「それじゃあ私は王都に戻るけど皆のタクトの彼女は私だからね。そこのところ忘れないでよ。それからタクトもある程度は自重してよね」
エシリアは王女の警護の仕事のため普段は王都で独り暮らしをしていて、今は一時的に戻ってきているだけで今日からまた王都に戻らなければならないのだ。だから家を出る際に皆に釘を刺してくる。
ソフィーと関係を持った後は家の中ではあまり本性を抑えることが無くなった。エシリアももう他の女と関係を持つことを公認している。
「外では気を付けるよ」
自分の中のタガが緩んでいるのを自覚しながらも約束する。それを聞いてエシリアは大丈夫かなと言って不安そうにしながら家を出ていく。
「それでどうするのタクちゃん?本当に私たちも王都に引っ越す?」
ソフィーが通常モードで聞いてくる。
最近は王都への引っ越しを考えている。俺が王都へ行かなければ彼女であるはずのエシリア一番触れ合いが少なくなってしまう。そして俺が行けば当然皆ついてくることになる。
「わたしはお兄ちゃんが行くならついていくけど、やっぱり長く住んだこの家を離れるのは寂しいかな」
ローズも通常モードで話しかけてくる。確かにローズの言う通り寂しいが致し方ない。そんなわけで最近は王都の物件を調べたりしている。何で俺が調べているかと言うと、今やこの家の決定権は俺に有った。
まぁソフィーは奴隷化していないとは言え立場的には俺の僕なので当然と言えば当然だが。それに王都に行く目的はエロい事をするためなので俺がしやすい物件を選ぶ必要がある。
「それじゃあ今日も頑張って家探してきてくれよ」
リリィに送り出され俺も家を出る。
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「誰かと思ったらタクトではありませんか」
帰り道聞きなれた声が聞こえ振り向くと知っている顔がいた。
腰まで伸ばした少しロールがかった鮮やかな金髪の髪を持ち、透き通ったブルーの瞳でこちらを見てくる女の子とその子の隣にいるルビーのような真っ赤な髪を1つに束ねて凛とした様子で腰にレイピアを携えている女、そしてその他。
金髪の子はここの領主でもあり王族とも血縁関係に有る貴族の娘のエレス・ローアモン。エレスは何故かここが気に入っているようで殆どここに住み着いている。
そしてエレスの隣にいてこちらを視線だけで殺せそうな勢いで睨み付けてくる女はエレスの護衛のスカーレット。
そしてニヤニヤと俺を見ているエレスのおこぼれにあずかろうとしているその他取り巻き達。
「戻ってらしたんですか」
出来るだけ普通を装って言葉を返す。
エレスとその取り巻き達は俺によくちょっかいを出してきて大抵無理難題を押し付けて出来なかった俺を笑い者にしてくるのだ。
「えぇつい先程。それよりはタクト貴方また軍役に落ちたんですって」
エレスがバカにするように言うと回りも同じように見下したり視線を向けてくる。
俺は笑って誤魔化す。
「そんな貴方にわたくしからお仕事を差し上げますわ」
その言葉に内心また面倒事を押し付けてくる笑い物にする気だなとムカつくが顔には出さない。
「実は最近わたくしのお気に入りの別荘に行く道中に魔物がよく出るようになりまして、辺り一帯の魔物を討伐してきて欲しいのです」
「ちょっと待ってください!エレス様のお気に入りの別荘ってあそこの事ですよね!」
悲鳴のように叫びながら1つの山を指差す。そこは山自体が険しいのと強い魔物がよく出ると言うことで地元じゃなくても有名なくらい危険な山だ。
なぜそんなところに別荘を持っているかと言うと、エレス自体がこの国で10本指に入るくらいの力を持っていてその山を登れたため、そこに登ったところそこの景色を気に入ってしまい一人でそこに別荘を建てたからだ。
「あんなところの魔物なんか俺じゃなくても倒せるやつ少ないですって!!」
「勿論貴方一人で行かせるなんて事は致しませんのでご安心くたさいな」
そう言ってエレスは取り巻き達を見る。それに釣られて俺も取り巻き達を見る。よく見ると取り巻き達には知らない顔がかなりいた。
「彼等は?」
「魔物討伐のために雇った冒険者の方々ですわ」
冒険者は国に所属していなくフリーに依頼を受ける者のことで、中には金さえ払えば汚れ仕事もする連中だ。
「こんなに冒険者がいるなら俺必要ないですよね……」
「あら、わたくしの依頼をを断るのですか?」
断ったら許さないぞと言うオーラを出しながら良い笑顔を向けてくる。この女はいつも貴族と言う立場を利用して迫ってくるから質が悪い。
「分かりましたよ、その代わり報酬は頂きますからね」
諦めて素直にしたがう。
「ええ、分かっていますわ」
エレスは何故か毎回依頼の時は報酬をしっかりくれる。それもちょっとした額じゃなくそれなりの大金を。
「では、明日の早朝出発していただきますわ」
そう言って自分の館に戻っていく。
俺はため息をつき家に帰り仕方なく支度をする。
「お兄ちゃんまたエレス様に面倒事を押し付けられたの?」
家で装備やら武器やら道具やらを漁っているとローズが心配そうに聞いてくる。
「あぁ、お気に入りの別荘周辺の魔物を討伐しろだとさ」
「わたしも手伝おうか?」
顔をしかめながらローズが優しく提案してくれる。しかし今回はいつもと違ってかなり危険なので断る。
「まぁ、お兄ちゃんならあそこでも大丈夫だよね♪」
ローズの言う通り俺一人であそこに行っても傷ひとつ受けない自信がある。だが山を登ること自体厳しいのと攻撃する方法がないので魔獣を討伐することはできないが……
「他に大勢いるからな……」
今回は俺一人じゃなく他に冒険者がいる。冒険者にも力がバレない
ようにしなければならない。めんどくさいなと思いつつも支度を済ませる。
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朝集合場所に行くと既に他のメンバーは全員集まっていた。
各々様々な種類の防具やら武器やらを身に付けている。
「なんだ?タクトお前そんな装備で大丈夫か?」
「大丈夫じゃない、問題だ」
「お前鎧すら着れねぇのかよ」
「違うってタクト様は攻撃なんて喰らわないから鎧なんか要らないんだって」
いつもバカにしてくるエレスの取り巻き達が俺を見て嘲る。
俺以外はかなり防御力のありそうな防具で全身を固めているのに対して俺は革製の鎧に急所だけ金属板を取り付けた防御力の殆ど無いものを身に付けているだけ。
山登りでなければもう少しましな物を装備してきるのだが。
「そんなに自信が有るなら先頭で良いよな」
「タクトだけで終わっちまうかもな」
「だとしたら俺ら楽に報酬貰えるのにな」
いつも大した成果もあげずに金を貰っていると言外に言いながらバカにしてくる。
「タクト、死にそうになったら助けてやるよ」
「残念ながらエシリアちゃんはもういないから泣きつけないしな」
「そもそも何でお前みたいなのがエシリアちゃんと付き合えるんだよ」
どいつもこいつも言いたい事を好き勝手に言ってくる。と言うより途中から私怨が混じっていたが。
「お前達出発するぞ」
意外な声がが号令をかける。そこにはエレスお抱えの冒険者であるスカーレットがいた。
「スカーレットさんがいるならますます俺要らないよな……」
スカーレットはエシリアには劣るがそれでもこの国では4番目に強い。しかし騎士団からの勧誘をことごとく断って冒険者と言う立ち位置を貫いている変わり者でもあった。
「ワタシも貴様のようなグズを連れていきたくなどない!エレス様の命令だから仕方なく、仕方なく連れていってやるだけだ!!」
棘の有る台詞で心を切り裂く。こいつは何故か昔から俺の事を毛嫌いしている、と言うよりエシリアを嫌っているからその近くにいる俺の事を嫌っている感じがする。
「こんなクズとは話すだけで吐き気がする。お前達さっさと行くぞ」
吐き捨てるように言ってから別荘の有る山に向かう。
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山では普通を装う。魔物の攻撃を避けるためにみっともなく地面を転げ回ったり、魔物に追いかけ回されたり、1体も魔物を討伐できなかったりと他のやつらに嘲笑される行動をとる。まぁ実際は力を使っていないからこんなことぐらいしか出来ないのだが。
やがて日が暮れ辺りを闇が包み出す。
「これであらかた片付いただろ……」
「タクトは良いよな一匹も倒さずに俺たちと同じだけの金が貰えんだから」
他のやつらももう終わりの雰囲気を出し俺をバカにしてくる。
そんなとき、
「マンティコアだ!!!」
1つの報告にしては絶望感が多大に含まれている声をあげる。
その声に辺りは騒然とする。
「何で魔獣!?」
「それよりはマンティコアだと!?」
「逃げろ!!」
魔獣とは魔物と違い本来は魔界に住んでいるはずの生物の事を指し魔獣は基本的には魔物よりも格段に強い。更にマンティコアはかなり強い部類に入り、討伐しようとすれば国を挙げて殺る必要がある化け物だ。
そして闇の中からライオンの体を持ち、背中には蝙蝠のような翼を生やし、鋭く尖った尻尾を揺らしながら山羊の頭をしたマンティコアが現れる。
冒険者達は蜘蛛の子を散らすように逃げ出す。しかしマンティコアの素早い動きによって捕まり補食されていく。
何人かは戦うが一人を除いて呆気なく肉塊にされる。
「はあぁぁぁぁ」
生き残った一人、スカーレットが勇ましくマンティコアを攻め立て、マンティコアも負けじと雄叫びをあげながら食らいつき、爪を立て、尻尾を突き刺す。
一進一退の攻防が続いたがマンティコアが地面に爪を叩きつけ、巻き上がった土砂がスカーレットの目に入り一瞬の隙が出来る。その隙を見逃すマンティコアではなくスカーレットの体を爪で深々と抉る。
「くっ────がっ───っ」
スカーレットは全身から夥しい量の鮮血を撒き散らし美しい顔を苦悶に歪める。
マンティコアは腕を振るってスカーレットを爪から振るい落とす。またスカーレットの傷から大量の血が噴出し辺りを彩る。
「GEEEEYYAAAAAaaa」
マンティコアは勝利を確信した雄叫びを上げスカーレットに止めを刺そうと腕を降り下ろす。