※この作品はR-18です。

東日本陸軍退役将校の淫蕩なる異世界生活   作:ふくふくろう

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カリタスの街2

 

 

 

 トリガーを引く。

 

 ダアンッ!

 

 尾を引いた銃声が風に乗った。

 

「頭蓋骨で弾かれたな。わざとか?」

「当たり前だっての。次射は、胸を狙うぞ。心臓は外す」

「おう」

 

 2発目。

 

 銃弾は野牛の胸に吸い込まれ、大きくHPバーを削る。

 

「HPの減りは初弾が20分の1、次弾が4分の1って感じか」

「だなあ。あと2射して、ギリギリ倒さねえくらいまでHPを削っとく」

「あいよ」

 

 ムートは野牛型のモンスターだけあって、こちらを目指して走る速度はかなりのものだ。

 それに目もいいのか、オレが排莢すると同時に襲撃者を特定もしている。

 

「だがまあ、そんでも獣だあな」

 

 2射。

 

「わかってるな、子猫ちゃん?」

「20ビット。師匠とカズヤさんの言う、距離500で攻撃開始します」

「ああ。それでいい」

「気楽にやりな、キナ」

「はいっ」

 

 キナが持っているのは、銃ではなく弓の一種であるからか、消費MPはそう変わらないのにWW1シリーズよりかなり未来的な造形の狩猟用クロスボウだ。

 スコープまで付いているそれのストックを柔らかな頬に押し付け、キナがクロスボウを構えた。

 

「撃ちますっ」

「おう」

 

 ヒュオッ

 

 ボルトが発射され、風を切る。

 それはムートの頭部をかすめ、オレ達の進行方向に消えた。

 

「くっ」

「焦らなくていい。深呼吸をして、次射だ」

「はいっ。すーっ、はーっ。……くたばれ、家畜ッ!」

 

 2射目は半矢。

 つまり、カス当たり。

 3射目でようやくボルトはムートの胸に突き立ったが、HPは削り切れていない。

 

「オリジナル、殺るか?」

「とーぜんっ」

 

 オリジナルが前に出る。

 ムートはもう、オレ達から50メートルほどの距離。

 自動小銃が火を噴く。

 

 おそらくだが世界初か、そうでなくとも間違いなくその黎明期に使用されていたであろう自動小銃は、とてもじゃないがアサルトライフルなんて呼べないほどに不格好だ。

 しかも元の設計が悪いのか、当時の製造技術まで再現しているからか、よく弾詰まりを起こす。

 1発の威力もボルトアクションよりだいぶ劣っていて、連射ができないのなら、いくらオリジナルのバカでも使う気にはならないだろう。

 

「反動がとんでもねえのに、よくこれだけ集弾させんなあ」

「精度は腕でカバーする。その自信がなくっちゃ、こんなん使わねえっての」

「だな」

「それより、なんだこの牛。角が石みてえだぞ?」

「半鉱石系モンスターだからな」

「なんだそれ?」

「まんまだよ。体の一部が、鉱石になってんだ」

「へえ。じゃあ、肉も角も売れるって事か。美味しいじゃねえか」

「残念ながら、肉は不味いらしい。しかも角である鉱石も純粋な鉱石系モンスターのそれより質が劣るから使い道なんかなくって、どっちも二束三文だとさ」

「げえっ。じゃあ、ステーキもすき焼きもムリなんかよ……」

「そうなるな。だから、角も肉も放置だ」

 

 ブツブツ言いながらマガジン交換をして、オリジナルが運転席に戻る。

 その背を追うキナは、わかりやすく肩を落としているようだ。

 

 落ち込んでいるヤツに必要なのは慰めなどではなく、次に上手くやるためのアドバイス。

 

 少なくともオレはそう信じているので、三輪タクシーの後席でキナに弓とクロスボウの違いから話す事にした。

 

「弓というよりは、銃に近いのがクロスボウの軌道。理解はしてるんですけど……」

「まあクロスボウの利点の1つは、熟練するのにかかる時間が短いってこった。すぐに上達するさ」

「頑張ります」

「そうしてくれ。んでオリジナル」

「なんだ?」

「次の街、カリタスなんだがよ。魔女の作った獣人の楽園までの道程じゃ、唯一のマトモな街なんだそうだ。メシも宿も、住民の態度なんかまでな」

「へえ。だからのんびりって事か?」

「できればそれがいい」

「そんじゃ1日の予定だった休日を、2日か3日に伸ばすのがいいかもなあ」

「ああ。子猫ちゃんはどうだ?」

 

 隣に座るキナを見ると、その表情は複雑な感じだ。

 休日ならたっぷりとセックスを愉しめるが、クロスボウに慣れたいし、金や経験値だって稼ぎたい。

 その心情はそんなところだろう。

 

「キナ」

「あ、はい。なんですか、カズヤさん?」

「焦んなくていい。まだまだ時間はあるんだ。南には経験値のいいモンスターが多いって話だし、それを狩りまくるのは確定なんだ。レベル上げをしてりゃ、金も付いてくるし、クロスボウにだってすぐ慣れる。サハギン狩りで、俺達のやり方はわかってるだろ? あのペースなら、すぐさ」

「はいっ」

「じゃあ決定だな。街に入ったら、子猫ちゃんの練習相手でも探すか」

「街中で殺しか?」

「ちげえっての。なんでいきなり童貞を捨てさせようとしてんだよ。スパイ活動とレズプレイの練習だっての」

「なるほど。キナに女をナンパさせて、4人で愉しもうって事か」

「なあに、なんなら2人でも3人でもいいさ。オレとオリジナルなら余裕だ」

「ナ、ナンパ!? しかも同性をなんて、絶対に嫌ですからねっ!?」

 

 カリタスの街の防壁が見えるまでに出会ったムートは、全部で8匹。

 そのすべてを狙撃で倒したので、オリジナルのレベルは1上がっている。

 その上で経験値バーは半分に少し足りないくらいまで塗り潰されているのだから、やはり南はレベル上げに適した場所のようだ。

 

 三輪タクシーが停車する。

 門までは50メートル。

 

「行くか、ヤリまくり休暇の始まりだ」

「だな。3日も休みなら、空き家でも借りられねえかギルドで訊こうぜ」

「長期滞在パーティー向けの宿泊施設は、どこの冒険者ギルドでも確保してあるはずです。けど、問題は空きがあるかどうかですね。この辺りなら、北から冬越しの冒険者パーティーがたくさん来てるでしょうし」

 

 マトモな街というだけはあって、門番はすんなりと街に入る許可を出して笑顔で「良い滞在を」とまで言う。

 それに門番は22、3の年増だが、いい女だった。

 オレのステータス画面の『ドッペルゲンガー・ホリノウチ』という妙な名前に苦笑すら見せなかったのもポイントが高い。

 

「へえ。防壁だけじゃなくって、建物まで土色をしてやがんのな。北じゃ灰色っぽい建物なのに」

「南は、どこもこんな感じらしいですよ」

「異国情緒を感じるのも、旅の醍醐味ってな」

「雑草が生えまくってるアスファルトか線路を進んで、荒れ果てた街を通ってボロボロの集落に辿り着くのが、日本の旅だったもんなあ」

「ああ。キョロキョロすんじゃねえよ、オリジナル。ギルドは大通りらしいから、さっさと一軒家の宿泊施設が空いてるか確認しようぜ」

「へいへい」

 

 冒険者ギルドはやはり大きな建物で、入ってすぐ酒場スペースがあるのも他の街と同じだった。

 男2人が荒くれ者の集う冒険者ギルドに足を踏み入れ、これでもかと注目を集めるのも同じ。

 ただその反応が、少しばかり妙だ。

 

「お、おい」

「男の冒険者が2人もいるパーティーだと……」

「ミルクタンクでもレベルがそれなりなら、あの依頼にピッタリじゃねえか」

「誰か、支部長に通話魔法だ」

 

 不穏なヒソヒソ話。

 オレが盛大に顔を顰めるのもムリはないだろう。

 

「……頼むから首を突っ込むんじゃねえぞ、オリジナル?」

「わかってるっての。俺は、そんなお人好しじゃねえ」

「どうだか」

 

 冒険者登録をしてあるのはオリジナルとキナだけなので、2人が業務カウンターへ向かう。

 オレが1人で素材相場の書かれている黒板の前に立つと、隣にだいぶ年嵩の女が並んだ。

 

 年の頃は30の半ば。

 肩にかからない程度の長さで切り揃えた髪が赤いので、おそらく火属性の魔法使い。

 

 眼差しでわかる。

 

 コイツは、オレ達と同じ人種。

 人を殺す事に慣れているのだと。

 

「ボウヤは薬師なのかい?」

 

 女が言う。

 黒板に視線をやっているが、そこに書かれている文字を読んでいるようには見えない。

 

「ですね」

「なら、あの2人は旅の護衛か」

「そうですよ。長旅の疲れを癒したら、すぐにこの街を出ます」

「路銀に余裕はあるのかい?」

「かなり。僕も冒険者登録していないだけで戦えますし、業務カウンターにいる兄も、旅に出てから怪我すらしてません」

「もう1人の女の子も、あの若さにしちゃ相当な腕みたいだしねえ」

「ええ」

「まあボウヤ達の状況は理解はしたが、それでも話を聞いてもらいたい」

「なぜ、兄ではなく僕に?」

 

 女がニヤリと笑う。

 そうしながら紙巻きタバコを差し出されたので1本取ると、指先に出した火がオレに寄せられた。

 

「こんなババアになるまで生き残ってると、楽をするのが常になっててねえ」

「へえ」

「なんとなくわかるのさ。あっちの子に訳を話せば依頼は受けてもらえそうだが、そうなるとボウヤの方を説得するのに苦労しそうだって」

「なるほど」

 

 キナも持っているという直感系のスキルでもあるのか、そう言って女が笑う。

 

「おい、ドッペルゲンガー」

「あいよ」

 

 オリジナルがキナだけでなく、20代の女を連れてこちらに歩み寄って来る。

 カウンターの中にいた女と少し立ち話をしただけだろうに、すっかりやる気になっているようだ。

 

「こっちの姐さんは、この街の冒険者ギルドの支部長だそうだ。指名依頼、ってのを俺に受けてほしいらしくてな。別室で話を聞く。オマエも来るだろ?」

「そりゃいいが、もうすっかりその指名依頼を受けるつもりみてえじゃねえか。内容はよ?」

「……ガキが食い物にされてる。それも、孤児がだ」

「そうかい」

 

 そんな話をされたら、オリジナルに断るという選択肢など存在しない。

 このバカは稼ぎのほとんどを隻腕になってしまった士官学校時代の仲間に送金して、赤目の子だけが暮らす孤児院を帝都の外れに作ったりしていたのだ。

 

 オレ達が通されたのは初めて足を踏み入れる冒険者ギルドの応接室で、そこにはオレに話しかけてきた年嵩の女も着いて来ている。

 

 その女と支部長にオレ達3人が向かい合う形でソファーに腰かけると、まず飲み物が運ばれてそれぞれの前に湯気の上がるカップが置かれた。

 

「では、詳しい説明を」

「ああ」

 

 

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