闇に落ちてもひたすらにリンがいる世界を求め続けた彼の人生は、地獄そのものでした。
彼がかつてマダラを名乗っていたとき、もっとも感情をむき出しにしたのがサスケにイタチの真実を伝えたときです。
オビトはイタチの姿に、かつて己がそうあれなかった悔しさを滲ませているようにも思えます。
ではでは、繋ぎの過去話です。どうぞ。
うららかな春の陽気。
戦時中とは思えないほどにいい天気の木の葉の里で、“ある意味”でも有名な二人組が言い争っていた。
「だぁから、今そんな気分じゃないんですって」
いつもの様子とは打って変わって、サイゾウはしつこく絡んでくる自来也の誘いを露骨に嫌がり避けていた。
「なァにを言うかエロ弟子がぁ!?お前が来ないとウルルちゃんご指名できないだろうが!」
「やっぱそういうことかよ!このドスケベ師匠が!」
自来也が行こうとしていたのは短冊街。
二人ともに常連であるそこのキャバクラに、最近自来也お気に入りの巨乳の娘がいる。
しかし彼女はサイゾウに惚れていた為、自来也が来る際には彼を連れてこないと席につかないと断言していた。
「冷たいこと言うんじゃないのォ、なんじゃ、また胸糞悪いもんでも見てきたか」
「…!あんたには関係ない…」
「図星かいのォ。戦争中のありふれた光景だとは言わんが、そういうときは思うがままに発散するに限るぞ?」
核心をついた自来也の言葉に、冷たい雰囲気を滲ませるサイゾウ。わずかに漏れた殺気が通行人らを戦(おのの)かせるが、自来也は気にすることなく気晴らしを進める。
「…そりゃそうなんだけどよ、今度はちょっと違うんだ。…悪いが、またな」
そう言って、再び俯いて歩き出したエロ弟子を見守る自来也の視線はどうしたものかと揺れていた。
「…そうやってなんでも抱え込んじまうと、いずれ潰れるぞ…サイゾウ」
自来也はかつて己が見てきた、戦争の闇に耐えきれずに自らも闇に走った者達とサイゾウを重ねて見てしまう自分に嫌気がさして頭をかく。
行き先を違えた二人だったが、その師の心は弟子の方向を向いていた。
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サイゾウは公園のベンチでひとり座っていた。
自分の手を見ながら、その手を握って息絶えた幼い子供の温もりが、徐々に消えていくのを思い出していた。
なんてことのない任務だった。
木の葉の情報を得ようとやってきた岩隠れの小隊。それらを蹴散らすことがサイゾウに与えられた任務だった。
結果はあっさりとサイゾウに軍配が上がった。
上忍が中隊規模で迫ってきているならともかく、上忍に率いられた下忍が相手では彼の相手になるはずもない。
だが、その下忍の内ひとりは、まだ子供だった。
「…くそっ…!!」
サイゾウは震える自分の手を無理矢理握りこむ。
投げた苦無が子供の喉に刺さり、小隊のひとりが悲鳴をあげた。
顔つきが似ていたことから、恐らく家族なのだろう。
サイゾウは心で躊躇いながらも、戦闘時における思考の切り替えから行動が緩むのを許さなかった。
子供を助けようと動いた他の忍を《炎纏華》で殴り消し炭に変えると、死にかけて空を見上げる子供へとサイゾウは近づいた。
すでに出血多量で、“助からない”だろう子供。
サイゾウはせめて楽にしてやろうと、子供へと苦無を振り下ろそうとして…できなかった。
死が迫る不安から、すでに見えない視界で必死に誰かを求めて伸ばした手を、掴んでやることしかできなかった。
「…俺はいつまで、この地獄を歩けばいい…!」
サイゾウは戦争が大嫌いだった。殺したくもない相手を殺し、犠牲を、哀しみを生み続ける戦争が。
ミナトは今や担当上忍となり、幼い子供の下忍を率いながら戦い続けている。
しかしサイゾウは、自分が守りきれなかった場合をどうしても考えてしまった。その迷いから、いまだ担当上忍の話を固辞し続けていた。
「あ!サイゾウの兄ちゃんだ!」
落ち込んでいるサイゾウの空気を読まず、突如として現れた少年はびしっと音が鳴りそうなほどにはっきりとサイゾウを指差して叫んだ。
「…お前は、うちはの子供か」
ナンパしている時以外のサイゾウは基本的に冷たい。
特に子供は嫌いだった。すぐに死んでしまう、弱い存在だから。
目の前の子供がうちはのものだと気づけたのも、どこかで見た気がしたからだ。
「なんだよ、俺のこと忘れたのかよ!オビトだよ!うちはオビト!」
「…悪いが、美少女でもなきゃジャリなんざ記憶に残さないんでな」
冷たくあしらいながらも、サイゾウは目の前の元気一杯な少年───オビトから目が離せなかった。
「ひっでえ!まあいいけどな、サイゾウの兄ちゃんもいずれオレのことを忘れられなくなるんだから!」
その言葉に、サイゾウはオビトが死んだ姿を幻視する。
なにを夢のようなことを、サイゾウはそう言おうとしてオビトの次の言葉に唖然としてしまった。
「なんたって!オレが火影になったらサイゾウの兄ちゃんはオレの部下!記憶に残さないなんて言わせねえんだからさ!」
「…お前が、火影に…?」
自分がひどく間の抜けた顔をしていることに、サイゾウは気づいていたが気にする余裕はなかった。
「おう!オレは火影になる!そんでもってリンと…にしし!」
頬を赤らめ、だらしなく笑う無力な目の前の子供。
だが子供の言葉にした“火影”という言葉は、サイゾウのなかにある“なにか”を刺激する。
「…そんな簡単になれるかよ。俺だってなれるかわからないんだ…」
自嘲するように呟くサイゾウだが、その様子に不満げなのはオビトだ。
「なんだよ、サイゾウの兄ちゃんは数少ないオレが尊敬するうちはの大人なんだから、情けないこと言ってるんじゃねーよ!」
「具体的には…?」
「どうか、女の子にモテる方法を伝授してください…!」
まるで後ろを振り向かない。まっすぐな視線。自分もかつてはこんな“眼”をしていたのだろうか。
まだ母がいて、父と不器用な親子を演じていた頃。
弟を守らねばと、使命感に燃えていた頃。
そう、かつて自分も無力だった頃を、サイゾウは思い出していた。
「…女の子にモテるには、まず強くならなくちゃな。ちょうどいい、気晴らしに鍛えてやる。付いてこい」
「ぐえっ!?サイゾウの兄ちゃん!くび、くびしまってる!」
オビトの襟首を無造作に掴んで引きずっていくサイゾウだったが、その顔には笑顔が浮かんでいた。
“情けない大人”ではいられない。願わくば、この真っ直ぐな子供が馬鹿にできないような、“強い大人”であろう。
サイゾウはそう思うことにした。
痛みも、哀しみも、犠牲も。
それらすべてを飲み干すほどに強い大人であろうと。
「とりあえず今日中に《豪火球》が使えるようにしてやる」
「え!なんでオレが使えないの知って!?ぐええ!だから絞まってるってばあ!」
まるで兄弟のような二人の歩む道に幸あらんことを。
彼らの様子をこっそり見守っていたミナトは、木陰で笑みをこぼしながらそう思うのであった。
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「…ふむ、担当上忍の話。受けてくれるか」
三代目火影猿飛ヒルゼンは、目の前に立つ男を見上げつつ言った。
問題行動は目立つが、戦果という意味ではミナトにも負けず劣らない男。
『うちはサイゾウ』。
その名はかつて里の垣根を越えて尾獣を止めるために死んだ英雄、霧隠れのサイゾウと呼ばれる忍から付けられたモノだという。
名に恥じない…かどうかはともかく、実力においては《万華鏡写輪眼》を扱ううちはフガクにも匹敵する男であった。
「ええ、最近思うところがありまして。あ、できれば美少女三人とかダメですかね?」
「お主に美少女なんぞ預けた日には、来年の今ごろは全員懐妊じゃ」
「はっはっは、それほどでも!」
「ほめとらん!」
馬鹿な会話だとは思っているが、実際サイゾウは戦場で捕らえたくの一を口説き落としてどこかへと逃がしているとまことしやかに噂されている。
証拠を一切掴ませない上に、真実を知っているであろう師匠の大蛇丸でさえ口を濁すのだから相当巧くやってはいるのだろうが。
「…ともかく、現状でお前に預けられる下忍は三人。これからは小隊として彼らを率い、任務をこなしてもらうことになる。もちろん、小隊を率いる以外の任務も引き続きこなしてもらうぞ」
「えー…ナンパの時間が取れないじゃないですか」
「取るなんなもん!少しは木の葉の上忍としての自覚を持たんか!!」
激昂するヒルゼンであったが、サイゾウはどこ吹く風と言わんばかりに聞き流している。
すると、不意に火影の執務室がノックされる。
「来たか…入れ!」
ヒルゼンが声をかけると、扉を開け三人の少年少女が歩いてくる。
「サ、サイゾウさん!?」
「げ、『種馬』かよ!」
「ちょっとアスマ、本人目の前にいるのよ」
そこにやってきた子供らの一人を、サイゾウは知っていた。
「ガイじゃないか。そうか、お前もアカデミーを卒業できたんだな。おめでとう!」
「あ、ありがとうございます」
マイト・ダイとの付き合いはあれからも続いており、サイゾウは最近ようやく《八門遁甲》が使えるようになっていた。
また彼の子供であるガイとは生まれたときより面識があり、時々ダイとの組手を行いがてらその姿を見受けていた。
ガイは普段どこか無関心なサイゾウが自分に明るく挨拶してきたことに違和感を覚える。
「で、『種馬』ってなにかな?」
慇懃無礼とはこのことか、とアスマはサイゾウの気配に怯えながら思った。
これまで自分に接する人間は、三代目の息子であるということからどこか遠慮がちに話しかけてくる人間ばかりだった。
だが今自分が『種馬』と蔑んだ男は、有無を言わさず答えるように眼で訴えている。というか写輪眼怖い、とか思っていた。
「え、えっと、街で大人達が、あなたのことを『種馬』、と…」
滲み出る圧力に半べそをかきそうになりながらアスマはなんとか答え、心配した紅が彼を庇おうと前に出ようとする。
が、サイゾウは彼女が出てくる前にひょいと下がり気配を収めると、どこか納得いかない様子で顎に手を当てて自身の二つ名について考える。
「なるほど、当たらずとも遠からずだな。だが俺にはうちは秘伝の避妊術がある。無駄な種付けはしちゃいないぞ」
「ひにんじゅつ?」
サイゾウの言葉がわからず思わず聞き返したアスマだったが、回答を得る前に紅がアスマの頭をはたいたことでその機会は失われる。
「いってえな紅!なにしやがる!」
「うるさい!バカアスマ!」
顔を真っ赤にしている辺り、紅は避妊術の意味をわかっているのだろう。
(…まあ、くの一は“万が一”に備えてその辺も覚えさせられるからな)
戦場において、女の末路など得てして決まっている。サイゾウはまだ幼いだろうにそんなことを知識として必要とされることに嫌悪感を抱いた。
「ま、俺の二つ名はともかくだ。なんであれ、今日から俺がお前達を受け持つ。ついては、これからお前達に何ができるのか把握するために第四練兵場へ向かってもらう」
「こ、これからですか?」
時刻は昼前。普段であれば食事時であり、成長期である彼らからすれば腹を空かせて運動するなど拷問に等しい。
「…飯食ってから動く方が危ないんだよ。覚えておけ。まあ、とにかく今から移動だ。ほれ、しゃきしゃき動く!」
両手を打ち合わせるサイゾウの指示に従い、どうにか少年少女らは動き始める。
「よし!練兵場まで競争だ!」
「おいおい、別に走ることないだろうよ~」
「もう!しゃんとしなさいよアスマ!」
ひとり壁を走りそうな勢いで駆け抜けていくガイに置いていかれまいと走る紅と、ぼやきながらも持ち前の優秀さからあっさり付いていくアスマ。
三人を見送り、サイゾウは執務室の扉越しにヒルゼンの方へ向く。
「…俺が担当上忍になった以上、彼らは絶対に死なせません。それだけは約束しますよ」
微笑んで子供達の後を追うサイゾウの姿に、ヒルゼンは自分の息子を任せてよかったと安堵する。
エリートとして見られるのをどこか嫌う傾向にある息子が、かつてエリートであることを否定し努力し続けた男になにを見るか。
今後を楽しみにするヒルゼンであった。
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「さて、まずはルールを決めよう。今の時間は11時半。制限時間は三十分だ。それまでの間に、俺をこの円から動かせたらお前らの勝ちだ。寿司でも焼き肉でも、好きなものを奢ってやる」
「本当ですか!」
わかりやすい勝利条件に食いついたのは紅であるが、真っ先に反応してしまったことを恥じらい顔を赤らめている。
「なんだよ、今時そんなもんでガキが釣れるかってーの。…でもま、せっかくだから乗ってやるよ!」
ちらと食事に期待する紅を見て、やる気を出すアスマ。実にわかりやすいものである。
「父さんとの組手はいつも見させてもらってます!今日は胸を貸してもらいますよ!」
ガイは低い姿勢で構えを取り、圧倒的な実力差を持つ目の前の男がどれほどか試すつもりで真っ先に突っ込んだ。
「待てガイ!まずは作戦を!」
「サイゾウさんを円からどかすだけだろう!だったら俺だけで十分だ!」
下忍とは思えない踏み込みの速さで向かってきたガイだったが、サイゾウはガイが目の前に迫ってきても腕組みをしたまま防御しようともしない。
それに少々プライドを傷つけられたガイは、今出せる最大威力の技を打ち込むために跳ぶ。
「ダイナミックエントリー!!」
それは愚直なまでに勢いのついた跳び蹴り。まともに受ければ岩をも砕く一撃である。
「はっ!!」
サイゾウはガイの蹴りが当たる直前、気合いを発して自身からチャクラを外へ溢れ出させる。
小規模な衝撃波となって発せられたチャクラは、勢いづいたガイを乱気流に巻き込むがごとく吹き飛ばす。
「うおあっ!?」
「ちっ!やっぱ一筋縄じゃ行かないか…紅!」
「わかってる!」
吹き飛んだガイに変わって前に出てきたのは紅。ガイで自分への視界を封じ、その間にチャクラを練り印を構える。
「あたしの幻術で…きゃんっ!」
しかし紅はサイゾウと“眼”があった瞬間、撥ね飛ばされたように後ろへ倒れこんだ。
「…幻術か。その歳にしちゃ大したもんだが、俺は元々幻術使いでな」
写輪眼を発動させたサイゾウの眼。それを見てアスマは舌打ちしたい気持ちを抑え、手裏剣を三つ立て続けに投げる。
「お次は忍具か。ま、悪くないぞ」
カキン、チュン、カン
飛んでくる手裏剣をサイゾウは無造作に拳で払い除ける。
明らかに手から鳴っていい音ではない硬質な音にアスマが驚く。
「これか?ああ、大蛇丸先生に改造してもらってあるんだよ。硬くするとちょいと重くなるが、なかなか便利だぞ」
追加で投げた苦無を無造作に受け止めたサイゾウは、その手で苦無を“握りつぶすと”、隙を窺っていたガイに向かってひしゃげた金属の塊を投げつける。
「うおお!?」
間一髪避けたガイだったが、サイゾウの驚異的な腕力に早くも冷や汗をかいていた。
「…ガイ、一度合流しろ。悔しいけど個別に突っ込んでもどうにかなる相手じゃない」
「ああ!わかった!」
(…ようやく連携を意識してくれたか)
サイゾウはどうにか意図していたことのひとつが成功して内心でほっと息を吐く。
(あとは現状で足手まといになってる紅をどうするか、だな)
戦場で意識を失った味方ほど厄介な存在はない。
死んだわけではない味方ならば当然助けねばと考えてしまうし、なにより自力で動けないことから放っておけばいずれ戦闘に巻き込まれるのは必然だからだ。
サイゾウはあえて弱めにかけた幻術を解くつもりが二人にあるならば、まだ自分をどかすことは可能だと考えていた。
「よし、じゃあまずは…」
「紅を起こすんだな!」
「でけえ声でばらすんじゃねえ!」
あっさりと作戦を暴露するガイに不安になるサイゾウだったが、彼が紅を起こす手段を見て目を丸くする。
「さあ起きるんだ紅!」
ガイがやろうとしているのは、倒れた紅へのサッカーボールキック。確かに起きるかもしれないが、ガイの蹴りなど肉体的にどう見ても頑健ではなさそうな紅が受ければ怪我は必至である。
サイゾウはとっさに止めに入って紅を助けるべきか考えたが、アスマがそれを見ても動かない様子から彼らが自分を罠にはめようとしていることに気づいた。
「なるほど!」
すでに自力で起きていた紅は、ガイの蹴りの力を利用して飛び上がると、上空からサイゾウへ向けて無数の苦無を降り注がせた。
サイゾウは先程と同じように《硬の改造》による防御でやり過ごそうとするが、飛んできた苦無に起爆札がつけられているのを見てそれを受け止めざるを得なくなる。
「無茶をする…!」
とっさに離れた場所へ投げようとしたサイゾウは、手元のそれが起爆札に見せかけたただの札であることに気づく。
しかしそのときは腕を大きく振りかぶっており、改造を施した腕の重さによってサイゾウはバランスを崩している。
「木の葉旋風!」
「風遁・大突破!」
アスマの風遁によって勢いを増したガイの蹴りがサイゾウに迫る。
今度こそ!そう思う子供らの前で、サイゾウは間違いなくたたらを踏み円から一歩踏み出た。
「やったあ!」
「うおお…!」
「はっはっは!青春の勝利だ!」
所詮は円から一歩出たに過ぎないのだが、三人の喜びようは大きい。紅は嬉しさのあまりアスマに抱きつき、アスマは照れから混乱し、ガイはそんなふたりを見て父親譲りの青春を掲げる。
「…やれやれ、いきなり負けるとはな。お前ら、いいコンビネーションだったぞ」
「ま、俺達にかかればこれくらいはね」
得意気なアスマであったが、サイゾウが次に言い放った言葉に思わず固まる。
「じゃ、明日は朝5時から早朝訓練な。あ、紅は6時からでいいぞ」
女性の身支度に時間がかかることを知るサイゾウは、紅にのみ甘い条件をつきつける。
「なんだとぉ!そんな時間に起きてるのはガイぐらいだぞ!」
「はっはっは!青春の特訓に新たなページが加わるということですな!」
アスマは普段自分が如何に楽をしているか自覚している。ゆえに今出された鬼のような条件がどれだけ辛いかも理解できていた。
「怪我をしても綱手姫直伝の掌仙術で癒してやる。行き詰まったら大蛇丸先生に頼んで改造の予約入れてやる。あ、それとスケベなことはもっと育ってからな」
朗らかに告げられるとんでもない情報に、アスマは自分の平和な日々が崩れていくのを知った。
「それと、もし戦場に行くことになっても安心しろ。俺がお前らを絶対に死なさん」
どこか誇らしげに、そう断言してみせたサイゾウの姿だけは、不思議とアスマの印象に残ったのであった。
サイゾウの率いる小隊はオリジナルです。なんせこの設定立ち上げた頃はまだ戦争編にさえ突入してませんでしたし( ̄▽ ̄;)
なお自信満々なサイゾウですが、オビトやリンを助ける際には間に合わず、ガイがピンチのときにはダイが犠牲になっています。また九尾事件ではミナト以外にも紅の親や、他の仲間など数々の死を見てきました。
夥しい犠牲の果てに彼の心の強さはあります。だからこそ彼は「わかっている」とは口にしません。その身で痛みを受け止めるだけです。
だからこそ1話でアンコを師が犠牲にしようとしたことが許せなかったりしています。
ですが、もし自分が里に残っていればミナトを死なせずに済んだとも考えてしまう矛盾も抱えています。
すべてがうまくいくことはありえませんが、その分サイゾウは己を苛めぬきます。次こそはもっと速く動けるように。次こそはもっと強くあれるように。
たゆまぬ執念。もし主人公であるサイゾウを現すのなら、その言葉こそが相応しいのかもしれません。