一時間目のLHRが終わり、二時間目三時間目と遅いような速いような感じで終わり、ようやく六時間目も終わった。
軽く一息つき、帰りの準備をしていると、先生が入って来た。
「よし。お前ら。帰りのHR始めるから席に座れ。」
元から座っていた私はもうすぐで終わる準備をしながら、先生の話を聞くことにした。
「今日は、高校に入って初めての授業だったが、まぁ、ほぼ自己紹介だったと思う。明日からは授業に入る科目が出て来ると思う。教科書など、忘れずにな。……今日の掃除はいいか……じゃあ、起立!きょうつけ。……さようなら。気をつけて帰れよ。」
先生はそう言って、そそくさに帰って行った。
……帰るか。
久しぶりの学校で、久しぶりの授業で、久しぶりに同い年とたくさん喋り、疲れきった私はほぼ放心状態で教室を出た。
……だ、大丈夫なの?識。
うん。大丈夫じゃない。
やはり、私の闇でもあるからだろう。
疲れすぎたのを感じて、ティリアが心配してくれた。
こんなんで学校生活大丈夫なのかな……
「ぷは~………疲れた…」
お疲れ様。てか本当にすごいわよ。精神疲労。今日は止めとく?
ん~……本当はそうしたいんだけど…今後の事話さないと。
今後の事って?
ティリアはそんなのいつも通りでいいじゃないと言ってくるが、そうもいかない。
実は今まで、彼らに邪魔されないよう、時間をバラバラに設定。
絶対に時間を被らせないようにしていたのだ。
しかし、それは春休み中の事。
今は高校生。
しかも、中学の時より授業も長い。
そして中学と違って皆して話し掛けて来る。
はっきり言って身がもたない。
……なんで皆話し掛けるんだか……お陰で家に帰るのしんどいんだけど。
確かにそうね。
「……はぁ~…疲れた。休み時間か授業中でいいから寝させて欲し…い。」
?識、どうしたの?
ティリア。確かあんたは私が寝てる時だけ他の精神に入ってんのよね。
ええ。そうよ。………あぁ、なるほど。それなら、短くて……三分?いや五分かしら。
殺すんじゃなくて悪夢を見せるだけなら?
三分ね。
了解。じゃあ、これからは面倒臭い事はしないで、じっくりと精神を追い詰めるのでいい?
良いわよ。じゃあ、今日は早く寝なさいよ。
はーい。
さて、明日が楽しみだな。
次の日の朝、疲れていたせいもあり、ぐっすり眠れてしまった私は、機嫌よく道を歩いていた。
その前を見たことのある男子がふらふらと歩いていた。
「司。おはよう。」
「……え?麻田さん……?おはよう。なんか元気だね。」
私とは間逆に疲れきった司は、羨ましそうにこちらを見た。
「うん。昨日、クラスの子ととかと話してね。疲れてね。久しぶりにぐっすり寝れたんだ。そんな司は寝てないの?目の下の熊凄いよ。」
「あぁ。……ちょっとね。」
司は遠くの方を見ながら答えた。
……昨日は何もしてないのになんでこんなにやつれてるんだろう…
そんな事を思いつつ、司を横目で見ながら、昨日の実行の為の言葉をいつ言おうか迷っていた。
昨日、休み時間中に実行しようという話になっていたものの、敵がどの位の情報を持っているかわかったものではない。
つまりは、気づかれない為の布石をしておくのだ。しかし。
「あのさ「えっと…」」
喋ろうとした瞬間、見事に被った。
「……先、良いよ。言っても。」
しかし、司は紳士だ。譲ってくれた。
「あ、ありがとう。ええっと、この前さ、初めて会った時、最初無言だったの覚えてる?」
首を傾げながら、司を見ると、うんと頷いた。
「実は私、中学から苛められててね、人と話す事が殆どなかったの。しかも、あの男子に暴力を振られながらね……」
少し悲しげに話しながら、私は下を向き、雰囲気を出す。
「けど、ここに来て、またあいつに会って、またかって思ったら、司が来てくれて、しかも皆話し掛けてくれる。とても嬉しいんだ。けど、ちょっと問題があってね。皆して一斉に話し掛けて来るもんだし、その……君らの声も大きいせいで、だいぶ参っちゃうんだ。だから…その…もう少し静かにして欲しいんだけど……その、ごめん。本当は騒がしくてもいいんだけど、なにせ久しぶりだから…」
「わかった。じゃあ、休み時間は廊下にいるよ。」
嬉しげに返事をし、了解をする司。
そしてこれにもう一言。
「あと、私が皆と慣れた後での話なんだけど、……司とも話したいなって……この前も一緒にいた時、なんと言うか、こう、ほっこりする感じがするんだ。……いい?」
その一言を言うと司は満悦の笑みを見せた。
どうやら、作戦は成功したもようだ。
「うん。いいよ。麻田さんも頑張ってね!」
元気良く言って、教室の前で別れた。
チョロイね。
~司視点~
今日は嬉しい事があった。
あの無言で闇人デュダの可能性があった麻田さんが話し掛け、しかも、皆と仲良くなると言ったのだ。
もうこれ以上に嬉しい事はない。
本来、闇人デュダは人を憎む事が多く、人とも接する事を嫌う。
だけど、彼女は違う。
朝なんかは僕に話し掛け、休み時間は女子達と苦戦しながらも喋っていた。
つまり、彼女は闇人デュダである可能性が低い!
この事で嬉しすぎて、今日の授業は一つも覚えていない。
けれど、本当に嬉しいのだ。
「ただいま戻りました。支部長。」
「ん。お帰り。今日の収穫はどうだった?顔を見ると良いことがあったようだが。」
赤い燃えたような髪の男性、寺田偲はここ精神保安管理局東京支部の支部長だ。
「はい。まずは、今回俺が入った高校ですが、闇人デュダである可能性の人は一人に減りました。」
「?減ったのか?何故だ。」
俺の言葉に何か引っ掛かったのか、眉をピクリと動かす支部長。
「はい。その子はこの前言ってた子で、麻田さんと言う人なんですが、皆と仲良くするって!しかも上機嫌で僕に話し掛けて!」
「ふむ……そうか。」
支部長はゆっくり頷き、難しそうな顔をした。が、すぐに緩め、報告の続きを聞いた。
「それと、麻田さんと同じクラスにいる女子で、佐々木真愛さんと言う人は自己紹介で人と話したくないと言っていて、しかも休み時間は全て寝てます。可能性はあるでしょう。」
「そうか。わかった。引き続き、司は高校での闇人デュダの捜索を。…気をつけてな。」
支部長、偲はそう言うと、また難しそうな顔になりながら、紅茶を飲み始めた。
彼は危惧したのだ。
今回、司が担当している闇人デュダが相当に厄介だと。