前夜
執務中、明石から「長門以外には内密で終業後に工廠に来て欲しい」と言われたので長門と一緒に深夜に工廠に向かう。
明石「すいません、こんな時間に呼んじゃいまして。」
鳳「別に構わないぞ。…深夜の工廠って本当に静かだな。」
明石「妖精さんは寝ていますし、此処に居るのはこの3人だけですからね…。」
長門「それより明石、呼んだ理由はなんだ?私と提督だけを呼ぶ辺り、かなり重要な事だとは思うが…。」
長門の発言を聞き、明石は本題に入った。
明石「えぇ、実は前回長門さん達が持ち帰ってきた設計図に関しての事なんです。解析はかなり進んでまして、もう少しで全ての解析が終了します。」
鳳「それは…この短時間でよく出来たもんだ。流石だな。」
長門「…その設計図の件か?」
明石「はい。その設計図の中に深海棲艦、特に姫級や鬼級に関するデータがありました。恐らくですが、あれはネームド深海棲艦へ改造を施す為の物だと思います。」
鳳「つまり、あそこで姫級や鬼級が産まれたと言うのか?」
明石「恐らくは。何体かは失敗していた様ですが…。」
長門「つまり、まだ技術が確立していなかった時の副産物が武蔵達が見つけた肉片か…。見てて気分の良いものではなかったな。」
鳳「その発見は確かに凄い。大本営に報告したら勲章ものなのは間違いないな。…報告出来ない理由でもあったのか?」
明石「出来なかったと言いますか…出来ないと言いますか…。」
先程から明石は何か言いたくない事がある様な様子だ。しどろもどろになり、一つ一つ言葉を探している、と言った感じか。
鳳「何かあったんだろ?」
明石「…はい。何回も色々な方法で確認をしましたが、何回やっても同じ結果になり、ある仮説に辿り着きました。」
鳳「ほぅ。言ってみてくれ。」
明石「…提督は艦娘、若しくはネームド深海棲艦のプロトタイプ説です。ただ、艦娘や深海棲艦と違って提督は人間である事に間違いないので確証はありませんが…。」
鳳「…ある意味で予想通りだな。」
明石「あの設計図に記されていたデータと前回の提督の健康診断の時のデータが概ね一致したんです。それと同時に艦娘のデータとも一致しまして。」
長門「そうなのか…。」
鳳「長門、前に明石から俺は普通の人間じゃないと言われていただろ?余り驚く事じゃない。…まぁ実際に言われると来るものがあるな。」
明石「あくまでも予想なので、今後の調査次第で答えが変わる可能性もありますが。」
鳳「だからと言って俺のやる事は変わらない。深海棲艦に奪取された海域を取り戻し、暁の水平線に勝利を刻む。」
長門「それはそうだが…。」
明石「提督、及び艦娘の健康診断の結果は報告しなければいけないので報告してるんですが、このデータを渡してしまうと確実に提督は取り調べを受け、最悪は…。」
薄暗い工廠内部。大型の機械類が並び、本来は活気で満ち溢れているこの場所は先程からの衝撃の事実の連続も相まって、辺りを静寂が支配した。
鳳「…なにがあろうと俺は俺の信じた道を突き進む。それだけだ。」
長門「提督…。」
鳳「明石、そのデータの件は他の誰かに話したりしたのか?」
明石「いえ。このデータがあった深海棲艦の基地もあの作戦の後に完全崩壊し、このデータを持っているのは現状では私だけです。」
鳳「ならそのデータは解析が完了したら指示があるまで厳重に保管しておいてくれ。」
明石「そうします。あ、後1つ。数日前の戦闘の後、報告のあった船のような物ですが、そちらも解析を進めた結果、表面は一般的な金属や木で構成されていましたが骨組みの部分だけは非常に高硬度の金属でした。まだ完全には分かっていませんが大和型戦艦の至近距離からの砲撃を受けてもビクともしない耐性があります。」
鳳「そうか。何かしら加工出来たら面白そうだ。そのまま解析を進めてくれ。」
明石「わかりました。では私からの報告は以上です。」
鳳「わかった。明石はゆっくり休んでおいてくれ。長門、部屋に戻ろう。」
長門「そうだな。」
数分後、執務室にて
鳳「ふぅ…なんか疲れたな。物理的に、じゃなく精神的に。」
長門「今日は何も考えずに寝るのがいいんじゃないか?」
鳳「そうするか。」
色々分かってきたがまだ完全に分かった訳じゃないので何とも言えないが、この調子だと全容解明にそう時間は掛からない気がする。そう思いながら布団に入り、睡魔に身を任せた。