※この作品はR-18です。

ディノの幸せ?な新婚生活   作:ちびっこ

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たいしたことは書いてないし、ネタバレになるけど、あらすじとタグは確認した方がいいかもね。


その1

 キャバッローネファミリーといえば、マフィア界のトップに君臨するボンゴレファミリーの同盟勢力ではトップ3には入るほど規模が大きく、また現ボスであるディーノが先代からの財政を立て直したのは有名な話である。

 

 そこに昨今ではもう1つ追加されることになった。16歳の一般女性(少女)との結婚である。

 

 理由は簡単、マフィア界での衝撃は凄まじかったからである。現ボスであるディーノはまだ20代前半。目をつけていたマフィアも多かったのだ。

 

 相手が16歳ということでキャバッローネが圧力をかけたと風の噂が流れており、先を急いだことからただの一般人ではないだろうというのがマフィア界での見解だ。当然探りを入れようとパーティの招待状を送るが、キャバッローネのガードは固くパートナーに妻を連れてくることはまずない。

 

 キャバッローネのシマでも目撃情報は少なく、基本屋敷から出ることはない。たとえ出てきたとしても、大量の部下に囲まれてよく見えないか、ボス自らが目を光らせている時しかない。

 

 最近ではディーノ本人に、閉じ込め過ぎは逃げられるとアドバイスするマフィアも現れるぐらいだ。もちろん親切に見せかけた皮肉である。

 

 しかし皮肉に気付いてないのか、ディーノはそれを全て笑ってかわした。

 

 

 

 パーティからの帰り道、車内でディーノは書き殴ったメモを受け取る。そこに書かれているのは一緒に参加した部下がディーノの妻であるサクラを探ろうとしたマフィアの名だった。

 

 目を通したディーノは己の勘から更に怪しいマフィアがあれば書き足したところで、全ての部下に目を通しておくようにと指示を出す。当然、車内の空気は重い。サクラが予知出来ると勘付かれるのも時間の問題だからだ。しかしそれも屋敷に着くまで。この話題はサクラの前では出さないのは暗黙の了解だった。

 

 屋敷に戻ったディーノは真っ先に自室へと向かう。部下達は何も言わないので、いつもと変わらないようだ。扉を開くと自身のベッドの上でマンガ本を読んでいるという見慣れた姿が目に入った。扉の音でも気付いていないので、相変わらず集中しているようだ。

 

「ただいま、サクラ」

「……ん? ああ、おかえり」

 

 視線が合うのも僅かな時間で、サクラは再び本の世界へと戻る。一見つれない態度だが、ディーノはニヤけてしまった。栞を挟んで自室に戻らないので、眠くないからかまってほしいというサインなのだ。

 

 今すぐかまってあげたい気持ちを抑え、ディーノはシャワー室へと向かう。以前、香水の匂いがついていたらしく「臭い」と言われて固まってしまったスキに、自室へ帰ってしまったことがあるのだ。同じ過ちは繰り返さない。

 

 ディーノがシャワーを浴びていると、脱衣所でゴソゴソと動く気配がし始める。恐らくサクラがスーツをハンガーに干そうとしているのだろう。残念ながら声はかけても手を洗っているから出てくるなと言われるだけだし、後で聞いても部下が干していたと言い張るので、サクラの行動を止めないためにも知らぬフリをするしかない。

 

 サクラが完全に立ち去ったと確信してから、シャワー室から出る。念のために腰にタオルを巻いて出るが、もしバッタリ演出なんてものが起こってしまえば、サクラはしばらくディーノに寄ってこなくなるだろう。……下手すりゃ、サクラが妙な行動を起こし、理性が試される羽目になる。

 

 結婚しているので問題はないのだが、サクラはまだ16歳。まだ幼いのもあるが、サクラの父と18歳まで手を出さないと約束しているのだ。ここは我慢するしかない。

 

 しかし最近はグラつくことが多い。

 

 サクラは恥ずかしがり屋だが、至って普通だ。鋭くも鈍感でもない。一発で察する時もあるし、ヒントを何度も与えれば問題なく察する。ただし大人の男女に関してはなんとも言えないのだ。

 

 サクラの場合、基本が兄である桂だ。恥ずかしがり屋なので滅多にないが、兄妹でしたことがある手を握ったり抱っこは自ら強請ることもある。

 

 一方で桂としたことがない、また兄妹では教えられないことには滅法弱い。例えばキスを恥ずかしがるのは今でも変わらないが、最初は突拍子もないことを仕出かす。

 

 それだけならまだいい。時間をかけて教えればいいだけの話だ。……最近はちょっと方向性が怪しく危ないが。

 

 それでも一番厄介なことは、兄の桂にしても大丈夫なことはディーノにしても大丈夫と思っている節があるのだ。

 

 月に何度か人恋しくなったらしく深夜にサクラが訪ねてくる。もちろんディーノは受け入れる。初めの頃はあまりにも無防備な姿に寝付けなかったが、ディーノはどのような状況でも眠れるように鍛えているし、緊急時にサクラと野宿したこともあるのだ。ベッドの上というシチュエーションさえ考えないようにすれば、何とでもなる。

 

「あの……その……」

 

 いつものようにポンポンと背を叩いていると、サクラが何か言いたそうにしているので、ジッと待つ。サクラが言い淀むときは大抵お礼か、謝罪、または甘えたい時だ。お礼と謝罪なら、ディーノが必要ないと判断した時は先に声をかける。が、今日は明らかに甘えたい内容なので止める必要はない。

 

「ぎゅっして、寝てもいいか……?」

「……ああ」

 

 一瞬だけ躊躇した。緊急時でもないのに、サクラに触れながら眠るのは本音でいうとかなり厳しい。ほぼ間違いなく眠れない。といっても、一日、二日ぐらい眠らなくても鍛えているので何とかなる。毎日なら厳しいが、一緒に寝ることさえ一ヶ月に二回あるかないか。可愛らしいサクラの甘えを断る理由はない。

 

「ほ、ほんとにいいのか?」

「もちろんだ」

 

 返事をした途端、抱きついてくるサクラは可愛い。が、抱きつき方がディーノとの想像とは違った。

 

「サクラ!?」

「ん?」

「抱きつくって腕になのか?」

「ん。小さい時は兄によくしたんだっ」

 

 小さいっていつの話だという言葉は何とか飲み込んだ。あまりにもサクラが嬉しそうだから。

 

「ディノ、痛くないか?」

「ああ……」

 

 痛いわけがない。柔らかさしかないのだから。腕に当たる感触は、昼間の時と違って柔らかさが違う。明らかにブラをつけていない。まだそれだけなら何とかなる。ディーノの手はサクラの太ももに挟まれているのだ。腕と手のどちらの方が感覚が鋭いのかは明白。この柔らかさも問題だが、ディーノがちょっと力を入れれば触れる。どことは考えない。考えれば本能のままに動く。

 

「痛いなら動かしていいぞ?」

 

 僅かにいつもと違う返事だと感じとり、サクラはやせ我慢だと判断したようだ。やせ我慢はやせ我慢だが、サクラの考えているようなものではない。しかしサクラは痛いと判断し、ディーノが楽な体制に動けるように片足をあげたのだ。

 

 100%の親切心。頭ではわかっている。が、手は考えている方向とは逆へとゆっくりと動く。

 

「ディノ、くすぐったい」

 

 身をよじる動きがまたディーノを誘う。気付けば、あと少しで触れる位置にいた。しかしそれ以上はいけなかった。止まったのは理性が勝ったからだろう。

 

 ホッと息を吐こうとしたところで、息が止まる。すっかり忘れていたが、サクラはディーノが痛くない位置を探していると勘違いしていたのだ。手が止まれば、その位置がいいと判断し、あげていた足をおろすに決まっている。

 

 先ほどより、危険な位置にきてしまった。少しでも指を動かせば触れる。

 

「ディノ、その、ありがと。おやすみ」

 

 言葉通り、サクラは寝る体制に入った。つまり今以上に無防備になるのだ。

 

 今からでも無理だと言うべきだと理性が訴える。本能はこのまま。いや、それ以上のことを望んでいる。悩み抜いて、2つの真ん中でもある現状維持を選ぶのは仕方ないことと言えよう。自らの首を締めるとわかっていながらも。

 

「ああ、おやすみ」

 

 言葉にして、眠ってしまえば楽になると閃く。通常なら眠れないが、ディーノには桂から貰い受けたアニマルリングのフミ子がいる。

 

 このアニマルリングは桂が改造し、大空の属性のディーノが炎を込めても晴の属性で姿を現わす。フミ子は治療タイプで、怪我を治すのが得意だ。ただしその代わりかなりの眠気に襲われるというデメリットがある。何度か意地で起きていたことがあるが、正直かなりきつい。眠ってしまえば、サクラが死ぬ状況だから起きられただけに過ぎない。

 

 普段ならデメリットだが、今回はメリットでしかない。無理矢理でも眠らせることが出来るのだから。

 

 フミ子と心の中で呼ぶ。サクラのためなら喜んで、または勝手に出てくるくせに、ディーノのためだと無視か、渋々現れるという厄介な性格をしている。今回はサクラの危機なので、喜んで出てくると思っていたが、渋々だった。

 

 変だなと思いながらも、ディーノは自身を眠らせろと指示を出す。しかしフミ子は笹を食べながら自業自得だろというような視線を向けるだけだ。見た目はただのパンダなのだが、時折人が中にいるんじゃないかと思うような反応をする。もし話せれば、もっと人に近いだろう。

 

「フミ子、いい加減にしろ」

 

 ディーノが葛藤している間にサクラは眠りに入っている。そのため小声で怒った。すると仕方なく笹を仕舞い込み、フミ子は起き上がった。

 

 フミ子はピョンとベッドの上にのり、サクラを見てから呆れたようにディーノに視線を向けた。どういう意味だと理解する前に、フミ子は晴の活性の炎をディーノに浴びせた。

 

 安心し眠気がではじめた頃、隣に異変を感じた。

 

「んー……」

 

 死ぬ気の炎の眩しさに眠っていたサクラが、更にディーノを抱き寄せたのである。

 

「ちょ、ちょっと待て。サクラ、それはまずい」

 

 先ほどまでは動かせば当たるという位置だった。今は触らないようにディーノが指をそらしている。かなり切迫つまった状況なのに、起こす気はないのかというぐらいディーノの声は小さい。

 

「フミ子、本気を出せっ」

 

 もう眠るしかない逃げ道はない。ディーノの必死な声にもフミ子はやめておけというように首を振る。

 

「ディ、ノ……?」

 

 流石に騒がしく、サクラが目をさましてしまう。

 

「わ、悪い。起こしちまったな」

「……だい、じょう、ぶ」

 

 そう返事をしつつも、サクラはイヤイヤと首を振る。その反応を見て今までヤル気のなかったフミ子が本気を出した。眩しさよりも眠気が強かったのだろう。サクラはあっさりと眠りに落ちた。

 

 しかし同じく炎を浴びたはずのディーノは眠る気配がない。フミ子の仕業かと一瞬思ったが、フミ子は嫌そうにディーノの下半身をさした。

 

「……すまん」

 

 フミ子はパンダと言ってもメスである。かなり嫌だったのだろう、ディーノが謝ればすぐリングに戻った。

 

 思わず大きな溜息を吐いた。鍛えているディーノが条件さえ整っていれば、眠りに落ちないのはもう立証されている。今がその条件に当てはまっているとフミ子は察していたからやる気がなかったのだ。

 

「ちょっと待て」

 

 ディーノは思わず呟いた。結構な声量だったが、隣の人物は起きる気配がない。

 

 ゴクリと喉がなった。フミ子が眠りに落としたのだ。抵抗力が弱いサクラが深い眠りに入るのは当然だ。

 

「んっ……」

 

 そらしていた指を元に戻してしまったのは、不可抗力だと言える。ただ、その後に指を動かしてしまったことに関しては言い訳出来なかった。

 

 

 

 

 

 ゴンっと壁に頭をぶつける。あの後にフミ子に物理技で眠らされた時の方が痛かったが、切り替えることは出来た。

 

 頭を冷やすためにもう一度シャワーを浴びるべきかと考えたが、サクラが待っている。何度も深呼吸して記憶の奥底に沈めた。

 

 風呂場から出たところで、ディーノは一度サクラに視線を送る。先ほどの音は聞こえてなかったようで、駆け寄らず本を読んでいた。ホッと息を吐く。

 

 サクラはいつものようにマンガに没頭しているように見えるが、ディーノが水を飲んでいる間も一向にページが進んでいない。ディーノが出ていると気付いているようだ。

 

 パッとマンガを取り上げ、テーブルに置けば睨んでくるが、可愛いものでしかない。頭を優しく撫でれば、簡単に演技は終わるのだから。

 

「ディノ、タオル」

「さんきゅ」

 

 サクラがやりやすいように移動する。数年前にディーノがサクラの髪を拭いたのが余程気に入ったらしく、度々ディーノにもその気持ちを体験させようとするのだ。もしくはその後のご褒美が欲しくて。

 

「ほんと可愛い奴」

「……うるさい」

 

 真っ赤な顔をしているんだろうなと思わずニヤける。ディーノが何もかも気付いていることにも察しているからこそ、これ以上言うなと釘を刺した。

 

「もう大丈夫だ。ありがとな」

「ん」

 

 再び頭を撫でてやると、サクラ本人は隠しているつもりらしいが不満そうな顔になる。手を止め顔を近づけば、大人しく目を閉じるので今日はキスのご褒美が欲しかったようだ。出来るだけ優しく触れる。

 

 今は座っていると言っても、ベッドの上。ガッツけば、自分で自分の首を絞める。思わず深いキスをして、舌足らずな話し方で名を呼ばれた時は理性が飛びかけたのは記憶に新しい。サクラもマンガの影響か、優しくしてなんて言葉をかけるのだからかなり危なかった。

 

 マンガの影響と断言出来るのは、初めての深いキスを終えた時、軽くパニックになりポカポカ叩きながら「私のヒロインがこんなことをしていたなんて……!」と言い放ったのだ。意味がわからず話を聞けば、ディーノにマンガを見せながらカップルのキスシーンでヒロインがなぜ声をあげているのか今の今まで本当に知らなかったと説明し始めた。自身で体験していろいろとショックを受けたということなのだろう。

 

 一方で納得もしたこともあったようで、ディーノにマンガを見せて「これ、どういうことか教えてくれ。この間が手を出すってことだろ? 何してんだ? ……赤ちゃんをつくってるのは知ってるぞ。授業で習った。だから本当は責任能力がないと避妊しないとダメだと先生が言ってたな。100%じゃないから父と約束したんだろ? でも誰もどうやるのか具体的な内容は教えてくれないんだ」と言う始末。

 

 なんと答えればいいものかと迷っていると、「ディノも教えてくれないのか」と残念そうに呟いた。一度兄である桂にも質問攻めをしたことがあるのだろう。心中お察しする。

 

 答えなくてもディーノと過ごすことで、サクラの中でマンガへの理解が深まったのだろう。時より恥ずかしながらも興味が勝つらしく、突拍子も無いことをする。我慢している身からすれば拷問でしかない。

 

 さらに厄介なことに少し前に桂から送られてきたマンガの中に大人っぽいものがあったようで、興味津々なのだ。思わず桂に文句を言えば、桂は少し男という生物を知ってディーノの負担を減らすつもりだったらしい。まさか恥ずかしがり屋のサクラが、積極的になるとは桂も予想外だったようで本気で驚いていた。

 

 サクラらしくないと唸っていた2人だったが、何も知らなすぎるのが原因という結論に至った。恐らく何をしているか知れば、サクラは恥ずかしがり、積極的な行動は起こさなくなるだろう。知ってさえしまえば、18の時にまな板の鯉のような状態になるだろうが、そこは歳上のディーノがうまくリードすればいいだけの話である。

 

 問題は誰が教えるか、という話だ。

 

 当然桂は嫌がった。常識的に兄妹で教える範囲は超えているし、教えて本気で汚らわしいような目で見られると耐えられない。サクラの父親だって同じ理由で嫌だろう。ここはサクラの母親の出番なのだが、恐らくディーノが望む方にはいかない。もっと積極的にしろとアドバイスし始めるだろうというのが桂の予想である。桂が面白そうなことは全力で楽しむところは母譲りなのだから。

 

 ロマーリオは薄々察していそうたが、部下に具体的な性教育を頼めるわけがないし、夫であるディーノが教えるのが一番ベストという結論になるのだ。……わかっていても手を出せないのだから、サクラに教えるなんて変なプレイでしかない。我慢する方が100倍もましである。

 

「……もう大丈夫」

 

 キスが恥ずかしく、抱きついていたサクラが離れたことで現実に戻る。視線を向ければ目が合うので、本人の話す通りもう大丈夫なのだろう。

 

「ディノ、ディノ」

「ん? なんだ?」

「ディノは大丈夫なのか?」

「何がだ?」

 

 頬を赤く染め、キという言葉を何度も繰り返す。あまりにも恥ずかしがっているので、助け舟を出す。こういうところは年相応でサクラらしい。

 

「キスがどうかしたのか?」

「そ、そう! それだ! 男の人って、それをするとたまるんだろ?」

 

 むせた。ディーノの反応に目を白黒させているのだから、絶対に何がたまるのかはわかっていない。キスを言葉にしようとするだけで躊躇するのだから、内容を知っているはずがないのだ。

 

「だ、大丈夫だ」

「でも私でも手伝えるようなことをマンガに描いていたぞ」

「本当に大丈夫だ」

「そうなのか? 付き合ってもない人と出来るかって男性がツッコミしていたから、私なら出来ると思ったんだが……」

「……そうか。気持ちだけ貰うな」

 

 一瞬にして、どっと疲れた。恐らく桂が言っていたギャクよりのラブコメ漫画を読んだのだろう。

 

「ディノ、つらいなら言っていいんだぞ?」

「つらい?」

「ん。まだ子どもはいいと思っていたから父の約束には何も言わなかったが、男の人は我慢するのって私が思っている以上に大変なことみたいなんだな。気付かなくて、その、ごめん」

「サクラが謝ることじゃないぜ。オレもサクラを大事にしたいから、お義父さんと約束したんだならな」

 

 恥ずかしくなったのか、または嬉しかったのか、もしくは両方か、サクラはディーノに抱きついた。

 

「ディノ、私も頑張るぞ! キ、キスをやめる! だからさっきのが最後だぞ!」

「なんでそうなったんだ……?」

「ディノだけ我慢するのは不公平じゃないか、私も一緒に我慢するのさ!」

 

 ディーノから離れたと思うと、桂のマネをし始めサクラは威張っていた。それは可愛らしくていいのだが、内容は残念すぎる。思わず大きな溜息が出せばサクラが狼狽した。本気でいい案だと思っていたのだろう。何を間違っていたのか、優しく頭を撫でながら教える。

 

「オレだってサクラとキスしたいんだぜ? これ以上我慢したくねぇよ」

「そ、そうか。ディノの気持ち、考えてなかった……」

 

 ショボンとしているサクラも可愛いが、やはりサクラらしくない。

 

「オレのことを思って考えたんだろ? ありがとな」

「……ディノ、その、ごめん」

「ん? どした?」

 

 落ち込みながらもモジモジするので、ディーノは本気で不思議に思った。

 

「そ、その……」

「ゆっくりでいいぜ」

 

 背をポンポン叩き、落ち着かせる。それでも恥ずかしいのか、サクラはディーノに耳を貸して欲しいと身振り手振りで強請った。

 

「キ、キスすれば、気持ちよくて、もっと、気持ちよくなりたく、なるんだ。へ、変だろ? だから、我慢したほうが、いいかな、って。つ、つまり、ディノのためじゃなくて……んぁっ」

 

 理性が飛んだ。身体が勝手にサクラを押し倒して、深く、深く、キスをしていた。酔ってしまえ、と……。

 

 我に返ったのはキスを終えた後、サクラの息切れしたかのような呼吸で、やってしまったと気づく。

 

「す、すまん。やりすぎた……」

 

 声にはならなかったが、大丈夫と言いたいのは唇の動きで伝わった。

 

 どこかまだボーッとしているサクラをディーノは罪悪感でいっぱいになりながら頭を撫でる。

 

「……ディノ」

「すまん……」

 

 もう一度謝れば、サクラは僅かに首をかしげた。声をかけられたことからわかっていたが、だいぶ落ち着いたようだ。しかしまだ理解できるほど頭がまわっていないのだろう。

 

「ディノは、私のために、したんだろ? ……その、すごく、気持ちよかったぞ」

 

 両手で顔を隠しながら、サクラは言い切った。一方ディーノはというと、固まっていた。何度も頭の中で後半の言葉がグルグルとまわっていたのだ。

 

「……な、なんでもいいから、反応してくれっ」

 

 恥ずかしいのに頑張って伝えた言葉なのに、ディーノからは何もないのだ。ドン引きされたのかもしれないと思うとサクラは泣きそうだった。

 

「わりぃ。オレの中で葛藤が起きててよ」

「葛藤?」

 

 疑問には答えず、ディーノはサクラの手を握って移動させる。すると、隠していた真っ赤な顔が見える。視線はさまよっていた。

 

「ディ、ディノ……?」

「サクラ、もっと気持ちよくしてほしいだろ?」

「えっ」

「気持ちいいの先、教えてやる」

「や、でも、さっきので満足だったぞ……?」

 

 ノーマルでSっ気はないと思っていたんだけどな。と、思いながらも簡単に片手でサクラの両手を抑える。サクラは戸惑うだけで抵抗はない。ディーノが心の中で舌舐めずりしていることに気付いていないのだろう。

 

「手、ちょっと痛い」

「大丈夫だ。すぐにそんなことどーでもよくなると思うぜ」

 

 とろけさせてやるから……と耳元で囁くと、サクラは簡単に可愛らしい声をあげた。耳は弱いので、我慢できなかったようだ。

 

 先に耳から攻めるかと本当に舌舐めずりしたところで、バンッと扉から開く。

 

「僕はきた!」

「……は? 桂?」

「ふぇ……。に、い、ちゃ……?」

 

 ディーノが理解する前に、桂はサクラを奪って抱き上げた。

 

「お前、なんで……?」

「実はサクラから相談を受けてね。内容は語ろうとしなかったが、どうやらかなり恥ずかしい夢を見てしまったようなのだよ。ディーノに嫌われる前に絶対助けてねと頼まれれば、期待に答えるしかないだろう?」

 

 唖然。サクラが予知夢を見て防いだのである。……いや、違う。とすぐに否定する。サクラは理解していなかった。

 

 チラッとサクラを見ると、真っ赤になりながら耳を押さえていた。

 

「恥ずかしい夢って、まさか……」

 

 さっきの囁きとわかると同時に桂は「サクラはいただいていくよ! さらばだ!」と言って去っていった。なぜかマントを背負っていたので、魔王気分だったのかもしれない。

 

「……そりゃねーだろ」

 

 溜息まじりのディーノの声が誰もいない部屋に響いた。

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