※この作品はR-18です。

うちはの火影   作:SHV(元MHV)

32 / 44
これにて不協和音は最終回。

先月から続く怒濤の展開もこれにてラストとなります。

次回以降は再び主人公であるうちはサイゾウへと視点を移していきます。


不協和音 ⑤ ★

大蛇丸とイタチの激闘は続く。

 

目まぐるしく景色を変える彼らの激しい攻防はすでに里を離れ、地図を書き直さねばならないほどの被害を周囲一帯に出しながらも、互いに攻めきれないでいた。

 

「……ほんっと! うちは一族な上に天才だなんて、オビトなんかに操られてるのが勿体ないわよ……!!」

 

言いながらも大蛇丸は術の展開を止めない。

 

《修羅の攻》にて大量の火器を出現させたかと思うと、それらの一斉攻撃により高速で動くイタチを面で制圧する──が。

 

「くっ……! 出たわね、《完成体須佐能乎》っっ……!!」

 

爆煙に包まれたイタチが遂に繰り出した完成体須佐能乎の剣が振るわれ、たった一撃で火器群は粉砕されてしまう。

 

だが、大蛇丸も負けていない。

 

目には目を。巨体には巨体を。

 

自身が持つ最大規模の忍術を即座に展開する。

 

「《八岐(やまた)の術》!!」

 

白煙と共にその場に現れた、文字通り山をも跨ぐ八頭(やつがしら)の大蛇の上に大蛇丸は乗って完成体須佐能乎を真正面から見据える。

 

《八岐の術》。それはかつて大蛇丸が研究した白蛇の再生力を極限まで強化した産物。

 

本来であれば、不屍転生の大蛇丸と融合することによって無類の再生力と攻撃力を誇り、あらゆる対象を蹂躙する大規模忍術である。

 

しかしその八つある頭の半分は塵に覆われ、今にも崩れ落ちそうなほど不安定に見える。

 

「……もう、あまり時間がないわね」

 

言いながら大蛇丸は八岐の大蛇それぞれの内五つの口から異なる性質変化の大規模忍術を放ち、イタチの完成体須佐能乎を襲わせる。

 

しかし須佐能乎が持つ《八咫鏡》によってそれらの術は無効化されてしまう。

 

「そうよね、そ(・)う(・)す(・)る(・)わよね」

 

須佐能乎が《八咫鏡》を構え術を無効化した瞬間。

 

いつの間に潜らせていたのか、地面から現れた残り三つの大蛇が須佐能乎に噛みつき、呪印を完成体須佐能乎へ感染させその動きを止める。

 

「まだまだぁ……!!」

 

さらに大蛇丸は呪印で縛り上げた完成体須佐能乎へ八岐の大蛇を巻き付かせる。

 

「《蛇睨石縛》!!」

 

大蛇の頭がそれぞれを見る形で瞳術を発動。

 

あっという間に大蛇は石化していき、それはイタチの完成体須佐能乎ごと巻き込んでいく。

 

暴れもがく完成体須佐能乎だが、石化の呪縛によって満足に動けず徐々にその動きを止めていく。

 

「……勝ったの、かしら」

 

どこまでも懐疑的に……イタチごと封印され巨石と化した完成体須佐能乎を見やる。

 

しばらくそれを見つめていた大蛇丸は一度仙人モードへと変身して周囲を再度精査しようと動きを止め──咄嗟に前へ跳んだ。

 

数十年に及ぶ、戦闘の勘。それが大蛇丸を救った。

 

先程まで立っていた場所。そこには、大蛇丸がさっきまでいた場所を深々と切り裂き、封印術など無かったと言わんばかりに全身に須佐能乎を着込むイタチの姿があった。

 

その手に完成体須佐能乎と同じ両刃の大剣を構えるイタチを見て、大蛇丸は彼もまた禁術を行使してでもこの場での決着を望んでいるのかと考える。

 

そう、イタチの左眼からは光が失われていた。

 

イタチが用いた術。それこそはうちは一族に秘められし禁術《イザナギ》。

 

写輪眼ひとつと引き換えに、自らが展開した幻術と現実を入れ換えるという、途方もない効果を持つ術である。

 

(けどイザナギを用いてくる以上、最悪失明してでも…………待って、“暁”にとっての勝利条件は人柱力の奪取のはず。まさかそれがミスリードだというなら……くっ、なんてこと……!!)

 

大蛇丸は自身が導いた結論がほぼ正解だということを悟る。

 

目の前のイタチが、須佐能乎を解いたからである。

 

「……“暁”の目的は達成した。せめてその短い残りの生涯を、有意義に過ごすがいい」

 

イタチの全身は戦慄(おのの)いていたが、それを無理矢理イタチは抑えると烏分身によってその姿を散らし姿を消した。

 

「そんな……!!」

 

大蛇丸は地団駄を踏みたくなるほどの怒りを覚える。

 

“暁”の目的は、他ならぬ大蛇丸(自分)だったのだと。

 

__________________________________

 

 

打ち崩された音隠れの里。そのなかでも万全の布陣を敷き無傷だった中央府において、里の主だった者達が集められていた。

 

雰囲気は一様に暗い。

 

間もなく、大蛇丸が消えてしまうからだ。

 

「何とかならねえのかっ! アンタが開発した術なんだろう……!!」

 

「そんな……母さんが……」

 

「嘘だと言ってくだされ大蛇丸殿!!」

 

順に再不斬、君麻呂、ハンである。

 

再不斬は激昂しながらも己に何もできないことが何よりも許せず、その握りしめた掌からは血が滴っている。

 

君麻呂は現実が受け止められず、呆然と膝をついて涙を流しており、そんな彼を心配して同じく涙を流す重吾と幻幽丸が側についている。

 

ハンもまたその衝撃は同じだったが、自分以上に動揺する者達を見て幾分か冷静でいられてしまえていた。

 

「……なるほど。自身の肉体を強制的に穢土転生と同じ状態にする術ですか。確かに強力なんでしょうけど、あなたがそれを使ってしまうことがどういう意味なのか。わからないあなたではないでしょうに」

 

「大蛇丸先生……」

 

鬼灯満月が冷静に今の大蛇丸の状態を見抜き、唯一彼を責める。だがそれを咎める者はいない。怒りよりも、悲しみが勝ってしまっているがゆえに。

 

レンヤに至っては衝撃が強すぎ、思わずサイゾウの記憶にある呼び名で大蛇丸のことを呼んでいた。

 

「“この世の本当の力とは、忍術を極めた先などにはありはしない。大切な者を守る時……真の忍の力は表れる”。かつて猿飛先生から教えられた言葉よ。……本来なら、わたしは何をおいても生き残るべきだったんでしょうね。けど! 目の前でこの子達が殺されるかもしれない。そう思ったら、形振りなんて構っていられなかった。わたしはどうなってもいい……! この子達だけは、絶対に生き残らせる! ……そう、思ったのよ」

 

悲しげに、満足げに語る大蛇丸。

 

その体からは徐々に塵が散らばりつつあり、彼を構成する魂がほどかれていくのが見てわかった。

 

「……輪廻眼を通して口寄せ獣から得た情報よ。今回の事件。襲われたのは音だけではないわ。パクラと雨由利が派遣されていた霜隠れは雲隠れの非合法部隊に襲われ、テンゾウのいる滝隠れは謎の人柱力擬きに襲われたそうよ。それに、木の葉も襲撃されているみたいね。輪廻眼のリンクが起動したわ。サイゾウが起きたみたいよ」

 

意識不明だった火影の復活。それは一同にひとつの希望を思い起こさせるのに十分な内容だった。

 

「そうだ! だったらサイゾウ様に言って《輪廻天生の術》で生き返らせていただければいい!」

 

真っ先に発言したのは、これまで顔面蒼白となっていた大崎九郎だ。

 

彼はただ顔を蒼くしていたわけではない。必死に、持てる情報すべてを用いて大蛇丸が延命する方法を探っていた。

 

「……九郎、ごめんなさい。わたしの用いた《外道転成の術》は人の輪廻から外れる術なのよ。だから如何に輪廻眼の転生忍術であっても、わたしを蘇らせることは不可能なの……」

 

「そんな……!」

 

その時の大崎の顔は、まさしく絶望そのものだった。

 

そんな大崎の元へ、大蛇丸は体を散らしながら近づいていく。

 

「んぐ……!」

 

「……ごめんね。あなたの想いは知っていたけど、かつて魔道に落ちたあたしには誰かに愛される資格なんてないって、ずっと想っていたの。“もし”があるなら、どうか来世でも、わたしのことを愛してね」

 

不器用な、唇を合わせるだけの口づけ。しかしそれを受けた九郎は、涙を流しながら頷くことしかできなかった。

 

「ハン、あなたがこの里を守って。もうわたしはこの子達の行く末を見届けてあげることはできない。だから、その役目をあなたに任せるわ。わたしからの最初で最後のお願いよ」

 

大蛇丸はハンにも同じように口づけをして、離れる。すでに大蛇丸には片腕がなく、足も無くなりかけつつあるのを輪廻眼の能力で浮いている状態だ。

 

「……例えこの五体砕けようとも、必ずや音隠れをお守り致します!!」

 

ハンはぼろぼろと泣き崩れ、その場に跪く。

 

「君麻呂、重吾、幻幽丸。こんなダメなわたしでも、お母さんって思ってくれてありがとうね。あなたたちのことを、いつまでも愛しているわ」

 

大蛇丸は3人を優しく抱き締める。

 

「俺が……! 俺が弱かったから、母さんを……!!」

 

血を吐くような君麻呂の言葉。しかしそれを大蛇丸は優しく否定する。

 

「そんなことないわ。あなたたちは強(・)い(・)。その強さを貰えたから、わたしは最後まで“人”であることができたの。でももし、自分が不甲斐ないと思うなら存分に鍛えなさい。誰にも負けないほどに。何も奪われないほどに」

 

大蛇丸からの言葉を受けて、君麻呂は立ち上がる。その最後を、目に焼き付けるために。

 

「ねえレンヤ。貴方って不思議よね。元々は分身なのに、今じゃ言われなければわからないほどにサイゾウとは違う。……ねえ、命って、どこから来てどこへ行くのかしらね」

 

どこか抽象的な言葉。その間にも大蛇丸の体は崩壊していき、遂には上半身のみとなる。

 

「レンヤ。あなたをわたしの次の長として、音隠れの里を任せます。それと、これはせめてもの餞別よ」

 

大蛇丸は残った右腕をレンヤの心臓の上へ重ねると、自身に残されたチャクラを全て注ぎ込む。

 

「……《起生転生の術》。……ふふ、これであなたはもう“紛い物”なんかじゃないわ。胸を張りなさい。あなたはサイゾウの分身なんかじゃない。レンヤという、たったひとりの人間よ」

 

大蛇丸がレンヤへ渡したチャクラは彼の全身を隈無く巡りわたり、その身にひとつの奇跡を起こす。

 

レンヤの体は、これまでも生身ではなかった。ただ外道の術によって“人によく似た存在”としてこの世にあるだけだった。

 

そんな彼の体は今、鼓動を繰り返す生身の肉体と化していた。

 

「こ、これは……!!」

 

「レンヤ……!」

 

美甘は涙を流しながら、その奇跡を起こした大蛇丸を見つめる。

 

「……どうやら、ここまでのようね……でもよかったわ、こんなにも強い子達に……会えて……」

 

大蛇丸の体が崩れ、怒号のように悲鳴が起きる。

 

完全な塵と化した大蛇丸の体は風に乗って空を舞い、あまねく彼方へと運ばれていく。

 

(…どうやら起きたようね、サイゾウ)

 

幽体となった大蛇丸がその魂すらも綻ばせながら、サイゾウへと話しかける。

 

久しぶりに語らう弟子は今の彼の状態にひどく焦っていたが、大蛇丸はそうやって焦る姿にかつての彼の様子を見る。

 

自分に弟子入りし、試行錯誤を繰り返していた頃の姿を。

 

(…悪いけど、後は頼んだわよ)

 

どこか突き放すような言葉だが、自分の弟子ならこれで十分だろうと大蛇丸は微笑む。

 

あの男に出会って変わることができた。与えるものも、与えられるものも、十分にあった。

 

これにて大蛇丸という忍の物語は終わり。

 

けれど、その意思は、心は生き続ける。

 

誰かのなかで…………………………………………

 

__________________________________

 

 

かつて白蛇を拾った少年は、己を育む師からそれが“幸運”と“再生”の象徴だと教わった。

 

彼は後に自らが白蛇となり、不死の体でこの世の理を解き明かそうとした。

 

しかし彼の弟子となった者に“違う可能性”を見つけた少年は、その生き方を変えていった。

 

『伝説の三忍』大蛇丸。音隠れを守り、愛する者の為に死す。

 

 




大蛇丸が死ぬ、という展開は最初期から考えていました。

原作最終章での綱手との会話がきっかけです。

この作品において彼は愛すること、愛されることを知りました。

その最後は悲しいものとなってしまいましたが、今後も彼の意思は生き続けるでしょう。

音の意思として。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定