※この作品はR-18です。

うちはの火影   作:SHV(元MHV)

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む・り(´・ω・`)

どんだけ圧縮しても音隠れが出来るまでで一話使うって…
というわけで今回は音隠れができるまでの流れ的な話、と襲撃の出だし。
今回を見て『黒の章』ってビデオテープとか『ダークエンジェル』とか思い付いた人とは一緒に墓を掘れそう(´・ω・`)シチニンミンナデ

ちょいと時系列が今回特にわかりにくいので説明。

序盤の過去編は大体マダラとの戦いから1年ないし2年以内くらいです。
最後の暁登場はサイゾウが覚醒直前ですね。


不協和音 ① ★

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田の国と呼ばれる場所がある。

 

場所は火の国と隣接した位置に存在し、火の国ほどではないが肥沃で作物を育てやすい土地であり、かつて六道仙人に連なる者が掘り築いたという井戸があることで有名な土地だ。

 

この土地を治める大名はある時期から、自国の戦力としての隠れ里を欲した。

 

肥沃な土地であるがゆえに生まれた“余裕”からの野心であり、これまで雇ってきた風魔一族や死韻一族といった強力な忍びらが我が物顔で国内を歩き回るのをよく思わなかったことも大きかった。

 

彼は“忍”を嫌悪していた。

 

超常の力を振るう彼らを同じ人間とは思わないほどに…。

 

それに目をつけた者がいた。結果として彼らから提供された力に溺れた大名は凶行に走り、彼自身の命運を決定付けることになる…。

 

__________________________________

 

 

「な、なんなのだお前は…!?」

 

田の国の大名は、その晩突如として自身の寝所の扉を蹴り破った忍に見下ろされていた。

 

大きな、太い男だった。

 

筋肉というものをとことんまで鍛え、いったん太くなったそれをさらに縒り合わせたかのような質感。

 

金剛力士が如く肉体に憤怒の表情を乗せたその男はさながら不動明王を思わせた。

 

それでも大名は枕元の刀に手をかけ抵抗を試みる。が、あっさりと刃は素手で掴まれ、まるで鉛筆をへし折るように刀身を次々と折り壊された。

 

不動明王───うちはサイゾウは自身の怒りをこらえるようにして口を開いた。

 

「…俺には許せないことが“ふたつ”ある。女が泣くことと、子供が笑えなくなることだ」

 

「ええいっ!者共出合え!なにをしておるかっ!?」

 

つばを飛ばしながら焦りと共に叫ぶ田の国の大名。だが滑稽にもその叫びは誰にも届かない。さらには逃げようにも、何らかの力を上から加えられた指は刀から剥がすことができなくなっている。

 

「馬鹿ね、この状況でここに来れるようなのが残ってると思う?」

 

さらに彼のもとへ新たな忍が現れた。長く伸ばした髪を団子状にまとめた、“よく透る声”をした一見女のような外見をした忍─大蛇丸─である。

 

彼は“ある術”を止めたことにより、徐々にその肉体の持ち主の特徴が出つつあった。大きく姿形は変わっていないものの、細く柔らかく変わっていく姿に違和感を覚える者も多い。だがもう慣れたのか。サイゾウはさしてそれを気にせず話しかける。

 

「…先生、下の女達は」

 

「殆どは無事よ。…何人かは、もう手遅れだったわ。すぐに治療が必要な者もいるからあまりここで時間をかけるわけにもいかないわよ」

 

「…わかりました。で、大蛇丸先生もアレを試すんですか?」

 

「勿論よ、効率がいいし。それに、能力を検証するには実践を重ねるのが一番よ」

 

「なんだ!?なんの話をしている!」

 

ふたりの会話に不穏なものを感じながらも、田の国の大名は動くことができなかった。

 

今回、田の国の城を襲撃した二人であったが、本来これほど急ぐつもりはなかった。

 

段階で言えば今は田の国を拠点とする隠れ里の者達を説得している段階であり、これまで保護した血継限界の忍などを一ヶ所に集めるための準備をしていたところだったのだ。

 

ところがである。

 

田の国を拠点とする一族のひとつ。死韻(しいん)一族の者達から、サイゾウと大蛇丸は思わぬ依頼を受けることになった。

 

それは、彼ら一族の女達の救出。

 

事情を聞けば、大名の護衛として向かった彼ら一族の女達が戻ってこないというのだ。

 

彼らの一族は女が主体となった忍である。見目も整った彼らの一族は、普段は国の祭事などにも顔を出すことがあり、護衛として映えることから側仕えとしても重宝される。

 

とはいえ今の大名との関係はやや冷えてはいたが、それでも定期的な護衛の依頼は受けており、里の上位者とも言える女達が雇われているはずだった。

 

しかしあるとき、護衛としての契約期間が過ぎたにも関わらず、一族の女ふたりが戻ってこなかった。

 

何かあったのかと、事情を確認しにいった者も帰ってこない。

 

これに、すわ一大事と死韻一族の中でも手練れの者が向かったがその者らも戻ってこない。

 

ここに至って詰んでしまった彼らは、藁にもすがる想いでこれまで幾度か訪ねてきたサイゾウを頼ったのだった。

 

そして城に潜入したサイゾウが見たのは───田の国の城に勤める武士達が好き放題に女達をなぶる姿だった。

 

死韻一族の者だけではない。よく見ればその中には風魔一族らしき女や他の里のくのいちらしき女もいる。

 

一体どうやってこれだけのくのいちを捕らえたのか。大蛇丸はまずそのことを疑問に思ったが、思考は長く続かなかった。

 

女の中には手足に杭を打たれて切り刻まれている者。首を鎖に繋がれあちこちを針で刺された者。───手足を断たれ既に事切れた者。

 

目にしただけでそれだけの惨状が広がっている様を見て、横で同じものを見たサイゾウが大人しくしているはずもないのだから。

 

すなわち、それを見た瞬間サイゾウは“キレていた”。

 

惨劇は一瞬だった。大蛇丸が止める間もなく、その場にいた武士達は人としての原型をとどめぬほどにバラバラに潰された。中には武士ではない忍らしき者もいたが、サイゾウは止まらなかった。

 

サイゾウの怒りはそれだけで治まらなかった。あえて殺さなかった太った武士から《輪廻眼・人間道》で無理矢理情報を引き出すと、この城に勤める男達で“饗宴”に参加しなかったのが新任のひとりしかいないことを知ると、女達を大蛇丸に任せて彼自身は影分身で逃げ場をなくした。

 

そこでさらに用いたのは《口寄せの術》。それも、畜生道と呼ばれる輪廻眼による口寄せだ。

 

サイゾウは大量のチャクラで身の丈ほどある巨大百足(ムカデ)を無数に呼び寄せると、武士の男どもを毒による激痛で皆殺しにした。

 

…目の前で突如起きた惨劇に失禁し、気絶した新任の武士ひとりを残して。

 

田の国の大名が叫んでも誰も来るはずがないのだ。全員死んでいるのだから。

 

「じゃ、手早く済ませるわよ。《輪廻眼・人間道》!」

 

大蛇丸は片眼に移植した口寄せ輪廻眼による術を行使して田の国の大名から魂を引きずり出す。

 

あわれな悲鳴をあげる魂から無慈悲に情報を引きずり出すと、用済みとばかりに死体を足元に落とす。

 

「…これ、結構クルわね。やっぱり本家本元じゃないと難しいのかしら」

 

「それはあるでしょうね。あとは吸収した情報を取捨選択できないのが問題かと。余計な情報までイチイチ吸い上げていては、資料としてまとめるのも一苦労ですし」

 

「…そうね。じゃああたしはマンダを口寄せして女達を運ぶけど、あなたはどうするの?」

 

「女達の遺骸を回収して、この城を壊します。…ていうかマンダ呼ぶのはいいですけど、食われないように気を付けてくださいよ?」

 

サイゾウの心配に大蛇丸は少し嬉しそうに微笑むと、意外なほどに柔らかい口調でサイゾウへと語りかける。

 

「あたしなら問題ないわ。輪廻眼の切り替え実験は何度も実証済みだし、マンダくらい単純なら畜生道でどうにでもできるしね」

 

両手を広げてあえておどけてみせる大蛇丸にサイゾウは笑みを返すと、雰囲気を切り替え戦時の空気を纏う。

 

「では任せます。それと、死韻一族は全員笛などの楽器をもっていたはずです。それも探しておきましょう…《口寄せの術》!」

 

印を組みサイゾウが口寄せしたのは、かつて契約した一匹の“鼠”。

 

「ぬ?…おお~!久しぶりじゃな、坊(ぼん)!」

 

現れたのは白髭を蓄えた老齢の鼠。名を─旧鼠道人(きゅうそどうじん)─という。

 

「ご無沙汰してます、道人殿」

 

「カッカッカ!コオネの坊が堅っ苦しいこと抜かすでないわ!…で、何をしてほしいんじゃ?」

 

ニヤリと笑いながらサイゾウの目論見をすでにある程度見抜いた節のある旧鼠道人の姿に、サイゾウはありし日の母との思い出をわずかに思い出す。

 

「ここに連れてこられた女達が用いていた楽器を探して回収して欲しいのです。笛や琴、三味線など…恐らく形も大きさも千差万別でしょうが、そこはあなたの“鼻”に任せます」

 

「女の楽器か。ヌッフッフ、任せとけ!《影分身の術》!」

 

旧鼠道人は影分身によって数十体の分身を作り出すと、あっという間に散っていく。

 

「アレが旧鼠道人…あなたの母親の切り札のひとつね」

 

「…ええ、母の眼を持ってきてくれたのもあの人です。世にも珍しい仙術影分身の使い手ですよ。ま、呼ぶのにそれなりのチャクラは消耗しますけど」

 

旧鼠道人。齢(よわい)にして大蝦蟇仙人に匹敵すると豪語する鼠の口寄せ動物である。その特技の最たるモノとして挙げられるのが今用いた《仙術影分身》。二代目火影扉間とも契約していたという彼は、扉間から“いくつか”の忍術を教わっていた。

 

サイゾウの母であるコオネは彼と契約することで、万華鏡に開眼せずとも圧倒的な戦果を上げたと言われている。報酬には使用済み下着を要求されたと笑って語っていたが。

 

「そういえばあの童貞君、どうするの?」

 

「ああ、忘れてましたね。女達と一緒に行かせるわけにはいきませんし、俺が回収しておきますよ」

 

「わかったわ。じゃ、また後でね」

 

溶けるように姿を消した大蛇丸の気配が遠ざかっていくのを確認すると、サイゾウは念のため田の国の大名の死体を口寄せ空間に回収する。

 

死体とて、使い道はいくらでもあるのだ。

 

「…さて、行くか」

 

サイゾウはマンダの背に乗せられ次々と運ばれていく女達を窓から見送りながら、自身は饗宴の場となっていた一室へと赴いていく。

 

大蛇丸がやったのか、表面にシーツを被せられた女達の遺骸を前にサイゾウは手を合わせる。

 

彼女達からそれぞれの遺髪を取ると、さきほどの大名とは別の口寄せ空間へと送っていく。

 

童貞君は漏らしていて触りたくなかったので、大鷹を口寄せして隠し拠点のひとつに連れていってもらった。

 

なお、最初サイゾウは彼女達を《輪廻天生》で蘇生しようとして大蛇丸に止められていた。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

『やめなさいサイゾウ。その術の反動がどれだけ恐ろしいかは貴方も知っているでしょう』

 

『ですがっ!まだ間に合う者がいるかもしれませんっ!』

 

『そうやって目の前で死んだ人間を全員生き返らせて回るつもり?貴方が“お人好し”なのは構わないけど、貴方の命は貴方だけの者じゃないのよ。自覚なさい、サイゾウ』

 

『…ぐっ!わかりました。ではせめて、あとで穢土転生を使って最後の別れをさせてやってください。こんな最後は…惨すぎるっ!』

 

『…仕方ないわね』

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

サイゾウはつい先ほどの会話を思い出すが、いずれ自分ならば無理を通して輪廻天生を行使する日が来ることになるだろうと考える。

 

そうなったとき、誰をも犠牲にしない為には、幾ばくかの研鑽と研究が必要だった。

 

「…すまない。お前達を助けられなかったのは俺の責任だ。この責任感が我が儘だというのもわかっているが、せめてお前達が守ろうとした一族は俺が責任をもって預かろう」

 

最後の遺骸を仕舞い、サイゾウは旧鼠道人の気配を探るが、彼はすでにサイゾウの足元へと戻ってきていた。

 

身軽にサイゾウの肩へと乗った道人は、どこからともなく爪楊枝のようなサイズの煙管を出して吸い始める。

 

「ぷっは~、一仕事やり終えた後の一服はうまいのう」

 

「火種は使いますんで間を合わせてくださいね」

 

「…可愛いげのないやっちゃのう」

 

道人がサイゾウのやろうとしたことを察して煙管に火をつけたように、サイゾウもまた彼の気遣いを察して忠言する。

 

すでに道人は影分身を逆口寄せすることによって集めた楽器を“自らの”口寄せ空間へと送っていた。この早業こそ彼の真骨頂であり、扉間をして相棒と認めさせた腕前である。

 

「では…《火遁・灰積焼の術》!」

 

サイゾウが口からチャクラを変質させた火薬を吐くと同時に、城の各所に陣取った影分身の半数が分身状態を解き灰色の火薬粉と化していく。

 

「ほいなっ、と」

 

サイゾウが飛ぶのと合わせて、旧鼠道人が何気なく煙管の火種を落とす。

 

すると、灰に当たった火薬粉は一瞬で燃え上がり連鎖爆発を起こす。さらに爆発に合わせて、残った火遁影分身が業火と化し城を燃やしていく。

 

「ほっほ~♪派手じゃのお!」

 

「はしゃいで落ちないでくださいよ」

 

やや昔を思い出しながら無表情になりつつあるサイゾウであったが、輪廻眼で浮遊しつつも眼下へと向けた警戒は解かない。

 

「…ちっ、出てくるかと思ったがそのまま死んだか」

 

「なんじゃ、誰か潜んでおったんか」

 

「屍(かばね)一族…今回女達を捕らえた主犯格ですよ。女達の症状ですぐにわかりました。毒の扱いに長けた一族で、今じゃ数人しか生き残っていないはずです」

 

「なるほどなるほど、そいつはひょっとしてこやつかの?」

 

ニタリと笑った旧鼠道人が手を差し出すと、そこから全身に奇妙な入れ墨を入れた忍の死体が現れる。

 

「これはっ!」

 

サイゾウは慌ててそれを受けとると、死体の状態から自分が城へ侵入するよりも早く屍一族らしき忍が死んでいたことを悟る。

 

「楽器をとるついでに、妙な場所で死んでるそやつを発見しての。ついでじゃから回収しといたぞい」

 

「さすがは道人殿、手が早い…!」

 

「ほっほっほ!褒めるくらいならお前の女の乳にでもはさんでもらおうかのぅ!」

 

「断る」

 

「早いわ!」

 

掛け合いつつ、サイゾウは男の体に未練がましくまとわりつく魂に気づき《口寄せ・獄閻王》でそれを捕まえる。

 

「…なるほど、呪印か」

 

人間道の力も用いて死者の魂から情報を抜き取ったサイゾウは迷える魂を獄閻王に吸収させる。

 

呪印を用いられてはいたが、死んだ屍一族の男が女達へしたことは自分の意思であった。そうであるならば、彼への慈悲などあるはずもない。

 

問題は呪印を仕込んだ“何者”かだが、すでに発動した呪印は心臓を食い破り原型を残していなかった。せめて何かわかればとサイゾウはその死体も口寄せ空間にしまう。

 

「後で大蛇丸先生やダンゾウ殿にも見てもらいます。俺がわからないことや見落としていることがあるかもしれません」

 

「ま、好きにせい。わしはまだしばらくここにおるでな」

 

サイゾウと旧鼠道人は、大蛇丸が向かった死韻一族の里の方向へと飛んでいった。

 

__________________________________

 

 

死韻一族の隠れ里は、悲しみに包まれていた。

 

一族でも指折りの実力者ふたりが、死者として帰ってきたからである。

 

だが大蛇丸は彼らの悲しみに耳を傾けている暇はなかった。

 

生き残った者達への解毒を施しながら、穢土転生の準備も進めていたからである。

 

万が一にも血迷って弟子が輪廻天生などやらかさない為にだ。

 

影分身なども用いて並列的に事態を処理していた大蛇丸だったが、不意の立ちくらみからその場に倒れそうになる。

 

「くっ…!」

 

それを気合いで建て直し、再び集中して解毒の治療に入る。

 

綱手であれば片手間で出来るであろう作業も、大蛇丸にとっては極度の集中を用いる。

 

理解していることと実践できることの差異がこれほどの負担になるとは、大蛇丸も予想していないことだった。

 

(…けど、なにより厄介なのはこの“体”ね。不屍転生を止めたことがここまで響くことになるだなんて、また投薬を調整しなきゃいけないわね)

 

そう、大蛇丸は不屍転生を諦めていた。理由は様々だが、結果的に肉体と魂を繋ぐ霊体が脆くなっていることに気づいたのが最も大きい。

 

“自分が自分で無くなる感覚”。それを覚えてしまった大蛇丸は、もう不屍転生を使う気にはなれない。

 

以前は次の体として捕らえた白ゼツを使おうかとも考えていたのだが、今ではせいぜいパーツとして使うにとどめていた。

 

「大丈夫ですか!?大蛇丸先生!」

 

「…問題ないわ。それより、万事うまくいったのね」

 

「万事、とはいきませんがひとまずは。道人殿、楽器を」

 

「おお、任せておけ。ほいっと」

 

旧鼠道人が手を掲げれば、そこから溢れるようにして楽器が次々と現れる。

 

サイゾウは竹遁分身を繰り出しそれらを丁重に受け取りながら待機する死韻一族の者達へと渡していく。

 

「おお…!これは!」

 

「お母さんの笛!」

 

思わずといった様子で少女が駆け出し、いの一番に笛を受けとる。

 

「…そうか、お前はあの者の娘か」

 

サイゾウは悲しげな顔を浮かべながら、笛を受け取った少女を見下ろす。

 

「お許しくだされサイゾウ殿…此度の件で命を失った者の娘“多由也”にございます。満足に礼も尽くせぬうちに…」

 

「よい、俺が好きでやったことだ。それと此度の件、見ての通り巻き込まれたのは死韻一族のみではない。以前から言っていたが、俺はこれを機にこの周囲一体を中心として新しい里を作るつもりだ。元々田の国は乗っ取るつもりだったしな」

 

多由也を庇うようにして前に出てきた死韻一族の長老に、サイゾウは己の展望を語る。

 

「なんと…!で、ですが貴方は火影では?」

 

「…正直に言って、木の葉は“狭い”。無闇に受け入れてきた俺にも責はあるが、今回里の中心となるのはこの忍世界においても爪弾きにされてきた者達だ。木の葉とおだやかなる関係を結ぶにも、しばし時間はかかる。ま、実質的な指導者はそこの大蛇丸先生がやってくれる。不気味だが頼りになる人だぞ」

 

「聞こえてるわよ」

 

「我々のような者のために格別なる力添え、まことになんと礼を申し上げてよいやら…」

 

頭を下げようとする長老を止め、サイゾウは大蛇丸が準備を終えたことを悟って自身もまた術を発動するために彼の近くへ寄っていく。

 

「大蛇丸先生、無理はなさらずに。穢土転生は俺がやります」

 

「ふっ、私を誰だと思ってるのよ。薬も飲んだし、問題はないわ」

 

強がる大蛇丸にサイゾウも強くは言えず、とはいえ全てを任せるわけにはいかないので互いに穢土転生の担当をふたつにわける。

 

「では…「《穢土転生の術》!」」

 

サイゾウの掛け声に従い、四つの棺が口寄せされる。

 

その内のひとつが開くと、そこからは赤い髪を伸ばした色気のある女性が現れる。

 

「…ここは、私は死んだはずでは?」

 

「お母さんっ!!」

 

「多由也…?」

 

穢土転生として蘇った多由也の母親は、しばし泣きじゃくる娘をあやしながら己の身に起きたことを振り返ろうとするが、それはサイゾウによって止められた。無闇に思い出すことではないと。

 

「こ、ここは里の中心?わたしは死んだはずでは…?」

 

「死韻一族の里だと!?いや、そもそもこれはどういう状況だ!」

 

次々と穢土転生されていく死者達。

 

蘇ったもう一人の死韻一族の者は戸惑いながらも、大蛇丸から説明を受けてゆっくりと事態を受け入れ沈痛な表情を見せる。

 

もうひとりは風魔一族の少女。己の死を自覚していなかった彼女に、サイゾウはゆっくりと彼女が死んだことを教えていく。彼女にはこの後風魔一族の里まで一緒に来てもらい、最後の別れをさせるつもりだ。

 

…そして最後のひとり。田の国の大名が穢土転生されその場に現れると、周囲からは憎しみの声が上がった。

 

「こ、これはどういうことだ!だだ、だれかなんとかしろぉ!」

 

「サイゾウ殿、なぜこのような男を…」

 

長老が周囲の者を代表してサイゾウへ質問する。

 

「なあに、ここにいる誰もが憎しみを抱いたまま、悲しみを抱えたままこれからも幾多の夜を過ごすことになる。で、あるならば。改めてお前達の前でこの男が地獄に落ちていく様を見せつけてやろうと思ってな…!!」

 

サイゾウが示した怒気に、周囲の者が彼本来の実力を思いだし総毛立つ。

 

そこにいるのは『火焔の権化』。かつて起きた忍界大戦において、最も多くの忍を焼いたと言われる男。

 

その男が燃やす怒りが、すでに死んだはずの田の国の大名に恐怖を思い出させる。

 

「ひ…!」

 

「簡単に死なせてもらえたと思ったか?残念だな、お前はこれから明確に地獄へ落としてやる!《輪廻眼・地獄道》!」

 

サイゾウの声に従い、再び地の底から地獄の裁断者獄閻王が呼び出される。

 

輪廻眼地獄道。それはただ獄閻王を口寄せする能力ではない。

 

その真髄は魂の管理。輪廻眼が捕らえることのできる魂が何処に行くかを選ばせる審判の能力。

 

「お前が行くのは地獄…!それも八熱地獄の第七層“大炎熱地獄”だ!三千二百年の間焼かれ続けるがいい!」

 

「~~~~~~~~~~~■■■■■■■■■■■■■■ッッッ!!!!」

 

声にならぬ悲鳴をあげ、大名は獄閻王の開いた口から覗く地獄へと飲まれていく。

 

酸鼻を極める有り様に目を背ける者が多く出るなか、サイゾウは決して目を背けることなく睨み続ける少女─多由也─と目が合う。

 

「…多由也といったか。何がそんなに悔しいのだ」

 

「あたしは、自分でお母さんの仇を討てなかったっ!それがなにより悔しいっ!」

 

「危ういが、見込みはあるな…よし。大蛇丸先生、この子を弟子にしてあげてください」

 

「…なんでそこであたしに振るのかしら」

 

「いやぁ、俺が師匠になったら色々まずいんで」

 

笑いながら言うサイゾウだが、大蛇丸の脳裏には十歳にして妊娠した多由也がありありと想像できた。

 

「…そうね。まずいわね、それは。………………………仕方ないわね、色々用を済ませたら一度見てあげるわ。弟子にするのはそれからよ」

 

訳が分からないまま話が進んでいくことに多由也は混乱するが、そこへサイゾウが追い討ちをかける。

 

「いや助かります。なかなかに器量がいいですからね、正直自分の女にしない自信がない!はっはっは!」

 

「じぶんのおんな…およめさん?」

 

「多由也、この人にはお母さんがよおっっっく言っておきますから今のは忘れなさい」

 

母に忘れるように言われるも、多由也の中ではサイゾウの存在がそれから十年近く経っても忘れることなく刻まれているのであった。

 

後に“音隠れ”と呼ばれる場所からは、死者を慰める笛の音が静かに響くのであった。

 

 

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サイゾウが目覚めるよりも少し前。木の葉でデイダラとサソリがそれぞれ潜入を果たした頃。音隠れの里を一望できる切り立った崖の上に人影があった。

 

「あれが音隠れの里ですか。なかなか大きいですね」

 

布に包んだ大きな刀らしきものを背負った鮫に似た顔の男が、笑みを浮かべて里を見た感想を述べる。

 

「油断するな鬼鮫。単純な戦力なら五大国に匹敵すると言われる場所だぞ。それに我々の目的は人柱力だ。未確認だが、二尾もあそこに逃げ込んだとの情報がある」

 

「なんでもいーけどオレは陽動でいいんだよな!ジャシン様への供物も捧げなきゃいけないしよぉ!」

 

「…賞金首もたんまりといるようだ。稼ぎ時だな」

 

鬼鮫の言葉に答えたのはうちはイタチ。両の眼に万華鏡を開眼した、『兇眼潰し』のイタチの名で呼ばれるS級賞金首である。

 

次に発言したのが飛段、角都と呼ばれる男達。

 

武器として使うには大きすぎる鎌を掲げた飛段と呼ばれる男は、自らが信仰する宗教“ジャシン教”の教義を実践する為に我慢ができない様子である。

 

また隣の大男角都は守銭奴と呼ばれるほどに金に固執し、今回音隠れを襲撃するに当たってどれだけの賞金首を手にすることができるかを楽しそうに覆面越しでも分かるほどに顔を歪めている。

 

「イタチ、鬼鮫は人柱力の探索を。飛段と角都は陽動。ペインは一塊となって里の中心部を襲撃する。…これより、世界に痛みを!」

 

さらには六体のペインが四人の後ろから現れ、天道と呼ばれるペインの一人が彼らへ指示を下す。

 

音隠れに、不協和音が響きつつあった。

 




多由也ちゃん5歳!はさすがにロリ過ぎてアウトだったのでエロは作れなかったでごじゃる(´・ω・`)

今回はオビトの言っていた「どこに行っても同じようなことばかり」的な台詞からくそったれな世界観を広げてみた話。残念なことに穢土転生の素材がまるで足りなくなりません。
心臓に呪印だなんて、これもうちはマダラってヤツの仕業なんだ(棒読み)
…たぶんあの人こんな調子で悪の種を世界中にバラまいたと思われるんですよね。色々仕込み的な感じで。まあ生き返ったりはしませんけど、そんな外道なマダラさんにも活躍の場は与えられますので好ご期待。
何話先になるかわからないけどね!(泣)

後大蛇丸先生に関してようやく見た目の描写ができました。
これまで激務で消耗している大蛇丸先生は書いてきましたが、なぜ彼がそこまで弱ることになったのか。その伏線を今回書いてます。現在のcvは高乃麗さんくらいをイメージしてます。もう十分かな、とも思いますが。

あと今回死韻一族に関して女が主体のとか書きましたけどオリジナル設定です。風魔一族も同じく劇中を考察して得たオリジナル設定がありますので、近いうちに書きます。
いや実際守り刀全員書いてたらたぶん各一話使うので悩みどころ。ミフネの娘とか作ったんですけどエロいから書きたいんですよね。

補足★説明

・死韻一族
原作では名前しか出てこない一族。アニメだとちらっと出たかも。まあ名前からして多由也の一族だろうと当たりをつけてオリジナル設定を組んでます。楽器を用いて物質霊を操る秘伝忍術の使い手です。

・旧鼠道人
元ネタは同名の妖怪から。この妖怪親を亡くした子猫らを育てたという伝説があったりします。
サイゾウのお母さんことコオネさんの切り札。スケベネズミ。声のイメージは故永井一郎氏。ポジション目玉の親父みたいだけど。
地味に扉間の術を教わっていたりと有能。サイゾウのあんな適当な説明にも関わらず余さず楽器を回収した上に死体まで回収してきたのがその示唆。でも察し良すぎて描写をはしょってるように見えるからあんまり出番ないかも。
忍世界の闇についても詳しかったりしますが、本人は享楽的に暮らすことをよしとしているのであまりそれらに関して口にはしません。
ふざけてばっかりですが本気になると超厄介だったり。ちなみに教わった術は《影分身の術》《天泣》《飛雷神の術》。飛雷神はちょっと難しいので滅多に使いません。
ちなみにこの鼠さんの最も恐ろしい能力は驚異的な読心術。相手が喋る前に微表情などから内容を察してしまえる。
最終決戦で扉間に呼ばれなかったのは穢土転生だったからってことで。あれ血出せないし。

・屍一族
全身に入れ墨をほどこした一族。毒の扱いに長け、女の内臓を材料とした呪毒と呼ばれる特殊な毒でひとを操ると言われている。第一次忍界大戦において今回見られたような惨劇を起こしたため、これを見たマダラによって一族のことごとくが殺され実質滅びている。死韻一族は屍市尾属の男が用いた麻痺毒で捕らえられた。見た目のイメージは幽白の画魔(化粧後)。


ではまた次回をお楽しみに~
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