※この作品はR-18です。

村石君の華やかな憂鬱   作:Mr,J

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第62話

「いや~・・・なかなか腕が良いね村石君」

 

厨房の親方、木谷と言う年齢50過ぎの、少しふくよかな男性に気に入られた竜也は、少し照れながら材料の仕込みに打ち込んでいた。

それを傍らで見ていた内藤は少し驚いた表情でいた。

 

「貴方って、料理の経験があったの?」

「高校を出た後、料理学校に行きました。その後は・・・ファミレスで一時期働いてましたが・・・長続きはしませんでした」

 

職場では仕込みなどはするが・・・家では時間が無いせいか・・・食事はほとんどコンビニの弁当かカップ麺だった。

 

「でも・・・村石君の腕前だったら、ウチでも雇えるのでは無いかな?」

「それはどうでしょう?」

 

内藤が木谷に向かって言う。

「鮎川家の厨房の採用は、面接以外にも試験を行いますから・・・、幾らお嬢様のお気に入りでも、それとこれとでは違いますから・・・、最低でも鯛をさばく腕前は無いと難しいですよ。その辺は大丈夫ですか?」

流石に鯛などをさばいた経験が無い竜也は、採用試験は難しいかな・・・と、思った。

 

「では・・・簡単な面接だけでも受けさせてはどうかな?」

「そうですね、近いうちにご主人様達が帰って来ますし・・・屋敷で雇えるか伺ってみましょう」

「と・・・なると、履歴書を作成して準備して置いた方が良いぞ。休憩時間をやるから、コンビニで履歴書の用紙を買って来ると良い」

 

木谷が竜也に向かって言う。

 

「お待ち下さい木谷さん」

 

内藤が止めに入る。

 

「お嬢様のご命令で、彼の単独での外出は禁じられています」

「ああ・・・そうだった、君の外出には付添人が必要だったな」

 

それに気付いた木谷は、厨房の隅で仕事をしている松岡と言う人物を呼び掛ける。

 

「お~い松岡、お前暇だろう?」

 

松岡と呼ばれた男性は、木谷の側まで来た。竜也は相手の人物を見た。年齢は自分と同じくらいの男性だった。白い料理帽子を被っていて、少し根暗な雰囲気を感じさせていた。

 

「何ですか?」

「彼を連れて近くのコンビニに行ってくれ」

 

そう言われて松岡は竜也を見て「フン・・・」と、小声で答えると・・・

 

「分りました。今から行きますか?」

「そうだな・・・今から彼を車で送って行ってくれ」

「では・・・準備しますので、食堂の前で待っていて下さい」

 

竜也も部屋に戻って、洗濯して貰ったジャケットに着替える。その時・・・洗濯して貰った衣類の中に凛のショーツが入っているのを見付けた。

 

「これも・・・洗濯したんだ・・・」

 

後で・・・返そうと、衣類の中に置く。

食堂に戻ると松岡が待っていて、2人は屋敷の玄関へと向かう。玄関の警備員に松岡は従業員カードを見せて、2人は通過する。

松岡は屋敷の裏側の駐車場へと行き、通勤に使っている軽自動車に乗る。竜也は助手席に座ると、彼は車を発進させた。軽自動車が門を通過すると、松岡が竜也に話しかけて来た。

 

「あんたってさ・・・どうして屋敷に来たのさ?」

「え・・・どうしてって・・・?」

「凛ちゃんや、舞ちゃんが目的なの?」

「いや・・・別にそう言う訳では無いけど・・・」

「あんまり2人に近付かないで貰いたいね。俺さ2人の事好きなんだから・・・」

「はあ・・・そうですか・・・」

 

少し場の空気が悪くなった竜也は、早く買い物を済ませたかった。

コンビニで履歴書を購入する時、ふと・・・竜也は青年雑誌に目が行った。表紙に可愛いアイドルが写っていて、それも一緒に購入した。

買い物を済ませると、竜也は松岡と一緒に屋敷へと戻る。

 

「俺さ・・・凛ちゃんに気に入られている見たいなんだよね」

「え・・・そうなの?」

「だってさ・・・彼女、俺の事が分る見たいなんだよね」

 

松岡が嬉しそうに言う。

 

(いや・・・それは多分違うと思う)

 

ある意味、凛に彼をくっつけて見たらどうか・・・とも竜也は思った。

屋敷に戻ると、竜也は台の上にコンビニで買って来た物を、そのまま置いた。

その後・・・厨房での仕込みを続けて居ると・・・午後4時位になって、凛と舞が帰宅して来た。2人は最初部屋に戻って行ったが・・・しばらくして厨房へと入って来た。

 

「竜也さん、厨房で働く事にしたの?」

 

舞が厨房に入って来て言う。

 

「まあ・・・屋敷で時間を潰すよりは、少しでも働いた方が良いかな・・・なんて思って」

「そう、頑張ってね」

 

2人は、そう言って一旦部屋へと戻って行く。

しばらくして・・・厨房の内線が鳴りだし、木谷が出た。

 

「え・・・?村石君を・・・ああ、分った」

 

木谷は電話を切り、竜也の側へ行くと・・・

 

「凛お嬢様がお呼びだ、直ぐに部屋に戻るように・・・との事だ」

「え・・・何ですか?」

「さあ・・・分らん、ただ・・・ちょっと不満そうだったよ」

 

何の事か分らず、竜也は部屋へと戻る。部屋に入ると昨夜の様に凛が正座をして部屋の中央に居た。

 

「座って下さい」

 

そう言われて竜也は凛の向かい側に座る。

凛は竜也を見て、少し深呼吸した後に話し始める。

 

「竜也さん、今日はどちらへ出掛けましたか?」

「え・・・コンビニへ履歴書を買いにいきました」

「1人でした?」

「いえ・・・付添人がいました」

 

「そう・・・で、履歴書以外には何か買いましたか?」

「ちょっと、青年雑誌を・・・」

「それって、この事ですか?」

 

凛は自分の手元にある雑誌を見せる。

 

「そう・・・だけど、何か?」

 

そのこ言葉に凛はムッとした。

 

「この雑誌の購入目的は、表紙の子が目当てですか?それとも連載している内容が目当てですか?」

「え・・・と、表紙の子が可愛かったので・・・つい・・・その・・・」

「あたし達が居るのに、他の子に目を向けたりしないで下さい!」

「え・・・でも写真でしょ?」

「写真でもいけません!」

 

凛は雑誌を取り上げると

 

「これは没収します。今後この様な雑誌は購入しないで下さい」

「そんな・・・」

 

残念そうに竜也は嘆く。

その時、たまたま部屋に入って来た内藤が、気落ちしている竜也と、不機嫌そうな表情の凛を見て

 

「あら・・・夫婦喧嘩?」

と、思わず呟いた。

 

「全く・・・彼ったら、可愛い女の子が写った雑誌を買って来るのよ・・・信じられない」

 

そう言って部屋を出て行く凛に内藤が声を掛ける。

 

「別に良いでしょ、男性は・・・皆そう言うものなんだから・・・」

「でも・・・それで浮気されるのは嫌よ」

「異性に興味があるから、頑張れるのよ。女性に興味が無くなった男性なんて、他から見たら味気ない者に感じられるわよ」

「だけど・・・彼には、あたし達だけを見て欲しいのよ」

「それは、お嬢様達が彼に望む、願望であって・・・彼を閉じ込めて置くのは、彼の持つ不思議な能力を押し込んでさせてしまうかも知れないのよ」

 

その言葉に凛は少し悩んだ・・・。

 

「今朝の事・・・忘れてはいないでしょ?」

「は・・・はい」

 

凛は自分の足を触った。竜也が手を当てている間に、いつの間にか足の傷が癒えているのに周囲の人達は驚いた。凛自身未だ信じられない気持ちだった。

 

「彼には、神秘的な能力が眠っているわ。私も彼の能力を目の当たりにしたけど・・・彼の能力を発揮させる為にも少しくらいは外に出す必要もあるわよ」

「で・・・でも、それで戻って来なくなるのは、あたしは辛いわ」

「少しくらい我慢をしなくては・・・」

「うん・・・」

 

そう言って、凛は頷く。2人の会話は一段落した・・・。

内藤と凛は廊下を歩いていく。その時内藤が、ふと何かを思い出した様に凛に話し掛ける。

 

「そう言えば今日、竜也さんから聞きましたけど・・・」

「ん・・・彼が、どうしたの?」

「厨房に居る、松岡って方知っていますか?」

「松岡って・・・あの、何時も隅にいる方?」

「ええ・・・」

 

「彼が、竜也さんに何か言ったの?」

「それが・・・彼は竜也さんに、お嬢様達に近付かないで欲しい・・・見たいな事を言ったらしいですよ」

「ナニソレ・・・」

 

凛は険しい表所で内藤を見る。

 

「詳しくは分りませんが、どうも…彼は自分が、お嬢様に好かれていると思い込んでいるらしいです」

「ウソ・・・誰が、あんな人好きになるものですか、あたしは絶対にお断りよ。あと…もし彼が竜也さんに酷い事を言う様なら解雇するよう木谷さんに申しつけて置いて下さい」

「かしこまりました」

 

内藤は一礼して、事務所の前で2人は別れた。

 

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