したペニスを握った。滑らかな肌の感触が、ペニスを包み込む。ハムザの感覚は全神経が股間に集中していた。この素晴らしい感覚を、決して逃すまいとして。
「…助けていただいたお礼に、その、手でお手伝いして差し上げます」
「…おほほほほっ…」
『豊穣の女主人』の厨房で忙しそうに食器を洗っていたリューは、ふと時計を見やった。頃合いだ。シルと交代で看病しつつ仕事をこなしていた彼女は、交代の時間を示す時計を見てその手をとめた。
(もしかしたら、そろそろ起きている頃かも知れません)
淡い期待を胸に抱きながら、彼女は階段をゆっくりと登っていった。
「あっ…リュー!」
二階に登った時、シルが慌ただしそうに彼女の前に表われてきた。「えっと、彼、起きたよ」とだけ言い残し、足早に去っていく彼女を怪訝そうに眺めながら、リューはハムザの傍に来て、近くにあった丸椅子に腰かけた。
「…体調はどうですか?」
慈愛のこもった視線で、リューは優しく問いかけた。
「お、おう。問題ない。うん、最高だ」
そこで、彼女は辺りに充満した臭いに首を捻った。
「…不自然な臭いだ。シルはイカでも捌いていたのですか?」
「は、はは。まぁ、そんなところだな」
曖昧にはぐらかすことしか、彼にはできなかった。
それから数日して、青の薬舗ではミアハとナァーザが刺激臭の放つ薬品が散乱した部屋で、不眠不休の労苦からついに解放された。
「ミ、ミアハ様。やりました…。あとはこれを入れれば完成です…!」
主神は彼女の頭をよしよしと撫でた。彼女はぱっと顔を赤らめるも、すぐに身を離す。
「ではナァーザ、後は私がやっておこう。お前は少し休め。…不眠不休で、つらかったであろう」
神の言葉に頷き、ナァーザは別室で休息を取るために移動した。途中、散乱した瓶詰の一つを踏みつけてしまい、危うく転ぶところだった。
「では…。ミアハ様、後は二十分間寝かせてから
部屋を出る際、ナァーザは危険な笑みを浮かべていた。それを主神に見られずに済んだのは、幸いだったかもしれない。
(ふふ。これでハムザは、私のもの…)
ばたん、と戸が閉められ、取り残されたミアハが一人で最後に仕上げに取り掛かった。
「わかっておる、わかっておる。…
今しがたの出来事を思い出そうとするも、しばらく休息を取っていない頭はふらふらと定まらず、重い。
「まぁ、確か
●
「のう、ハムザ。最近何か忘れている気がせんか?」
テルクシノエ・ファミリアの
うーん、と彼はうなった。確かに、何か大切な事を忘れている気がする…。
「ま、いっか」
「そうじゃの」
お気楽な二人は、それ以上考える事をやめた。
「今日の探索で、10階層まで行ってみようと思う。あの発情ゴリラもその辺が縄張りだろ?一応倒せたから多分何とかなるだろうし…。しばらくエイナちゃんにも会ってないからな、一発やってから10階層に初上陸の予定だ」
がんばれー、かせいでこーいと気の抜けた返事を送る主神。いつも通りの日常が、再び始まろうとしていた。
同時刻、ダンジョン10階層の入り口にて。ジーガは己の獲物を携え、虎視眈々と獲物を待ち伏せていた。
(ここに来た時があの糞野郎の最期だ。切り刻んで、豚の餌にしてやるまで俺の気は収まらねぇぞ…)
彼らは、大切なことを忘れていたままだった。
練習で書いているものです。クオリティはあまり追及していないので、誤字脱字、本編との矛盾等はご容赦ください。
ご意見・ご感想大歓迎です。
変な点があったら教えてください。しょっちゅう加筆しています。