こばやしさんちのめいどらごん 作:書いてる人
別もんと捉えてくれてたらいいですかね。
(この話は支部であげてたもの(数時間)で、1話で終わりです。あとえっちいとこないっす)
「トールッッ?!なんだこれはッッ!」
「おっ効いてきましたか!」
「効いてきましたか!じゃないわッッ!」
頭を抱えた小林さんが床にうずくまりはぁはぁと息を乱す。
「なにを盛りやがった…」
ぎりりと歯を噛み締め見上げる小林さんは涙目で顔がやけに赤い。つまりとてもかわいい。
「欲望に忠実になる薬ですよ!」
「な、」
「さぁ小林さん欲望をさらけ出してください!私がなんでもしてあげます!!」
「なに言ってん、」
「小林さん色々抑制し過ぎだと思いまして、親切心です!」
「嘘つけッッ!やましい気持ちもあるだろうがッッ!」
「あ、バレてます?」
「この、エロゴンッッ」
「テヘ」
クソォとブルブル震える小林さん。
効き目はバッチリのようだが、今だ襲ってくる気配がない。
やはり小林さん、しっかりしている。立ち上がり寝室に逃げようとする。
「ああ、小林さんフラフラしてますよ」
「誰のせいだと…」
「ほら手を貸しますから」
「くっ、近づくなトール、」
バシッと振り払われて、小林さんが寝室の扉に倒れこむように体をもたれかける。なんとか立っているがぶるぶると震えは止まっていない。
「でも小林さん…、」
チラリと小林さんと目が合う。
じっと見つめ返すと、涙目の小林さんの視線が揺れた。
「小林さん?」
はぁ、はぁ、と小林さんの息が荒くなる。
とても熱っぽい。
おおこれは、と期待に胸が膨らむ。もしこれで小林さんに襲われたりすれば、普段から小林さんは私の事を少なからず襲いたいという欲望があるわけでして!ふふ、ふふふふふ!!
「……とーる、」
「は、はい!」
扉から離れた小林さんがふらりと私の方へ。
あああやったああああ!!!!
「へ」
襲われると思い、両手を広げ、目を閉じて構えたら、バフッと重みが。
「……小林さん?」
「とーる……」
小林さんが、トロンとした目で私に抱きついてきている。
え、なに。
ぎゅううううっと強く抱きしめてくる小林さん。
「こばっ、」
小林さんの全体重をかけられて全力で押し倒されるために力を抜いていた私は、バランスを崩しそのまま床に座り込むように倒れる。みっともなく尻餅を初めてついた。
押し倒された、と表現するには些か無理がある。
「あ、あの、」
「……ぎゅってして」
「へ、」
小林さんが首元に顔を埋めてきて、スリスリと頬を私の肌に。やけにリアルでぞくぞくした。
あああ、と、よくわからないまま広げて固まっていた両手をぎこちなく動かす。
「こ、ばやしさん、」
ぎゅうぎゅうと抱きしめてくる小林さん。
むにむにと布越しに小林さんの温もりとか体の形とかが伝わってきて頭の中がグラグラと痺れる。
「……とーる、」
「は、はい?」
「つよく」
よくわからず、腕のことかと両手に力を込めた。
小林さんと同じくらいかそれ以上、ぎゅううと抱き締める。
壊れないように、ただ小林さんを優しく強く。
小林さんの香りが鼻に通り、思わず無意識的に、すでに数センチも離れていない小林さんの首筋に顔を埋めた。
スリスリと肌に顔を密着させて、頭の中がぼーっとしてくる。
時折小林さんが動くと、きぬ擦れと私と小林さんの吐息だけが残り、それが耳につく。
ぼんやりとなにも考えられず、小林さんで一杯になっている事にただ幸福を覚える。
すきだなぁ、と、思った。
「小林さん……」
ぎゅうぎゅうと抱きしめ合い、数分。
私には理性というものがあって、もちろんそれがなくなってしまう事もある。
そろそろ限界が、
「……ん?」
小林さんがすうすうと寝息を立てていることに気づいた。
「え、ちょ、うそ、」
ばっと離れて小林さんを見る。
「ちょ、小林さん?!小林さんてば!!」
「んん〜〜」
「ね、寝ないでください小林さん!!この薬寝たら効果が!!!」
「……すぅ」
「あああああそんな!!こっちはめちゃくちゃムラムラしてるんですよ?!嘘でしょう?!」
すうすうと小林さんの寝息が響き、ただ私は喚いた。
「くそーーー!!襲ってもらえないじゃないですかァァァ!!」
「抱きつきたいならいつでもそう言えばいいじゃないですか……」
「なっ、ば、ばか、やめろ……」
カァと赤くなる小林さんが見えて、少しスカッとするどころか満足までしてしまう。かわいい。
「私いつでもぎゅうってしてもらっていいんですよ?」
「だからっ、そんなんじゃ…、」
「でもあれ小林さんの欲望を忠実に、」
「やめろって…」
頭を両手で抱えてくそぉと唸る小林さん。よっぽど恥ずかしいのか顔を見せてくれない。
ご飯は食べ終わり、食器の片付けをしていた。カンナはお風呂に入っている。
「はぁ、というかなんで抱きしめたいなんて思ってたんですか」
「……」
「あ、」
「え、なに」
「そう言えば寝室にも枕とか結構ありましたよね、もしやあれ抱き枕、」
「そっっ、そんなことはッッッ」
ガタガタッッと立ち上がった小林さんにびっくりする。
「あの、顔赤いですよ」
「ーーーッ、」
「…………なるほど、眠る時に抱き枕が無くて欲求が……」
私たちが寝室に潜り込むことで、さすがに抱き枕なんか使うのは恥ずかしい、といったところですか。
「もーーー小林さんかーーわいいーーー!!」
「くっ!!」
「でも抱き枕使ったらよかったじゃないですか」
「そ、れは……、」
その、と目線を逸らして小林さんが椅子に座りなおす。
「なんですかごにょごにょと……」
「その、子ども、っぽいし、」
カンナちゃんも居るし、とブツブツ。
か、カワイイ(迫真)。
「も、もう!仕方ないですね!私が抱き枕の代わりを、」
「それはいい」
「えええっなんでですかぁ!甘えてくれていいんですよ??」
「っな?!、あま、甘えてない!」
「…………とーるっ、て子供みたいにぎゅうぎゅう抱きしめてきたのは誰でしたっけ」
「ッッそれは、薬で!!」
ふと思い出したように、あ、と小林さんが。
「あとあの薬またつかったらクビね」
「ええーー!?そんなぁ!!まだほら!こんなにあるのに!!」
「使う気満々かよ……」
ため息をついた小林さんがもう寝ると一言。
「はぁ、わかりましたよ。ああとりあえず、小林さん今日から抱き枕使っていいですから」
「使わないってば!!」
寝室の扉がバンッッと強く締められた。
はぁ小林さんかわいいなぁ。
まぁ…、あんなに小林さんから甘えられたのは初めてなわけで…………。
満足じゃないといえば、嘘だ。
えへへ…………。
今日みたいにこっそり薬をまぜて……、
「トール」
「ひょえっ?!こ、小林さん?寝るんじゃ、」
「薬」
「え?」
「薬出して、ぜんぶ」
「え、」
「私が処分しておくから」
「えーーそんなぁ!使えないじゃないですかぁ!」
「使うなっつってんの!!ばか!」
「はぁい…………」
がちゃり、と扉の開いた音。
「なにしてる」
「あ、カンナお湯どうでした」
「いい感じ」
「それはよかった」
「……、それ何」
「ああこれですか、これは欲望にちゅ、」
あああああと小林さんが口を塞いでくる。
ごにょごにょと小林さんが。
「これはカンナちゃんには秘密にしよう子供にはよくない!!」
「そ、そうですか?」
「そう!!」
「でも、効果っていったって小林さんが甘えたがるくらいで、」
「だからっ!!!それを言うなって!!」
「ああ、なるほど。わかりましたよまったく」
「くっこいつ!」
「んあぁやめてくひゃひゃいぃ」
小林さんにぐりぐりとほっぺを摘まれたがそれだけですんだ。
しぶしぶ薬は引き渡し、この一件は私と小林さんの秘密になる。
へへ、秘密……。
「……トール様、顔きもちわるい」
「えええっ!」
そ、そんな顔してましたか……、
と、小林さんが一つあくびをした。
「私もう寝るよ」
「は、はい……」
「おやすみトール」
と、立ったまま、不意に、ぎゅっと抱きしめられて、体が固まる。
小林さんの香りが。
「へ、」
「………、おやすみ」
とても軽く、ポンポンと背中に小林さんの手が。
「…………お、やすみなさい…小林さん、」
「ん」
パッと離れる小林さんの温もり。ああ、とたった一瞬で名残惜しい。
「カンナちゃんもおやすみ」
「お、おやすみ小林」
と、カンナも一回ぎゅっと抱きしめる小林さん。
カンナとしばらく見つめあって、小林さんが耳を赤くしていたことに気がつくのはそれからだいぶ後になったのだった。
それと、次の日から寝る前のハグが恒例化したのは言うまでもない。