その後は大本営に手紙で例の消息不明の件を聞いてみたり演習の時に相手の提督に聞いてみたりしたが、特にこれといった情報は手に入らなかった。
鳳「おかしいな…。何故誰も情報を持っていないんだ?轟沈した、という話なら何度か聞いたが、ホントに消息不明になったのか?」
長門「その件は私も聞いたことがあるぞ。艦娘の間で噂になってる。」
鳳「それなら、人間側が誰も知らないってのは不自然だろ。…もう少し情報を集めてみるか。すまないが、お前達も情報を集めてみてくれ。俺は俺で色々と探ってみる。」
長門「了解した。ひとまず、今はこの書類を片付けよう。」
いつも通りの事だが、書類が片付いたのは夜遅くになってからだった。長門は終わるまで手伝うと言っていたが長門には明日の演習の旗艦を務めてもらうつもりだったので、早めに就寝してもらった。そのせいもあってか、完全に仕事が終わってふと時計を見ると時刻はとうに日付が変わっていた。
鳳「ふぅ…やっと終わったか。それにしても疲れたな。風呂でも入るか…。」
そう呟き、部屋に備えられてるシャワー室でシャワーを浴び、軽く着替えた頃に誰かが扉をノックした。
「失礼します。」
鳳「鍵は空いてるぞー。」
入ってきたのは鳳翔だった。この鎮守府が創立した時からの艦娘で最古参といって差し支えなかった。
鳳翔「お疲れ様です提督。部屋の電気が付いていた様なので、少しご様子をお伺いに来ました。」
鳳「別に気を遣わなくても…ありがとうございます。」
どうもこの鳳翔と間宮に関してはこちらが自然と敬語になってしまう、そんな雰囲気を出していた。
鳳翔「この時間まで仕事をしてらっしゃったのですか?」
鳳「えぇ、長門には明日の演習の旗艦を務めてもらうつもりでしたので、早々に就寝させました。」
鳳翔「それにしてもこの様な時間まで起きてらっしゃると、体に障りますよ?」
鳳「これくらい、無茶のうちにも入りませんよ。艦娘達にはいつも出撃や鎮守府の運営等で苦労を掛けてますからね、これくらいはしておかないと。」
鳳翔「そうですか…。そういえば喉は乾いてませんか?もし宜しければ何かお飲み物を用意致しますが…。」
鳳「では、暖かい物を。」
鳳翔が淹れてくれたお茶を飲みながら、俺は呟いた。
鳳「ふぅ…いつもは長門とかに淹れて貰ってますが、偶には鳳翔さんの淹れたお茶を飲むのもいいですね。」
鳳翔「あらあら、褒めても何も出ませんよ?」
鳳「事実を言ったまでですよ。」
その言葉を皮切りに、仕事の話や軽い雑談をしていた。そして…
鳳翔「そういえば提督にお伺いしたい事があったのですが」
鳳「何でしょう?」
鳳翔「提督は記憶を失ってらっしゃるとの事でしたが、ある程度は記憶は戻りましたか?」
鳳「いえ、これといって特には」
鳳翔「そうですか…。過去が思い出せないのは辛いですか?」
鳳「…私の過去は今は思い出せません。しかし、ここにこうして居てる今はとても充実していますよ。電や大和、加賀や隼鷹、そして…私の秘書艦を務めている長門。皆に囲まれている今はとても充実しています。」
鳳翔「…」
鳳「それに、記憶が戻る事が怖く感じるんですよ。」
鳳翔「怖い…ですか?」
鳳「えぇ。どう言えばいいかわかりませんが、とてつもない過去があるように思えるんです。気がついたら森の中でさまよっていたのですから、尚更ですかね」
鳳翔「それは…とても辛かったでしょう。私には提督の気持ちを想像するくらいしか出来ませんが、無理して思い出す事もないと思います。」
鳳「…」
鳳翔「提督の過去は確かにわかりません。でも、提督はこうして鎮守府の提督として頑張っていらっしゃいます。提督の人柄や雰囲気等で艦娘達もとても元気です。」
鳳「それは…照れますね。」
鳳翔「これでも、この鎮守府の艦娘達は提督に感謝しているんですよ?だから…」
鳳「だから?」
鳳翔「もし、今後、何か辛いことや苦しい事があったら遠慮なく頼って欲しいんです。時々、提督の雰囲気が暗くなってしまう時があって、とても不安になるんです。」
鳳「それは気が付きませんでしたね…。」
鳳翔「だから、無理をしない、と約束してもらえますか?提督。」
鳳「…わかりました。今後、何かあれば適度に相談する様にします。お気遣い、感謝します。」
鳳翔「いえいえこちらこそ、提督にご迷惑が掛からないよう気をつけますので。」
ある程度話が終わり、ふと時計を見ると時刻は0200であった。
鳳「話し込んでたらこんな時間になってましたね。そろそろ寝ますか?」
鳳翔「あら、もうこんな時間でしたのね。こんな夜遅くに失礼致しました。」
鳳「いえいえ、私もゆっくりと話せてよかったです。」
鳳翔「ありがとうございますね。では、これで失礼致します。おやすみなさい、提督。」
鳳「えぇ、おやすみなさい。」
鳳翔が部屋から出ていくのを見届けてから俺は布団に入り、睡魔に身を任せて眠りについた。