ああ……本当にウザイ…
ふふっ……やるの?
……今日、の夜にね
あらあら…それまでの間お預け?
……我慢して。…夜になったら気が済むまでやっていいから
くすっ……わかったわ…
人混みに紛れ込みながら、少女は笑みを浮かべた。
「だぁ!くそっ!今回も失敗か~」
ソファーでだらしなく座る、黒い猫っ毛気質の髪を片手で掻きながら、数枚の紙を見る青年。
「また、逃がしたみたいだね。ほら、苛ついてないで、紅茶なんかどう?」
白銀の女性と言っても過言ではない、青年より少し年下の少年。
彼らは、一般人とは少し違った仕事をしていた。
「確か、ここ最近活発になってるんだったな。」
少し長く赤い髪をした中年の男性は、ゆっくりと紅茶を飲みながら、しかめっ面になった。
「しかも今回のも酷い……夢で四肢を斬られるわ、腸を引き千切るわ……言うだけでも惨いな……」
「それをさらっと言う支部長もどうかと思うけど?」
苦笑いをしながら、少年は青年に紅茶を渡した。
20XX年、突如として狂人と化した人々が急増した。
原因は人の心にある闇が具現化、もう一つの人格として、人々を狂わせていたのだ。
それを防ぐため、政府は精神保安管理局を設置、この混乱を制した。
しかしこの管理局の存在は、一般市民には公表されてはいない。
市民に不安を募らせては、元も子もないので、非公式なのだ。
そして、ここは精神保安管理局の東京支部の拠点。事務所として使っている。
ここでは、二人の若いエージェントに支部長が一人の三人で活動していた。
「……前までは、分かりやすい思考で追跡も楽だったのになぁ…」
青年もとい、安藤司は紅茶を飲みながら、ため息をつく。
「確か、その闇人デュダの裏って、幼児さんらしき姿で、誰かも分からないんだよね?」
「あぁ。」
白銀の少年、篠田佑はいつも座る椅子に腰掛けながら、紅茶を飲んだ。
闇人デュダ
それは心の闇を人格として受け入れた二重人格者の呼び名。
裏というのは、その者の心の闇の人格のことを指している。
通常は、その闇に全てを任し、本能のままに狂うのだが。
「今回は本能、ていうより“従ってる”って感じでしかも、多分本人とは違う姿か……」
その人の闇であるのだから、その人格もその人を模すのだが、今司が追っている闇人デュダは、多分だけれども、姿は違うし、裏もいつもの奴らとは違った。
「はぁ……わかんね。……はぁ…被害者の関連系調べて来る…」
頭を掻き毟りながら、司は事務所を後にした。