初日のレベル上げの成果はムート2、オオカミ13、ゴブリン3、オーガ10、サハギン8。
それで、シェリルのレベルは34にまで上がった。
2日目も同程度の成果ではあるがレベルアップに必要な経験値が上がったので、シェリルのレベルは5しか上がっていない。
3日目も、同じようなものだ。
だが本人の体調はだいぶ良くなっていて、1日中ベッドに横になっているのではなく、起き上がってリビングで過ごすようになり、トイレにも自分で行くようになっていた。
それだけでなく何度も何度もレベル上げに参加させてくれと懇願するように言うので、オレ達の戦闘を実際に見せるついでに、4日目である今日は早朝から魔女の街へ向かって出発する事にしている。
「ほんじゃ行くか。さあ、乗った乗った」
「そりゃいいが、ちっちぇえクルマだなあ」
「360ccだからな。4人が乗れるだけマシだろ」
「山麓丸じゃなくって360だったとはな。運転は俺がすんぞ、オリジナル」
「へいへい」
小さな丸っこいクルマは4人乗りだが後部座席にドアはないので、キナとシェリルから乗り込ませる。
オリジナルは助手席。
もしシェリルの気分が悪くなったりしたらそこに寝かせて、オリジナルだけバイクで移動する予定だ。
「狭っ」
「まあなあ。広さや速さが欲しいなら、もう少しガマンだ。ほら、出せよ運転手」
「わあってるよ」
RR。
リアエンジン・リアドライヴのクルマを転がすのは初めて。
それでもギアが3速までしかないので、そんなにスピードは出ないだろう。
エンジンをかけ、ゆっくりとスロープを上る。
「うっわ、おっせえ……」
「神代街道でも60キロ出ればいい方かもなあ」
「まあ、そんでも三輪タクシーよりはマシか」
「どうだろうなあ」
3日を過ごした野営小屋をキナに埋めてもらい、神代街道を南へ。
やはりスピードはそんなに出ないが、3速ベタ踏みだと古臭いスピードメーターの針が80キロに届きかけたりするので、まあ悪くない移動手段だ。
「次の次、本当なら泊まるはずだったメドって街はどうすんだ。ドッペルゲンガー?」
「通過だ。今日は予定の1つ先の街の近くで野営。んで明日の朝早くに出発すりゃ、ギナスとプリネスを越えて魔女の街に到着できる」
「そこでキナの観光と、シェリルのレベル上げか」
「そうなるな。オレは天秤教の教会にも顔を出すが、オリジナルはどうするよ?」
「シェリルの護衛かねえ」
「へえ。そりゃ助かる。でも、手を出すんじゃねえぞ?」
「誰かさんと一緒にすんなって。紳士なんだよ、俺は。俺は、な」
「ふうん。言っとくが昨日、指輪の遮音結界を発動すんの忘れてたからな。オマエ」
「げえっ。じゃ、じゃあ……」
「ドアがねえから、何もかも丸聞こえだ」
「あっちゃあ」
バックミラーを調節して後部座席を見る。
キナもシェリルも、まるで茹蛸のように顔が真っ赤だ。
「驚いたよなあ、シェリル。隣にいる澄まし顔の子猫ちゃんが、『オマンコだけじゃなくってアナルも指でズボズボしてくださいぃ』なんて言いながら喘ぎまくるんだから」
「し、師匠。わざわざ言わなくていいですからっ!」
「そ、そうですよ。先生」
「って言われてもなあ。お。左前方にムートがいるぞ、オリジナル。距離は1300」
「んじゃ、1000で停めてくれ。シェリルがドッペルゲンガーのレベル上げに付き合うなら、かなりの練習が必要だってのを教えてやる」
今日は銃という武器を言葉だけでなく、実際に見せるつもりだったので、オリジナルは股の間にライフルを差すようにして助手席に乗っている。
車内は狭いので、片手剣はいつものように腰には佩かず背中だ。
「距離1000っと。1人でいいよな?」
「おう。オマエはシェリルに銃のあれこれを教えなきゃだし、銃を知らなかったがそれを最近になって使い出したキナの意見も役に立つだろう。しっかり教えてやってくれ」
「頭のいい子だからな。見ればそれで理解するさ」
「なるほど。そんじゃ、殺るか」
気軽な仕草でドアを開け、オリジナルが360を降りた。
そのまま撃つのかと思いきや、わざわざ後部座席のシェリルに見えやすい位置を確認したりしている。
「あれが、あんなのが、40ビットも先にいるムートを倒す武器だなんて……」
「言葉でどれだけ説明するより、実際に見た方が理解は早い。ほら、撃つぞ。しっかり見てろよ」
「はい」
ドオンッ
ムートは1匹。
都合よくこちらに顔を向けていたので、オリジナルの腕ならば眼球を撃ち抜くのも可能だろうが、シェリルの授業のためにそうはしなかったらしい。
この世界では考えられない遠距離からの攻撃だというのに、ムートはその本能でか、オリジナルが攻撃者であると断定して怒りに任せて荒野を駆け出す。
「見た、シェリルちゃん! あの狙撃が成功した後の、ニヤリって微笑みっ! カズヤさん、カッコイイでしょうっ!」
「ボ、ボクには野獣みたいな凶暴な笑みにしか見えないよ。顔立ちが優しく整ってるから、余計に凶暴そうに見える……」
「禿げ上がるほど同意だ」
2射。
充分に間を置いて3射。
それでようやく、ムートの足が鈍る。
オリジナルはHPを大きく減らしながらも逃走を選択しないムートを見て、かすかに頷いた。
ダアンッ
「HPバーが砕けましたね」
「ああ。どうだ、銃って武器は?」
「……恐ろしい、としか言えません。それを使いこなすカズヤさんと先生、それにキナちゃんは、間違いなくボクが今まで見てきた冒険者や傭兵の中で一番の手練れですよ」
「南にゃ、傭兵なんて職業があんのか」
「はい。普通にいますよ。野盗なんかも多いし、天秤教の教会どころか冒険者ギルドの支部もない街が多いんです。だからそんな街には、傭兵ギルドがありますね」
「なるほど」
ムートの肉は食用に向かず、ツノもそこらの鉱石より価値がない。
なのでオリジナルは使った分の弾をWW1狙撃銃に込めると、そのまま助手席に戻った。
「教材は足りたか?」
「ああ。今は本人が考えをまとめてるらしい」
「ふうん。なあ、シェリル」
「……あ、はい。なんでしょう、カズヤさん?」
「コイツ、ドッペルゲンガー先生と長く一緒にいたいなら、銃の扱いに慣れるしかねえぞ」
「そんな。ボクなんかが、落ち人のパーティーに入れてもらうなんて……」
助手席のドアが閉まったので、360を走らせる。
「タバコ吸っていいぞ、オリジナル。窓を少し開けてくれりゃ、風魔法で後部座席に煙が行かねえようにする」
「ありがてえ。ほら、オマエのタバコだ」
「サンキュ」
ダッシュボードに置いてある紙巻きタバコ、それもMPに余裕ができてから吸い続けている、二極化前の香りの良いタバコが口に寄せられた。
オレがそれを、オリジナルが自分の好みであるニコチンの風味がガツンと強いタバコを吸いながら、チラリとバックミラーに目をやる。
キナがシェリルの耳元で、何事かを囁く。
すると褐色の肌だというのに、またシェリルの顔が真っ赤になった。
操風魔法は単純に風を起こすだけでなく、かなり応用が利く。
2人が耳に口を寄せてはしている内緒話を盗み聞きするのは簡単だが、それはやめておいた。
モンスターを見かけてもブレーキを踏まず360を走らせ続けたので、夕暮れにはさっき言った街でなく、3人旅ならば4日をかけて到着するはずだったギナスの街の手前に野営する準備ができた。
すでに大きく防壁が見えている位置。
あの街の次の次の街が、キナの目的地だ。
まあそれも『とりあえずの目的地』と言うのが適当だろう。
本人はすっかりオリジナルに夢中でベタ惚れ。
パーティーを解散するつもりなど欠片もないのは、セックスでもなんでもない雑談の時に浮かべる、心からの笑顔で容易に察せる。
「そんじゃ、俺は家具を出してくぞ」
「ああ。子猫ちゃん、手伝ってやってくれ」
「はいっ」
「シェリルはまず体調を診る。車酔いはしなかったみてえだが、長時間クルマに揺られてんのは弱った体に良くねえんだ」
「あ、はい。でもボクは」
「いいから。こっちに来い」
「はい」
360は降りたが、オリジナルとキナが姿を消したリビングには入らない。
補給要請リストを出して、目当ての物を探す。
「あったあった」
「わあ。なんて清潔そうな上着」
「そりゃあそうだ。これは、オレ達がいた世界の医者が着るモンなんだよ」
「じゃあ、その顔に装備したのは何なんですか?」
「伊達メガネだ。知的なオレには似合うだろ」
「……はい。その、すごく素敵です」
「素直な子は好きだぞ。ほら、もっとこっちに来い。この聴診器って器具で体調を診る」
「は、はい」
素敵ですと言っただけで顔を赤くした褐色肌のロリっ子が、かなり短いワンピースの裾を揺らして前に出る。
3日、夜を共にした。
だが性的な行為は一切していない。
その柔らかそうな小さな手すら握っていないのだ。
「じゃあ、服をめくって」
「……はい?」
「聴診器は肌に当てて使うんだよ。肺炎なんかを起こしていると、呼吸音が変わるからね。普通に耳で聴き分けられないわずかな違いも、これでならすぐにわかる」
「あの、先生。話し方がいつもと違うのは?」
「今の私は医師だからね。さあ、服をめくって」
「は、恥ずかしいんですけど」
「医師の診察を受けるのに、どうして恥ずかしがる必要があるんだ。早くしなさい」
「……は、はい。こ、こうでいいですか?」
ワンピースが持ち上げられる。
3日間ずっと体を休めながら栄養価が高い食事を与えられていたので、だいぶ肌のツヤは良くなっているようだ。
しかしすべすべの肌には程遠いし、ふとももにはもっと肉が付いていた方がオレ好み、ではなくて健康的だ。
「ふむ。まだまだ痩せているね。もっと食事をしなさい。胃が小さくなっているから、少量ずつ食べる量を増やすんだ。それも、しっかり噛んでから飲み込む癖をつけなさい」
「は、はい。その、まだですか?」
「当たり前じゃないか。まだ聴診器を当ててすらいない。もしかして、恥ずかしいのかな?」
「と、当然です」
本人は旅の途中で擦り切れてしまったとかで、パンツすら持っていなかった。
それに怪我をした時に、自前のワンピースは腹の部分がオーガの爪で切り裂かれている。
今シェリルが身に着けているのは、すべてキナのアドバイスを受けながらオリジナルが補給要請で出した物だ。
成人しているからか、そのパンツはサイズの小さな大人用。
つまり紐パン。
こちらの世界の下着は極端に布地が小さいので、無毛の大陰唇がパンツを咥え込んでいるのもバッチリ見えている。