天使は質問をすると言ったくせに、自分の耳の辺りをトンと指先で叩いたきり黙り込んでいる。
俺が3度ほど紫煙を深く吸って吐くと、天使はようやくその可憐な花のように美しい唇を開いた。
「丸薬、錠剤、あるいは液体。そんな物を、そこで死んでる犯罪者達に投与されなかった?」
「モノが何かはわからんが、ケツの穴にぶち込まれたな。しかも念入りに、なんかの器具を使って」
「それは、何日間で何度?」
「正確な数はわからねえ。出っ歯の方は俺が意識を失うスキルだか魔法だかを何度も使ってたし、クスリは捻じ込まれると意識が混濁してたんだ」
「覚えているだけでいいわ」
「数えた夜は4、クスリは3だ」
「わかったわ。ちょっと待ちなさい」
「あいよ」
短くなったタバコをどうしようかと辺りを見ると、水やタバコをくれた兵士が灰皿を御者席に置いてくれた。
礼を言ってそれを消す拍子に、ビキニアーマーの胸元が目に入る。
けっこうな大きさだ。
挟みたい。
そこにたっぷりと射精して、そのまま腰を振りまくりたい。
「そこの兵、その子から離れなさいっ!」
俺の妄想を掻き消したのは、天使のそんな厳しい声だ。
女兵士が馬車から離れる。
「まるで変質者扱いだなあ」
「変質者じゃなく、患者ね。その兵を見て、犯したいと思ったでしょう?」
「いや、おっぱいに挟んで射精したいとは思ったが」
「お、同じ事でしょう!」
「そうか?」
「そうなの。そして、それは投与された薬のせい。キミは治療を受けて、それを抜かないと」
「あー。でも俺、治療費なんかねえぞ?」
「いいわよ、お金なんて。治療を受けるつもりはあるのね?」
「おう。ヤク中は嫌いなんだ」
「少しの間だけまた拘束されるけどいい?」
「いいよ。好きにしてくれ」
「わかったわ。樹よ、その子をなるべく優しく拘束して」
シュルシュルと音がする。
何事かと音のした方に目をやると、御者席の木の板からまるで生き物のように蔦が生えて俺の体に巻き付き始めた。
「な、なんだこりゃっ!?」
「樹魔法よ」
「ミリアさん、この子は先生の所へ?」
「ええ。そちらに異存はある、隊長さん?」
「いえいえ、滅相もない」
「うはー。俺、空を飛んでるよ。さすが天使、やるもんだなあ」
「なんであんな薬を投与されて、そんなお気楽でいられるのよ……」
体に巻き付いた蔦に体を持ち上げられた俺は、そのまま神輿でも担がれるようにして天使、ミリアというらしい女の馬車の荷台へと運ばれた。
丁寧に、そのまま身を横たえらせられる。
「ちょっと待て、蔦。もうちょっと御者席寄りに寝かせてくれ。具体的に言うと、天使が立ち上がったらあのエロいミニスカートの下のパンツが拝める位置に」
「す、する訳がないでしょう!」
冗談だと返す前に馬車が走り出す。
「おい。あっちの馬車には俺の服とかギルドカードが」
「もう魔法で運んだわよ」
「おお、さすがだなあ。こんな姿で自己紹介ってのも妙だが、俺はカズヤ・ホリノウチ。一応は冒険者、なんだろうな。天使はミリアでいいんだよな?」
「ええ。でも、よく普通に話せるわね? 常人なら、見る女すべてを犯そうと暴れ回ってるはずよ」
「根性で耐えてる。本音じゃ射精したくて、所かまわずチンコを擦りつけたいね」
「でしょうね。少しだけガマンしてちょうだい。あたしの知る限りで一番腕のいい医者が、馬でこっちに向かってるわ。夕暮れには合流できるはず」
「そしたらミリアが、手でもいいからヌイてくれるか?」
「お断りよ。あたしは医者じゃないもの」
「そりゃあ残念だ。で、俺の治療ってのはどんなもんで、どんくれえかかるんだ?」
「症状を見ないとわからないらしいわ」
「早く終わるといいがなあ……」
縛られて転がされているだけではヒマなので、ミリアにいろいろと話しかけてみる。
ブスの変態2人組にずっと拉致監禁されていたのを考えれば、まあマシな状態だ。
もしこうして蔦で縛り上げられていなければ、俺は御者席のミリアに襲いかかっているかもしれないので、恩を仇で返さないという意味でも拘束されているのはありがたい。
向かっているのはマールという街で、そこはなんといつか行こうと思っていたグラン地方なのだそうだ。
医者の病院はその街にあるので、俺はそのマールの街で治療を受けるらしい。
馬車が石畳でない振動を伝えて停まったのは、幌のある荷台にいる俺でも夕暮れが訪れてかなり時間が経ったなあと思い始めた頃。
「おっ、ここで野営か?」
「そうよ。あたし達は土魔法で小屋を建てられないから、ここで寝てもらうわ」
「逆にありがてえさ。魔法で建てた小屋の土の天井には、いい思い出がねえ」
「……そう。焚き火の準備をして来るわ。もうすぐ、医者も到着するから」
「ああ。モンスターってのを心配するのはムダなんだよな?」
「あちらの身を案じてるのでなければね。あたしも、もうすぐ到着する医者も、キミなんかよりずっとレベルが上だもの」
「へいへい」
病気の経験はないが、怪我なら大小様々なそれをこの身で経験している。
いつも思うのは、また戦えるようになるのだろうかというその一点。
そしてそれを俺なんかが考えてもわからないという結論に達するのも、いつもの事だ。
「待たせたわね、患者は?」
馬の走る音が止まるより早く、そんな声がする。
ミリアもそうだが、いい声だ。耳に心地よい。
「荷台よ。早く診てあげて」
「ええ」
荷台に上がる靴音と共に姿を見せたのは、長い水色の髪を揺らす妙齢の美女だった。
細いフレームのメガネ、大きな尻が目立つタイトなミニスカート、胸のボリュームではち切れそうなブラウスの上には白衣を羽織っている。
「よう、先生。ミリアに負けず劣らずのいい女だなあ」
「あんな薬を投与されてるのにその余裕? ホントは縛られるのが大好きなだけのド変態巨根ショタだとか?」
「縛られるよりは縛りたいタイプでね」
「まあいいわ。何より先に症状を診るわよ」
「よろしく頼む」
見えそうで見えない下着も気になるが、今はそれどころではない。
どのくらいこんな状態でいれば、とりあえず自由に動き回れるようになるのか。
完治までかかる時間やその間にかかる生活費と治療費も気になるが、まずはそれだ。
「それじゃ診ていくわね」
「ああ、悪いがよろしく頼むよ」
「長さもそうだけど、太さも凄いわね。私でもやっと指が回るくらいよ。……カウパー液の匂いがあの薬を溶かした水に近似、と」
「おい、あまり顔を近づけんな。こっちはクスリでヤバい状態なんだ。そんな息がかかったら」
「ぼく息がかかっただけで射精しちゃうって? 濡れるわ」
「は?」
何を言っているんだと首を上げて視線をやると、俺の横にしゃがみ込んでいる医者は、そのままゆっくりと股を広げていった。
黒い下着の三角形部分が丸見えになる。
射精したいなら、これを見て性感を高めろという事だろう。
紐パンで大開脚なんてするものだから、肢体と同じく肉付きのいい、ぷっくりした大陰唇まで丸見えだ。
「出していいなら遠慮はしねえぞ?」
「うふふ。じゃあ、頑張って」
「お願いだから遊んでないでちゃんと診てあげて、フラン」
言いながらミリアも荷台に上がってくる。
道中と同じく勃起した肉棒を見ないようにしているのが少し残念だが、まあ機会はそのうち訪れるだろう。
「はいはい。でも例の薬に間違いないようだから、日に何度か毒抜き魔法を使いつつ、射精をしないように拘束して効果が抜けるのを待つしかないわよ。それも短期間で3粒も肛門から投与されてるから、かなり時間がかかりそう」
「それでも何か対処法はないの? せめて少しの間でも、普通に出歩けるようにするとか」
「アレを投与された男の子なんて初めて診察するんだもの。わかるはずないでしょ。まあ、まずは体の状態を確認しましょうか」
医者、フランが俺の手を握る。
すると同時に、股間に鈍い痛みを感じた。
「あらあら。見なさい、ミリア」
「何をよ?」
「この子のデカマラに決まってるでしょ」
「み、見る訳ないでしょそんなのっ!」
「そんなのって。まあ、ミリアは俺を運ぶ時すらチンコ見てなかったからなあ。でも、治まったな。勃起」
「ええっ!?」
「どうやら私のパッシブスキル、患者鎮静が効いてるみたい」
「じゃあ、この子はフランに触れていれば?」
「普通に暮らせるわね」
「よかったじゃない」
「でも四六時中どこかに手を触れてるなんて、絶対に無理よ」
「たしかに、そうね……」
こんな美人となら大歓迎と言いたいが、まあそんなのは現実的ではないだろう。
「体力面も、とりあえずは問題なし」
「ええっ?」
「だってこの子、たぶん生命力上昇系のパッシブスキルがあるもの」
「そうなの?」
「あーっと。精力絶倫ってスキルはあるが」
「4、5日の間かなり酷使されてたみたいだけど、そのスキルのおかげで命の危険はなさそうよ。殴られたりした傷はもう癒したし」
言われて初めて気がついたが、監禁中に殴られたり蹴られたり、馬車の荷台から転がり落ちた時からあった鈍い痛みがウソのように消えている。
スキルや魔法を使われた気配も感じ取れなかったのに。
どうやらこのフランという女は、かなりの腕をした医者であるらしい。
性格には難がありそうだが、医者と患者という関係でなら安心して体を預けてもよさそうだ。
「なら俺は普通に生活していいのか?」
「まさか。生命力に余裕があるから、短期間で射精を繰り返してても命の別状はないってだけ。性欲が薬の影響で高まっている間は、危なくて外になんか出せないわ。それにこんな大きさの男性器が常に勃起した状態で、どうやって外を歩くのよ?」
「そ、それもそうか。ならこりゃどのくらいで治まるんだ、先生?」
「さあ。経過を見守るしかないわね。その間は、入院」
「マジか。金なんてほとんどねえんだが……」
「でもこの薬って、投与されたら正気でいられる男なんていないんでしょう? どうしてこの子はこんな普通に話してるのよ?」
「さあ。強いて言うなら、意志の力なんじゃない?」
「そんな事が……」
「数値を見て医者として判断するなら数日は1日2、3度の射精でガマンして、それからは薬が抜け切るまで日に5回の射精が限度ね。患者、それもかわいらしい男の子の射精を管理するって、1度はやってみたかったのよ。楽しみだわあ」
「カ、カンベンしてくれ。この数日で身に染みて理解したんだが、俺はMじゃねえんだ」
「それは残念。でも、入院中にゆっくりと開発してあげるわよ」