魔女の街1
目覚めてまずするのは、そっとベッドルームを出る事。
そして寝る前に最低限の家具などを再召喚してあるリビングで、ゆっくりと体を解す。
キナが起きなければ、野営小屋から出る方法はない。
ランニングはリビングを何周も何十周もするしかないのだ。
それでも、黙々と走り続ける。
汗に濡れてシャツが肌にへばりついたら、それを脱ぎ捨てて今度は筋トレ。
それは、キナが起きてくるまで続ける。
「ったく。朝っぱらから暑苦しい」
「よう、ドッペルゲンガー。オマエも、筋トレぐらいはしとけよ」
「必要ねえな。オレの体格や筋肉は、本体のそれに準拠だ」
「羨ましい話だ。んで、初夜はどうだったよ? ムチャして泣かせてねえだろうな?」
「当然だ。シェリルは病み上がりなんだぞ。12時を過ぎてベッドを出し直してからも、ずうっと寝かしたままさ」
「……あれだけしといてよく言うよ」
この野営小屋の家具や調理道具は、深夜12時になると音もなく消える。
なのでドッペルゲンガーが時間近くになると毛皮の上にシェリルを寝かせ、まずそのベッドを再召喚してから、ドッペルゲンガー召喚を解除してキナにMPを回復してもらいながら最低限の家具や、翌日に使う武器や車両を出してゆくのだ。
だがこれまでとは違い、昨日ドッペルゲンガー達の部屋で毛布の上に寝ていたシェリルは、頭の先から爪先まで精液で汚されていた。
それこそ、濡れていない場所なんてないほどベットリと。
赤いランドセルを背負ったまま、全身に精液を浴びせられて深く眠る少女。
それを見た時の俺の気持ちなど、このスカトロリコンは考えたりしないのだろう。
腹が立つので殴ってやりたいが、朝から自分を痛めつけるのもバカらしい。
腕立てを腹筋に変えて、汗を掻き続ける。
「今日は魔女の街、ドルフェースまで一直線だ。まずオレは、シェリルを連れてあの子の日用品なんかを買いに行くぞ?」
「ああ。金は多めに渡すから、ついでに武器や防具も見繕ってやれ」
「なるほど。そりゃありがてえな。都会なら、掘り出し物もあるだろうし」
「ああ。いい店があったら教えろ。キナは武器こそいいが、防具はただの服に毛が生えた程度だからな。そっちも揃えてえ」
「あいよ」
次に起きてきたのは、シェリルだ。
こちらの世界の女が男にしてやる朝の習慣として、生活魔法で汗だけでなく顔や体まで清潔にしてもらったが、顔も洗えず歯も磨けないのはなんとなく気持ちが悪い。
「風呂にも入りてえなあ、いい加減……」
「だなあ。魔女の街に、銭湯でもありゃいいんだが」
「なんですか、それ?」
「何でもかんでも魔法で済ませる世界だし、それが大陸の最南端じゃ、しても水浴びくれえか。オレやオリジナルの育った世界じゃ、毎日のようにデカい浴槽ってのをお湯で満たして、それに身を浸すんだよ」
「……なるほど。生活魔法じゃ、お湯は出せませんもんね」
「ああ」
「でも、水属性の魔法なら可能ですよ?」
「はあっ!?」
「マジかっ!」
ドッペルゲンガーと顔を見合わす。
「おい、ドッペルゲンガー」
「ああ。すぐに出せ。食材の備蓄は? 余裕があるなら、出発は明日にしてもいいぞ」
「サハギンは日に1遍でも生活魔法で水をかけてりゃ腐らねえし、肉も野菜もまだある。……ええっと。浴槽、リストのどっかで見たんだよなあ」
「雑貨タブだよ。そこの、バス・トイレ用品」
「……あった。これか」
「なるべくデケエのを出せ。今すぐに」
「おうっ!」
この世界に来て、どれだけの夜を過ごしただろう。
まさか、水属性の魔法使いがいればいつでも風呂に入れるとは。
ドッペルゲンガーが言った通り、リビングに出せる限界の大きさの浴槽を壁際に出す。
「おおっ、いいないいな」
「だろ? これなら縁の手前に段差があっから、シェリルでも入りやすいぞ。それより、湯の花を入れてもいいか? せっかくなら、温泉気分で湯を堪能しようぜ」
「待て待て。二極化前の世界じゃ、入浴剤ってのがかなり進化しててな。温泉地で採れる湯の花よりも香りが良かったり、血行促進になる効能があるのも売られてたんだ。それをオレが見てやる」
「あいよ。じゃあシェリル、これに湯を満たしてくれるか? できるなら42、3度の」
「は、はあ。それは簡単ですけど……」
そう言いながら浴槽に歩み寄ったシェリルの顔には、『たかがお湯でどうしてここまで喜んでいるのだろう?』と書いてあるようだ。
たしかに、この嬉しさは俺とドッペルゲンガーにしか理解できないかもしれない。
こちらの世界では入浴なんて、言葉すら聞いた事もないのだ。
「いやあ、楽しみだなあ」
「だな。よし、まずはこの入浴剤を出してくれ」
「あいよ。……これだな。召喚っと」
「な、なんで脱いでるんですかっ!?」
なんでと言われても。
ドッペルゲンガーは苦笑い。
それでも説明をする気はあるようで、入浴がどういうものかをシェリルに語り聞かせている。
「お先」
「あ、こら。ズリイぞ!」
「知るか。早いモン勝ちだっての。……おおっ。いい湯加減だ」
日本では風呂を沸かすのもそれなりの手間だったので、朝風呂なんてのは贅沢の代名詞だった。
それが、こんな一瞬で。
「恥ずかしいならこれを着ろ。オレはもうガマンできねえから、先に入ってんぞ」
そう言い捨て、まるで飛び込むようにしてドッペルゲンガーが湯を揺らす。
「くーっ、たまんねえなっ」
「ああ。こんな世界でも、やっぱり風呂は最高だ」
ついでにキナが起きてきたら、歯ブラシと歯磨き粉も出して口の中をサッパリさせよう。
ドッペルゲンガーは心行くまでひさしぶりの風呂を愉しむようだし、そうなればシェリルの体調を見ながらセックスに興じるのは確実。
ならば俺も、今日はのんびりキナをかわいがってやればいい。
「あの、先生。これって何なんですか。すごく変な肌触りの生地なんですけど……」
ドッペルゲンガーが口笛を吹く。
「……昨日はランドセル、今日はスクール水着かよ。ロリコン野郎め」
「オマエだって昨日、子猫ちゃんにセーラー服を着せてただろうがよ」
「セーラー服はいいんだよ。こっちだけじゃなく日本でも、結婚できる年齢の女が着てたんだから」
「くだらねえ言い訳を。まあ、そんなん今はどうでもいい。来い、シェリル」
「は、はい」
シェリルがおっかなびっくり浴槽に入り、ほうっと吐息を吐いた。
表情が柔らかくなっているので、それなりに風呂が気に入ったのかもしれない。
「どうだ?」
「あったかいです。まるで、先生にギュッってされてるみたいな」
「そうかそうか。ほら、これを湯に混ぜてみろ」
「なんですか、これ?」
「入浴剤だ」
「香りが強いですね。こう、ですか?」
「ああ」
浴槽のお湯が一瞬で濁る。
それだけでなく二極化前の入浴剤とやらは、まるで瓶ビールを振ってから開けたように泡を撒き散らす。
「おわっ。なんだこりゃ」
「この炭酸っぽいのが、温浴効果を高めるらしい」
「へえ」
「先生、これ楽しいですっ!」
「そうかそうか。なら、あと3つ4つ入れちまえ」
「はいっ」
「そしてオリジナル」
「あん?」
「エール。氷はシェリルに出してもらうから、ジョッキを4つな。それを置くテーブルとダブルベッドも、浴槽にくっつけるように出しちまえ。今日は1日、風呂を愉しみながらヤリまくりだ」
「キナが起きたらな。浴槽と入浴剤で、MPがスッカラカンだ」
ドッペルゲンガーがニヤリと笑う。
コイツがこんな表情をすると、ロクな事がない。
ここは面倒事を避けるため、エールのジョッキだけは浴槽の縁に出してやろう。
「まあ待て」
立ち上がった俺に、ドッペルゲンガーがそう声をかけた。
「待たねえよ」
「なら、こうだ。シェリル?」
「は、はいっ」
まるで飛びつくようにして、シェリルに抱きつかれる。
それはまあいいのだが、場所が悪い。
体が小さいからか、シェリルは腰や胸ではなく、俺のふとももに抱きついたのだ。
「ええっと」
「先生のと同じ。やっぱり、すごい。まるで、もう1本腕があるみたい……」
「シェリルはオレの何なのか、オリジナルに教えてやれ」
「はいっ」
シェリルがそれはもう嬉しそうに微笑む。
その笑顔で見上げられながら、俺はドッペルゲンガーの横っ面に回し蹴りを叩き込みたいという衝動を抑えるのに必死だ。
「カズヤさんっ」
「お、おう」
「キナちゃんがカズヤさんのオナホールになったように、ボクは先生の肉便器になりましたっ」
「……こんな子供に、このスカトロリコンは」
「だから好きな時、好きなだけこの肉便器を使ってやってください」
「こういう時はどうすればいいかわかるな、シェリル?」
「はいっ。こう、ですよね」
「ああ。いい子だ」
肉棒の先が食まれる。
もちろん勃起はしないが、MPは当たり前のように回復するだろう。
「んうっ。ふぇんふぇいのひゃらいのに、おいひい……」
これは、フェラチオではない。
ただ子供の小さな口で大人の肉棒を咥えさせ、己との年齢差を目で確認して悦に入るための変態行為だ。
シェリルは口いっぱいに肉棒を頬張り、尿道を頬の内側に押し当てて、かわいらしいほっぺをふくらませては、それを飴玉でも舐めている時のように移動させては目を細めている。
ドッペルゲンガーのような変態には、その眺めはご褒美であるのだろう。
だが、俺はロリコン野郎ではない。
思わず溜め息が漏れる。
「ったく、このタコ助は……」
「1晩でフェラを教え込むなんてムリだからよ。本格的なのは、今日から子猫ちゃんに教えさせればいい」
「へいへい。こんなでもMPが回復しちまうってんだから、やってらんねえよなあ」
「や、やっぱりボクなんかにされても、気持ち悪いだけですか?」
シェリルの声。
言い訳をしようと慌てて下を向くと、涙目とハの字になっている白い眉が目に入る。
……これは、ヤバイ。
「違う違うっ。ただシェリルはドッペルゲンガーが好きなのに、俺のMPまで回復させんのは申し訳ねえなってよ!」
「あは。そんなの、いいんですよ。先生はカズヤさんで、カズヤさんは先生。だからボク、いくらでも頑張っちゃいますっ」
「……お、おう」
「くくっ。オマエのそういうトコだけは好きだぜ、オリジナル?」
「うっせえ、タコ助。テメエになんぞ好かれたくねえっての!」