やっぱり、学校は嫌いだ。
「よう!麻田~。お前もこの学校だったんだな。っぷ。だっせぇ。」
私の身長の約倍のうざい男子は、笑いながら罵詈雑言を放つ。
こいつマジでウザイ。殺したい!八つ裂きにしたい!……っと、落ち着かないと……
うざい男子に対する憎悪を奥底に押し込み、平常心を保たせた私は、耳に響く音を聞き流しながら、今朝のニュースを思い出した。
やはり、昨日のティリアの所業は、ニュースに流れていなかった。
実は、ティリアに会って間もない頃、ティリアの存在が信じられず、インターネットや新聞等を見ていたのだが、何処にも載っておらず、ティリアを信じるのに時間が掛かった。
ティリアが言うには、精神保安管理局が情報を操作し、ティリア達の存在を公にしていないだとか。
確かにそうしなければ、国中がパニックに陥るし、何よりも、私達を捕まえることがいっそう不可能になる。
……あっちもあっちで考えてるからな…あんまし調子に乗ると、絶対に捕まるな…
「おい!麻田ぁ!聞いてんのかこらぁ!」
彼方の方向を向いていたせいで、聞いていないのがバレバレだった。
うざい男子はそれにイラついた様で、何時ものように右腕を振り上げて、殴り掛かる。
私は、来るであろう痛みを覚悟しながら強く目を瞑った。
しかし、何時になっても痛みが来ず、不思議に思い、目を開けた。
「いてぇ!痛いって言ってるだろうが!放せ!」
黒い猫っ毛の髪に、面倒臭そうな顔の男子が、その男子でも倍はあるうざい男子を軽々にあしらっていた。
「君、この子に暴力振るおうとしたよね?駄目だと思うんだけど。ねえ?」
よく、ドラマの刑事等が犯人を捕まえた時にするので拘束、そして少しづつ強くしてる。
「いてぇ!わ、わかった!わかったから!放してくれぇ!」
さっきまで踏ん反り返った態度とは間逆で哀れな姿になったうざい男子。
内心でザマァなどと思いつつ、その光景を見る。
そこで満足したのか、男子は拘束していた腕を離した。
「お、覚えてろよ!」
うざい男子は負け犬の遠吠えを叫びながら、逃げて行った。
「はぁ……全く。何で女の子に暴力なんて振るうのかなぁ……君、大丈夫かい?」
ため息をつきながら、男子はこちらを向いた。
「あ…、はい。大丈夫です。助けてくれてありがとうございました。」
「え、いや、いいよ。お礼は。それより、いっつもやって来るのかい?あの男。」
心配そうに私を見ながら、彼は困ったような顔をした。
……?何も言っていないのに何故そんな顔を?
「はい……。まあ、小学校も中学校も同じだったので………あれ?その制服…」
男子の服を見ると、黒いブレザーに赤と白の縞模様が入ったネクタイ。左胸には高校の校章がはいっている。
そして、私もその服を着ている。
「ん?ああ。俺もこの近くの高校に入学するんだ。……えっと。よかったら、途中まで一緒に行かない?」
「え……?あ、はい。」
突然の申し出に驚き、思わず返事をしてしまった。
あ~あ。識、何やってんのよ…。そんな男、無視してさっさと行くわよ。
待って。ティリア。……間違えて返事はしたけど、この男子、すっごく気になる……。少しだけ話さして。
ティリアに待てを言い渡しつつ、つい先程のこの男子の表情について考えていた。
「ほ…良かった。実は、ここの地域に引っ越して来たのが昨日でね……」
「つまり、私に会うまで路頭に迷っていたと。」
「うっ……。ストレートに言うね。まぁ、実際そうなんだけど……」
苦笑いをしつつ、男子は頭を掻いた。
私は、なんと言うか、今までとは少し違う何かを感じながら歩いた。
「そう言えば、君、なんて名前?俺は安藤司。」
しばらくの間、何を話せば良いのかわからず、ただ無言で歩いていたのだけども、男子もとい、司がその沈黙を破った。
「……麻田識です。」
「あさだ?えっと……どんな漢字?」
「そうですね……簡単に言うなら、大麻の麻に田んぼの田です。」
「た、大麻の麻って……もう少し、何か身近な物で言おうよ……胡麻の麻とか……。」
「小学生は知りませんが、中学生位から知る言葉で、一番分かりやすいと思うのはこれだと思いますが。」
「まぁ、そうかも知れないけどさぁ……。駄目な気もするけど。」
そんな感じで他愛もない話をしていると、いつの間にか学校に着いていた。
私はティリアがさっさとしろと煩いので、司と校門の前で別れ、クラスを調べ、指定された教室に。
そして、黒板を見て、座席を確かめると、私は休憩がてらに椅子に座る。
……ふう。疲れた。こんなに喋ったの、ティリア以外で初めてだな……。
私は小さい頃から人と話すのが苦手で、ティリア以外ほとんど話していなかった。
それに、いつもの男子とは違って相手を気遣い、私のような人にまで笑顔で接してくれて、話し易かった。
……同じクラスじゃなかったのは残念だけど、同じ学校だし、いつかは会えるよね?
そんな淡い希望を持ちながら、私は鞄を机から下ろした。
……識。ちょっといい?あの男とは、関わらない方が良いわよ。
何であなたに表の事で指図されなきゃいけないのよ。
識。よく聞いて。あれは前に私の邪魔をした奴よ。つまり、精神保安管理局よ。
「え……。」
ティリアの言葉に一瞬追い付けず、声を出してしまった。
しかし、私はそれに気づかず、ただ呆然としていた。