オリジナルは、不思議な男だ。
自分でオレを殺してみるのは平気なくせに、他人が毒を飲ませようとしただけでこうまで怒る。
ただまあ、オレはそんな自分勝手なバカが嫌いではない。
もう1人のオレなのだから、当然か。
「口移しで飲んで欲しいんですね、司祭様」
ネジュのオマンコから顔を離したアニマが頷く。
ワース教の秘儀とやらで生やした男性器から滴っていたらしいマン汁。
予想される効果は……
(まあ、そうなるわなあ)
(どうなるってんだよ、え?)
(そう怒んなって。たぶん大丈夫だが、身動きが取れなくなったら後は頼むぜ。相棒)
(ああクソっ。わかったよ!)
キス。
焦らす気はないらしい。
すぐにトロトロとした液体が口へ流し込まれたので、それを飲み下した。
ドクンッ
心臓が、跳ねる。
意識を失うか混濁するのに備えたのは、どうやらムダだったらしい。
ただし、体にはしっかり変化が起こっていた。
勃起しているのだ。
さっきネジュの腸内に長々と射精して萎えたチンコが、痛みを感じるほど屹立して天井を指している。
「こ、これは……」
「うふふ。素敵でしょう? もう、射精する事しか考えられないはずよ。いらっしゃい。ここで、たっぷりと搾り取ってあげるわ」
アニマが股を開く。
M字開脚と言うヤツだ。
そうしながら2本の指で広げたオマンコは、明らかにオレの精子ではない液体が濡れ光っている。
「な、なんで」
「ああ。私は、そこらの女とは違うのよ。連続で膣内射精をしても平気。それどころか、どこまでも快楽を得られるわ。そうなった状態のホリノウチくんの相手ができるのは、私だけって事ね」
「ううっ……」
「さあ、いらっしゃい。天国への階段を上りましょう。2人で、これからずっと」
オリジナルの怒鳴り声。
どうやら、突入に踏み切るかどうかでモメているらしい。
(おい、オリジナル)
(んだよっ!?)
(そう怒鳴んなって。そこにいる連中に伝えろ。男を強制的に勃起させるご禁制の薬物。オレが口に流し込まれたのは、その原料だ。間違いない)
(それを伝えてコイツラが動かなかったら、俺が単独で突入すんぞ?)
(ああ)
(なら了解だ)
(オレは時間を稼ぎつつ足止めしとくから、まあのんびり来いや)
薬として調合されていないからか、オリジナルの時よりずっと効果は低そうだ。
それでも、よくぞこんな状態でオレを召喚するだけでなく、操作などできたものだと呆れてしまう。
「あ、くっ……」
アニマの膣に亀頭をあてがっただけで、そんな声が漏れる。
「うふふ。そうよ、もっと奥までちょうだい。こうやって、ね」
「う、あはぁっ!」
膣に根元まで飲み込まれた。
アニマがオレの腰に両足を回して、思いっきり引き寄せるようにしたからだ。
「素敵。でも、まだ腰を振ってはダメよ。射精なんて、もっての外」
「えっ」
「吐き出したかったら、約束なさい。私の、唯一無二のパートナーになると。約束してくれたらこの蜜壺は、ホリノウチくん専用よ。好きな時に、好きなだけ使わせてあげるわ」
反射的に『ふざけるな』と返しそうになる。
だが、それをどうにか堪えた。
オリジナルに同調させている聴覚からは、突入開始だという威勢の良い声が聞こえている。
ここは少しでもそれを助けるために、精々アニマを喘がせておかねば。
「約束だけじゃないですよ」
「あら、どういう意味かしら?」
「こんな事だってします。だから、だからっ」
気色の悪さを押し込めて、アニマとオレの体の間にあるチンコを握った。
それだけでなく、しごき上げまでしてやる。
「くうっ!」
「気持ちいいんですか、司祭様?」
「え、ええ。そうよっ。ホリノウチくんの剛直を蜜壺で咥え込んでるだけでも達しそうなのに、そんなにシコシコされたらっ!」
「ガマン汁がとろとろ垂れてますもんね。僕はこれを口に直接流し込まれたり、お尻の穴に注ぎ込まれたりするのかな」
「そ、そうよ。んくっ」
(だからムチャすんじゃねえっての!)
跳べるよな、キナ?
はいっ。皆さん、お先にっ!
お、おいっ。ここは3階だぞっ!?
オリジナルの耳は、そんな声を拾っている。
どっちがムチャなんだかと心の中で呟いて、ガマン汁をまぶすようにアニマの亀頭へ刺激を加えた。
「凄いっ。上手よ、ホリノウチくんっ!」
「これでも男ですから。腰も振りますね。こんな、風にっ」
「あはぁっ!」
(突入は30秒後。侵入経路は、その部屋の窓だっ)
(客室の窓でいいってのに)
(うっせえよ、タコ助!)
しかし他人のチンコをしごくというのは、こうも気色が悪いのか。
アニマにアレを飲まされていなければ、オレの方のチンコはとうに萎え切っているだろう。
禁制品である勃起薬の原料。
それは、モンスターに犯された女のマン汁だ。
それに薬草を魔法で加工した物を加え、あのクスリは作られるらしい。
モンスターに犯された女は、徐々にそのモンスターのメスへと体を変化させてゆく。
そうやってモンスターになり切ってしまえば、その愛液はもうクスリの原料にはならない。
犯されてから数時間。
女が人間でいられるのは、それほどにわずかな時間だ。
だからこその禁制品。
アニマは、モンスターになり切っていない。
なのにその愛液には媚薬効果がある。
それがどういう事かを考えるのは、オレの役目ではないだろう。
だが、どうしたって気になる。
「司祭様」
「な、なにかしら? 話す余裕もないくらいに感じてしまっているのだけど」
「それはないですよ。相棒になれば、ワース教の秘儀を教えてくれるって」
「ああ、そうだったわね。この剛直は……」
ドカアンッ
そんな轟音。
たかが木の板でできた窓を破るために、手榴弾でも使ったか。
それに続くのは、かすかな着地音だ。
「……ったく、タイミングの悪りい」
「ドッペルゲンガー!」
体を離す。
こうなってしまっては、仕方ない。
オリジナルが叫びながらオレに放ったのは、銃剣の取り付けられたWW1ライフル。
狙撃銃より精度こそ劣るが威力は同じで、それよりも取り回しが良い。
「おおっと、動くな。ふたなり司祭さんよ」
「ホリノウチくん、あなた……」
銃剣と銃口を向けられたアニマが歯を食いしばる。
「どうにか動けるみてえだな、ドッペルゲンガー」
「そりゃあな。オマエがケツに捻じ込まれたクスリより、効果はずっと低いんだ。軽いもんだぜ」
「フル勃起させながら言われてもなあ」
「うっせ、ダボ」
キナの姿は見えないが、間違いなく部屋にいる。
しかもベッドで身を起こし、キョロキョロしているネジュをいつでも掻っ攫える位置に。
さすが、オレの弟子だ。
「よし、勝ったな」
「これで負けるようなら、銃を置いて売春宿でもやるさ」
「商品は俺達2人ですってか。縁起でもねえ」
オリジナルが勝利を確信したのは窓から冒険者ギルドの支部長とマヒーナが姿を現したからではなく、廊下の靴音に気がついたからだろう。
足音は複数。
少なく見積もっても、10人はいる。
おそらく天秤教の連中だ。
その廊下へ続くドアが、大きな音を立てて開け放たれた。
「あらあら。押しつけがましい邪神を崇める、天秤教のビアーナ上級神官サマじゃないの。土足で教会を走るなんて、邪神の信徒はやはり不作法なのねえ」
「我が神を愚弄するのは許さんぞ、アニマ」
「うふふ。威勢の良い事ね」
「聞かせてもらおうか。オマエは、そこの薬師の少年に何を飲ませた?」
(おいおい。なんだよあの、焦らされながら足コキをされたくなる美人なネエちゃんは)
(……この状況でそれかよ、タコ助)
アニマが微笑む。
「答える義理はないわねえ」
「ならば、話したくなるようにしてやろう」
「できるものなら」
「ふっ」
睨み合い。
それは、長くは続かなかった。
どう考えても劣勢のアニマが、予想もしていなかった動きを見せたからだ。
靄。
いいや、そんな生易しいものではない。
「こういうのを、邪気って言うんだろうなあ」
「ああ。見てるだけで吐き気がするぜ」
「えっ。え、ええっ!?」
全裸のネジュがベッドの上で後退り、床に落ちる。
かなり不自然な動きでその体が支部長の足元に運ばれたのは、ハイディングで身を潜めているのが露見したとしても、ネジュを安全な場所へ移動させるべきだとキナが判断したからだろう。
「おいおい。妖怪退治の訓練なんて、軍じゃしてくれなかったぜ?」
オレが邪気と呼んだ黒い靄。
それがアニマの全身にまとわりついて、ゆっくりと晴れてゆく。
するとそこには、どんなヒューマン種とも違う肌があった。
いや、肌とは言えないのかもしれない。
妖怪。
たしかにそうだ。
「なんだありゃ。半人半蛇のモンスターか」
「わからんなあ。ビアーナ上級神官、攻撃許可は?」
「…………もう少し様子を見る」
「チッ。これだから、戦場を知らねえ上官はダメなんだ。この禍々しさを見ろよ。部下が何人か食われてからじゃ遅いんだぜ?」
「とは言っても、指揮権はビアーナ上級神官にあるからなあ」
「オリジナルらしくねえ」
「そうか? まず守るべきは、テメエが抱いた女。俺の行動原理なんて、そんなモンさ」
「なるほどねえ。……来るぞっ、散れっ!」
靄が晴れ切る前に、アニマは動いた。
「がひゅっ……」
下半身が大蛇。
腕から肩までと、ビキニのように巨乳を隠すウロコ。
顔立ちまでが変化して口が大きく裂け、瞳が蛇のそれになったアニマ。
そのアニマに喉を咬み切られた天秤教の神官戦士が、ドウッと床に倒れ伏す。
「あははっ、あははははっ。脆い、脆いわ。あなた達って、なんてか弱い存在なのっ。笑いが止まらなくなるから、もう少し私を愉しませてちょうだいっ!」
「ビアーナ上級神官っ!」
オリジナルが怒鳴る。
それでハッと顔を上げ、ビアーナは震える唇を引き結んだ。
「攻撃開始っ!」
銃口はすでに向けてある。
オレと同時に、オリジナルもトリガーを引いた。
重なる銃声。
「こ、この武器はっ!」
続いて魔法が着弾。
だが、それらはアニマに傷すら負わせられなかったらしい。
傷痕は、2つ。
オレとオリジナルが撃った、WW1小銃のものだけだ。
「魔法は効いてねえ、スキルだっ!」
「無駄よ」
腕の一振り。
たったそれだけで、数人の神官戦士が吹っ飛ぶ。
「バ、バケモノが……」
「退きなさい、虫けらッ!」
ビアーナまでもが壁に叩きつけられる。
オレもオリジナルも、迷わずまたトリガーを引いた。
「弾かれただとっ!?」
「ウロコにゃ銃弾が通らねえらしいなあ」
「ったく、めんどくせえっ」
「ここじゃ狭いから、我が神のお膝元で頭からバリバリ喰らってあげるわ。いらっしゃい」
「待てゴラアッ!」
アニマを追ってオリジナルが駆け出す。
当然、キナもだ。
「やれやれ。支部長、マヒーナ姐さん」
「あ、ああ」
「天秤教の連中の治療と、そこのお姫様の保護を。それと、そのザックを渡してくれ」
「わかった」
ザックからは銃身が飛び出しているので、オリジナルが持たせた物であるのはすぐにわかった。
支部長もマヒーナも、ザックは持てても銃は持ち上げる事すらできないだろう。
中を覗き込むと銃だけでなく、戦闘服も入っている。
それを着てナイフ、片手剣、手榴弾を装備。
勃起が治まる気配のないチンコは、腹筋に押し当てるようにしてベルトできつく締めた。
ハンドガンはリボルバーが2丁。
サブマシンガンもあったので、それの装填を確認して小銃は背負う。
「おし。そんじゃ狩りに加わってくるが、あのバケモノが相手だ。生け捕りなんぞ期待しねえでくれよ?」
「わかってるわ。武運を」
「あいよ」
「魔法もスキルも効かない相手じゃ、あたしの出番はないか。気をつけるんだぞ、ホリノウチ弟。あたしはどっちかというと、アンタの方が好みなんだ」
「へえ。いいね、バケモノ退治が終わった後の休暇が楽しみだ」
「だね。妹はギルドへの報告やらなんやらで忙しいだろうから、あたしとキナでたっぷり愉しませてやる。だから、死ぬんじゃないよ?」
「ああ。じゃあな」