「はぁ……」
溜息を吐くのはこの城『悠久城』の主、ヒジリ
溜息の原因はまぁ、実に様々なものが入り交じったものなのだがとりあえずの原因として目の前で目を輝かせながらこちらを見つめてくる少女、ソフィアにあった
ある日突然城に押しかけてきたこの少女は自分を食べてくれと懇願してきた
なのでヒジリはいつもの狂信者か何かか、と普通に受け流してその身を喰らった……
までは良かったのだが
なんとこの少女、死なないのだ
それどころか失った部位が再生するというとんでもないものを見せられてしまった
一体全体どういった奇跡や魔法の類を使えばこんな人間が生まれるのか?
実に興味深く、それを研究するためにヒジリは彼女を『飼う』ことを決め、少女もそれを受け入れて今に至るのだが……
この少女、全く底が知れない
「ヒジリ様、どうかしましたか?」
ニコニコとした満面の笑顔をこちらに向けてくるソフィア
その眩しさに目がくらみそうになる
自分を食べてくれと懇願した少女はそれはもう狂信者と言って間違いなかった
というより喰ったら死ぬ分狂信者の方がマシだった
狂信的、盲目的、倒錯的、そんなまでに自分を思う少女は毎度毎度自分の身を切り取って食事に出してくる
正直な話、ヒジリにはそれがキツかった
ただ人を欲望のままに喰らう、それだけなら何の罪悪感も感じないのだが、その対象が自ら自分の体の一部を切り落としてそれを調理してくるのだから恐怖そのものといった方がいいだろう
そもそもこんな得体の知れない少女の肉を喰らって自分は大丈夫なのかという疑問もある
毒が仕込まれている……という考えは無かった
そもそもヒジリに毒は効かない
それ以外にヒジリに害なすのなら呪いの類でもなければ……まぁ今の時点で既に呪いじみているとは思うが
「ソフィア」
「どうしましたかヒジリ様?お腹空きました?何か食べますか?」
「いや食べ物はいいのよ てか私が言わないうちは何もしなくていいのよ」
声かけしただけで自身の指をヒジリのおやつ代わりにとスナック感覚で切り落としかねない少女の恐ろしさに若干引き気味になりながらもヒジリは質問を続ける
「なんで貴女私に食べられたがるの」
「えー……以前も言いましたよ?」
「いいのよ、また聞かせて」
ヒジリがそう言うとソフィアはんー……と考えて語り出した
「私が不死なのはお伝えしましたよね?」
「そうね、聞いたわ」
「こんな私はこの体を役立てる方法を探していたんです……奴隷や娼婦、いろいろ考えましたけど、ヒジリ様のお噂を聞いてこれは!と思いまして」
迷い込んだ人を喰らう食人姬の噂はこの地方では有名であった
まぁそれは勇者気取りの冒険者を誘い込んで喰らう為にヒジリが流した噂なのだが……
ソフィアはその噂を聞いて自身を捧げるのにふさわしい相手だと思ってやってきたという
何度聞いても納得できるんだかできないんだか微妙な話である
「なので『飼ってあげるわ、貴女』なんて言われた日にはもう幸せ最高潮でしたよもう!」
やんやんと身をよじるソフィアを見てヒジリはなんとも言えない微妙な感情を覚えたがそれは口に出さないようにして話を続ける
「まぁね……それともう一つ聞きたいことがあるんだけど」
「なんですか?」
それはソフィアの肉を食らってからというもののヒジリは
「貴女私の膳に何か盛ってるの?やたら元気になるのだけど……」
そうなのである
ソフィアの出してくるソフィアの肉を喰らい続けてというものひたすらに調子が良くて困るくらいなのだ
むしろそのせいでいろいろと持て余し気味で……
等と考えていたところでふと我に返る
「あぁ、それはですね 私のお肉って聖職者の方のお肉と同じくらい尊いものらしくっておそらくそれが原因じゃないかと」
「貴女本当に何者なのよ……」
食人姬と食べられたがる少女のお話は始まったばかり……
End