雨は降り続いている。
小さな木窓の向こうでも、ベッドの上で壁に背を預ける俺の前に浮かぶディスプレイの向こうでも。
その俺にしか見えないディスプレイに映るのは、朝早くこの酒場を出たドッペルゲンガーの視界。
(この雨じゃモンスターも、ねぐらでふて寝か)
(なあに。なら、そのねぐらをめっけりゃいいだけだ)
(俺も狩りに出たかったなあ)
(この雨じゃな。お姫様は学校だが、ババアはいるんだろ。店は定休日だって言ってたし)
(ああ。ただ今は、家事なんかをして来るって言って部屋を出てったから俺1人だ)
(マスでも掻くか?)
(冗談。あんな具合のいい女が言えばいつでも喜んで股を開くのに、なんで自家発電なんぞせにゃいけねえんだっての)
(ほんっと熟女好きな、オリジナルは)
(ロリコンよりはいいさ)
ドッペルゲンガーは田舎道を逸れ、村からも防壁に上がれば見えそうな距離にある森へ歩を進めている。
もともとこの村は、その森から木材を伐り出すために作られた、木こりとその護衛である兵隊の駐屯地だったらしい。
その森に足を踏み入れると、まるでカーテンのようにディスプレイに映し出されていた豪雨がだいぶマシになった。
ドッペルゲンガーは庭でも散歩するような気軽さで、ズカズカ歩を進めている。
どんなに離れていても俺が召喚を解除すればその体は瞬時に消え、HPとMPは戻ってはこないが待ち時間なく再召喚も可能。
それゆえの気軽さなのだろう。
まだ試してはいないが、この豪雨による足止めはアレを確認するいい機会なのかもしれない。
(帰ったら試すか)
(何をだよ?)
口の端が持ち上がるのを抑えられない。
(体の3分の1が持ってかれる痛み、ってヤツをさ)
(げえっ!)
(ついでに、ミリアとフランに持たされた片手剣の切れ味も試せる)
(カンベンしろよ。オレ達はMじゃねえだろうが……)
(武器の試しは必要だろうよ)
(オマエ、さらっとオレまで道具扱いしてねえか?)
返事はせずにタバコを咥え、オイルライターで火を点けた。
寝具の上に置いた盆には、喫煙具だけでなくハチミツ酒の満ちたカップまで置いてある。
(こんな暮らしじゃ、アル中になりそうだ)
(いいじゃねえか別に。こっちにゃ、赤目なんていねえんだ。朝から晩まで酒を飲んで、好きな時に女を抱く。んで金が欲しかったら、モンスターを狩りに出るんだ。田舎で畑なんか耕して暮らすより、ずっとマシだろ)
(衰えを感じ始めた体なら、それでもよかったさ)
20年、戦った。
大きな怪我もしたが幸運にも後遺症は残らなかったので、35になってもまだ体は動いた。
だが、物足りなかったのだ。
嫌ってほど経験を積んだおかげで、赤目は息をするように殺せた。
それなのにどうしても、若い頃のようには体が動かない。
誰かにそれを言っても冗談だろうと笑われるだけだったが、本当の事だ。
(見ろよ、オリジナル)
ディスプレイに映っているのは、明らかに獣のものではない足跡。
ぬかるんだ土の上にクッキリと残るそれは複数あり、ドッペルゲンガーが睨む森の先へ続いていた。
(相手は群れ。しかも、かなりの大型だ。殺るのか?)
(あたりめえだろ。人型は儲けは少ねえらしいが、こちとら金は二の次。欲しいのは経験値だ。数が多いのもデケエのも大歓迎よ)
(返り討ちにされなきゃいいがな)
(へっ、冗談だろ)
慢心は死神を呼ぶ。
そう口に出しかけたが、黙ってタバコの灰を落とした。
あまりに性格が違うので忘れがちだが、ドッペルゲンガーも俺なのだ。
そんな事は言われなくとも、心の底から理解しているだろう。
「そんでも、俺にスカトロやロリコンの気があるとは思えねえがな」
ノック。
返事をするとすぐに、女将が少しばかり赤い顔を見せた。
「酒とツマミの木の実はまだあるかい?」
「ああ。家事が終わったんなら、女将さんも付き合いなよ。休みはいつも、朝から飲んだくれてるって言ってたろ」
「そう思って自分のカップとハチミツ酒の壺を持って来たんだけど、こんな恰好じゃ落ち着かなくってねえ」
女将が恥ずかしそうに腹とふとももの肉を手で隠す。
「ヘソ出しミニスカセーラー服、似合ってるよ」
「まったく。こんなのは、若い娘に着せてやるべきだろうに」
「そりゃ、俺の故郷で昔の学生が着てたのをとびきりエロくした服でな。そんなのをいい年をした女将さんが着てるからこそいいのさ。男をその気にするためならどんな事でもする欲求不満な熟女、って感じがそそるんだよ」
「趣味が悪いったらないねえ」
「呼び鈴は?」
「そ、そのままさ」
「なら確認してから飲もうか。自分で見せなよ」
「さすがに恥ずかしいんだけどねえ」
「じゃあ、呼び鈴を鳴らして確認しようか?」
「ま、待っとくれ。見せる、見せるからっ」
「あいよ。なるべく近くでな」
ドッペルゲンガーは、足跡を追い始めたばかり。
その視界の映るディスプレイを見遣ってから、テーブルに抱えなければ持てないほど大きな壺とそれに載せたカップを置く女将に視線を移した。
少し動いただけで、尻たぶが揺れるのまで見えてしまうミニスカート。
女将はそのスカートではなく、まずヘソと腹肉が丸見えの上着に手をかける。
そのセーラー服が、ゆっくりと持ち上げられた。
「ほ、ほら。ちゃんとそのままにしてあるだろ?」
露わになったのは、肌が透けて見える、黒いレースのブラジャー。
巨乳を包むそのブラは、もっとも隠さなければいけない場所に布がない。
なのに女将の乳首が見えていないのは、そこに粘着テープでコードのない遠隔ピンクローターが貼りつけられているからだ。
スイッチは、酒や喫煙具と同じ盆の上にある。
「じゃあ、次は下だ」
「ううっ……」
「少なくても昼までは2人っきりなんだ。恥ずかしがる必要はねえって」
「ババアがこんなの着て、それに」
「それに?」
「こ、こんなのまで……」
ゆっくりとスカートの裾が持ち上げられた。
まず見えたのは白いふともも。
それからブラジャーと同じ、黒いレースのショーツ。
色と材質だけでなく、下着であるのに大切な部分を隠していないのまで同じ。
「いいね」
「こ、これは取ってくれないのかい?」
これとは、シャンナとドッペルゲンガーが店を出てからセーラー服を着せた時に挿入した、アルファベットのCのような形をした遠隔バイブの事だろう。
膣だけでなく肛門とクリトリスを刺激するそれは、補給要請画面のアダルトグッズタブの中ではかなりの消費MPを誇る品だ。
「それを抜いていいのは、俺のを迎え入れる時だけさ。さあ、こっち来なよ。のんびり飲もうぜ」
「まったく、あんたって子は……」
女将がカップを満たして俺の前に座ったので、軽く縁を合わせてから俺もハチミツ酒を舐める。
悪くない味だが、朝メシを食いながら聞いた、この酒が水とハチミツだけで作られているというのがどうにもまだ信用できない。
そんな簡単に酒が造れるのなら、日本でだって飲まれていたはずだ。
おそらくだが、生活魔法か何かでする工程があるのだろう。
「ガラの悪い子は大丈夫なのかい? スキルで様子はいつでも見れるんだろ」
「ああ。この雨だってのに、嬉々として見つけた足跡を追ってるよ。森に大型の人型モンスターは?」
「大きいのならオークだろうねえ。あれらが北にいるうちは、雪が積もらない。冒険者にとってのいい季節の目安さ」
「へえ。なら、足止めされてても安心だ」
「でもそれなりに頑丈で、力も強いんだよ。森にいるモンスターじゃ、一番の脅威だ。そこにある魔道具の大きいやつを担いでったけど、大丈夫なのかねえ」
女将が視線をやるのは、盆の手前に置いてある拳銃型の後装式単発銃。
「たぶんな。ダメなら他を出すか、俺が召喚を解除すればいい」
「とんでもなく便利で、笑えるくらいにデタラメなスキルだねえ」
「自分でもちょっと呆れてるよ」
カップを盆に置いて新しいタバコを咥えるついでに、3つ並べて置いてあるスイッチの右と左をオンにする。
「んんっ!」
「いい表情だ、女将さん。乳首だけで顎を上に向けて、強く目まで閉じるかよ」
「な、なんであんたはこう、なんでもいきなりやっちまうんだい……」
「性格だろうなあ」
「あたしもタバコを吸いたいんだがね」
「りょ-かい。盆を寄せるよ、ほら」
「これ、止めちゃくれないのかい?」
「当たり前だろって。飲みながら濡らさねえと、時間がもったいねえ」
お互いタバコに火を点けると、紫煙を吐いた女将が微笑む。
「バカだねえ」
「ん?」
「あの子達を送り出してすぐ、裸にされて生活魔法で下の毛を剃らされただろう」
「ああ。熟女はまったく手入れをしてねえのもいいが、パイパンの方が淫乱っぽさが出ていいんだ」
「……あれから、ずうっと濡れっぱなしさ」
「1時間くれえ前から、ずっとかよ。さすがだねえ」
「しかもオマンコにぶっ差されたコレが掃除なんかをしてるといきなり、いいトコを擦ったりしてねえ」
「へえ。イッたのかい?」
「何度もね」
「じゃあ、準備は万端って訳だ」
「あとはあんたの股間のソレの準備だけだね。今日はヤリまくるんだって言って朝から裸でいるくせに、ピクリともしちゃいない。憎らしいじゃないか」
「そいつはすまんね。愚息に代わって、俺が謝ろう」
「いいさ。たっぷりと本人に謝ってもらうから」
タバコを消し、女将がベッドに両手をつく。
そのまま顔を寄せたので、ベッドに投げ出している足を大きく広げた。
「まったく、悪い子だねえ。見た目だけじゃなく、匂いでも女を誘ってる。たまんないじゃないか」
「そういやさっき、便所に行ったなあ。それを魔法で分解してくれたのも女将さんか」
「ああ、そうだね。便器に顔を突っ込んで、ちょっと匂いを嗅いだだけでイッちまったよ」
「うちの変態が喜びそうな話だ。アイツなら言えば、直にだってしてくれるぜ?」
「ああいうのは、そんな変態的なプレイを理解できない男に、呆れられ蔑まれながらぶっかけられるのがいいに決まってるじゃないか」
「やれやれ。これだから、本物のド変態は……」
「そんなに褒めるんじゃないよ。イッちまうじゃないか」
「褒めてねえっての。呆れてんだよ」
「ならさらに良しさ。……んっ、いい味だ」
便所に行ったばかりの男の肉棒を、犬のように這いつくばって舐める。
そんな状況までもが、女将の興奮を煽っているのだろう。
足と同じくシーツの上に投げ出されている肉棒を持ち上げすらせず、ぺちゃぺちゃと水音が鳴り出した。