「皆さん。おはようございます。これから一年間、このクラスの担任をさせて頂く、佐川です。よろしく。」
高校生活が始まり、一番最初の授業が始まった。
と言っても一番最初なので、LHRで自己紹介だった。
先生は昨日いた先生ではなく、不精髭を生やした男性だ。
どうやら昨日は体調が優れず休んでいたらしい。
「じゃあ、みんなに自己紹介してもらいます。自分の名前と趣味や好きな物でも良いので、何か一言言ってください。じゃあ、出席番号順で……麻田さん。起立して、みんなの方を向いてください。」
うげっと思いつつ、椅子から立ち上がった私は、クラスの方を向いた。
このクラスは、他の組より一番人数が少ないが、それでも二十八人もいるので、教室全体が生徒で埋もれているように見える。
面倒臭いので、軽く自己紹介をした。
「麻田識です。趣味はシミュレーションと読書です。よろしくお願いします。」
ペコッとお辞儀をし、椅子に座ると拍手が興った。
「ん。一番最初なのによく出来てた。それより趣味にシミュレーションってなぁ……まぁ、いいか。次は…」
何か悪かったのだろうか。
私は首を傾げ、疑問に思った。
しかし、他の生徒の趣味等を聞いて分かった。
皆して、ゲームやら読書、スキーと言っている。
シミュレーションを趣味にしている人が誰一人としていなかった。
あ~あ。これは目立ったわね。
面倒臭っ……
「じゃあ、次は佐々木。」
イライラとしているといつの間にか、番号が12番になっていた。
12番の子は女の子で黒髪のショートだ。しかし。
「?佐々木さん?」
呼ばれているのに返事がない。
と思っているとゆっくり面倒臭そうな顔で椅子から立ち上がった。
「………佐々木真愛マナ。趣味も好きな物もありません。誰とも話したくないので、来ないで下さい。」
そう言って、静かに椅子に座った。
……流石に底辺の高校…。引きこもりさんいたね。
そうね。ふふ…
何笑ってんのよ。キモい。
ティリアの意味深な笑いに生理的悪寒がした。
LHRも終わり、休み時間に入った。
教室はやはり騒がしいが、今回は悲鳴を上げた。
「識さん。さっき、趣味でシミュレーションって言ってたけど、何するの?」
「まさか……彼氏を作るためのだったり!?」
「え!?それは教えて欲しいなぁ。」
「たはは……違うよ。ゲーセンで使うの。あのUFOキャッチャーにね。」
自己紹介でヘマをし、ある意味注目の的になってしまった私は、この事を予測して、答える事を予め考えていた。
実際、このシミュレーションは日常での厄介事やティリアの殺しの計画で行っているので、本当の事は絶対に言えない。
「えっと……あ!いたいた!」
ふと、聞き覚えのある声が右耳から聞こえた。
司だ。
まさか私の所に!?と思い、目を反らすと司は、私の目の前を通りすぎた。
え……?私じゃない?
ヒョイっと司が行ったと思われる場所に目をやると、窓側で固まっていた男子の所にいた。
……は、恥ずかしい……
そう思いながらも、私は何時までも質問してくる女子と喋った。
しかし、男子というのは本当に煩い。
端から端なのにほぼはっきり聞こえる。
「あれ!?司!?え、お前なんでこの学校に来てんだよ。」
「あぁ。親父がまた転勤してさ。そしたらここの地域だったからさ。」
「へぇ~。けど、よく無事にたどり着けたな。お前、極度の方向音痴なのにさ。」
……なるほど。だからか。
「あぁ。本当にヤバかったよ。登校初日から遅刻だなんて、先生に目つけられるって。けど、偶然にさ、ここの制服来た子に会ってさ。確か…名前は麻田だったかな?」
!ちょっ!?何人の名前言ってんの!?
「え?麻田?その人なら……ほら、あそこにいるよ」
男子は司にわかるように、私の方を指差した。
何指差しとるんじゃぁぁあああ!
「え?あ、本当だ。ってやべ!俺もうそろ行かねえと。じゃあな。」
男子に手を振り、まっすぐこちらに向かい、ドアを開けたとき、小声で。
「朝はありがとう。」
と言って、教室を出て行った。