※この作品はR-18です。

うちはの火影   作:SHV(元MHV)

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お待たせしました。
キャラの特徴だけを全面に出した結果個人的に納得がいかず全面書き直しした為遅れました( ̄▽ ̄;)

一応今回の会談で五影会談は終了。次話は雲隠れにいくか、それとも他キャラクターの話にするか。

まだ悩んでますが、まあそれなりに時間を作って頑張ります。


五影会談③ ★

鉄の国。

 

三狼と呼ばれる険しい三つの山に囲まれた、天然の要害を拠点とする独立国家である。

 

国土の大半が寒冷地であり他は厳しい山々であるため、富んでいるとはとても言えない厳しい国でもある。が、反面その厳しい環境によって鍛えられた兵士──侍たちは、対忍(しのび)に特化した装備を纏い、チャクラの形態変化と身体強化のみを用いることで破格の戦闘力を誇る。

 

彼らは忍術を使わない。使えないのではなく、使わないのだ。

 

それはひとつの技を極めることで生まれる一点突破の爆発力を求めてのことである。彼ら侍を倒そうと思うならば、消耗戦を仕掛けるのが最も有効であり、だからこそそれを嫌う他国から侵略する対象には選ばれない秘訣があった。

 

“侍”が守るこの地は五大隠れ里が出来た頃より不可侵が約束されている。それは今なお侍達の実力が五大国に準じるほどに強力であることの証明であり、仮に仕掛けたとしてなんら旨味のないことからである。

 

そしてそのような侵略されぬ土地だからこそ、幾度も戦争を繰り返した五つの里の代表が集うのに相応しい場所と言えた。

 

「……五影の傘を前へ。火影殿の呼び掛けにより、今ここに五影が集った。これより“五影会談”を開始する!」

 

場を仕切る侍大将ミフネの号令により、各々が影として背負った国の名を刻んだ傘を前に置く。これは“この場での不戦を約束する”という一種の儀礼的なものであり、そのそのものに意味はない。

 

だがこういった形式というものは幾人もの犠牲の果てに生まれた約束でもあるのだ。これを馬鹿にし、蔑ろにするようなことがあればその者は二度とこの機会を得られないであろう。“礼”を失するということは、信頼を失うことと同義なのだ。

 

そして今回の五影会談を呼び掛けた代表者である五代目火影うちはサイゾウはおごそかに立ち上がると、今だ表情をぴくりとも動かさない雷影に目を留める。

 

「各影殿においてはよく集まっていただいた。……だがまあ、まずは余(・)計(・)な(・)も(・)の(・)を取り除かせていただくとしよう。《闇満羽》!!」

 

サイゾウの目が赤く輝き、万華鏡写輪眼の力が解放される。目線を合わせていた四代目雷影エーがその場に崩れ落ち、がくがくと全身を痙攣させ、同時に口から黒いどろどろとしたアメーバ状の物体が漏れ出てくる。

 

「グ……グゲエ……! よ、よくも貴様……!!」

 

エーの口から出てきた黒ゼツだったが次の言葉を放つことはできなかった。

 

「疾っ!!」

 

予めサイゾウより霊刀として祀られていた草薙の剣の一刀を受け取っていたミフネによる居合いは、黒ゼツが動くよりも遥かに早くその体を六分割に切り裂いていた。

 

「縛!!」

 

さらにそれを見越して動いていた四代目風影羅砂が動く。自らの服の下に仕込んでいた砂金によって再結合しようとする黒ゼツを捉え、顔以外の大半を磁遁によって封印してしまう。

 

「とどめよ!」

 

さらにそこへ五代目水影照美メイが溶遁で溶かし尽くさんと印を組むが、それはサイゾウによって止められた。

 

「メイ、よせ。やはりこいつは本体ではない」

 

万華鏡写輪眼で不定形生物と化した黒ゼツを見るサイゾウは、そのチャクラからかつて見た黒ゼツとは似て非なる存在と断じて見せた。だがそれは決して目の前の存在を軽んじているわけではない。

 

「シスイ!!」

 

「……ようやく出番だね! 《別天神》!」

 

どうにか再生しようとする黒ゼツだったが、その頭部が形成された瞬間どこからともなく現れたシスイがその眼へと《別天神》を仕掛ける。

 

うちはシスイ。うちはサイゾウの実弟であり、サイゾウ以上の最強幻術《別天神》を操る暗部の隊長であり、今回の五影会談には極秘裏にサイゾウの護衛として着いてきていた。

 

そう、今日行われる五影会談とはこの為にあった。全ては雷影を解放し、可能ならば黒幕を捕らえる為に。だがサイゾウや他の影達も予想していたことではあったが、捕らえた黒ゼツは本物ではなかった。そしてそれが二代目土影無(ムウ)の操った分裂体と同種の存在であることが待機していた三代目土影オオノキによって語られた。

 

「……さて、どうするんじゃぜ火影。全員で一芝居打ったはいいがこの後の流れは聞いてないぞ」

 

黒ゼツを調べ終えたオオノキがサイゾウに語りかける。気を失った四代目雷影エーはミフネの指示により医務室へと運ばれた。

 

「まずは雷影殿が目覚めるのを待って本格的な五影会談といこう。事前に連絡しておいたので十尾や無限月読に関しては説明が十分かと思うが、彼が目覚めたらもう一度確認の時間を設けたい」

 

サイゾウは会談が行われる円卓の中央に封印された黒ゼツを厳しく睨みながら告げる。

 

「……兄さん。《別天神》は保険の予定でしたが、手応えからして間違いなく術が効いているのはなぜでしょう?」

 

黒ゼツは見ての通り不定形生物のような相手だ。であるならば、瞳を通して術をかける幻術は相性が悪いのではとシスイやサイゾウは考えていた。

 

ゆえにシスイは小声でサイゾウに訪ねる。それはサイゾウ自身も思っていたことだが、しばらく観察してその理由がはっきりし、サイゾウは怒りを露にする。

 

「シスイ。こいつがどういう存在かは知らないが、こいつが使っている眼は写輪眼だ。それも、どうやらこいつはフガクの眼だな」

 

「サイゾウ様、見ただけでわかるのですか!?」

 

思わず驚いて素で聞いてしまうメイ。サイゾウは「……火影と呼べ、ここではな」と一応注意して説明を続ける。メイは顔を赤くして俯く。

 

「俺は木の葉の里にいる者全員のチャクラパターンを覚えている。いくらか変質しているがこの眼はどちらもフガクのだよ。分裂体ゆえ本物とはある意味違うが。それにしてもこいつは一体どういう存在なんだ……」

 

サイゾウは肉体とも呼べない奇妙な肉体を観察し、時おり触るなどして確認している。

 

「俺の磁遁で封印はしたが、妙な感触だな。まるで作り物の泥を掴まされているような気分だ」

 

子供達がサイゾウの連れてきたナルトとサスケと打ち解けたことに安堵する羅砂だったが、この場においては影としての顔を保つ。……我愛羅に友達が出来たのを目撃した瞬間は思わず涙ぐんでしまったが。

 

「ひとまず絞れるだけ情報を絞り出してしまおう。シスイ、俺の幻術と繋げろ。精神空間で時間を短縮してこいつの記憶を引きずり出す」

 

そう言ってサイゾウは──隙を窺っていた黒ゼツを見つめこれまで秘匿していたもうひとつの瞳力を解放した。

 

「《闇龗(くらおかみ)》」

 

「……!」

 

無防備に触れるサイゾウを隙を見て乗っ取ろうと画策していた黒ゼツだったが、サイゾウの万華鏡車輪によってもはや微動だにできなくされてしまう。

 

《闇龗》。あまりに強力すぎる為にサイゾウ自身が使いどころに困っているもうひとつの万華鏡写輪眼の瞳力。

 

その作用はひとえに術の強化にある。強化と言ってもわずかなものではない。例えば火遁豪火球の術にこの瞳術を用いればその術は火遁・豪火滅却級の爆炎と化す。

 

そして今サイゾウが用いたのは別天神の強化。人間相手なら脳死するほどの幻術であっても人間擬きならば問題ないだろうと考えての措置だ。

 

「兄さん!? まさか《別天神》から逃れるだなんて……!」

 

驚き駆けつけるシスイだが、サイゾウはさして気にしてはいない。

 

「気にするな。ひょっとしたらと考えて準備しておいたのが無駄にならなかっただけだ」

 

サイゾウは動かなくなった黒ゼツの眼を無造作に抉り取る。そのことに周囲は眼を見張るが、サイゾウは何事もなかったかのように口寄せした保存液に眼をつけるとそれを逆口寄せしてしまう。

 

「……ふむ。恐らくだが、眼球を途中で物理的に切り離したんだろう。《闇龗》で無理矢理効果を全身に及ぼしたが……シスイ、この方法は生身の人間でも覚悟さえあればできなくはないから気を付けろ。幻術を受けたら神経が切除されるよう条件付けをするとか、時限式にしても可能だからな」

 

「は、はい兄さん!」

 

シスイはサイゾウが眠る間の二年という歳月を無為に過ごしてきたわけではない。

 

誰よりも厳しく修行してきたし、柱間細胞さえも適合して見せた。更には眼帯の下に強(・)力(・)で(・)お(・)ぞ(・)ま(・)し(・)い(・)切り札もある。

 

(……けれど、そのどれを使ってもまるで兄さんに勝てる気がしない。ふふ、こういうのを誇らしい気持ちと言うのかな)

 

全面的に負けているのに、それがまるで苦にならない。そのことが悔しくもあり、また誇らしくシスイは思うのだった。

 

「さて、では死ぬ前に覗かせてもらうぞ。お前のすべてをな」

 

サイゾウは黒ゼツの頭に手を伸ばすと、その意識を暗い闇のなかへと侵入させていった。

 

__________________________________

 

 

(やはり分裂体か……)

 

輪廻眼の力も応用して黒ゼツの精神へと侵入したサイゾウは、直近の記憶を覗き今侵入している黒ゼツが念のため作られた分裂体であることを確認していた。

 

さらに彼の記憶へ潜航し、思考の海を漂うサイゾウ。

 

サイゾウが今目にしているのは情報の奔流。数え切れぬ記憶の群が、まるで天の川のごとく煌めき天地上下を流れていく。

 

だがそのほとんどはただ輝くばかりで記憶としての意味を為しておらず、サイゾウは断片的に拾い集めたものから内容を精査しようとするが、それも拾う傍から砂のように崩れて消えてしまう。

 

しかしそこにはただひとつ、狂おしいほどに純粋な想いだけが残った。

 

「“カグヤ”、か」

 

サイゾウは即座にその名が石碑にあった大筒木カグヤのことであることを察した。

 

最初にチャクラの実を食した女。

 

サイゾウはそもそもカグヤこそ全ての原因なのではと疑っていた。

 

うちはの石碑を読み解いてからなおのことその思いは強くなっている。誰かが意図的に彼女の情報を伏せていると。

 

あの石碑をただ何も知らず、理念や信念を失いかけた状態で見たのならば、あるいは《無限月読》の世界を信じたやもしれない。だがサイゾウは折れるどころかより強くなって歩き続けている。

 

彼をマダラと比べる者は多いが、彼とマダラの違いは多くの者に支えられ折れなかった心にあった。

 

「……ちっ、記憶のほとんどが読み取れん。これでは使い物にならんな。さて、お前を締め上げたら少しは内容がわかるのかな?」

 

サイゾウが振り返り語りかけると、そこに不定形の黒いアメーバが集まっていた。時間をかけて人の形になったそれは不安定だったが、その姿は今現在現実世界で全身を縛られている黒ゼツそのものだった。

 

「ぐぐ、貴様よくも俺のなかに……!!」

 

苦しげにうめく黒ゼツだったが、サイゾウはそれを見て笑むこともなければ憤ることもない。ただただ無感情に目の前で人の形をした成れの果てが憤るのを見守っていた。

 

「“カグヤ”に“母さん”。意味がある記憶として拾えたのはこの二つだけだったが、なるほどなるほど。それで、お前はあの女をどうするつもりだ?」

 

ニヤニヤと笑い嘲りながら、サイゾウは手近にあったカグヤの姿を写した記憶を握りつぶす。

 

「き、きさまあああ!!」

 

「腹が立つか? 奇遇だな、俺もだ」

 

サイゾウは向かってきた黒ゼツの顔面を思いきり殴り、吹き飛ばす。

 

精神世界であるがゆえにそれは決定的なダメージにはならないものの、黒ゼツはそのことにひどく動揺する。

 

「馬鹿な、ここは……! ここは俺の世界だぞ……!!」

 

「だからどうした? お前、俺を誰だと思っている。瞳術抜きなら幻術には木の葉で一番精通しているのは俺だぞ? 精神世界での鍛練なんぞ飽きるほどやっている。さて、どうやらお前がここの記憶を読めないように細工しているみたいだな。……なるほど、マダラを唆したのはお前か」

 

サイゾウは再び無造作に記憶を取りだしそれを読み取る。一見何の考えもなく記憶を選んでいる様にみえるが、実際には写輪眼によって膨大な記憶の群れを把握し最適なモノを引き寄せ読み取っている。

 

「だったらどうした。いいだろう、お前もオビトのように俺の支配下に置いてやる。くくく、こんな場所に入ってきたのが運の尽きだ! さっきは油断したが今度はぼぎゅがっ!!」

 

手足を変形させ、無数の触手を作り出した黒ゼツだったが一瞬にして踏み込んだサイゾウによって腹を殴られ吹き飛んでいく。

 

「さらにもう一発!!」

 

しかし吹き飛んでいく黒ゼツに合わせてサイゾウも飛び、今度は右拳を構えて同じ場所へと叩き込む。

 

「《撃滅の豹獣》!」

 

かつてマダラに叩き込まれたそれが十連続の衝撃となって黒ゼツを打ちのめし吹き飛ばしていく。

 

精神世界とはいえ生身の人間なら原型を留めないほどの怒濤の攻撃だが、サイゾウは物足りげに見るも無惨な姿になった黒ゼツを見る。

 

「悪いな、十発だった。それと大して効いちゃいないんだろ? さっさと起きろよ」

 

サイゾウはさらに読めるようになった記憶を解析しつつ、黒ゼツの様子を監視する。

 

「死ねぇ! ぐげぁ!?」

 

「……減点だ。せっかく後ろから不意打ちしても声を出したら台無しだろうが」

 

サイゾウの目の前で崩れた黒ゼツの残骸。それに眼を向けていたサイゾウだったが、後ろから不意に現れた黒ゼツの不意打ちを見ることすらなく蹴りで対処する。

 

「……なるほど、オビトの奴め……哀れな」

 

続いてオビトを洗脳した黒ゼツの記憶を読み取りサイゾウの握った拳にぎちぎちと力がこもる。

 

「おおぉぉぉのれえええぇぇぇえぇぇ!!!! ならばこれならどうだ!」

 

「……ほう」

 

黒ゼツは精神世界とはいえ《完成体須佐能乎》を繰り出しサイゾウを見下ろす。その展開速度にこそサイゾウは眼を見張ったものの、驚異として捉えてすらいない。

 

「はっはっは! 如何に貴様が強かろうと対処する時間が取れまい! 砕け散れえええ!!」

 

黒ゼツはサイゾウのそれを模したのか、黒い須佐能乎の巨拳でもってサイゾウを圧殺せんと拳を振るう。

 

しかしそれは、先程の黒ゼツ以上の速度をもって展開された《完成体須佐能乎》によってあっさり止められた。

 

「馬鹿な……! こんな速度、あり得ん!! そんなチャクラを練っている時間はなかったはずだ……!!」

 

「もういい、砕け散れ。《獣王百撃》!!」

 

サイゾウの意に従い、黒い悪鬼を思わせる完成体須佐能乎が巨拳を構える。

 

その拳を守るようにさらに巨大な籠手が腕を包むと、背に展開していた黒い羽根が変形しもう一対の拳となる。

 

都合四本二対の巨拳。それらはさながら正面から迫る巨大な流星群となって黒ゼツを最微塵(クォーク)まで消滅させた。

 

「さすがに他の重要な記憶はなしか。……だが手応えが無さすぎる。一体ヤツの目的はなんだったのだ」

 

サイゾウは気づいていなかった。砕かれる寸前、黒ゼツが笑みを浮かべていたことに。

 

__________________________________

 

 

しばらくして、意識を取り戻した四代目雷影エーが戻ってきて改めて会談が執り行われた。

 

ひどく消耗していたエーであったが、生来の頑強さもあり頑なに会談を続けることを主張したためでもあった。

 

「……まずは火影よ。礼を言う。よくぞ、ワシを呪縛から解き放ってくれた」

 

普段の彼を知る者なら目を疑う光景だったであろう。傲岸不遜を絵に描いたような性格の四代目雷影が頭を下げるという光景に、サイゾウは思った以上に雲隠れが切羽詰まっていることを悟る。

 

「礼には及ばん。それとお前の部下達も、一度は捕らえたが全員洗脳から解放しておいたぞ。さすがに黒ゼツに取りつかれていたのはお前だけだったがな」

 

「……重ね重ね本当にすまん。無理を承知で尋ねるが、火影よ。雲隠れを救ってはくれまいか。これは火影のみならず、他四つの里全てへの救援要請だ」

 

再び頭を下げる雷影。それを見かねたのはオオノキだった。

 

「雷影よ、影ともあろうものがあまり軽々しく頭を下げるでない。……とはいえ状況は逼迫しているようじゃぜな。火影よ、お主はどこまで掴んでおる?」

 

オオノキはエーを諌めながら、この場で最も発言力があるサイゾウへと問いかける。すでに彼が一ヶ月前、娘を取り戻す為に雲の国まで道を作ったことも知った上ので発言だった。

 

「そうさな、遠方から確認した限りでは里全体のチャクラが随分と乱れていたのを感じている。ゆえに俺は今回の会談で雲隠れへの侵攻も辞さないつもりだったが、まずは情報の共有を優先しよう。十尾や《無限月読》についてなにか聞きたいことはあるか? ああ、雷影殿は手元に資料を置いておいた。まずはそれを読んでくれ」

 

「わかった」

 

言われ、手元にある資料を確認し始める雷影。その間疑問となる部分を聞こうとまず手を挙げたのはメイだった。

 

「サイ……火影殿。十尾の魔物が他の尾獣の集合体であり、それゆえに各国の人柱力が狙われていることはすでに承知しました。ですが残念ながら霧隠れは里の中にあった“暁”との戦いで人柱力は全滅。正確には四代目水影ヤグラ殿は死亡しましたが、三尾の人柱力は解放しております。六尾のウタカタは行方不明……ですが状況的にすでに“暁”に捕らわれたと判断しております」

 

メイの淀みない説明であったが、それは実質霧隠れのみならず水の国そのものが軍事的には壊滅状態にあることを意味している。

 

「やはりそこまで追い詰められていたか。では後で“暁”の拠点調査も含めて人を送ろう。なにか不足している物資があれば、そのときに言ってくれ」

 

「はい、かしこまりました」

 

会談の始まる前、再開の喜びも束の間にメイはサイゾウを通して木の葉への救援要請を出していた。“暁”によって戦力を二分された霧隠れは三代目水影の洗脳こそ何故か解かれたものの、すでに洗脳されていた身内との戦いを通して里としての対面を保つぎりぎりまでその戦力を落としていた。

 

結果として霧隠れはこれをきっかけに衰退し、後に波の国の経済的傘下に収まるのだが、それはまた別の話である。

 

「火影殿。この場で言うことではないかもしれんが、封印術の提供、改めて礼を言う。おかげで俺は妻を失うことなく、また子供達の親であれた」

 

そう言って頭を下げる羅砂の真摯な対応にサイゾウはこそばゆそうに頬をかく。

 

「気にするな、と言っても無理だろうから精々恩に着てくれ。こちらこそナルトのヤツが我愛羅くん相手に無茶をしていないか心配なくらいだ」

 

今回の会談において連れてこられたナルトとサスケは、さっそく我愛羅と仲良くなっていた。きっかけは勿論ナルトであり、洗脳された雲隠れの部下を取り押さえる際にも彼らは活躍している。

 

「ははは、まあそれは見ている大人がいれば問題あるまい。まさか子守りに三代目火影殿がいるとは思わなかったがな」

 

そう言って苦笑する羅砂だったが、最初その姿を見たときは猿飛一族の親類だと思っていた。本人が若返ったという情報も得ていたが、まさか眉唾だと思っていたのだ。ちなみに雲隠れの部下はナルト、我愛羅、サスケの少年組によって一撃を加えられた後にヒルゼンによって捕らえられた。ガイやナナシを始めとした上忍もいたのだが、彼らが手を出す間もない早業だった為本人達は仕事を取られたことをぼやいていたりする。

 

「岩隠れは四尾の人柱力老紫が両足を失う重傷じゃが、幸いにも死んではおらん。……とはいえもがれた足はやつらに奪われたらしい。尾獣のチャクラは奪われたと言ってもよいじゃぜ、十尾復活の条件とやらは達成されてしもうたわ」

 

ため息を吐きながら報告するオオノキ。五影会談に参加する面々は事前に十尾と《無限月読》に関しての情報をサイゾウから提供されたが、オオノキなどは「もっと早くこの情報を寄越していれば!」と憤っていた。

 

「……資料は読ませてもらった。《無限月読》、確かに恐ろしい術だ。ここに防ぐ術はない、と書かれているがこれは本当なのか?」

 

読み終わった雷影がサイゾウに語りかける。

 

「確認する術もないが、多角的に情報を検証した結果その結論に至っただけだ。ひょっとしたら俺の須佐能乎なら防げるかもしれんが、それもどうかわからん。ゆえにそもそも発動自体を防ぐのが目標だ」

 

「そうか……雲隠れは、と言っても朧気な記憶だが八尾のブルービーは最後まで抵抗して死んだ。今は死ぬ寸前に解放された八尾を俺の弟のキラービーに封印し、それを使いこなす修行をしている最中だ。ブルービーからチャクラを奪っている記憶があるので、恐らくだが八尾に関しては尾獣のチャクラを奪われていると言ってもいい。それと勿論だが、弟も洗脳されている。唯一洗脳を逃れた二尾のユギトは里を脱して行方不明だ」

 

実際に消耗しているのと相まって、辛そうに報告するエー。

 

サイゾウはそれを見てひとつの話題を取り出す。

 

「雷影殿、いい報せがある。ユギトは生きている。俺を頼ってか、音隠れの方向へと逃走中敵にやられて片腕欠損の重体だった。恐らくこれに関しては四尾の人柱力と同じことだろう。近隣の村で保護されていたのを巡回の音隠れの忍が発見して今は音隠れで療養を受けている。義手の調整中だ」

 

「なんと……!! だがなぜお前を頼るのだ?」

 

「……ふむ、昔取った杵柄というか、まあそのなんだ。人知れず逢瀬を重ねたというかなんというかだな」

 

「……ユギトが妙に身持ちが固かったのはお前のせいか」

 

呆れた顔で話すエー。同じような顔は羅砂やオオノキもしている。唯一メイだけは頬を膨らませていた。

 

「ま、まあその話は今はいい。最悪なことに現状では二尾、四尾、六尾、八尾のチャクラが敵の元にあると考えられる。それと木の葉の九尾だが、こっちは無事だが敵が穢土転生を使えることからすでに九尾のチャクラは手に入れている可能性が高い」

 

「……そうか!! 金銀兄弟のチャクラを!!」

 

サイゾウの言葉に反応したのはエーだった。悔しげに机を叩き皹を入れている。

 

「そうだ。かつて九尾に食われながらもその腹で九尾の肉を食らい生き延びた忍。やつらを穢土転生すればチャクラそのものの回収は行える」

 

「だが、それならば過去の人柱力を穢土転生されたらもはや十尾復活は間もないのではないのか?」

 

危機感に煽られながら、羅砂が冷や汗を垂らしつつ聞く。

 

「その可能性は高い。だが同時に完全な復活は無理だろう。そもそもそれでチャクラの回収が済むならば、はじめから全て穢土転生で賄えばよいのだ」

 

「それもそうじゃぜな。だが量よりも質が重要なんじゃろう? お主の見立てではどうなんじゃぜ、火影殿」

 

オオノキの問いかけにサイゾウはしばし黙考してから答える。

 

「……長くて十年。早くて三年か。これはあくまで自然エネルギーで量を補った場合の計算だ。ちなみにこれは俺が眠っている間に吸収していた自然エネルギーの量をベースに計算している。奴らの手に輪廻眼の持ち主である長門がいる以上、奴を洗脳して自然エネルギーを収集するためだけに使えば可能だ」

 

「どうにか止められないのですか?」

 

「出来る限りのことは試すつもりだ。事前に十尾の脱け殻である外道魔像を口寄せしたが、それはできなかった。今後奴らも、より完全な復活の為に手段を選ばず攻めてくるだろう。各里においてはこれに対抗するために、“忍連合”の発足を承認していただきたい」

 

メイの問いかけに答えつつ、サイゾウは全体を見渡して宣言した。

 

忍連合。それは里同士の垣根を越えてことに挑むための共同体の発足。史上初の五里全てによる連合でもある。

 

「情報の共有、戦力の迅速な配置、強力な単体の敵が出てきた場合の対応……連合を組むことによるメリットはいくらでもある。どうだろうか、オオノキ殿」

 

サイゾウはこの場で唯一連合の話が出たときに顔をしかめたオオノキへと問いかける。

 

「……断る、というわけにはいかんじゃぜな。戦力の低下した霧隠れや、半ば亡命状態の雷影殿らも含めればここでわしら岩隠れがその条件を断るメリットもない。そうじゃぜな、強いてわしから条件を出すならば音の持つ医療技術。特に義肢技術に興味がある。なあ、音隠れの代表殿?」

 

そこでオオノキに話を振られ、これまでずっと沈黙していた音隠れ代表九頭竜レンヤは目を開いて答えた。ちなみに参加は二回目からの会談であり、最初の会談のときは外部からの敵を警戒して施設の外にいた。

 

「構いませぬ。とはいえ里外に技術ごと派遣するわけには参りませぬので、こちらに来ていただく形になりますが、よろしいか」

 

有無を言わせぬレンヤの口調。オオノキは技術提供を呼び掛けるつもりだっただけに機先を取られて苦虫を噛み潰したような顔になる。

 

「……仕方あるまい。じゃぜが、これで老紫の足が治ったならばハンの件は不問にするじゃぜ。それが条件でよかろう」

 

オオノキの言葉に無言で礼をするレンヤ。その厳かな様子に、オオノキは内心で溜め息をつく。

 

(火影の身内というからどんな女好きかと思えば、とんだ堅物じゃぜ。これは下手な贈り物で篭絡するのは無理そうじゃぜな)

 

オオノキは当初考えていたくのいちらによる美女部隊の派遣を取り下げ、ひとまずは大人しく里内の防衛に力を入れることに決めた。

 

実際、正体不明の相手によって人柱力が敗けたという事実は彼のみに限らず全ての里が重く受け止めていた。

 

「ではここに忍連合の結束を宣言させてもらう! 細かい条件や詳細については別途詰めるとしよう。それでよろしいか」

 

「五代目水影、照美メイ。それで構いませぬ」

 

「四代目風影、羅砂。構わん」

 

「四代目雷影エー。それでよい」

 

「……三代目土影オオノキ。それでよかろう」

 

「音隠れ代表、九頭竜レンヤ。微力なれど各里に力添えさせていただこう」

 

「もちろん鉄の国も参加いたす! 額宛は我らがお作りいたそう!」

 

わずかな思惑はあれど、ひとつの意思の元に忍が集った。

 

敵は強大にしてその全貌は不明。なれどこちらも前代未聞の大連合。

 

一大決戦の幕が、徐々に開きつつあった。

 

 

 




もうね、会議シーンて長すぎ。でも話自体は重要だからしなければならないという……

最初は十尾や無限月読に関しても話の中に入れていたんですが、くっそ長くなったので資料にしました。

時間があれば資料ということで活動報告にあげるかもです。

それと、凹んだ自分を応援していただいた皆様に感謝を。特に付き合いの長いhisaoさんや歌舞伎rocksさん、そして勝手に師匠呼ばわりしている丸焼きどらごんさんや誤字報告で助けられてるリドリーさんなどなど、とても励まされました。しばらくはこちらの執筆に集中して、今後の作品について考えていきます。

それでは今後ともにお楽しみください!!


※誤字訂正しました。
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