…識、朝よ?起きたらどう?
私のもう一人の“声”により、朝だと知った私は、ゆっくり目を開ける。
「ふあ…もう朝か…」
お寝坊さんだこと。今日から高校生になるのにさ?
黒い真っ直ぐな髪をポリポリと掻いて、布団から出て、洗面所に向かう。
あんたみたいなのに言われたくないね
ふふっ……言ってくれるわね?
誰にも分からないように小さく口を上げ、すぐに戻す。
今日は凄く調子が良い。昨日はだいぶ遊んだみたいだね。
洗面所で濡れた顔をタオルで拭きながら、体の感覚を研ぎ澄ます。
あら?……よく分かったわね?さすがは識。
「ふぁ……あ、おはようございます。大家さん。」
わざとでもあるが、不自然に感じさせずにアクビをし、挨拶。
「おはよう。識ちゃん。今日から高校生だね~。」
「あ…、はい。そうですね。」
にっこりと営業スマイルをし、髪を整える。
私の髪は肩まで伸びていて、毛先がいつもどこかに向かっているのもあり、数分の時間を費やした。
やっぱり不便ね~。その髪、バッサリ切っちゃたら?
このぐらいでいい。と言うより、これ以上切ると毎晩遊ぶ事になるよ?
あら。それはそれで嫌だわ。
もう一人の“私”と端から見れば他愛もない話をする。
これはこれで私にとって、心が安らぐ一時の幸福。
けれど彼女は現実には現れない。
彼女は私。
私のもう一つの人格。
私の闇が具現化した存在。
私の願いを叶える者。
私が唯一心を開く、たった一人の親友でもある。
名前はティリア。
小3ぐらいの背丈で、服は着物のような少し違う服。
その背中には、彼女の倍はある鎌。
しかし、その性格は姿と裏腹に残忍。
そして、殺戮以外、何も考えていない。
一度、彼女に言われ、夢での殺しやら準備を全て任せ、放っておいた事もあるのだが、計画が杜撰で邪魔も入り、ほとんど楽しめなかった。
無論、目標ターゲットは私にとって気にくわない人だったので、逆にストレスが溜まった。
その後、邪魔をした人物の事をティリアに聞くと、彼らは精神保安管理局という者達だと知った。
彼らは、夢で殺戮活動をする私達を見つけ、捕らえ、ティリア達を消す存在だとも知った。
つまり、敵。
彼らに正体を掴まれないよう、行動を制限したり、殺す相手をあまり関係のない人にしていた。
……今まではうまく行った。けど、これからはまた学校に行かなきゃならない。……奴らにバレなきゃいいけど…
大丈夫よ。識。奴らは私達を消せるけど、それでも同じ人。夢で殺せば、精神が消されるんだから、死んだも同然よ。
……そうだね。
「じゃあ、行ってきます。大家さん。」
「いってらっしゃい。気をつけてね。識ちゃん。」
「はい。」
ご飯も食べ終わり、テレビを見ながら着替えを済ました私は、憂鬱な気分で学校へ向かった。