ならまずは晩ゴハンにしましょうと言ったミリアは、荷台の天井にぶら下げた野営用の魔道具とやらに魔力を通した。
それはこの街道のようにあまり強いモンスターが出ないのなら、馬車の荷台でも土魔法の小屋と同じくらい安心して眠れるという便利な道具なのだそうだ。
なんと明りだけでなく遮音や、暖房機能まであるらしい。
「ねえ、ブラックスミスの街に遺骨を届けに行ったなら、ここにある樽はすべてお酒よね?」
「そうよ。おばあちゃんの親族の方が持たせてくれたの。好きなのを開けて飲んでて」
「あー、その。先生」
「ん?」
「こうやって手を繋いでくれてたら普通にしてられるのはわかったんだが、便所とかってどうすんだ?」
「私に触れられながらするか、ミリアの蔦で拘束されたままするか。好きな方でいいわよ」
「他の選択肢は?」
「ないわね。たったレベル8でそれなりのレベルの犯罪者を2人も殺せるなんて、ちょっと異常。そんな子があの薬を投与された状態だと、短時間だって野放しにはできないの。わかってちょうだい」
「手を握っただけで、俺のレベルまで……」
ネズミにも思い知らされたが、やはりレベルの高い連中というのはとんでもないスキルを持っていやがる。
にしても、服ぐらいは着させてくれてもいいと思うんだが。
「はい、エール」
「アホか。すぐションベンしたくなるっての」
「それも治療のうちなのよ。本当は水をたくさん飲ませて排泄を促すんだけど、呆れるほど頑丈なみたいだからエールでもいいわ」
「中毒症状にはそれが一番か。だが、ションベンする時を考えると酒が不味くなるぜ」
俺がフランに自己紹介をしているうちに、ミリアの用意したツマミが荷台に運ばれてくる。
それから荷台に車座になって3人で飲み食いを始めたのだが、フランはツマミを口にしなくなって酒だけを飲むようになると、俺の手ではなく肉棒に触れながら葡萄酒のカップを口に運び始めた。
「ああ、ショタのデカチンを撫でながら飲むお酒は美味しいわ」
「せっかく先生のスキルで大人しくなってんのに、また勃起しそうだからやめてもらいたいんだが」
「寝る時はまた拘束されて私の手が離れちゃったりもするんだから、ここで射精しておかないと後がキツイわよ。いいの?」
「あー」
「それに気づいてないみたいだから、ステータス画面を見てみなさい」
「はあ。ほれ、出した、ぞ……」
フランの小さな笑い声が聞こえる。
ミリアも声こそ発しないが、微笑んでいるようだ。
「どう?」
「レ、レベルが28になってやがる。なんでだよ?」
「それはそうでしょ。あれだけ格上の犯罪者を2人も倒したんだから」
「……人殺しでも、レベルが上がるのか」
「でも神様方は人が人を殺してレベルを上げるのを嫌ってるらしくて、どれだけ格上を倒しても10レベルまでしか上がらないけどね」
「そんでもありがてえさ」
「スキルが1つ増えてるでしょ。確認してみなさい」
「あ、ああ」
たしかに増えている。
ドッペルゲンガー。
そのスキル名に触れて出た説明を読むと、俺は込み上げる笑いを抑え切れなくなってしまった。
「くくっ、はははっ。こりゃあスゲエや」
「大当たりだったみたいねえ」
「専用武器を出せる剣士系か召喚系のクラスなんだろうけど、低レベルであんな動きをしてた子に強力なスキルまで加わったら。恐ろしいわね」
「そんなに凄かったの、ミリア?」
「かなりね。剣術だけなら、マスタリーを持ってる剣士系の5級冒険者くらい。いえ、もっと上かも」
「とんでもないわねえ」
「それより先生、ミリア。増えたスキルを試すにゃ、2人が協力してくれねえとダメそうだ」
「あら、どうして?」
ドッペルゲンガーの説明文をそのまま読み上げる。
それを聞いたミリアは呆れ顔で、フランはワクワクしているのを隠そうともしていない。
俺は、その両方という感じだろうか。
こんなスキルがありがたくないはずがないが、ちょっと人間離れしすぎているんじゃないかとも感じてしまう。
「こんな状態だものね。どうやって試すつもり、カズヤくん?」
「まずは先生に触れられながら」
「ならあたしが、危険そうならドッペルゲンガーというのを拘束すればいいのね?」
「そうなる。どうしようもなさそうならすぐ消すから頼めるか、ミリア?」
「ええ。いつでもいいわよ」
「そんじゃ、出してみるわ。……ドッペルゲンガー、召喚」
途端に、少しだけ体が怠くなったような気がする。
それでも俺達の前には何の問題もなく全裸の男の子が現れ、目を閉じたまま微動だにせず直立していた。
「見た目はまるっきり同じね。男性器もそのまま。ラッキーだわ」
「俺が新兵の頃って、こんな顔だったんだなあ。にしても、いちいち全裸で出てくんのかよ」
「カズヤ、やっぱりあなたは」
「ストップ、ミリア。そんなのは後よ」
「そんなのって事はないでしょう!?」
「あるわよ。現状に比べたら、そんなのは些事じゃない。それでカズヤくん、このドッペルゲンガーというのは今どんな状態なの?」
「えーっとな。別ウィンドウ、じゃわかんねえか。ドッペルゲンガーのステータス画面が別にあって、それに静止と操作とオートってモードがある」
「今は静止な訳ね」
「ああ」
「じゃあ私がいろいろ調べるから、ミリアに拘束されててくれる?」
「頼む。HPやMPはあるんだが、ドッペルゲンガーのステータス画面には補給要請っていう召喚スキルと、接触鑑定ってパッシブスキルの名前しかなくてよ。俺と同じ体なら、てっきり同じパッシブスキルもあると思ってたんだが。先生は俺が精力絶倫を持ってるって見破れてたから、その辺もわかるだろ」
「任せときなさい。でも先に、こうね」
キス。
ドッペルゲンガーではなく、俺の体にだ。
たしかに俺のMPはネズミとブタを殺した時に減っているので、必要な事だろう。
フランの唾液で、どんどんMPが回復してゆく。
女の肌、汗を舐めると1ずつ回復で、唾液なら5ずつ、淫液を舐めたり肉棒を挿入していると10ずつ回復だ。
「ふうっ、ごちそうさま。ついでに、触覚や痛覚もたしかめないとね」
「うへえ。お手柔らかに頼むな。じゃあ、ミリア」
「え、ええ。樹よ」
蔦で拘束されフランの手が離れると、当たり前だがすぐに肉棒が痛いほど硬くなる。
思わず呻いた俺をミリアが心配そうに見るのでウィンクを飛ばすと、顔を真っ赤にして視線を逸らされた。
「肌の質感はまるっきり同じね。HPとMPは?」
「説明通り、俺の3分の1。俺の元のHPは150、現HP100、ドッペルゲンガーが50。MPが145、100、50」
「端数が切り上げられてるのね。ラッキーじゃない」
「ああ」
「でも残念ながら、接触鑑定以外のパッシブスキルはないわね」
「やっぱりか。えーっと、……接触鑑定。MPの消費なしで自身の触れた物や人を鑑定できる。鑑定内容はレベル差に依存でレジストあり、だとさ。レジストってなんだよ?」
「抵抗される、とでも言えばいいのかしらね。私やミリアに触れても、名前なんかのすでに知っている情報しか鑑定画面に表示されないのよ」
「なるほど。もう1つ動かせる体ができたのはありがてえが、戦力としちゃあんま期待はできなそうだ」
「冗談でしょ。カズヤくんがレベルを上げれば、この子もそれだけ強くなるのよ。その有用さは、とても第二段階のスキルとは思えないくらい。肌に触れられてる感触は?」
「ある」
「じゃあ、これは?」
「いてててて。よりによって乳首を抓んなっての」
「うふふ。じゃあ、次はこっちね」
フランが俺を見ながら、ドッペルゲンガーの股間に顔を寄せる。
「っは。自分のチンコを舐められてるみてえだ」
「射精はできそう?」
「……ムリっぽいなあ」
「なるほど。でもドッペルゲンガーはドッペルゲンガーで勃起するから、この体でも勝手に射精するみたいね」
「へえ。そっちの尿道を舐められてもMPが回復すんのか試したい。いいか?」
「もちろん」
補給要請画面を出す。
武器タブを選択。
……やはり、来てたか。
MP50で前装式の、MP100で後装式の単発銃が補給可能になっている。
種類も拳銃、騎兵銃、ライフルとあって、弾はどちらも1発MP5。
「へえ。こりゃスゲエ」
「どうしたの?」
「今まで武器は低級とか中級とかってなってたんだがよ、新しく召喚可能になったこの世界になさそうな武器にはそれがなくって、MPを消費してスコープなんかを追加できるらしい。そんなのには改造って項目が追加されてんだ」
「……カズヤ、あなたもう隠す気ないでしょ?」
ミリアがなにかボヤいているが、今はそれどころではない。
ドッペルゲンガーを召喚しているせいでスコープを追加するどころか弾すら出せないが、迷わず後装式単発銃のライフルを召喚した。
「ふう。やっぱ、武器はコイツじゃなくっちゃな」
蔦で拘束されたままなので握った感触はたしかめられないが、俺の肩に立てかけた状態で現れた銃身に頬擦りをする。
士官学校時代に訓練で使った猟銃なんかより、ずっと古臭いデザイン。
それでも、やっと手に入れた銃だ。うれしくないはずがない。
「フラン、さすがにこれは……」
「そ、そうね。まあしばらく3人で暮らす訳だから、ゆっくり話し合いましょう」
「何をだよ?」
「今はいいからMPを見てなさい。……んっ、ちゅっ。どう、回復してる?」
「ダメだ」
「じゃあ、今度はドッペルゲンガーを操作して」
「ああ。離れてなくて平気か?」
「薬の効果が操作した途端に出るようなら、すぐに触れるから平気よ」
「了解。そんじゃ操作して問題がねえようなら、ドッペルゲンガーのMPを減らす」
「ええ、お願いね」
ドッペルゲンガーは操作モードにしても、クスリの影響は受けていないようだった。
なのでもう1つ増えた体を操作するという今まで経験のない行為に苦労しながら、ドッペルゲンガーで前装式単発銃を召喚する。
「OK。古い作りでも、やっぱ最高の手触りだ。そんじゃ悪いが頼む、先生」
「こっちも楽しんでるからいいのよ。あむっ、……んっ」
「回復してんのは、ドッペルゲンガーのMPだけだなあ」
「じゃあ、次は」
「だな」
「ミリア、本体のカズヤくんにフェラを」
「え、ええっ!?」
「当たり前でしょう。本体のMP回復でドッペルゲンガーのMPが回復するのか、同時ならどうなるのかも確認しないとなんだから」
「悪いが頼む、ミリア。これは女が2人いないと、どうしても確認できねえんだ。どうか助けると思ってよ。この通りだ、な?」
もうすでに顔が真っ赤になっているミリアが、音を立てて生唾を飲み込む。
本当ならキスでいいんだが、本人がそれに気づいていないなら俺が指摘する必要はないだろう。
俺はミリアをこの目で見た瞬間から、そうされたかったのだから。
「わ、わかったわよ……」
「ありがてえ。恩に着るよ」
「あ、あまりこっちを見ないで」
「おう」
その言葉に素直に従い、サラサラの長い金髪を耳にかけて身を屈めたミリアではなく、ドッペルゲンガーの肉棒をシコシコとしごいているフランを見遣る。
いい笑顔だ。
親指を立てて見せられたのでウインクを飛ばすと、本体の肉棒の先が酷く温かいものに触れた。
「おお……」
「ぜ、絶対に下を向かないでよ?」