投稿まであと約四時間。ちなみにこれ書き上げたのも同じくらい。死ぬ。
とりあえず寝ます。
今回は前半が音の設立の続き。後半は暁襲撃の続き。
たった二人の忍を相手に落とされた田の国。
大名が為した鬼畜の所業が明らかになったこともあり、住民らがさして反感を覚えることはなかった。
これまで大名が先代以上に年貢の量を増やしていたことなども大きいのだろう。
だが武士と大名。それら搾取する存在の消滅は、民に期待と不安を残した。
ただでさえ豊かな土地。それはすなわち何もしていなくとも他国から侵略の対象とされるということ。
いくら鬼畜の所業を繰り返したとはいえ、戦力としての忍を雇っていたのは彼ら大名と武士らなのだ。
その彼らがいないということがどれだけの無防備を招くのか。
しかし民らは、明日をも知れぬ恐怖に苛まれなかった。
ある猟師らは、城が焼け落ちてから夜な夜な山を押し退け森を切り開く巨人を見たという。
またある山菜採りの少女は、一夜にして一面竹林と化した森を見たという。
またある農村の子供らは、仮面をつけた忍らが村を守ってくれてると口を揃えて言っていた。
これらすなわち、すべてサイゾウの所業である。
仮面をつけた忍はサイゾウの竹遁分身と彼に保護された忍達である。
夜な夜な開発されていたのは音隠れの里を切り開くサイゾウの“完成体須佐能乎”。
森一面が竹林と化したのは、音隠れ全周を覆うように展開されたサイゾウの《竹遁・竹林降誕》で築かれた結界兼用の防護林である。
さらにそれから二週間後。
正式に田の国の大名を、木の葉隠れの火影であるサイゾウが名代として継いだ。
横紙破りな方法ではあったが、彼が正式に大名に連なる血族であることを公表したのが大きい。また表面上は田の国の代表として大蛇丸と契約を交わしたことになっている。
これと同時に音隠れの里が発足。額当てに音符が刻まれた、五大国においても火の国は木の葉隠れに匹敵する血継限界や秘伝忍術の使い手らを主体とした隠れ里である。
もちろん、他国はこの状況に手をこまねいていたわけではない。
雷の国に至っては火の国に抗議文を送ったほどだ。
だが大名という希少な人脈を持つサイゾウによるハニートラップに引っ掛かった雷の国大名は即座にこれを撤回。休戦条約こそ結ばれることはなかったものの、この事態に四代目雷影は激しい怒りを覚えたという。
さらに、音隠れの里が立ち上げられて間もなく、次々と音隠れに同盟を求める声が上がった。
設立にも関わった木の葉隠れはじめとして、滝隠れ。湯隠れ。霜隠れ。草隠れ。
木の葉以外は小国の隠れ里とはいえ、どこも三度に渡る大戦を潜り抜けた生え抜きの里である。
それら複数の里が同盟を為すことは、もはや木の葉を頂点においた一大軍事同盟に近い。
これらのことを強引とも言える手法で進めたサイゾウは、そのことを聞いてきた上忍のイルカにこう答えている。
『まあ、たしかに強引だな。下手をすれば戦争になってもおかしくないだろう』
イルカはあっけらかんと言う己の上司に驚き、さらに問い詰める。
『でしたら、どうしてここまで強引なことを?』
『なあイルカ。恨み、って感情は案外根深い。三代目はひとの可能性を信じてかつて岩との和平交渉において一切の賠償を求めなかった。だが、それじゃダメだというのはわかるな?』
『…はい。それが原因であの方は火影を降任することになりました』
『そうだ。ひとの恨みは根深い。なんらかの形で清算してやらなきゃ、絶対に残るものだ。“呉越同舟”なんて言うがな、あんなもん嘘っぱちだよ。いざ追い詰められてみろ、計ったかのように最悪のタイミングで口をついて不満が出てきやがる。そうなったときは何をやっても手遅れだ…』
それは戦争を経験したからこその言葉であり、己自身過酷な任務はいくつ受けていても戦争を直接知らないイルカはサイゾウの鬼気迫る気配に問い返すことができない。
『だからこそだ。なにも木の葉隠れが世界を支配しようだなんて考えちゃいない。だが今の五大国は“拮抗しすぎている”。戦力としてのみ、な。本来なら、島国で構成された水の国はもっと偏った戦力になってもおかしくはない。本来なら、砂ばかりの土地で構成された風の国はもっと貧しくてもおかしくない。それら前提を覆しているのはなんだ?』
サイゾウが言っていることに気づいたイルカは、自身の想像が違っていることを期待しながらも、至ってしまった結果に顔を青ざめさせる。
『…俺たち、“忍”ですか』
『そういうことだ。なまじ柱間様が尾獣なんぞ配ったから、五大国の隠れ里は戦力として安定してしまっているんだ。それ単体で国ひとつを滅ぼせる兵器である人柱力。そんな風にしか考えてないもんだから、他の部分も追い付こうと無茶なことをどこの里も繰り返す』
イルカはサイゾウが指摘している問題が木の葉にも及んでいることにも気づいた。
かつて木の葉において行われた狂気じみた実験。初代火影千手柱間の細胞を移植することもそうだ。
霧隠れにおいては厳選した“忍の質”を維持するために“根”と同じ殺し合いを子供らに強要した。
砂隠れは日々低下していく国力を守る為に、例え英雄と呼ばれた忍であっても形振り構わず忍を切り捨てていった。
雲隠れは手段を問わず血継限界や秘伝忍術を集め、国境沿いでの小競り合いが耐えない。
岩隠れは独立独歩の性質が強すぎて、いまだにどこの里とも休戦条約を結んでいない。
『わかるか、だからこその同盟だ。後の平和を作るためにはある程度まとまった力が必要になる。半端に理想論を説いて、現状を維持して。三代目を悪く言うつもりはないが、俺はそんな風にただ構えて木の葉の者を犠牲にするつもりはさらさらない』
力強いサイゾウの言葉。だがイルカはどこか納得できない風でいる。
今のサイゾウの言葉は正しい。力が無くてはなにも守ることができないのは、彼自身痛いほどよく知っている。
『納得できない様子だな。それでいい。俺ができるのは、精々お前ら“後に続く者達”が歩きやすいように道を整えてやることだけだ。悪名も憎しみも、すべて俺が引き受けてやる。後の世の平和は、お前達が築いてくれればいい』
サイゾウが笑うその姿に、イルカはなんとも言えない哀しみを覚えて顔を伏せるのみだった。
木の葉を中心とした軍事同盟の影響は大きかった。
自然と五大国は木の葉を警戒し、監視するようになる。一種の冷戦構造の始まりであった。
これがサイゾウの狙いでもあった。実際、今のサイゾウが本気になれば五大国の内三つは確実に滅ぼせる。
形振り構わなければ、すべての国を焦土と化すことも可能だろう。
穢土転生、竹遁、そして完成体須佐能乎をはじめとした万華鏡写輪眼の力。その上彼には輪廻眼まであるのだ。
そんな彼を他国や他里が警戒しないはずがない。
だがサイゾウが自身を弱く見せる意味がないし、彼が弱い振りをしたところで誰も信用などしない。
であるならば、生半可なことでは手出しできないようにすること。
それがサイゾウの狙いであり、整えられたかのようになだらかな戦力バランスを崩す意図が今回の行動には含まれていたのだった。
さて、音隠れの戦力を改めて整理しよう。
新参であるとはいえ、里においての血継限界や秘伝忍術を扱う者の数は木の葉に匹敵する。
サイゾウを慕って集った女達もそうだが、他にも風魔一族、死韻一族、イブリ一族といった元々強力な忍術を扱う一族。
桃地再不斬、林檎雨由利といった元忍び刀七人衆であった者達。
仙鬼一族、かぐや一族といったすでに一族が滅びた者の生き残り達。
さらにはこれらの中から選りすぐりの者達を防衛戦力の要として配置されたのが、【音の守り刀十傑集】。
主に十傑集として呼ばれる彼らは、【壱の刀】から【拾の刀】まで存在し、大蛇丸やサイゾウから任命の証として希少な草薙の剣の一振りや千手柱間の扱ったチャクラ刀などを用いる。
そしてそれらをまとめあげているのが、かつて木の葉において『伝説の三忍』と呼ばれた男。大蛇丸である。
彼は不屍転生を諦めたことから肉体的には弱体化しつつあったが、長年の研究の末に柱間細胞の制御方法を確立。
一定水準を越えるチャクラを持つ者であれば、重傷であっても癒すことが可能となる術《再癒活性の術》を作り出す。
肉体的にはほぼ完全に女性化しており、彼の美貌に血迷う者が後を絶たないとも言われている。
そんな大蛇丸であったが、彼の激務はあるときを境にその殆どを軽減された。
その立役者こそ、かつて田の国の城において饗宴に参加しなかったひとりの若武者である。
名を大崎九郎という。見た目は細面の冴えない青年だが、彼の実務能力は大蛇丸をして「思わぬ拾い物」と言わしめるだけの才能を有していた。
彼は、恐ろしいほどに計算能力が高かった。元々商人の家に生まれたらしく、その高い算術能力を活かせないかと考えたひとりの老中による養子縁組によって彼は武士となった。
だが、彼を抜擢した老中は饗宴をはじめようとした大名を諌めたことで処刑。ここから、彼の人生は狂い始める。
行き場を失った彼は、各村を回る徴税官としての役割を与えられた。
ここで彼ははじめて才能を発揮。行く先々で計算を誤魔化していた先任の徴税官を問い詰め、また彼の護衛として同時に左遷された武士が元城勤めだったこともありその手腕は大名にまで届くことになった。
これを聞いた大名は彼を手元に置き、最近滞りがちとなっている政務の一部をさせてしまおうと考えてた。
念願の城勤めが叶った彼であったが、自分を推薦してくれた護衛の武士は城に着くなり行方が知れなくなってしまっていた。
そして若輩である彼に任されるには、あまりに膨大な量の仕事をどうにかこなしながらあるとき事件は起きた。
サイゾウと大蛇丸による襲撃である。
彼は、任されている仕事柄饗宴には参加させてもらえなかった。
城で何かが行われているとは思っていたが、これまでそのことに関わってきたと思わしき人間が尽く死ぬか行方不明になっていることから彼はあえてそのことに触れなかった。
そして城に鬼が現出し、彼は失禁して気絶した。
次に彼が目を覚ましたとき、そこにいたのは白塗りの肌に長い髪をお団子にまとめた美貌の忍─大蛇丸─だった。
美麗な声で語りかける彼の声に聞き惚れながらも、九郎はその話が田の国の大名に近しいことになるにつれ顔をしかめていった。
ひとりの人間がきっかけとなって起きた狂気。死体を見せられ、図らずも自分がそれを増長させる行為に関わっていたことに思わず吐く彼を、大蛇丸は優しく説き伏せた。
彼の能力を大名の記憶から知っていた大蛇丸は、彼から大名の仕事に必要な知識を一通りまとめさせると、彼を解放した。
解放された九郎であったが、どうしてよいかわからなかった。実家に戻ることも考えたが、それ以上に彼のなかで大蛇丸の存在感は大きくなっていた。
“あの美女の為になりたい”。そう考え、一念発起した彼は田の国のみならず各国を商人として渡り歩く。
それは危険な旅だった。時折護衛を雇いながら、雇った忍に別で料金を払い忍に関する情報を仕入れる日々。
しかしそんなことを繰り返していれば、警戒されて命を狙われるのは当然である。
霧隠れの忍によって追い詰められた彼を救ったのは、かつて彼のなかに“鬼”として絶対の恐怖の象徴と化したうちはサイゾウであった。そこは折しも、かつてサイゾウがカエデと任務と閨を共にした菩提岬だったからだ。
サイゾウは彼が誰かを気づいていなかったが、その並々ならぬ覚悟からしばしの間竹遁分身を彼につけ旅に同行させることにした。
気まぐれではあったが、こうして無敵無類の護衛を供にした九郎は五大国以外にも様々な国を回った。
匠の国、錠前の国。
鉄の国、林の国。
また旅の途中でサイゾウはひとりの少女を助けることになるが、その話はまた別の機会に語るとしよう。
こうして、およそ五年近い時間をかけて音隠れへと帰ってきた九郎。
すでに彼が誰かを思い出していたサイゾウの伝を使い、大蛇丸へと直談判する。
すなわち、自分を雇えと。
彼を雇ったことで、大蛇丸はまずまともな睡眠時間がとれるようになった。
実務能力が優れた者とは、一体なにが優秀なのか。
まずひとつが計算能力である。これは九郎が元々備えていたものであったが、各国を巡りながらも絶えず磨いてきた算術の能力はもはや暗算で予算編成を行うほどである。
次に知識量。忍に関する知識が絶対的に不足していた彼は、貪欲に各国を巡りながらそれらの知識を吸収していった。
途中から旅に同行することになったサイゾウの竹遁分身からも、まるで真綿が水を吸い込むように次々と知識を吸収し、その知識はやがて各国の国力比にまで及んだ。
最後に相手が何を望んでいるかを察する洞察力。途中旧鼠道人を師匠として派遣したサイゾウは、あまりの優秀さになんとか彼が木の葉に来るようにできないか本気で考えたほどである。
こうして、音隠れの里は鋭利な懐刀を手にいれることになる。
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「ひゃーはっはっはっは!ほらほら逃げろぉ!」
大鎌を振るい、ひとりの男─飛段─が血に酔っていた。
「…ふ、こいつも賞金首か」
ニンマリと口許を笑みで歪ませた男─角都─がたった今殺した忍から心臓を抉り出しつつ己の持っていた心臓として“追加”し、その巨体をさらに肥大化させる。
逃げ惑う民衆を散らしながら、彼らは己らに課せられた役割を果たしていた。すなわち陽動である。
そのことには民衆の盾となっている音忍らも気づいてはいたが、とはいえ彼らに民衆を見捨てるという選択肢はなく、彼らはここで命を捨てる覚悟を決めていた。
「よぉし、お前に決めたぜ!喜びなぁ、お前をジャシン様への供物として─えぶっ!」
「飛段!─ぬぉ!?」
飛段と角都。彼らは突如として地面から生えてきた無数の骨に襲われ、逃げ遅れた飛段は全身を骨に貫かれて見るも無惨な姿になっていた。
「無事か」
「は、はい!」
「では下がってお前は避難の誘導に当たれ。…仲間の敵は俺が取ってやる」
「わかりました、お願いします─君麻呂様!」
君麻呂と呼ばれた少年は、無表情な面立ちに静かな怒りを浮かべながら、腰へ手をやりひとつの“柄”を取り出す。
「貴様、楽に死ねると思うなよ…!」
「─なんだ、俺が生きてるのに気づいてやがったか」
そう言いつつ、自身を貫いた骨をあっさり砕いて戦線に復帰した飛段。抜くのと同時に回復したのか、すでに彼の体は“傷が塞がっている”。
「お前こそ、俺を殺せると思ってるんならお笑いだぜぇ?」
笑みを絶やさない飛段の不気味な様子に、しかし対峙する君麻呂は表情を崩さない。
「大蛇丸様の里を襲い、あまつさえそこに生きる民を傷つけたこと。それすなわち、大蛇丸様の血を流させたことと同じこと…!その罪万死に値する!」
君麻呂は手にした柄から骨の刀を生やすと、飛段へと向かっていく。飛段もまた、大鎌を構えて君麻呂を迎え撃つ。
だが接近した君麻呂は大鎌を片手の骨の剣で受け止めると、おもむろに指を揃えて飛段へと向ける。
「《十指穿弾》!」
君麻呂の指から発射された骨の弾丸は文字通り飛段の全身を穿ち、食い込み、破壊していく。
しかしそれだけでは終わらない。君麻呂は己の肩から“ずるり”と音を立てて骨を取り出すと、その形状を片手に持つ刀に似たものへと変えていく。
「《椿の舞》!」
十指穿弾で吹き飛ぶ飛段へだめ押しを加えるかのように、君麻呂は追撃を加えていく。次々と刺さり削られていく飛段ではあったが、君麻呂は防御しようとすらしないその姿勢を見て早々に切り札を切ることにする。
「《灰骨の劔(つるぎ)》…!!」
君麻呂がチャクラを込めると、途端に柄のある骨の剣、その刀身がぼろぼろと崩れていく。
「ぐっ…があああああっ!!」
それによって突き刺された飛段がはじめて苦悶の表情と共に悲鳴をあげ、のたうち回る。
すると、刺さった刀身が消滅するのと同時に飛段の体が崩れていく。
《灰骨の劔(つるぎ)》。それは君麻呂が大蛇丸より与えられたチャクラ刀の名前でもある。
千手柱間が振るったチャクラ刀のなかでも特に強力な刀二つを鋳溶かし、材料として作られたのが君麻呂が持つ“柄”の正体である。
かぐや一族という、かつて一族単体で霧隠れの里に挑み絶滅した一族。それが、君麻呂の前身であった。
牢に幽閉され、死を待つのみであった君麻呂であったが、そんな彼を救ったのが大蛇丸だった。
兵器として、武器として扱われてきた日々。大蛇丸はそんな君麻呂へ愛情を持って接し、彼を“人間”として育て上げた。
やがて成長した君麻呂は、己の一族の命運も、すべて目の前の大蛇丸と出会うための犠牲だったのだと悟るようになる。
その結果、彼は狂信的に大蛇丸を信望するようになった。大蛇丸自身に諌められるのでそれほど表面には出さないものの、日常的に彼の側に使え雑務をこなしている。…九郎とは、いろんな意味でライバルであったりする。
《灰骨の劔(つるぎ)》を受けて崩れ落ちていく飛段。その様子を見て、君麻呂は即座に視線をもうひとりの侵入者である角都へと向ける。
だが、角都はひとりニヤニヤと笑っているだけであった。
「なにがおかしい。貴様の相棒はすでに死んだぞ」
「くくっ、くっくっく…!死んだ?いったい誰が死んだというのだ」
「そういうことぉ!」
君麻呂は突如として後ろから切りかけられ、“わずか”に腕を切られてしまう。
そんな君麻呂の血を舐めとりながら、さきほど崩れ落ちたはずの飛段は崩れ落ちる前と変わらぬ姿で君麻呂の血を大鎌から舐めとっていた。
「ヒャハッ!これで終わりだぜお前ぇ!」
「なにっ!?」
君麻呂は突如として地面より現れた呪印によって動きを封じられる。
さきほどの意趣返しと言わんばかりに、封印した場所はさきほど君麻呂が飛段を貫いた部分であった。
「お、おのれっ…!」
焦る君麻呂であったが、呪印はすぐに外れそうにない。
時間をかければなんら問題ない強度ではあったが、今現在対峙する飛段を相手にそれは得策とは言えなかった。
「極上の供物ですよジャシン様ぁ!今捧げます…!!」
そう言って、己の心臓を大鎌の柄に当たる部分で刺し貫こうとして───飛段は強烈な風に吹き飛ばされた。
「《颱遁・暴風裂波》!」
放たれた暴風は飛段の体をもみくちゃにし、全身の骨を砕きながら吹き飛ばしていく。
「ぐっ、そうか、自分のダメージを相手にも押し付ける忍術か…!」
不死身であるがゆえに成立するとんでもない戦法ではあるが、君麻呂は颱遁によるダメージを己の特異体質で無理矢理治しながら、自分を援護してくれた人物へと礼を述べる。
「助かったぞ、幻幽丸」
「すまない君麻呂、お前にまでダメージが行くとは…!」
慌てて君麻呂に謝罪する少年、幻幽丸。彼は元々田の国を拠点としていた風魔一族のひとりである。
穢土転生によって一時蘇った姉の言葉をきっかけに限界を越えて鍛えた彼は、今では一族の長足る名前をすでに与えられていた。
すなわち─幻幽丸小太郎─。
「無事か、君麻呂」
「重吾…」
さらに遅れて現れた少年─重吾は、飛段に傷つけられた忍をいつのまに回収したのか、足元に寄せた彼らへ手をかざし、己の血肉を文字通り分けて癒していく。
「重吾…!それを使ったら君は!」
うろたえる君麻呂だったが、重吾は微笑むだけで治療を止めようとはしない。
「ああ、しばらくは戦えないだろうな。だが“この程度”の相手、お前と幻幽丸なら十分だろう?」
「勿論だ。君麻呂、さっさとこいつらを仕留めて一度里の守りを固めるぞ」
「承知した。重吾、治療の邪魔はさせないから安心しろ」
余裕すら見せる三人の少年。それを見て角都はイライラとした気持ちを隠そうともせず、飛段と共に並びながら外套を脱ぎ捨て全身のあちこちに移植された顔をむき出しにする。
肥大化した全身に浮かぶ顔の数は“十三”。角都はそれぞれチャクラを高めながら、飛段へ再び儀式の準備をはじめさせる。
「早いところこんなガキは始末して、残りの賞金首を追うぞ!」
「やるね旦那ぁ、じゃあ俺もちょいと本気出しちゃうかな!」
そう言って、すでに身の丈三メートルはある角都は禍々しい顔を触手で浮かばせながら揺蕩わせている。
対して飛段は、視認できるほどに濃い赤黒いチャクラを身に纏い、自身の身体を活性化させていく。
音を崩さんとする不協和音は、今だ始まったばかりである。
ちょいと色々限界なので今回あとがきは短め。
あとで追記修正します。