ノック。
「はい」
立ち上がってドアを開ける。
ウィンドウの向こうではオリジナルに跨ったキナが3度ほど派手にイッていたので、この客室に通されてから30分ほどだろうか。
タバコを1本灰にしながら開けた木窓は、閂をせずに閉めてある。
それはそのままでいい。
「お食事が準備できたわよ、ホリノウチくん。私の執務室で良かったかしら?」
「まさか、アニマ司祭様と同じ食卓を囲めるとは。望外の喜びです」
「うふふ。大げさね」
「いえいえ、本音ですよ。ちなみにこちらの教会の教義では、飲酒は」
「禁じられてはいないわね」
「なら、革水筒を1つ持って行きます」
「量は少ないけれど、もう用意してあるわよ」
「僕は北から来たので、お酒もまた違った風味でしょう。飲み比べという事で」
「その感じじゃ、かなり飲めそうね」
「いえいえ」
ミリアとフランが持たせてくれた酒は、まだバックパックに残っていた。
冒険者ギルドに準備させた行商用の背負い箱に移してあるそれを持ち、アニマの案内で執務室とやらに向かう。
「さあ、どうぞ」
「お邪魔いたします」
大きなデスクが1つ。
それにソファーセット。
他には本棚があるくらいで、完全な仕事部屋だ。
(執務室か。そこなら人身売買の証拠がめっけられるんじゃねえか、ドッペルゲンガー?)
(そんなに杜撰な犯罪なら、とっくに尻尾を掴まれてるだろうよ。冒険者ギルドは、もう半年以上前からこの女をマークしてたらしいし)
(……なら、やっぱり長期戦か)
(そうなるなあ)
食事は驚くほど豪華というものではないが、信仰に人生を捧げた者が摂るにしては品数が多いように思える。
酒もエールだけでなく、葡萄酒まであった。
それらを飲み食いしながら交わされるのは当たり障りのない、世間話程度のもの。
「すいません、手洗いに行ってまいります」
「え、ええ」
やはり長くなりそうだと思いながら何気なく発した言葉だったが、これが最適解か。
(この教会には3泊の予定。初日の目標はなんとかなりそうだな)
(あん? どういう意味だよ?)
(見てりゃわかるさ)
接触鑑定を使う機会がなくて動きを決めかね世間話をしていたが、これなら話が早い。
立ち上がったはいいが動かないオレを見て、アニマが怪訝な顔をしている。
いかにもオリジナルが好きそうな、優し気な聖職者。
その表情がこれからどう変わるのかを考えると、なかなかに愉快だ。
芝居がかって見えぬように気をつけながら、視線を逸らしてポリポリと頬を掻いて見せる。
「その、司祭様」
「あら。なにかしら?」
「お手洗いの場所が。それにその、この様子じゃこの教会に他の人はいないみたいなので」
「……そ、そうね。お手洗いは、私が生活魔法で清潔にする事になるわ」
「アニマ司祭様のような方にそんなのをさせるというのは、何と言いますか。その」
「何を言ってるの。それが、生きるという事よ」
「そういうものなのでしょうか?」
「ええ。特に、我がワース教団の教えではそうですよ。人が生きるという事には、穢れが着いて回るのです。それを嫌っていて、愛など語れはしません」
「な、ならアニマ司祭様は、僕の汚い部分までもを許容できるって言うんですか?」
「ええ。当然でしょう」
アニマの手を取る。
怪訝そうにしながらも立ち上がったアニマは、オレがその手を繋いだまま部屋の出口に向かうと、そこでやっと気づいたようだ。
若い男と酒を飲んでいる途中で、厠に立つ。
2人でだ。
しかもその直前に、自分は男の汚れさえ許容できると言った。
何かを期待するなというのは酷だろう。
それほどに、この世界の女の性欲は強い。
いくら聖職者だろうが、その業から逃れられるものか。
「どっちですか?」
「ひ、左よ。突き当り」
「わかりました」
廊下の突き当りには、たしかに2つのドアが並んでいる。
男性用。
オレがそう書かれているドアのノブを回すと、アニマが生唾を飲み込む。
その手がまだ繋がれたままなのだから当然だ。
(……おいおい、スカトロ野郎)
(んだよ、オリジナル。やっとめっけた突破口なのによ)
(頼むから、お願いだから便所だけはやめろって)
(あん?)
(俺とキナの晩メシを見ろっての!)
ウィンドウに目をやる。
するとそこにあったのは、湯気の上がる皿と氷の浮かんだエールのジョッキだ。
(くくっ。今はギルドの個室にいるみてえだが、こっちに動きがありゃ支部長室で待機してる2人に報告だもんな。オレの視界からは目を離せねえか)
(そうだよ。だからやめろって言ってんだろうが!)
(冒険者なら、依頼はしっかりこなさねえとな。まあ、黙って見てろよ。男子便所でオマエ好みの聖職者が変態プレイをおっぱじめんのを、その美味そうなレトルトカレーを食いながら)
(テメエッ!?)
便所を見ながらカレーを食えるか! なんて言葉をシカトして、アニマと一緒に便所に入る。
「個室がいくつもあるんですね」
「え、ええ。神の曜日には信者の方々が聖堂で祈りを捧げて、その後に説法もするから」
「なるほど。ここでいいかな」
中は日本の便所とは違って、小便器は並んでいない。
その代わりに3つあるドアの1番手前に、アニマを誘う。
『無垢な少年に男子トイレへ連れ込まれ、この後の展開に期待しすぎて、それだけで達しかけている。もしかしたら、酷く汚れた肉棒を舐めしゃぶる事ができるかもしれない。もしかしたら、己の顔に小便をかけてもらえるかもしれない』
接触鑑定で見えるアニマの思考画面には、そう書いてある。
「じゃあすいません。用を足しますので、魔法で分解を」
「え、ええ」
「でも、もしアニマ司祭様が望むなら」
「の、望むなら?」
帯を解く。
こっちは最初からこの女司祭を抱いて、それが潜入捜査の第一段階成功であると決めていた。
なので、下着は着けていない。
こちらでもノーパンはいかにも好き者といった印象で、相手の興奮を煽るだろうという判断からだ。
「僕を好きにしてください」
「な、なんて大きさなの……」
「それだけじゃありません」
「えっ?」
「男だてらに旅なんてしてるもので、レベルもそれなりなんです。だから射精日なんてなくって、日に何度も射精したくなります」
「何度も……」
「はい。特にアニマ司祭様のような魅力的な女性とお酒なんて飲んでると、もうダメですね」
「ど、どうしたいの?」
「司祭様の好きなように。僕のは、かなり激しくしたって痛みを感じませんから」
「好きなように……」
「ええ」
アニマがまた生唾を飲み込む。
その膝がゆっくりと折られるのを見ながら、オレは確信した。
堕ちた。
もしクロならば数多のスキルの目を掻い潜り、周到に犯罪を重ねてきたはずの女が、こうもあっさりと。
それに満足した表情はおくびにも出さず、足を開き気味にしてからアニマの手をチンコに導く。
「ああっ……」
「司祭様の手、あったかくって柔らかい」
「ほ、本当にいいのね?」
「僕がお願いしてるんですよ」
便所の床に跪きながらチンコをさするアニマの表情は、聖職者なんてとても言えやしない。
「足を開きなさい、ホリノウチくん」
(おやおや。どっちかっつーとSか、この尼さんは)
(尼さんとは違うだろうに。つか、オマエもSだろ。大丈夫なんかよ?)
(ナメんな。前にも言ったろ。オレ達は、SもMもこなせるハイブリッドだぜ)
(頼むからテメエと一緒にすんな。うひゃっ!?)
(んだよ。男の喘ぎ声なんて聞きたかねえぞ)
(ふざけろ、タコ助。オマエの体に触れられる感触は接続を切ってねえんだ。カレーを食いながらケツの穴を舐められる身にもなれっての!)
(ぷっ、くくっ。頼むから笑わせんなって)
ペチャペチャと舐められているだけでなく、かなり荒い吐息まで肛門に感じる。
アニマはさっきの言葉通り、男の汚れで興奮するタイプなのだろう。
その舌で肛門を清める熱心さは、たしかにオリジナルなら快感より恐怖を感じてしまいそうなほどだ。
「菊門を舐められただけで肉棒をこんなにするなんて、悪い子ね」
「だって僕。ううっ……」
相手がショタコンのSなら、こんな芝居も効果的だろう。
もしウソを見破れたりもするという看破系のスキルを持っていたら面倒なので、あまり作り話はできないが、芝居で興奮を煽るくらいなら問題はないはずだ。
ペチャペチャという水音と共に、舌の熱く濡れた感触も這い上がっている。
玉袋のシワまで丁寧に舐めているアニマはもうチンコを咥えたくて仕方がないが、それをすぐに実行してはもったいないと思っているらしい。
「便器に腰かけなさい」
「は、はい」
なるべく恥ずかしそうに腰を下ろす。
「足は開くのよ。菊門を舐められただけで勃起してしまう淫乱な剛直が、よく見えるように。そう、そうよ。ああ、素敵ね……」
「は、恥ずかしいです。司祭様ぁ」
(キモっ)
(うっせえよ、オリジナル。ショタコン女にゃ、こんなのが一番なんだっての)
(だからって甘ったるく語尾を伸ばすなっての)
(いいんだよ。ほれ、聖職者サマは大興奮だ。そろそろフェラらしいぜ)
「そのまま、しなさい」
「……は?」
「ここには、おしっこをするために来たんでしょう。そのままするのよ」
「で、でもそしたら司祭様の顔とかに」
「大丈夫よ。ホリノウチくんのなら、汚物だって愛せるわ。さあ、早くしなさい」
(こ、こりゃあ。さすがにオレでもドン引きだぜ)
(……オマエを引かせるとか、上には上がいるんだなあ)
(でもま、ションベンの雨で女を汚すくれえ訳はねえやな)
(さすが変態)
(うっせえっての)
勃起した状態での放尿というのは、意外にキツイ。
だがアニマは期待で瞳を濡らしているので、女にとっては楽な事なのだろう。
下腹部に力を込める。
「んっ」
「出るのね。会ったばかりの女の前で、勃起しながらおしっこを撒き散らしちゃうのね……」
「そう、ですよっ」
チンコが跳ねる。
尿道から噴き出すのは、もちろん小便だ。
「ああっ。熱いわ……」
小便を頭から浴びながら、アニマがうっとりと呟く。
それだけでなく、その唇の間から延びた舌が口の横に垂れた小便を舐めると、アニマはもうガマンの限界に達したらしい。
大きく開いた口で放物線を描く小便を受けて、鼻息を荒げている。